今年で27回目を迎えるツール・ド・おきなわ。シーズン最後のビッグレース、そして「ホビーレーサーの甲子園」の異名をとる、市民レース最大の祭典だ。熱帯のやんばる地方を舞台とした過酷な長距離ワンデーレースの熱い展開に期待しよう。

長い国内ロードレースシーズンを締めくくる、国内最長距離のワンデーレース

快晴の中、東海岸を南下するチャンピオンレースのメイン集団快晴の中、東海岸を南下するチャンピオンレースのメイン集団 photo:Hideaki.Takagi
沖縄県北部、通称やんばる地方を舞台に、11月7日(土)、8日(日)の2日間にわたって行われるツール・ド・おきなわ。「熱帯の花となれ、風となれ」をキャッチフレーズに、1日目は各種サイクリングが、2日目はロードレースが行われる。レース部門はUCI1.2クラスのチャンピオンレース(210km)を筆頭に、ジュニア国際140km、女子国際100kmという3つの国際レースが、そして市民レースは国内最長の210km、140km、100km、そして50kmという4つのカテゴリーレースが行われる。レース部門はまず最高峰の国際レース、チャンピオンレースから展望を紹介しよう。

6時45分、210kmのチャンピオンレースがスタートする6時45分、210kmのチャンピオンレースがスタートする photo:Hideaki.Takagiやんばるの登りでバトルを繰り広げるベンジャミン・プラデス(マトリックスパワータグ)と内間康平(ブリヂストン・アンカー)やんばるの登りでバトルを繰り広げるベンジャミン・プラデス(マトリックスパワータグ)と内間康平(ブリヂストン・アンカー) photo:Hideaki.TakagiUCI2.1クラスにカテゴライズされるチャンピオンレースには、今年は7つの海外チームと12の国内チームがエントリー。名護市内をスタートすると、プロトンは本部半島を回り北部西側海岸線を北上し、与那から普久川ダムへの上りを経て辺戸岬を回る。そしてふたたび与那から普久川ダムへ上って一路東側海岸線のアップダウンの連続を南下、大浦から羽地ダムへ抜けてゴールの名護市内へ戻る210kmコースだ。
今年もチャンピオンレースの優勝賞金は100万円。今年、その目録を手に笑うのはどの選手だろう?

チャンピオンレース出場19チームリスト
<日本チーム>
宇都宮ブリッツェン
チーム右京
シマノレーシング
ブリヂストンアンカーサイクリングチーム
マトリックス パワータグ
愛三工業レーシングチーム
那須ブラーゼン
鹿屋体育大学
キナンサイクリングチーム
レモネードベルマーレレーシングチーム
イナーメ信濃山形
チームオキナワ

<海外チーム>
ホンコンチャイナナショナルチーム(香港)
ベイビーダンプサイクリングチーム(オランダ)
チャイニーズタイペイナショナルチーム(台湾)
アバンティレーシングチーム(ニュージーランド)
チーム・ローゼ(ドイツ)
マカオサイクリングチーム(マカオ)
アクションサイクリングチーム(台湾)

コースには大きな山岳こそないものの、アップダウンが絶え間なく繰り返す後半のコースはまさにサバイバルレースにふさわしいタフなもの。例年集団は小さく削られ、最後は少人数での争いとなる。あるいは、展開次第では単独の逃げも決まるコースプロフィールだ。

後続を大きく引き離してゴールへと飛び込む増田成幸(宇都宮ブリッツェン)後続を大きく引き離してゴールへと飛び込む増田成幸(宇都宮ブリッツェン) photo:Hideaki.Takagiディフェンディングチャンピオンは宇都宮ブリッツェンの増田成幸。昨年のレースで増田は13名の先頭集団からラスト10kmの羽地ダムの登り過ぎの強い向かい風区間でアタックし、圧巻の独走劇で優勝した。先のジャパンカップでは脚に故障を抱えていた増田だが、復調に期待したい。ブリッツェンは大分でのJPT最終戦、おおいたいこいの道クリテリウムでレースを完全支配し、勝利を挙げた。今季の勝利はJPTでまだ3勝だけ、UCIレースは無勝というブリッツェンは、最後に勝利が欲しいはずだ。

ツール・ド・おきなわチャンピオンレースのタイトルと100万円を獲得した増田成幸(宇都宮ブリッツェン)ツール・ド・おきなわチャンピオンレースのタイトルと100万円を獲得した増田成幸(宇都宮ブリッツェン) photo:Hideaki.Takagi沖縄出身の内間康平がいるブリヂストンアンカーも意欲的だ。ツール・ド・シンカラでステージ優勝を挙げ、ジャパンカップでも山岳賞獲得の好調の走りを披露した初山翔は2年前のチャンピオン。台湾の超級ヒルクライムレース「KOMチャレンジ」で優勝したダミアン・モニエと、シーズン終盤に調子を上げてきている。

そして今季国内で群を抜く強さを発揮したチーム右京が本命的な存在だ。土井雪広とおきなわ優勝経験のある畑中勇介で少人数スプリントに持ち込みたいところ。マトリックス・パワータグはチーム5人のうち3人を外国人選手で登録している。昨年2位のホセ・ビセンテ・トリビオと熊野総合優勝のベンジャミン・プラデスは登りもスプリントも強いオールラウンダーで、本命視できる存在。

鹿屋体育大学は過去にUCIレース3勝しており、コンチネンタルチームに比肩する実力を持つ。
初出場のチームオキナワは、チームとしては出場権のない普久原 奨(群馬グリフィン)や中鶴友樹(TEAM KIDS)らを中心とした沖縄出身の強豪市民レーサーで結成されたチーム。

強豪と目される海外チームは、UCIアジアツアーランキング上位につけるアバンティレーシングチーム(ニュージーランド)だ。ツアー・オブ・ジャパンも走ったことで日本のレースでもお馴染み。ツール・ド・熊野でのプロローグ&第1ステージのニール・ヴァンデルプローグによる2勝、TOJでは富士山ステージでベンジャミン・ディボールが6位に、そしてチーム総合では3位になっている。

元シマノメモリーコープで走った選手が監督&GMをつとめるベイビーダンプ(オランダ)は一昨年はオランダ選抜として出場経験のあるチームが核となるようだ。ドイツのチーム・ローゼなど、欧州チームは若いメンバーでの参戦。その走りはほとんど情報がなく未知数だ。例年、寒い欧州から参戦のチームは熱帯の暑さとシーズン終了間際のコンディショニングの難しさに苦戦する。

市民210km 市民レースにこだわり、3度めの勝利を目指す高岡亮寛

市民210km 白石真悟(シマノドリンキング)やなるしまフレンド勢ら強豪勢が揃う市民210km 白石真悟(シマノドリンキング)やなるしまフレンド勢ら強豪勢が揃う photo:Hideaki.Takagi「市民レースの最高峰」「ホビーレーサーの甲子園」などと形容される市民レースこそがツール・ド・おきなわの主役と言っていいだろう。最長距離の市民210kmには、昨年2位だった高岡亮寛(イナーメ・信濃山形)が出場する。高岡は過去2007、2011年の2度優勝経験がある。

市民210km 1回目の普久川ダムを終え補給所に差し掛かるメイン集団市民210km 1回目の普久川ダムを終え補給所に差し掛かるメイン集団 photo:Hideaki.Takagi昨年、高岡は慶佐次のアップダウンでアタックしたヤン・インホン(香港)を追ってチームメイトの森本誠とともに抜け出しに成功。しかしゴールスプリントではヤンとの一騎打ちとなり、2位に終わった。優勝したヤンは、昨年の6月以降はプロ契約を一時的に失ったためアマとして走ったが、アジアトップレベルの実力を持つ26歳だった。現在は台湾のUCIコンチネンタルチーム、アタッキ・チームグストに所属、今年はツール・ド・熊野やジャパンカップなども走っている。

市民210km アタックしたヤン・インホン(香港)に追いつく高岡亮寛(イナーメ・信濃山形)。後方には森本誠(イナーメ・信濃山形)の姿市民210km アタックしたヤン・インホン(香港)に追いつく高岡亮寛(イナーメ・信濃山形)。後方には森本誠(イナーメ・信濃山形)の姿 photo:Hideaki.Takagi3回目の2位に終わった昨年のレースを振り返って「自分とは明らかにレベルが違い、勝てる相手ではなかった。市民210kmにもう一度勝ちたい」と強く願う高岡は、所属するイナーメ・信濃山形がチームとしてチャンピオンレースに出場するにもかかわらず、チームメイトの高橋誠とふたりで市民210km出場を選んだ。

過去には1993、1995、2001年の3回の市民200km優勝経験を持つ高山忠志の存在がある。サラリーマンレーサーとして市民レースでの勝利にこだわる高岡。この先の3勝目、そして前人未到の4勝目に繋げたい考えだ。

今年の市民210kmクラスの出場選手では高岡の実力が一歩抜けている感はあるが、ジャパンカップのオープンレースを制した清宮洋幸(Champion System)や、昨年4位の高橋義博(チームCB)、小畑郁(なるしまフレンド)、白石真悟(シマノドリンキング)、岩島啓太(エイジサイクル)など、おきなわを知り尽くしたベテラン勢の闘いかた次第で面白くなるだろう。

市民140km、100km、そして50kmも激しく・熱いレースが展開される。いずれのクラスも年間を通して鍛錬を積み、入念に準備してこなければ勝利に絡むことはできない。どのクラスにもそれぞれのドラマがある。

今年もシクロワイアードはモト随行撮影でフルカバーレポート

シクロワイアードでは今年、チャンピオンレース、そして市民レース各クラスそれぞれでオートバイ随行撮影を行います。撮影&レポートを担当するのはツール・ド・フランスなどのフォトレポートでもお馴染みのシクロワイアード編集長・綾野 真、そしてJプロツアーオフィシャルフォトグラファーなど国内レース報道の第一人者である高木秀彰のふたり。熱戦の模様を万全の取材体制によりフルカバーしてお届けします。


text:Makoto.AYANO
photo:Hideaki.Takagi,So.Isobe,
取材協力:森 兵次ツール・ド・おきなわ実行委員長