4月20日、アルデンヌクラシックの2戦目にあたるフレーシュ・ワロンヌ(UCIワールドツアー)が開催される。最大勾配26%とも言われる激坂ユイの壁にフィニッシュするクライマー向きクラシックの見どころをチェックしておこう。



名物「ユイの壁」に至る196kmのアップダウンコース

フレーシュ・ワロンヌ2016フレーシュ・ワロンヌ2016 image:A.S.O.アルデンヌクラシックの一つに数えられ、毎年アムステル・ゴールドレースとリエージュ〜バストーニュ〜リエージュに挟まれた水曜日に開催されるフレーシュ・ワロンヌ。ツール・ド・フランスやリエージュと同じA.S.O.(アモリー・スポルト・アルガニザシオン)が主催するワンデーレースで、今年で開催80回目を迎える。

急勾配の「ユイの壁」を進むプロトン急勾配の「ユイの壁」を進むプロトン photo:Kei Tsujiレースの舞台となるのはベルギー南東部のワロン地域。「北のクラシック」の舞台である北西部のフランデレン地域ではフラマン語(オランダ語)が話されているが、このワロン地域ではフランス語が公用語として話されている。「フレーシュ」はフランス語で「矢」を意味しており、レース名は「ワロンを貫く矢」の意味だ。

1回目の「ユイの壁」に突入するプロトン1回目の「ユイの壁」に突入するプロトン photo:Kei Tsuji距離の短い上りが連続して登場するコースレイアウトはアルデンヌクラシックならでは。他のアルデンヌ2戦とは異なり毎年スタート地点が転々とするのが特徴で、第80回大会はリュクサンブール州のマルシュ=アン=ファメンヌをスタート。ワロン特有のアップダウンコースを北上し、59.5km地点で周回コースに突入する。

196kmコースの大半を占めるのが、このユイを起点とした大小2種類の周回コースだ。合計12箇所の登りが設定されており、2回目の「ユイの壁」を通過するとフィニッシュまで残り29km。登りと登りの間には横風区間もあり、フィニッシュまで一瞬の油断も許されないナーバスな展開となる。

昨年新たに導入された残り5.5km地点のコート・ド・シュラーブ(平均勾配8.1%)は今年も健在。勾配のあるコート・ド・シュラーブでセレクションがかかった状態で最後の「ユイの壁」に突入する。

長さ1300m、高低差121m、平均勾配9.3%の登りが「壁」と呼ばれる由縁は、最大勾配が26%(公称19%)に達する激坂ぶりにある。全長1300mの登りのうち、前半は比較的幅のある緩斜面。残り1kmアーチを通過し、ラスト800mで幹線道路から右に曲がって脇道に入ると「壁」がスタートする。

登りが進むにつれて勾配が増し、勝負が決まるのはラスト400mから始まる急勾配区間。コンスタントに20%オーバーを刻む「壁」で飛び出した選手が激坂ハンターの称号を手にする。



フレーシュ・ワロンヌ2016フレーシュ・ワロンヌ2016 image:A.S.O.
登場する12カ所の登り(登坂距離/平均勾配)
1 67.0km地点 Cote de Bellaire 1000m/6.3%
2 74.0km地点 Cote de Bohisseau 2400m/5.5%
3 87.0km地点 Cote de Solières 4300m/4%
4 101.0km地点 Mur de Huy(1回目) 1300m/9.6%
5 114.0km地点 Cote d'Ereffe 2100m/5%
6 133.0km地点 Cote de Bellaire 1000m/6.3%
7 140.0km地点 Cote de Bohisseau 2400m/5.5%
8 153.0km地点 Cote de Solières 4300m/4%
9 167.0km地点 Mur de Huy(2回目) 1300m/9.6%
10 180.0km地点 Cote d'Ereffe 2100m/5%
11 190.5km地点 Cote de Cherave 1300m/8.1%
12 196.0km地点 Mur de Huy(フィニッシュ) 1300m/9.6%



激坂ハンター集結 史上最多4度目の大会制覇を狙うバルベルデ

アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:Kei Tsujiアルデンヌ3連戦は、後半戦になればなるほど登りの難易度が増し、登坂力が問われるコースレイアウトとなる。つまりグランツールで総合争いに加わるようなクライマーにチャンスがあるのがフレーシュやリエージュであり、石畳系クラシックで活躍した比較的大柄なハンターまで優勝争いに加わるアムステルとは少し異なる。

ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) photo:Tim de Waele過去2年間ユイの王者として君臨しているのが、ジロ・デ・イタリア初出場のために例年と異なるプログラムを組み、アムステルを欠場したアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)だ。35歳のベテランは直前のブエルタ・ア・カスティーリャ・イ・レオンでステージ2勝を飾って総合優勝。今シーズンすでに5勝を飾っているバルベルデは2006年、2014年、2015年に続く自身4度目(歴代最多)の優勝を目指す。

エンリーコ・ガスパロット(イタリア、ワンティ・グループグベルト)エンリーコ・ガスパロット(イタリア、ワンティ・グループグベルト) photo:Tim de Waeleバルベルデをサポートするのはモビスターの強力なアシストたち。2013年大会の優勝者ダニエル・モレーノ(スペイン)や、同年3位のカルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア)、アムステル8位のジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア)、そして石畳系クラシックから連戦しているイマノル・エルビーティ(スペイン)らがユイ最終決戦までバルベルデの周りを固めるだろう。

サムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング)サムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング) photo:Tim de Waele2012年大会の優勝者で、昨年ツール・ド・フランスのユイを制したホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)はアムステルで落車。途中リタイアに終わったものの身体へのダメージはなく、軽量ボディを駆使した得意の激坂ダッシュで2度目の優勝を狙う。

「ユイの壁」を登る別府史之(トレック・セガフレード)「ユイの壁」を登る別府史之(トレック・セガフレード) photo:Kei Tsujiフレーシュと相性の良いスペインからはサムエル・サンチェス(BMCレーシング)やイゴール・アントン(ディメンションデータ)も出場予定だ。

苦いクラシックシーズンを経験しているエティックス・クイックステップは2014年2位のダニエル・マーティン(アイルランド)をエースに立てる。他にも昨年2位に入り、ブラバンツペイル8位&アムステル6位のジュリアン・アラフィリップ(フランス)や、ブラバンツペイル優勝のペトル・ヴァコッチ(チェコ)らが控えており、ベルギーチームの選手層は厚い。

過去に2度表彰台に上っているミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーンエッジ)や、2013年にコロンビア人史上最高位の2位に入ったセルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)らも激坂バトルに加わるはず。

アムステルを制したエンリーコ・ガスパロット(イタリア、ワンティ・グループグベルト)と、同大会2位のミカエル・ヴァルグレン(デンマーク、ティンコフ)も連戦出場。アムステルでの走りを見る限り、ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)やワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)、ヤン・バケランツ(ベルギー、AG2Rラモンディアール)、ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)の調子も良さそうだ。

アルデンヌ3連戦出場中の別府史之(トレック・セガフレード)は2年連続6度目のフレーシュ挑戦。チームはアルデンヌでコンスタントに成績を残すフランク・シュレク(ルクセンブルク)らを中心に戦うことが予想される。

フレーシュ・ワロンヌは4月20日(水)21時25分からJsports4にてライブ中継される。詳しくは番組ホームページまで。

text:Kei Tsuji