3月16日(木)に千葉県の下総運動公園にて行われたサーヴェロの製品講習会兼試乗会イベント、サーヴェロ・ブレインバイクジャパン。イベントレポートとともに、来日したR&D部門のトップへのインタビューも紹介したい。



プレゼンを行ったサーヴェロ本社開発担当のリチャード・マシューズ氏プレゼンを行ったサーヴェロ本社開発担当のリチャード・マシューズ氏 サーヴェロの各シリーズが試乗のためにずらりと用意されたサーヴェロの各シリーズが試乗のためにずらりと用意された


昨年エンデュランスロードであるCシリーズの国内正式発表の場となったサーヴェロのテストライドイベント、「ブレインバイク」が今年も帰ってきた。今年の目玉は昨年衝撃と共にリリースされたトライアスロンバイクの「P5X」とトラックバイク「T5GB」の2つ。実車が持ち込まれ、プレゼンテーションではそれらを引き合いに、カナダより来日したR&D部門のトップ、リチャード・マシューズ氏よりサーヴェロの最新技術、そして決して表に出ない開発ヒストリーなどが語られた。

ボリュームある異質な造形で一際存在感を放っていたのが、同社初となるトライアスロン専用バイクの「P5X」だ。各ブランドが開発コスト削減のためにトライアスロンとタイムトライアルを両用としたバイクをラインアップする中、特にトライアスロンの世界において支持の厚いサーヴェロとして「本当にトライアスリートが求めるバイク」を追い求めた革新的な一台である(詳しいレビュー記事はこちら)。

例えばC5の開発時に150本もの試作フロントフォークを制作するなど、徹底的にR&Dを行うのがサーヴェロのスタイルだが、P5Xは更にその部分を突き詰め、大手ブランドの製品としては異例とも言える3年半もの開発期間が設けられたという。

異質とも言える存在感を誇るトライアスロン専用マシン、サーヴェロ P5X異質とも言える存在感を誇るトライアスロン専用マシン、サーヴェロ P5X
空力性能とストレージを考慮したY字型フレーム空力性能とストレージを考慮したY字型フレーム 開発・製造にはエンヴィとHEDも参加。3社の協力により誕生した開発・製造にはエンヴィとHEDも参加。3社の協力により誕生した


中でも時間を費やしたのが、トライアスリートのニーズを徹底的にリサーチするためのデータ分析だ。実際にレース会場へ何度も足を運んだ結果、使い勝手も空力的にも効率の悪いボトル配置や、フレームに貼り付けられていた補給食の位置を改善することを優先させ、ストレージの位置や量を細かく決めていったという。

Y字型フレームはモノコック工法を採用することで、従来モデルP5とほぼ同じ剛性を持たせつつもハンドリング性能を25%改善。ボトルや補給食をバイクに装備した実際の走行シーンにおいてP5よりも高い空力性能を実現している。すでに実戦にも投入されており、ここ数ヶ月の間でアイアンマンレースにおいて3度の優勝を飾るなど、その高い性能は早くも証明済みである。

コックピット部は細かな調整が可能となっており、どのライダーにもフィットするポジションを実現できるコックピット部は細かな調整が可能となっており、どのライダーにもフィットするポジションを実現できる 各所クリアランスを最小限とすることで空力性能を高める各所クリアランスを最小限とすることで空力性能を高める

見る者を圧倒する存在感溢れるフレームボディ見る者を圧倒する存在感溢れるフレームボディ このマシンのために開発されたTRPの専用ブレーキ。ワイヤー引きの油圧変換にて作動するこのマシンのために開発されたTRPの専用ブレーキ。ワイヤー引きの油圧変換にて作動する


ニューデザインが盛り込まれた「P5X」に対し、既存のモデルを元にサーヴェロが誇るエアロダイナミクスとカーボンテクノロジーを駆使し、リオオリンピックイギリス代表のために開発されたトラックバイクが「T5GB」(レビュー記事はこちら)。既存モデルをベースにしなくてはならなかった理由は、イギリス車連の依頼からオリンピックまでの日がごく僅かだったためだという。

サーヴェロはF1や航空宇宙産業関連のカーボン製品を製造するエキスパート、イギリスのLentus Composites社に製造を依頼。あくまで少数生産のプロ供給専用品であるため、一般的な金属モールド(型)ではなく、耐久性が劣るもののコストの低いカーボン型を用いて製造。しかし選手のポテンシャルを最大限発揮できるよう、体格に合わせて9つものモールド(選手は16人のみであるにも関わらず)を作成し、かつ選手の脚質に合わせてそれぞれのバイクでカーボンレイアップを変更したという。

リオオリンピックで12ものメダルに貢献したトラックバイク、サーヴェロ T5GBリオオリンピックで12ものメダルに貢献したトラックバイク、サーヴェロ T5GB
非常に凝った塗装にも特殊技術が使われ、塗装による重量増は僅か13gに抑えられている非常に凝った塗装にも特殊技術が使われ、塗装による重量増は僅か13gに抑えられている ブレーキが不要なトラックバイクならではの狭いクリアランスブレーキが不要なトラックバイクならではの狭いクリアランス


マシューズ氏によれば、そのこだわりようは塗装にも及んでおり、通常塗料により100g程度重量が増してしまうところを、新技術を投入しわずか13gに抑えた。成形からペイントまで全て職人による手作業で行われ、これらコストを度外視した作りによって、合計12ものメダル獲得に結びつけている。

ロードバイクにおいてはラインアップに変更はなく、プレゼン後の試乗会ではサーヴェロが展開するS、R、C、Pの各シリーズを乗り比べることができた。もちろん新作P5Xにも試乗でき、多くの人がその乗り味を確かめる良い機会となっただろう。CW編集部も各シリーズを試乗をさせてもらったが、それぞれのマシンが個性のある素晴らしいバイクであることが改めて感じることができた。

シクロワイアードでは、リチャード氏に同ブランドのテクノロジーの裏側に迫るべくインタビューを行い、非常に興味深い話を聞くことができた。



ー サーヴェロにとってP5Xは難しいチャレンジだったのでしょうか?

サーヴェロにおいてカーボン専門のR&D部門を指揮するリチャード・マシューズ氏サーヴェロにおいてカーボン専門のR&D部門を指揮するリチャード・マシューズ氏 その通りです。サーヴェロは元々トライアスロンバイクに端を発するブランドですが、今のトライアスリートが本当に求める一台を作り上げるため、今までの常識を全て捨ててゼロから設計をやり直しました。実際にはP5を改良することでより良いバイクを生み出せたはずですが、あえてそれは選びませんでした。

開発はプロアマ含めた選手、販売店、メカニックなど、様々な立場の人へのインタビューから始めました。そうすることでアスリートの求めるものが見えてきましたし、例えば簡単に収納できるハンドルシステムや輸送ボックスまで含めた開発が良い例でしょう。

開発に置いて、例えば軽量化と剛性の関係が良い例ですが、一方を立てれば一方が立たなくなる。つまり開発とは選択の連続です。過去にはユーザーではなく、私たち自身を(売りやすさやコストなど)を重視した製品も実際にありましたが、P5Xは本当の意味でユーザーに沿ったバイクです。実際に4年も開発期間を設けることは少ないですが、その分世界最高のマシンを生み出せたと自負していますよ。

ー 研究と開発に重きを置くのがサーヴェロの特徴ですよね。例えばCシリーズ開発の際には非常に多くの試作品を作ったと以前聞きました。

昨年から新たにラインアップに加わったエンデュランスロード、Cシリーズ昨年から新たにラインアップに加わったエンデュランスロード、Cシリーズ Photo: Jered GruberP5Xは「パーソナルベスト」というコンセプトのもと開発が進められたP5Xは「パーソナルベスト」というコンセプトのもと開発が進められた T5GBを駆り12個のメダルを獲得したイギリスチームT5GBを駆り12個のメダルを獲得したイギリスチーム photo:Bettiniその通り。サーヴェロと他の大規模メーカーとの違いはその部分に凝縮されていると言って過言ではありません。カーボンやエアロダイナミクスに関して最新最高の技術を有しているのが強みですし、開発においてはエンジニアの知識と経験を組み込みながら、最新のコンピュータシミュレーションを繰り返していることもポイントの一つです。

そしてソフト内で望ましい数値が出たもの数種類の試作品を作り、実際にテストを行うのですが、この部分を非常に簡潔に済ましているメーカーも少なくはありません。でもサーヴェロは違います。例えばP5Xは3Dプリンターで5つのシェイプを出力し、風洞実験を重ねベストな形状を編み出しました。

例えばサドル後ろのボトルを2本並べて装備すれば手も届きやすいけれど、風洞実験の結果、遅いことが分かりました。でもアイアンマンディスタンスではシングルボトルは不可能ですので、もう1本分をマウントするためのストレージをBB上に作ったこともありました。非常に細かい部分ですが、あくまで実戦を想定した上で、一つ一つの要素を煮詰めていきましたね。そうそう、初期段階ではP5のトップチューブを切断した上で実走したこともありましたが、あれは怖かったですよ(笑)。

ー (笑)。そうしたストレージのインテグレーションは今後ロードバイクにも浸透していくのでしょうか?

ロードバイクユーザーへのヒアリングを重ねないと何とも言えませんが、ロードバイクは純然たるトライアスロン競技と違ってノンストップで走る必要がないので、バイクパッキングでもない限りそこまでのストレージは必要無いと考える人が現在は大半でしょう。そしてロードバイクはファッション性も強いため、やたらとストレージを付けるのは受け入れられにくいことも理解しています。

ただ、ストレージはとても便利なものです。私もP5Xに乗るときはトップチューブストレージにスマホやら家の鍵やらを全部突っ込んでおけるので、重たいバックポケットからオサラバできて非常に快適なんです。ちょっと癖になるくらい便利ですから、広まる可能性は十分にありますね。

Sシリーズを好んで使うマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)Sシリーズを好んで使うマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ) photo:Kei Tsuji / TDWsport「ディメンションデータからのフィードバックは非常に貴重なデータです」「ディメンションデータからのフィードバックは非常に貴重なデータです」 photo:Kei Tsuji

新型を駆るオマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ)新型を駆るオマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ) photo:CorVos
ー ストレージも含まれますが、ここ数年のロードバイクのキーワードは「システムインテグレーション」ですよね。ブレーキやシートポストなど、全てが一体化、もしくは専用品となる流れの真っ只中にあると感じます。

いかにも、システムインテグレーションはサーヴェロが最も開発を推し進めている分野の一つです。10年前とは打って変わって専用パーツ、一体化パーツが増えましたが、これらの登場によってバイクの性能自体も大きく進歩しました。ただコンポーネント屋であるシマノやスラムの設計意図に左右される部分も強く、エンジニアにとってはいつも悩みの種だったりもしますね(笑)。ただしEバイク分野においては、サーヴェロの姉妹ブランドであるガゼル社などがオリジナルのモーターシステムを用いた自転車そのものをリリースしていたりもします。これはある意味システムインテグレーションの究極の形と言えます。

ー 今最もロードバイク界において議論されているディスクブレーキに関してですが、ここも将来的に「インテグレーション」されていくのでしょうか?

「ディスクブレーキはロードバイクの世界に広く浸透してくだろう」「ディスクブレーキはロードバイクの世界に広く浸透してくだろう」 25c以上のワイドタイヤがプロの間でも最早主流となっている25c以上のワイドタイヤがプロの間でも最早主流となっている photo:Kei TsujiこれはUCIに依る部分が大きいでしょう。これまで報告されているディスクブレーキを原因とした負傷に関しては疑問が残りますし、個人的には今までMTBで問題がなかったのだから安全性に問題は無いと考えています。もちろん200名以上が密集して走る状態を踏まえた上でね。

技術屋として言うのであれば、もしディスクブレーキにカバーを設けた時の冷却性能に疑問を感じます。バイクと比べてロードバイクは速度域が低いため、もとより冷却効果には限界があるんです。ディスクブレーキをカバーしてしまうとなると更に冷却は悪くなりますし、空力面から見てもあまり効果は無いと考えています。

なぜかと言えば、ディスクローターはホイールと同じ速度で回転していて、上側はスピードの2倍の速さで進んでいるんです。何が言いたいか分かりますか?もともと乱流が生まれている場所にカバーを付けても効果が低く、さらに重量増や冷却効率の低下を踏まえれば、現時点で技術屋としての我々の答えは「カバーはなくても良い」となるんです。空力を考えるのであれば、ヘッドチューブ部分の清流効果を高めた方がよっぽど効率的ですね。

それから、ディスクブレーキに加えてもう一つ、ここ数年で大きく変化したものがあります。それは、タイヤ幅。5年前にプロライダーが25cを使いたいなんて言ったらメカニックから馬鹿にされて終わりだったでしょうが、今や情報が変わり、太めのタイヤに低い空気圧を入れて走る事こそが抵抗も減り、かつ快適だということが浸透してきました。ほとんどの選手が25cを使い、一般ユーザーでも北米では28cも珍しくありませんよね。極端な例では30cや40cというロードタイヤだって出てきています。

開発に深く携わったT5GBを掲げるリチャード・マシューズ氏開発に深く携わったT5GBを掲げるリチャード・マシューズ氏
そして、その流れを加速させているのはディスクブレーキがあるからです。キャリパーブレーキは構造上キャパシティが低い上に、ワイドタイヤのグリップを使いきるだけの制動力がありません。それはキャリパーもワイヤーもパッドもしなりが大きいためロスが生まれるからですが、ディスクブレーキにはそれが無い。もちろんロックまでの時間が短いことがキャリパーブレーキとの違いですが、あくまで慣れの範疇です。そもそも安全に止まるための装置なのですから、制動力は高ければ高いほど良い。そしてワイドタイヤのグリップ力は、その制動力を確実に路面へと伝えてくれるのです。このコンビネーションはこれからより強固、かつ一般的になっていくと考えていますね。

ー 昨年からディメンションデータにマーク・カヴェンディッシュが加入しました。彼からの製品対するフィードバックはありますか?

彼を始めとしたチームからの要求は非常に重要なものとして捉えていますし、実際に多いですね。サーヴェロからも一人エンジニアを帯同させていて、その声を常に開発に反映させるよう心がけています。集団のまま100km/h近いスピードでダウンヒルなんて芸当はプロにしかできませんし、レースは最高のテストフィールドです。

ここ数年プロトタイプをチームに渡してテストしてもらってきましたし、これからも新製品が登場してくる予定です。詳細はまだ伏せておきますが、とても魅力的な製品に仕上がっていますよ。リリースを楽しみにして下さいね。

text:Yuto.Murata
photo&interview:So.Isobe
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