12月6日、長野県飯山市で開催されたシクロクロス全日本選手権エリート男子は竹之内悠(ベランクラシック・エコイ)が勝利し、5連覇を達成した。後半40分からの小坂光と山本幸平との3人の激しいつばぜり合いは観る者を興奮させた。



男子エリート 好スタートを切った竹之内悠(ベランクラシック・エコイ)男子エリート 好スタートを切った竹之内悠(ベランクラシック・エコイ) photo:Kei Tsuji
スタート後すぐのキャンバーは大混雑スタート後すぐのキャンバーは大混雑 photo:Kei Tsuji舞台となったのは飯山市長峰運動公園。過去より信州クロスが開催されてきたお馴染みの会場で、ナイターで争われたJCX年齢別選手権の翌日の日曜、午後13時からエリート男子の決戦を迎えた。

1周目に先頭に立つ小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス)1周目に先頭に立つ小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス) photo:Kei Tsujiこの日までの週間天気予報は雨と雪の予報を繰り返した。気温は8度と高め。前夜から朝にかけて雨が降り、林間の路面は泥でひどくぬかるんだ。冬場にはXCスキー場として人気のゲレンデはグラウンド周囲の平坦路とアップダウンに富み、裏手の林にはシングルトラックのテクニカルセクションが設定された。コース監修をつとめた三船雅彦氏は「小手先のテクや偶然だけではチャンピオンになれない、欧州基準のCXコースに仕立てた」と言う。

1周目に独走を開始する小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス)1周目に独走を開始する小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス) photo:Kei Tsuji舗装の長い直線路でスタートするエリート男子の選手たち。95人の大集団の先頭を切った竹之内悠(ベランクラシック・エコイ)、小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス)、山本幸平(トレックファクトリーレーシング)の3強が後方を僅かに離し、順調なスタートを切る。目立った混乱や落車は無く、有力選手が前方に位置取りして芝区間に突っ込んでいく。

スイッチバックの連続する、MTBコースのようなシングルトラック区間を先頭で下るのは小坂。山本、竹之内と続く。このまま小坂のリードは後半にかけて続くことになる。周回数は8周に決定した。

小坂が竹之内と山本を離して先行。2周目後半には山本が竹之内を交わし、前に出る。走りにキレがない竹之内は山本との距離が開きがち。順調な走りで先行する小坂優勢で30分を経過する。「竹之内の連勝は4でストップしそうだ」と思われた。

40分経過、残り約20分。竹之内がペースを上げ、山本をリードしながら小坂との差を詰める。ぬかるんだキャンバー区間に手こずった小坂を一気に捉えると、3人のパックとなる。

小坂と山本を追って階段を上る竹之内悠(ベランクラシック・エコイ)小坂と山本を追って階段を上る竹之内悠(ベランクラシック・エコイ) photo:Kei Tsuji
残り2周でペースを上げる竹之内悠(ベランクラシック・エコイ)残り2周でペースを上げる竹之内悠(ベランクラシック・エコイ) photo:Kei Tsuji抜きつ抜かれつの激しい攻防を繰り広げる3人。残り2周、キャンバーでアタックした竹之内。それに続こうとする小坂が下った先の舗装路上でスリップダウンした。後方に続いていた山本もスピードを殺され、竹之内との差が一気に開く。

「攻めたラインで突っ込み、ミスを犯してしまった」と小坂。路面に打ちつけたバイクはカンティブレーキがホイールに干渉し、ピット区間までスピードが上がらないまま走らざるを得なかった。小坂が念願した初優勝への希望はここで絶たれた。山本は息を荒げて追走するが、竹之内の鮮やかな走りの前に差は広がる。

キャンバー後の舗装路で小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス)がスリップダウンキャンバー後の舗装路で小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス)がスリップダウン photo:Kei Tsuji
独走で最終周回に入った竹之内悠(ベランクラシック・エコイ)独走で最終周回に入った竹之内悠(ベランクラシック・エコイ) photo:Kei Tsujiペースを上げた竹之内は、山本との差を保ったまま最終ラップへ。山本は最終ラップに入ったばかりのぬかるみでミスし、その差はまた大きくなった。苦戦した前半を帳消しにする王者の走りで竹之内が独走した。

5連覇を表す指5本でフィニッシュに飛び込む竹之内悠(ベランクラシック・エコイ)5連覇を表す指5本でフィニッシュに飛び込む竹之内悠(ベランクラシック・エコイ) photo:Makoto.AYANO指5本で5連覇をアピールしながらゴールに飛び込んだ竹之内。前半の不調への不甲斐なさに、レースを降りることも頭をよぎったという。

「必死で、ついていくのに精一杯だったほど走れていなかった。でもこのレースは全日本。調子が悪かったなんて言う言い訳は通用しない。チャンスが有るとしたら後半かな、と思っていた」。

健闘を讃え合う竹之内悠(ベランクラシック・エコイ)と山本幸平(トレックファクトリーレーシング)健闘を讃え合う竹之内悠(ベランクラシック・エコイ)と山本幸平(トレックファクトリーレーシング) photo:Kei Tsuji「『4連覇してきたのに、何してるんや?、俺』と思っていたら、ふっと力が抜けたんです。そこから出力しだして、ちょっとしたきっかけでヒカルを捉えることができた。追いついてからは気持ちの勝負。最後は気持ちで押し切ったら勝てると思った。そうしたらヒカル君がミスした。気持ちで勝てたんだと思う。前半は抑えていたわけじゃないんです。走り続けるべきかさえ自問しました。頭のなかは『先週(野辺山シクロクロス)のほうが良かった』と思うようになって...。でも、『早く走れよ〜』と言うスタッフの気負いのなさに助けられました」。

苦戦して獲った全日本タイトル。レース直後のインタビューを「宿題終わり!」と締めくくった竹之内。その目線は常に欧州活動にある。今季前半戦は自身が言うほど好調すぎて、身体を酷使したために11月には脚の肉離れの故障を呼んでしまった。国内に戻ってからは故障が再発しないよう気にしながらの調整を続けたという。

「この1週間は調整するまもなく時間があっという間に過ぎました。野辺山の後、週明けに予想以上の疲労が溜まっていて、階段が上れないほど。ローラーで調整して、昨日、野辺山ぶりにバイクに乗って外を走ったんです」。

「この連勝は10まで続けたい」と竹之内は言う。「師匠」と形容する辻浦圭一の連勝記録が9だからだ。そして次の目標は年明け、1月末のシクロクロス世界選になる。「今年の世界選はベルギーのゾルダーです。ベルギーで活動して、ベルギーチームに所属する自分にとってはホームのようなレース。現地で応援してくれるサポーターも多いので力を発揮したい」。

男子エリート表彰台男子エリート表彰台 photo:Kei Tsuji


シクロクロス全日本選手権2015男子エリート リザルト
1位 竹之内悠(ベランクラシック・エコイ)      1h04’17”
2位 山本幸平(トレックファクトリーレーシング)   +26”
3位 小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム) +1’07”
4位 丸山厚(BOMA RACING)            +3’07”
5位 武井亨介(FORZA YONEX)           +3’54”
6位 濱由嵩(SPEEDVAGEN CYCLOCROSS TEAM) +3’58”
7位 門田基志(TEAM GIANT)            +4’12”
8位 兼子博昭(スワコレーシング)          +5’13”
9位 斎藤朋寛(RIDELIFE GIANT)          +5’28”
10位 中原義貴(弱虫ペダルシクロクロスチーム)   +5’50”

全リザルト

text:Makoto.AYANO
photo:kei.Tsuji