波打つウェールズの丘陵地帯を乗り切った70名による集団スプリント。チームメイトのリードアウトされてテクニカルコーナーを先頭で抜けたディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)が勝利した。



ウェールズ州の山岳地帯を走るプロトンウェールズ州の山岳地帯を走るプロトン photo:Kei Tsuji
ツアー・オブ・ブリテンでもUCIによるバイク検査は継続的に行われているツアー・オブ・ブリテンでもUCIによるバイク検査は継続的に行われている photo:Kei Tsujiスタート地点では多くのウェールズの旗が振られたスタート地点では多くのウェールズの旗が振られた photo:Kei Tsuji


偶然スポンサーのスーパー前に駐車したエティックス・クイックステップ偶然スポンサーのスーパー前に駐車したエティックス・クイックステップ photo:Kei Tsujiスコットランドからイングランドを経て、ツアー・オブ・ブリテンはウェールズに入る。イギリスを構成する地方行政区画の中で3番目の人口(300万人)を有するグレートブリテン島西部のウェールズ。なお、人口比率を見るとイングランド(83.8%)が突出しており、スコットランド(8.4%)、ウェールズ(4.8%)、北アイルランド(3%)と続く。

未来を担う2人、タオ・ゲオゲガンハート(イギリス)と落車で両肘を負傷したアドリアン・コスタ(アメリカ)未来を担う2人、タオ・ゲオゲガンハート(イギリス)と落車で両肘を負傷したアドリアン・コスタ(アメリカ) photo:Kei Tsuji沿道の交通標識は英語とウェールズ語の二重表記。イギリスの中でも降雨量が多い地域として知られているが、この日は暖かい太陽によって気温が24度まで上がった。

ウェールズ州のデンビーをスタートしていくウェールズ州のデンビーをスタートしていく photo:Kei Tsujiウェールズを南下する218kmコースはアップダウンの連続で、その獲得標高差は今大会最大の4,225m。最高地点は標高500m前後だが、緑豊かな丘陵を縫うように走るコースは登りと下りしかなく、名前もない(もちろんカテゴリーも付いていない)小さな登りが無数に登場する。コースの細さも手伝ってまるでアルデンヌクラシックのよう。

スタートから長く続いたアタック合戦は40km地点でようやく終わりを迎える。ロバート・パートリッジ(イギリス、NTFO)、マット・ホルムズ(イギリス、マディソン・ジェネシス)、アレッサンドロ・トネッリ(イタリア、バルディアーニCSF)、ミゲル・ベニトディエス(スペイン、カハルーラル)の4名が抜け出したところでメイン集団は束の間のスイッチオフ。

5分30秒まで広がったタイム差をエティックス・クイックステップが着々と縮めてレース後半へ。登坂ボリュームの大きなステージながら集団スプリントの可能性が高まっていく。しかし、残り50kmを切ってコースの起伏が一段と増すと、集団先頭が活性化した。



エティックス・クイックステップ率いるメイン集団が山岳地帯を進むエティックス・クイックステップ率いるメイン集団が山岳地帯を進む photo:Kei Tsuji
メイン集団を牽引するマキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、エティックス・クイックステップ)メイン集団を牽引するマキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsuji


逃げるロバート・パートリッジ(イギリス、NTFO)、マット・ホルムズ(イギリス、マディソン・ジェネシス)、アレッサンドロ・トネッリ(イタリア、バルディアーニCSF)、ミゲル・ベニトディエス(スペイン、カハルーラル)逃げるロバート・パートリッジ(イギリス、NTFO)、マット・ホルムズ(イギリス、マディソン・ジェネシス)、アレッサンドロ・トネッリ(イタリア、バルディアーニCSF)、ミゲル・ベニトディエス(スペイン、カハルーラル) photo:Kei Tsujiハードな展開に持ち込みたいチームスカイやモビスターのペースアップによってメイン集団からマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)らが脱落する。そしてフィニッシュまで38kmを残して逃げは吸収。そこから総合につながる新たな戦いが繰り広げられる。

先頭でスプリントを繰り広げるディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)とダニエル・マクレー(イギリス、イギリスナショナルチーム)先頭でスプリントを繰り広げるディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)とダニエル・マクレー(イギリス、イギリスナショナルチーム) photo:Kei Tsujiニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ)やトニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル)、セバスティアン・ラングフェルド(オランダ、キャノンデール・ドラパック)、ジャック・バウアー(ニュージーランド、キャノンデール・ドラパック)らが矢継ぎ早にアタックを仕掛けたが決まらない。スタジエール(研修生)として走る23歳ヨヘム・フークストラ(オランダ、ジャイアント・アルペシン)の力走も実らず、結局は70名ほどの集団のままアップダウン区間を終える。

先頭でスプリントを繰り広げるディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)とダニエル・マクレー(イギリス、イギリスナショナルチーム)先頭でスプリントを繰り広げるディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)とダニエル・マクレー(イギリス、イギリスナショナルチーム) photo:Kei Tsujiそこからはロット・ソウダルとロットNLユンボがメイン集団を引き倒した。カヴェンディッシュを復帰させないために赤と黄色のダブルロットチームが集団牽引。残り6km地点でエドゥアルド・ザルディーニ(イタリア、バルディアーニCSF)や大怪我から復活したテイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシング)が飛び出すも引き戻される。

スプリントで先着したディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)スプリントで先着したディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ) photo:Kei Tsuji最後までトレインを維持したロットNLユンボを先頭に残り1kmアーチを切り、テクニカルコーナーが続くフィニッシュエリアに入っていく。トム・リーザー(オランダ、ロットNLユンボ)の抜群のリードアウトが終わると、残り200mの最終コーナーを抜けたところでオランダチャンピオンが腰を上げた。

チームメイトと勝利を喜ぶディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)チームメイトと勝利を喜ぶディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ) photo:Kei Tsuji好位置から加速した23歳のフルーネヴェーヘンに勝負を挑んだのは、ツール・ド・フランスの合計4ステージでトップ10フィニッシュした24歳のダニエル・マクレー(イギリス、フォルトゥネオ・ヴァイタルコンセプト)。このツアー・オブ・ブリテンにイギリスナショナルチームから出場しているマクレーがフルーネヴェーヘンに並んだものの先頭は奪えない。追撃を振り切った赤白青のオランダチャンピオンジャージが右手を突き上げた。

「今日は距離が長く、登りが連続するハードなコースレイアウトだったのでチャンスは薄いと思っていた。でもロットNLユンボは献身的に働いて逃げを捉え、勝負に持ち込んでくれた。彼らの走りに報いる必要があると思ったんだ。最終的にメンバー4名を残していたことで上手く勝負に持ち込めたよ」と語るフルーネヴェーヘンは、4月にイギリスで行われたツール・ド・ヨークシャーでもステージ優勝。イギリスレースとの相性の良さを見せている。

リーダージャージを着るジュリアン・ヴェルモト(ベルギー、エティックス・クイックステップ)もスプリントに絡んでステージ5位。スティーブ・クミングス(イギリス、ディメンションデータ)と総合タイム差6秒のまま総合首位をキープしている。スプリントに絡んでステージ3位に入ったベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)と、スプリントポイントで動いたギャロパンがそれぞれボーナスタイム3秒を獲得した。



ステージ優勝を飾ったディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)ステージ優勝を飾ったディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ) photo:Kei Tsujiリーダージャージを守ったジュリアン・ヴェルモト(ベルギー、エティックス・クイックステップ)リーダージャージを守ったジュリアン・ヴェルモト(ベルギー、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsuji


ツアー・オブ・ブリテン2016第4ステージ結果
1位 ディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)        5h28’49”
2位 ダニエル・マクレー(イギリス、イギリスナショナルチーム)
3位 ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)
4位 カルロス・バルベロ(スペイン、カハルーラル)
5位 ジュリアン・ヴェルモト(ベルギー、エティックス・クイックステップ)
6位 ボーイ・ファンポッペル(オランダ、トレック・セガフレード)
7位 ルーカ・メスゲツ(スロベニア、オリカ・バイクエクスチェンジ)
8位 ニコラス・フェレーケン(ベルギー、アンポスト・チェーンリアクション)
9位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)
10位 ディエゴ・ルビオ(スペイン、カハルーラル)

個人総合成績
1位 ジュリアン・ヴェルモト(ベルギー、エティックス・クイックステップ)   18h22’04”
2位 スティーブ・クミングス(イギリス、ディメンションデータ)          +06”
3位 ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)                +1’03”
4位 トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル)
5位 ダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ)   +1’04”
6位 シャンドロ・ムーリセ(ベルギー、ワンティ・グループグベルト)       +1’08”
7位 ディラン・ファンバールレ(オランダ、キャノンデール・ドラパック)     +1’12”
8位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)
9位 ギヨーム・マルタン(フランス、ワンティ・グループグベルト)
10位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ)            +1’16”

ポイント賞
1位 ジュリアン・ヴェルモト(ベルギー、エティックス・クイックステップ)    26pts
2位 ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)                23pts
3位 ラモン・シンケルダム(オランダ、ジャイアント・アルペシン)        23pts

山岳賞
1位 シャンドロ・ムーリセ(ベルギー、ワンティ・グループグベルト)       39pts
2位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ)             37pts
3位 クリスティアン・ハウス(イギリス、ワンプロサイクリング)         26pts

スプリント賞
1位 ヤスパー・ボーフンハス(オランダ、アンポスト・チェーンリアクション)   12pts
2位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)             9pts
3位 グラハム・ブリッグス(イギリス、JLTコンドール)             6pts

チーム総合成績
1位 エティックス・クイックステップ                   55h12’43”
2位 ワンティ・グループグベルト                        +41”
3位 チームスカイ                              +2’49”

text&photo:Kei Tsuji in Newport, United Kingdom

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