ツール・ド・フランスの山岳王に与えられるマイヨアポワ。世界を代表するクライマーたちが赤い水玉ジャージ獲得を狙って山岳に挑む。ツール開幕を前に、ポイントシステムや注目選手をチェックしておこう。



ピレネーやアルプスの山岳ステージを舞台にマイヨアポワ争奪戦が繰り広げられるピレネーやアルプスの山岳ステージを舞台にマイヨアポワ争奪戦が繰り広げられる photo:Kei Tsuji


赤い水玉模様のマイヨブラン・ア・ポワ・ルージュ

マイヨアポワを着て走るロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)マイヨアポワを着て走るロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール) photo:Tim de Waeleツール・ド・フランス山岳最強の証、それがマイヨブラン・ア・ポワ・ルージュ(略してマイヨアポワ)。他の3賞ジャージが単色であるのに対して、マイヨアポワはホワイトジャージに赤い水玉を配した奇抜なデザイン。プロトンの中でも判別は容易だ。ジャージスポンサーを務めるのはフランスの大手スーパーチェーンのカルフール。

近年のツールの傾向として、カテゴリーの低い山岳での獲得ポイントが引き下げられている。例えば4級山岳25回先頭通過と、超級山岳1回先頭通過が同じポイント。つまり、マイヨアポワを狙うためには、こつこつと4級山岳をポイントを重ねるのではなく、難易度の高いカテゴリー山岳でポイントを稼がなければならない。

中級山岳ステージで逃げてポイントを加算するのではなく、アルプスやピレネーの難関山岳でポイントを量産する真のクライマーがマイヨアポワの候補に挙がる。なお、山頂フィニッシュ(第9、12、17、19ステージ)のポイントは通常の2倍。そのため総合上位の選手たちも必然的に山岳賞ランキングの上位に絡んでくる。



カテゴリー山岳のポイント配分
・超級山岳 25pts, 20pts, 16pts, 14pts, 12pts, 10pts, 8pts, 6pts, 4pts, 2pts
・1級山岳 10pts, 8pts, 6pts, 4pts, 2pts, 1pt
・2級山岳 5pts, 3pts, 2pts, 1pt
・3級山岳 2pts, 1pt
・4級山岳 1pt



総合上位陣が山岳賞も独占する?ピュアクライマーの活躍に期待

ジロで山岳賞に輝いたミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ)ジロで山岳賞に輝いたミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ) photo:Kei Tsuji2015年は総合優勝者クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)がマイヨジョーヌとマイヨアポワを同時に獲得。山岳賞2位には総合2位ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)が入り、マイヨアポワ狙いのクライマーたちにチャンスはなかった。山岳に強い=総合上位である場合が多く、2016年も再び総合上位陣が山岳賞ランキングの上位を占める可能性は高い。

ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) photo:Tim de Waeleチームスカイやモビスター、アスタナ、ティンコフにはトップクライマーたちが豊富に揃っているものの、彼らの最大の役割はエース(フルーム、キンタナ、アル、コンタドール)のアシストであり、マイヨアポワを狙った自由な動きは許されない。しかしジロ・デ・イタリアで山岳賞を獲得したミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ)がそうであったように、総合エースが失速orリタイアした場合、調子の良いアシストが活躍することも考えられる。

ダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、ディメンションデータ)ダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、ディメンションデータ) photo:Tim de Waeleホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)に代表される、タイムトライアルを含めた総合力でライバルに劣るクライマーたちは、目標を総合成績から山岳ステージでの勝利にスイッチし、その先にある山岳賞の獲得にフォーカスすることになるかもしれない。その場合はピエール・ロラン(フランス、キャノンデール)やダニエル・ナバーロ(スペイン、コフィディス)、ヤルリンソン・パンタノ(コロンビア、IAMサイクリング)、エドゥアルド・セプルベダ(アルゼンチン、フォルトゥネオ・ヴァイタルコンセプト)らが山岳賞の候補に挙がる。

2015年ツールでマイヨアポワを4日間着用し、今年のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネで2年連続山岳賞獲得を達成したダニエル・テクレハイマノ(エリトリア、ディメンションデータ)は直前のエリトリア選手権で二冠。チームには総合狙いの絶対的エースが存在しないため、序盤ステージから山岳ポイントを積極的に狙ってくるだろう。2015年はチームメイトのセルジュ・パウエルス(ベルギー)が最終的に山岳賞10位に入った。



ツール・ド・フランス2015山岳賞
1位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)              119pts
2位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)              108pts
3位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)           90pts
4位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ)                   82pts
5位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)            78pts
6位 ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)             74pts
7位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)           72pts
8位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)             64pts
9位 リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)           58pts
10位 セルジュ・パウエルス(ベルギー、MTNキュベカ)            55pts



歴代のマイヨアポワ受賞者
2015年 クリス・フルーム(イギリス)
2014年 ラファル・マイカ(ポーランド)
2013年 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
2012年 トマ・ヴォクレール(フランス)
2011年 サムエル・サンチェス(スペイン)
2010年 アントニー・シャルトー(フランス)
2009年 フランコ・ペッリツォッティ(イタリア)※ドーピング違反により失格
2008年 ベルンハート・コール(オーストリア)※ドーピング違反により失格
2007年 マウリシオ・ソレール(コロンビア)
2006年 ミカエル・ラスムッセン(デンマーク)
2005年 ミカエル・ラスムッセン(デンマーク)
2004年 リシャール・ヴィランク(フランス)
2003年 リシャール・ヴィランク(フランス)
2002年 ローラン・ジャラベール(フランス)
2001年 ローラン・ジャラベール(フランス)
2000年 サンティアゴ・ボテーロ(コロンビア)
1999年 リシャール・ヴィランク(フランス)
1998年 クリストフ・リネロ(フランス)
1997年 リシャール・ヴィランク(フランス)
1996年 リシャール・ヴィランク(フランス)
1995年 リシャール・ヴィランク(フランス)
1994年 リシャール・ヴィランク(フランス)
1993年 トニー・ロミンガー(スイス)
1992年 クラウディオ・キャプッチ(イタリア)
1991年 クラウディオ・キャプッチ(イタリア)
1990年 ティエリー・クラヴェロラ(フランス)

text:Kei Tsuji in Saint-Lo, France