最終日前日のアルプス山岳ステージは雨。気温13度の超級山岳ジュー・プラーヌ峠の下りで逃げグループから抜け出したヨン・イサギーレ(スペイン、モビスター)が勝利し、クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が落車の痛みに耐えながらも総合首位を守った。



下りで縦に長く伸びた集団が田舎町を通過する下りで縦に長く伸びた集団が田舎町を通過する photo:TDWsport/Kei Tsuji
ツール・ド・フランス2016第20ステージツール・ド・フランス2016第20ステージ image:A.S.O.ツール・ド・フランス2016第20ステージツール・ド・フランス2016第20ステージ image:A.S.O.



1級山岳コロンビエール峠を登るメイン集団1級山岳コロンビエール峠を登るメイン集団 photo:TDWsport/Kei Tsuji例年よりも山岳の比重が高いと言われるマイヨジョーヌ争奪戦の締めくくりは、山頂フィニッシュでも個人タイムトライアルでもなく、超級山岳のダウンヒルフィニッシュ。ツール・ド・フランス第20ステージは、前日同様に短くて内容の濃い146.5kmコースが設定された。

逃げグループをリードするペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)逃げグループをリードするペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ) photo:TDWsport/Kei Tsuji2級山岳アラヴィ峠(6.7km/平均7%)と1級山岳コロンビエール峠(11.7km/平均5.8%)、1級山岳ラマ峠(13.9km/平均7.1%)、そして超級山岳ジュー・プラーヌ峠(11.6km/平均8.5%)が立て続けに登場するコースの獲得標高差は約3,000m。

ジレを着てダウンヒルをこなすクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)ジレを着てダウンヒルをこなすクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:TDWsport/Kei Tsuji前日に落車でステージ優勝のチャンスを失ったピエール・ロラン(フランス、キャノンデール・ドラパック)とシルヴァン・シャヴァネル(フランス、ディレクトエネルジー)がこの日のファーストアタッカーズ。最終日パリを前にした第20ステージは逃げ屋にとっては実質的に最後の活躍の場であり、メイン集団からはカウンターアタックが続発する。

マイヨブランを着るアダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ)マイヨブランを着るアダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ) photo:TDWsport/Kei Tsujiやがて先頭で形成された37名の逃げ集団の中に入ったのは、トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)、ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)、ヤルリンソン・パンタノ(コロンビア、IAMサイクリング)、ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)、イルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ)、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)という今大会お馴染みの逃げメンバー。さらに総合12位・9分45秒遅れのロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ)も逃げにジョインした。

1級山岳ラマ峠で独走するトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)1級山岳ラマ峠で独走するトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル) photo:TDWsport/Kei Tsuji序盤の2級山岳アラヴィ峠で30名に絞られた逃げ集団は、チームスカイがコントロールするメイン集団から3分リードで続く1級山岳コロンビエール峠にアタック。すでにラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ)が山岳賞獲得を確定させているが、山岳賞2位のデヘントを先頭に逃げ集団は1級山岳コロンビエール峠を越えていく。

メイン集団のコントロールを担ったアスタナメイン集団のコントロールを担ったアスタナ photo:TDWsport/Kei Tsujiアルプスの山岳地帯を覆う雨雲によって選手は雨に打たれ、気温は25度から13度まで急降下。1級山岳コロンビエール峠の下りを終えると、ニーバリ、クロイツィゲル、コスタ、パンタノ、アラフィリップ、グジャール、ヨン・イサギーレ(スペイン、モビスター)、そしてマイヨヴェールのペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)ら8名が逃げ集団から抜け出して先行を開始した。

スプリントポイントでマイヨヴェールのリードをさらに広げたサガンは、1級山岳ラマ峠の登りが始まるとクロイツィゲルのために逃げグループを牽引。メイン集団から最大で6分24秒のタイムを奪ったクロイツィゲルは暫定で総合2位に浮上する。

しかし当然のことながらクロイツィゲルの総合ジャンプアップを阻止し、エースの総合順位を一つでもアップさせたいアスタナやAG2Rラモンディアールがメイン集団をコントロール。1級山岳ラマ峠でメイン集団から総合10位バウク・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)が脱落したものの、下り区間でなんとか集団に復帰している。

1級山岳ラマ峠を独走で通過したデヘントに代わって、下りでアラフィリップとパンタノの2人が先行を始める。クロイツィゲルやニーバリを含む追走グループから1分、メイン集団から6分差でアラフィリップとパンタノが、この日最後のカテゴリー山岳である超級山岳ジュー・プラーヌ峠の登坂を開始した。



アスタナがコントロールするメイン集団が山岳地帯を進むアスタナがコントロールするメイン集団が山岳地帯を進む photo:TDWsport/Kei Tsuji
逃げに乗ったイルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ)とピエール・ロラン(フランス、キャノンデール・ドラパック)逃げに乗ったイルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ)とピエール・ロラン(フランス、キャノンデール・ドラパック) photo:TDWsport/Kei Tsuji雨降りしきる超級山岳ジュー・プラーヌ峠を登るヤルリンソン・パンタノ(コロンビア、IAMサイクリング)とジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)雨降りしきる超級山岳ジュー・プラーヌ峠を登るヤルリンソン・パンタノ(コロンビア、IAMサイクリング)とジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ) photo:TDWsport/Kei Tsuji


超級山岳ジュー・プラーヌ峠を登るヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)超級山岳ジュー・プラーヌ峠を登るヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:TDWsport/Kei Tsujiアルのアタックをお膳立てするために序盤から集団を牽引していたアスタナだったが、肝心のアルは超級山岳ジュー・プラーヌ峠の登坂が始まるとすぐに失速。明らかにペースの上がらないアルはチームメイトに連れられながらもタイムを失い続けた。最終的にライバルたちから13分以上遅れてフィニッシュしたアルは総合6位から13位まで順位を下げている。

ザッカリンのサポートを受けて超級山岳ジュー・プラーヌ峠を登るホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)ザッカリンのサポートを受けて超級山岳ジュー・プラーヌ峠を登るホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) photo:TDWsport/Kei Tsuji後方から合流する予定だったアルが失速したため、追走グループ内で走っていたニーバリは自らのステージ優勝に目標をスイッチ。追走グループから飛び出して先頭のアラフィリップとパンタノに合流したニーバリが、そのまま雷雨の超級山岳ジュー・プラーヌ峠に向かって加速した。

超級山岳ジュー・プラーヌ峠を通過したヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)ら超級山岳ジュー・プラーヌ峠を通過したヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)ら photo:TDWsport/Kei Tsuji後方ではイサギーレとパンタノが追走を続け、やがてアラフィリップは脱落。先頭で独走を続けたニーバリにはイサギーレとパンタノが追いつき、先頭3名で超級山岳ジュー・プラーヌ峠をクリアする。そこから短い下りと登りを挟んでフィニッシュまで9kmのハイスピードダウンヒル。雨の危険なダウンヒルで抜け出したイサギーレが、下りのスペシャリストとして知られるニーバリとパンタノを振り切った。

最終的にパンタノを19秒、ニーバリを42秒引き離したイサギーレが独走勝利。「逃げグループには強力な選手が揃っていただけに、彼らを振り切ってステージ優勝できたことをとても嬉しく思う。下りが得意なニーバリとパンタノを引き離すことができるとは思わなかった」と勝者は語る。

スペインに今大会初勝利をもたらしたイサギーレは「もちろんチームはマイヨジョーヌを狙っていたけど、今年のツールではフルームが強すぎた。とは言っても最後の山岳ステージで優勝し、(キンタナの)総合表彰台もキープ。チーム総合成績でもトップを維持することができたので良い1日だった」と語っている。



下りでニーバリとパンタノを振り切ったヨン・イサギーレ(スペイン、モビスター)が勝利下りでニーバリとパンタノを振り切ったヨン・イサギーレ(スペイン、モビスター)が勝利 photo:TDWsport/Kei Tsuji


超級山岳ジュー・プラーヌ峠をクリアしたクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)超級山岳ジュー・プラーヌ峠をクリアしたクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:TDWsport/Kei Tsuji超級山岳ジュー・プラーヌ峠でメイン集団からアタックしたモレマはすぐさま吸収され、逆に集団から脱落してしまう。続いてアタックしたのは、現役最後のツールを走るホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)だった。

超級山岳ジュー・プラーヌ峠を越え、ダウンヒルに向かうメイン集団超級山岳ジュー・プラーヌ峠を越え、ダウンヒルに向かうメイン集団 photo:TDWsport/Kei Tsuji逃げていたザッカリンに合流したロドリゲスはメイン集団を完全に引き離し、チームスカイが先頭を固めるメイン集団から1分近くリードしたまま下りへ。果敢な走りが功を奏し、ロドリゲスは総合11位から総合7位へのジャンプアップに成功している。アルとモレマが総合トップ10から脱落した一方で、逃げ切ってステージ6位に入ったクロイツィゲルが総合10位に浮上した。

ライバルたちから5分以上遅れてしまったバウク・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)ライバルたちから5分以上遅れてしまったバウク・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) photo:TDWsport/Kei Tsujiチームスカイのコントロールによってフルームのライバルたちは登りでも動けず、下りでも動けず。フィニッシュ手前でダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ)らが抜け出したものの大きなリードは奪えず、リスクを負わずにチームメイトとともに下りをこなしたフルームが4分18秒遅れでフィニッシュした。

実質的に3度目の総合優勝を確定させたフルームは「昨日の落車の影響で膝と背中が痛んだものの、脚の調子自体は悪くなかった。4分のアドバンテージがあったので気持ちに焦りはなく、ライバルたちの動きに警戒しながら落ち着いて走った。この24時間は混沌としていたけど、チームメイトたちのおかげでマイヨジョーヌをキープ。フィニッシュラインを切った時はホッとしたよ」と語る。

最終山岳ステージを終え、翌朝のフライトでパリに向かうのは過去最多175名の選手たち。フルームがマイヨジョーヌ、サガンがマイヨヴェール、マイカがマイヨアポワ、そしてアダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ)がマイヨブランを着てパリ・シャンゼリゼ通りに凱旋する。



超級山岳ジュー・プラーヌ峠で失速し、17分以上遅れたファビオ・アル(イタリア、アスタナ)超級山岳ジュー・プラーヌ峠で失速し、17分以上遅れたファビオ・アル(イタリア、アスタナ) photo:TDWsport/Kei Tsuji30分遅れでフィニッシュに向かう新城幸也(ランプレ・メリダ)30分遅れでフィニッシュに向かう新城幸也(ランプレ・メリダ) photo:TDWsport/Kei Tsuji

フィニッシュへのダウンヒルに差し掛かるグルペットフィニッシュへのダウンヒルに差し掛かるグルペット photo:TDWsport/Kei Tsujiリスクを負わずに下りをこなしたクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が笑顔でフィニッシュリスクを負わずに下りをこなしたクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が笑顔でフィニッシュ photo:TDWsport/Kei Tsuji


ツール・ド・フランス2016第20ステージ結果
1位 ヨン・イサギーレ(スペイン、モビスター)                4h06’45”
2位 ヤルリンソン・パンタノ(コロンビア、IAMサイクリング)           +19”
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)              +42”
4位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)   +49”
5位 ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)               +1’43”
6位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ)               +1’44”
7位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)             +49”
8位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)              +3’24”
9位 ダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ)   +4’12”
10位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
11位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
12位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)            +4’14”
13位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ)
14位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、ランプレ・メリダ)
20位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)               +4’18”
22位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)
36位 バウク・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)           +9’49”
56位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)                  +17’38”
114位 新城幸也(日本、ランプレ・メリダ)                   +30’08”

マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)               86h21’40”
2位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)             +4’05”
3位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)                 +4’21”
4位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ)         +4’42”
5位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)             +5’17”
6位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)              +6’16”
7位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)               +6’58”
8位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、ランプレ・メリダ)
9位 ダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ)    +7’04”
10位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ)                +7’11”

マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)                 440pts
2位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)        228pts
3位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・バイクエクスチェンジ)    183pts

マイヨアポワ(山岳賞)
1位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ)                 209pts
2位 トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)              130pts
3位 ヤルリンソン・パンタノ(コロンビア、IAMサイクリング)           121pts

マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ)       86h26’22”
2位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、ランプレ・メリダ)           +2’16”
3位 エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・アルゴン18)           +42’58”

チーム総合成績
1位 モビスター                              259h11’21”
2位 チームスカイ                               +8’14”
3位 BMCレーシング                              +48’11”

ステージ敢闘賞
ヤルリンソン・パンタノ(コロンビア、IAMサイクリング)

リタイア
なし

text&photo:Kei Tsuji in Morzine, France
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