スイスのベルンにてツール2度目の休息日を過ごした新城幸也(ランプレ・メリダ)。第2週目を終えて調子は順調に上昇中。明日からの最終週に向けての意気込みを聞いた。



2回目の休息日をスイス・ベルンで迎えた新城幸也(ランプレ・メリダ)2回目の休息日をスイス・ベルンで迎えた新城幸也(ランプレ・メリダ) photo:Makoto.AYANO
ー どんな第2週目でしたか?

アンドラからだいぶ苦しみましたね。記憶がすでに薄れがちなんですが、あっという間でした。風の日があって、モンヴァントゥー、平穏なスプリントの日、そして個人タイムトライアル。グランコロンビエ山岳……。あっという間ですね。天気が良かったけど風が強かった。

ピレネー以降ぐっとツールらしくなりましたね。観客がこれほど多いレースは他にないので、ツールらしくて楽しいです。登り、下り、街中でもどこでも観客がたくさんいるので楽しい。山では登りで名前を呼んでくれるのが聞こえるのが嬉しくて、気持良く走っていました。

新城幸也とランプレ・メリダの選手たちもダヴィデ・チモライのスプリントにかける新城幸也とランプレ・メリダの選手たちもダヴィデ・チモライのスプリントにかける photo:Makoto.AYANO
北の1週目は寂しい感じがしたので、応援の声を楽しみに走っていました。2週目終わりから日本人観客の人が多くなって、日本語の声援が聞こえるのが嬉しいですね。

ー チームとしてはどうですか?

横風のステージで奇襲を受け総合争いのライバルたちに分差をつけられたルイス・マインティーズ(南アフリカ、ランプレ・メリダ)横風のステージで奇襲を受け総合争いのライバルたちに分差をつけられたルイス・マインティーズ(南アフリカ、ランプレ・メリダ) photo:Makoto.AYANOモンペリエにフィニッシュする横風のステージで(ルイス)マインティーズの総合成績を落としてしまったのが悔やまれるところです。マインティーズは昨日のベルンの登りフィニッシュでも30人の先頭集団に残っているから、脚はあるんですよね。風のステージの位置取りでタイムを失ったのはもったいなかった。

昨日の感じを見ていると、彼は今後トップ10に入ってくれるでしょう。アダム・イェーツは安定しているので新人賞を奪うのは難しいかもしれないですが、総合上位陣のなかには危うい感じの選手がいるので、トップ10は可能だと思っています。

ー マインティーズは風のなかで立ちまわるのが苦手という話ですね?

そうなんです。広い道でも風が強いと前に上ることができないんです。連れて行こうにも着いてこれない。若いので経験が不足しているんでしょうけど、集団前方に居ることに苦手意識があるのかもしれないです。密度が高いのが危険だと思っているようで、前に居れないから横風区間でタイムを失ってしまった。

ー 2週目は自分の思い通りの走りをすることは難しかったですか?

ベルンのホテルで日本人プレスの質問に応える新城幸也(ランプレ・メリダ)ベルンのホテルで日本人プレスの質問に応える新城幸也(ランプレ・メリダ) photo:Makoto.AYANOそうですね。昨日も逃げて良い日だったので何度かトライしたんですが、バイクペーサーみたいに速い2人(マルティンとアラフィリップ)が行ってしまった。3、4人でアタックしても可能性は低いので、10人ぐらいの逃げができればと思っていたんですが……。もっともトニ・マルティンはひとりで3人分なので、あれは4人逃げでしたね(笑)。

ー 残り20kmでルイ・コスタがアタックして一人で逃げたのは作戦だったんですか?

いえ、あれはルイ個人の動きです。ルイは手伝わなくても自分で動けるんです。前チーム(ユーロップカー)でピエール・ロランはアシストが必要でしたが、ルイはひとりで前に上がれますから。

連日の晴天・夏日に日焼けが肌に刻まれた連日の晴天・夏日に日焼けが肌に刻まれた photo:Makoto.AYANO動くようになった親指。しかし先端はまだ痛みが残るという動くようになった親指。しかし先端はまだ痛みが残るという photo:Makoto.AYANO


ー 3週目に向けて、考えていることはありますか?

なんとか逃げに乗りたいですね。明日の第17ステージも前半は登りが厳しくないので、クライマーよりもどちらかというと逃げの選手向きのステージです。誰が入るかわからないけど、逃げができそうなので、しっかりチェックして自分から動きたいですね。

ー 明日のステージは逃げると前にも話していましたが、逃げますか?

明日は逃げないと一日何もすることがないステージになってしまうんです(笑)。そうなると実質お休みになってしまうので、何かしたいですね。

ー 明日は山頂ゴールのステージですが、そんなステージで逃げたことは今までありますか? 

たぶん無いですね。いっちょ頑張りますか!(笑)

ー 前半に「身体は軽いけど登りは重い。それはなぜだかわからない」と言っていた問題は解決していますか?

「残るチャンスは3つ。なかでも第17ステージが狙い目です」「残るチャンスは3つ。なかでも第17ステージが狙い目です」 photo:Makoto.AYANO一昨日に峠を登ったときの感じは良かったので、もう大丈夫だと思います。あの日は最初のヨーイドンからの1級山岳の長い長い登りが辛かったんですが、最後のラセ・ドゥ・グランコロンビエ峠は調子よく登れました。長くダラダラ登るのは前からダメですね。アップダウンがあるとリズムが取りやすいんです。

ー 登れる感触がつかめている?

そのときやっと「登れるな」という感触がありました。まあ、明日を見ていてください。平坦はまったく問題ないので、登りをなんとかします。

ー チームとしても動く可能性はありますか?

チームも今までいい逃げには必ずメンバーを送り込んでいるので、悪くないです。うまくやりたいですね。

ー 「3週目に調子が上がればいい」と第1週に話していましたが、今その感触はありますか?

はい。脚は比較的元気だと思います。なぜなら例年よりも無理せず走ってグルペット回数が多いので、フレッシュな状態なんです。「もうちょっと頑張ってもいいかな?」と思いながら走っているんですが、無理しないぶん今は疲れていないと思います。

もっとも真ん中ぐらいの位置で走っていればもうちょっと頑張る必要があるんですが、後方グループだと周りがすぐ踏むのをやめてしまうので、自分もやめざるを得ない面もありましたが。昨日もそうです。それが第3週目にいい方向に作用すればいいですね。

ー 力を溜めてきた?

2週目を終えても力を使わずに来ているので、第3週には力を一気に出し切りたい2週目を終えても力を使わずに来ているので、第3週には力を一気に出し切りたい photo:Makoto.AYANO無駄な力を使わずにきたということですね。トータルの疲労感でいえば少ないと思います。

ー そのあたりの体力のセーブ方法は長年の経験がなせる技でしょうか?

そうかもしれないですね(笑)。普通はその位置にいたらマズイと思ってしまうんでしょうが、「ここでも大丈夫そうだ」というのがわかるので。その見極めはうまくできます。ある意味慣れすぎてコワイですけどね(笑)。もうちょっと頑張ってもいいですね。

ー ここまでにマズイと思った展開はありましたか?

「今日はヤバイな」ていうのは無かったですね、全然。

ー 落車で突き指した親指の具合はどうですか?

動くようになりましたね。昨日の石畳で動くようになった。きっと荒療治が必要だったんですね(笑)。ギュッとやれば曲がるようになった。でも固定しないとちゃんとは治らないんでしょうね。2週間経ったので、指先はまだ痛むんですが、痛くない範囲が徐々に広がってきました。

ー 第3週のチャンスはズバリいつでしょうか?

個人TTのコースマップを見て「苦しむのは11kmです」個人TTのコースマップを見て「苦しむのは11kmです」 photo:Makoto.AYANO僕にとって第3週は実質3日ですね。TTとシャンゼリゼを除いた日にしか動けないので、頑張るのは明日の17ステージぐらいしかないですよね。明日と登り個人TTが終わると、翌日は山岳が厳しいのでパスかな?。3つの山岳ステージのうち、逃げが可能なのは明日(第17ステージ)とモルジヌにゴールする第20ステージの2つ。第20ステージは難しいですが、土井さんと逃げる約束をした日です(笑)。明日はいちばん逃げる可能性が高いですが、どう走るかのセンスが問われると思います。

ー シャンゼリゼでの逃げはプランに入っていないんですか?

走れるかどうかわからないんです。テロの危険があるためにシャンゼリゼ周回が無くなるという話が選手間で出回っています。周回はキャンセルで、郊外をスタートしてパリに着いたらそこでフィニッシュ、という話が。

ー そんな話があるんですね。

だとすると早く終わります。早く終わればそのぶん飲めますね(笑)。でも残念ながらランプレはイタリアのチームだから、シャンゼリゼでのパーティはないんですよね。チームはすぐ帰っちゃう。

ー 第3週に向けての抱負を、改めてお願いします。

逃げに乗ることですね。最後まで逃げきれる逃げに乗って、最初に目標に掲げたように、ステージ優勝争いに絡みたいですね。自分にとってあと3ステージしかチャンスは無いので、そこに全部をぶつけるしかないです。じゃないとツール・ド・フランスは終わってしまう。1年間待ちに待ったツールがもう終わってしまうので、残りのステージでしっかり納得できるように走りたいです。

フランスTVの取材も受けた。「元チームメイトのトマ・ヴォクレールに言いたいことは?」フランスTVの取材も受けた。「元チームメイトのトマ・ヴォクレールに言いたいことは?」 photo:Makoto.AYANO日本のファンに手渡されたプレゼントを面白がってセルフィー日本のファンに手渡されたプレゼントを面白がってセルフィー photo:Makoto.AYANO



photo&text:Makoto.AYANO in Bern,Switzerland.