初日は初夏と思えるほどの陽射しと強風。2日目も朝から暴風雨のち晴れ。今年もシクロクロス東京は激しく変化する天候に翻弄された。しかし2日目のCX東京もスリル溢れる好レースに沸騰した。



吹きすさぶ風と雨のなか観戦する熱心な女性ファンたち。悪天候は思いのほか長引いた吹きすさぶ風と雨のなか観戦する熱心な女性ファンたち。悪天候は思いのほか長引いた photo:Makoto.AYANO
昨年は冷たい冬の雨。一昨年は大雪だった。シクロクロス東京は近年、過酷な悪天候に翻弄されてきた。そして今年も例外ではなかった。初日は気の早い春一番が吹き、気温は20度を超えるまでに上昇、ビールが飛ぶように売れた。

そして心配された2日目は朝から雨と強い風が吹き荒れた。天気予報で午前早めには回復するだろうと言われていた天候は昼近くまで荒れたまま。キッズレース、そしてエンデューロの参加者たちは降り続く雨と泥に苦しんだ。

嵐のようなお台場海浜公園嵐のようなお台場海浜公園 photo:Kei Tsuji / CX TOKYOキッズレースは雨と泥の中。CK2の白熱する2位争いキッズレースは雨と泥の中。CK2の白熱する2位争い photo:Kei Tsuji / CX TOKYO


シクロクロスといえば泥。林間のシングルトラックはぬかるみ、スリッピーになった。初心者デビューも多いこのレース。しかし気温が20度近くあり、寒くははなかったのが幸いで、キッズたちの本格的な(過酷な)シクロクロス入門としてこのうえない機会になったようだ。

1周回で行われたスポンサーレース1周回で行われたスポンサーレース photo:Kei Tsuji / CX TOKYO
メーンイベントの近づく午前11時前、空を覆っていた雲が早足に去り、瞬く間に青空にすり替わった。それとともに気温もぐんぐんと上昇し、前日に続いての夏日のような気候になった。2日連続の20度超えの、普通ではない天気だ。会場にいた人皆が、雨具を脱ぎ、Tシャツ姿に。

CL1スタートCL1スタート photo:Kei Tsuji / CX TOKYO2月と思えない暑さにビールが飛ぶように売れていた2月と思えない暑さにビールが飛ぶように売れていた photo:Makoto.AYANO


雨の間は観客もまばらで少なく心配されたが、エリートのスタート時間が近づくにつれ人が徐々に集まりだす。会場周辺はカフェや商業施設が密集している人気のエリア。そこから湧いてくるかのようにコース脇に詰めかける人、人。関係者の心配をよそに、スタート前に大観衆が出揃った。蓋を開けてみれば15,000人の観客動員数。2日合わせて21,000人という史上最高の数を叩きだした。

サンドエリアに飛び込む坂口聖香(パナソニックレディース)サンドエリアに飛び込む坂口聖香(パナソニックレディース) photo:Makoto.AYANO
そして沸騰したレース展開。女子レースの手に汗握る展開。新CX女王の坂口聖香初の全日本チャンピオンジャージに身を包んでの快走劇に会場は沸いた。

リードする竹之内悠と追うジェレミー・パワーズ。熱いバトルを見守る観客たちリードする竹之内悠と追うジェレミー・パワーズ。熱いバトルを見守る観客たち photo:Makoto.AYANO
ベン・ベルデン(ベルギー、W-cup)の背後に小坂光(宇都宮ブリッツェン シクロクロスチーム)が迫るベン・ベルデン(ベルギー、W-cup)の背後に小坂光(宇都宮ブリッツェン シクロクロスチーム)が迫る photo:Makoto.AYANO脚のタトゥーを魅せながら走るベン・ベルデン(ベルギー、W-cup)脚のタトゥーを魅せながら走るベン・ベルデン(ベルギー、W-cup) photo:Makoto.AYANO


そして男子エリートで観客の沸騰は最高潮に。天候の超回復とともにコースの状況は刻一刻と変化した。ぬかるんだ林間の泥は徐々に締まり、水分を含んで締まっていた砂は乾くとともにふかふかの状態に。それとともに「走りやすいライン」も変化し、それを見抜くのも選手たちの力量。観ていて圧倒されるほどのスピードとテクニック、パワーとタクティス、そして暑さへの適応力。すべての要素が必要なシクロクロスという競技におけるトップ選手たちのプロフェッショナルな走りに魅了された1時間となった。

小坂光(宇都宮ブリッツェン シクロクロスチーム)が竹之内悠とジェレミー・パワーズを抑え、ついに先頭に立つ小坂光(宇都宮ブリッツェン シクロクロスチーム)が竹之内悠とジェレミー・パワーズを抑え、ついに先頭に立つ photo:Makoto.AYANO
最終ラップの小坂光を応援する宇都宮ブリッツェン応援団。2人のとったラインの違いが勝敗を分けた最終ラップの小坂光を応援する宇都宮ブリッツェン応援団。2人のとったラインの違いが勝敗を分けた photo:Makoto.AYANO激戦を終えて勝利を喜ぶゴール直後のジェレミー・パワーズ(アメリカ、アスパイアレーシング)。激戦を終えて勝利を喜ぶゴール直後のジェレミー・パワーズ(アメリカ、アスパイアレーシング)。 photo:Makoto.AYANO


この日、JSPORTSはコース各所にカメラを設置してのオンデマンドによるエリートレースのライブ配信を行った。史上最高の観客動員数に加え、シクロクロス東京が大きなオーディエンスを獲得したターニングポイントとなったようだ。

イベントの仕掛け人、主催者である棈木(あべき)亮ニさんは今年で5回目の大会の成功に胸をなでおろす。

シクロクロス東京主催者の棈木亮ニさん(チャンピオンシステム代表)シクロクロス東京主催者の棈木亮ニさん(チャンピオンシステム代表) photo:Makoto.AYANO「天候に肝を冷やした2日間でした。初日、まずは強風にテントやバナーがとばされないように、と。見てくれの問題以上に安全上の理由です。2日目の朝は会場周辺は台風のような暴風雨で、キッズのレースは中止にしなければと思ったぐらいです(実際には風がおさまったことで実施できた)。昼まで雨と風の対策に追われました。疲れましたね(笑)。

スポンサーレースを走った棈木亮ニさん。自ら走って楽しめたというスポンサーレースを走った棈木亮ニさん。自ら走って楽しめたという photo:Makoto.AYANO初日の観客動員数が6,000人、2日目16,000人で合計21,000人は過去最高です。目標だった2万人をクリアしました。今までの過去最高は2年目大会の13,000人でしたが、それを大きく上回りました。初日は天気が良かったから、2日目はメインレースのエリート前に天候が回復してくれたからです。瞬間的にも7,000人を超える観客がいたようです。

今年はメディアの事前報道が多くて、告知が流れたことで一般の方が大会のことを知るチャンスが多かったようです。全国放送などでも紹介され、来年に向けてさらに良いことだと思っています。

エリートレースが面白かったことは大きいですね。自分が観ていても面白かった。女子もいいレースでしたし、男子の展開は息を呑むようなスペクタクルでした。海外のスター選手たちと競い合って日本人選手が勝ってしまうんじゃないかという展開は、まさに主催者冥利に尽きますね。

昨年から今年、大きな変化はJ SPORTSによるライブ配信でした。地上波ではなくオンデマンドのライブ配信という条件ではありますが、一般の人が離れていてもライブでレースを見れるというのは大きかった。イベントはメディアによる伝え方で変化します。主催側では見せ方、映されるカッコ良さにこだわってレースをつくりました。レース中にモニターで見ていましたが、ライブ配信はいい絵が撮れていましたね。編集無しで、そのままでも最高に面白い映像だと思いました。

イベントとして毎年「より良くしよう」と思っています。最終的にはホッとして満足です。コースについてはかなり好評で、難しすぎたかなと思う面はあるにせよ、良かったのではないかと思います」。



大盛況だったシクロクロス東京 2日間の会場風景から

都会の真っ只中のフィールドでの都市型シクロクロスとして稀有な存在のシクロクロス東京。観戦に訪れる人はサイクルファンのみならず、家族連れや通りすがりのショッピング客、お台場の浜での散歩やデートを楽しむ一般客も多い。それに対応すべく様々な趣向やサービスが凝らされている。目立ったシーンをピックアップして紹介しよう。

この日が引退レースとなるベン・ベルデンのサイン会も盛況この日が引退レースとなるベン・ベルデンのサイン会も盛況 photo:Makoto.AYANO飲食ブースは大盛況。関西からもタベルナ・エスキーナが出店した飲食ブースは大盛況。関西からもタベルナ・エスキーナが出店した photo:Makoto.AYANO


シクロクロス全日本チャンピオンの竹之内悠と女性レーサーで新発足したCXチーム「Toyo Frame」のお披露目だシクロクロス全日本チャンピオンの竹之内悠と女性レーサーで新発足したCXチーム「Toyo Frame」のお披露目だ photo:Makoto.AYANO
「手まきごはん」のマスコットキャラクター・ピノリも応援。中に中村龍太郎選手が入っていた時もあったとか「手まきごはん」のマスコットキャラクター・ピノリも応援。中に中村龍太郎選手が入っていた時もあったとか photo:Makoto.AYANO観戦に訪れた家族連れが、ローラー台でのアップシーンを物珍しげに見ていた観戦に訪れた家族連れが、ローラー台でのアップシーンを物珍しげに見ていた photo:Yuichiro.Hosoda


登場人物と記念写真が撮れる弱虫ペダルのボードも人気だった登場人物と記念写真が撮れる弱虫ペダルのボードも人気だった photo:Yuichiro.Hosodaフライオーバーをより良く見せるべく今年のコースは設定されたフライオーバーをより良く見せるべく今年のコースは設定された photo:Yuichiro.Hosoda


ラファはモバイルサイクルクラブでエスプレッソのサービスを展開。オリジナルTシャツも販売したラファはモバイルサイクルクラブでエスプレッソのサービスを展開。オリジナルTシャツも販売した photo:Yuichiro.Hosoda自転車で来場しても安心して楽しめるよう用意されたサイクルクローク(有人駐輪場)自転車で来場しても安心して楽しめるよう用意されたサイクルクローク(有人駐輪場) photo:Yuya.Yamamoto


シクロクロスバイクが試せる数少ない機会となった東京サンエスの試乗ブースシクロクロスバイクが試せる数少ない機会となった東京サンエスの試乗ブース photo:Yuichiro.Hosoda試乗コースが設けられ、各メーカーのシクロクロスバイクが試せた試乗コースが設けられ、各メーカーのシクロクロスバイクが試せた photo:Yuichiro.Hosoda




photo&text:Makoto.AYANO
photo:Kei.Tsuji, Yuichiro.Hosoda, Yuya.Yamamoto

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