9月6日から13日までの8日間にわたって、イギリスを舞台にツアー・オブ・ブリテン(UCI2.HC)が開催される。9つのUCIワールドチームが揃い、カヴェンディッシュやウィギンズ、グライペル、フィニー、ヴィヴィアーニらに注目が集まるイギリス最大のステージレースの見どころをチェックしておこう。



アップダウンコースが連続 最終日はロンドン中心部の周回コース

ツアー・オブ・ブリテン2015ツアー・オブ・ブリテン2015 image:www.tourofbritain.co.ukツアー・オブ・ブリテンは1945年に第1回大会が開催されたイギリス最古ならびに最大のステージレース。1999年を最後に一旦休止したものの2004年に復活。長年5ステージで争われていたが、2008年から8ステージに拡大して現在に至る。

ツアー・オブ・ブリテン2015第5ステージツアー・オブ・ブリテン2015第5ステージ image:www.tourofbritain.co.uk2015年大会はウェールズのアングルシー島で開幕。ウェールズからイングランド、スコットランドまで脚を伸ばし、首都ロンドンで最終日を迎える。

イギリスの田園風景の中を走るイギリスの田園風景の中を走る photo:www.tourofbritain.co.ukレースディレクターを務めるミック・ベネット氏は「レースのトレードマークになりつつあるアグレッシブで躍動感あるレースを演出する8ステージ。イギリスらしいタフな地形を最大限利用した同国最大のレースに相応しいコースを用意した」と胸を張る。

国土の最高地点が標高1,343m(スコットランドのベン・ネビス山)というイギリスにあって、標高の高い難関山岳は登場しないが、その一方でアップダウンを繰り返す丘陵コースが連日のように続く。平坦ステージにカウントされているステージでも獲得標高差は2,500〜3,000mあり、単純な集団スプリント向きのステージは少ない。

1チーム6名という人数の少なさから、スプリンターチームのコントロールを抜け出して大逃げが決まる可能性も高いと言える。同様に、総合争いも混沌としたものになるだろう。

総合争いが過熱するのは第5ステージの1級山岳ハートサイド山頂フィニッシュ。標高570mの頂上に向かって平均勾配5.3%の登りが7.5kmにわたって続く。ベネット氏が「近年のツアー・オブ・ブリテンの中で最も標高が高く、最もタフな山頂フィニッシュ」と太鼓判を押す登りで総合争いは決着する¥。

最終日はロンドンの中心部を規制して行われるクリテリウム的な平坦レースで、6.2km周回を14周する86.8km。ピカデリーサーカスやトラファルガースクエア、ホワイトホールを経てリージェントストリートで8日間の戦いが締めくくられる。



ツアー・オブ・ブリテン2015ステージリスト(距離/獲得標高差)
9月6日(日)第1ステージ ボーマリス〜レクサム 177.7km/3,164m
9月7日(月)第2ステージ クリザーロー〜コルネ 159.3km/2,800m
9月8日(火)第3ステージ コッカーマス〜フロアーズキャッスル 216km/2,523m
9月9日(水)第4ステージ エディンバラ〜ブライス 217.4km/2,462m
9月10日(木)第5ステージ プルードホー〜ハートサイド 166.2km/2,838m
9月11日(金)第6ステージ ストークオントレント〜ノッティンガム 192.8km/3,453m
9月12日(土)第7ステージ フェイクナム〜イプスウィッチ 227.4km/1,717m
9月13日(日)第8ステージ ロンドン〜ロンドン 86.8km/725m



カヴェンディッシュやグライペルを中心にしたスプリントに注目

マーク・レンショー(オーストラリア)とマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)マーク・レンショー(オーストラリア)とマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsuji2015年大会には9つのUCIワールドチームが出場。キャノンデール・ガーミン、エティックス・クイックステップ、チームスカイ、IAMサイクリング、BMCレーシング、ロットNLユンボ、モビスター、ティンコフ・サクソ、ロット・ソウダルに、国内外のUCIプロコンチネンタルとUCIコンチネンタルチームを加えた合計20チームがスタートラインに並ぶ。

2010年にステージ3勝を飾っているアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)2010年にステージ3勝を飾っているアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) photo:Kei Tsuji地元イギリスの期待を集めるのはステージ通算10勝を飾っているマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)だ。カヴェンディッシュは1年前にステージ優勝を飾ったマーク・レンショー(オーストラリア)やゼネク・スティバル(チェコ)を従えての出場。2年ぶりのステージ優勝を目指す。シーズン初戦のツール・ド・サンルイスで2度カヴェンディッシュをスプリントで下し、2016年にエティックス・クイックステップ入りするフェルナンド・ガビリア(コロンビア)との初タッグにも注目だ。

世界選手権に向けてイギリスで乗り込むテイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシング)世界選手権に向けてイギリスで乗り込むテイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシング) photo:Kei Tsujiカヴェンディッシュ最大の対抗馬は、ツールでのステージ4勝が記憶に新しいアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)。ステージ3勝を飾った2010年大会以来の出場となるグライペルは、直前のヴァンッテンフォール・サイクラシックスで優勝するなど好調をキープしている。

一際大きな声援を受けたブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームウィギンズ)一際大きな声援を受けたブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームウィギンズ) photo:Kei Tsujiカヴとグライペルという二強に割って入ると予想されるのがエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)やテイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシング)、フアンホセ・ロバト(スペイン、モビスター)ら。エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー)とゲラルド・チオレック(ドイツ)、タイラー・ファラー(アメリカ)を揃えるMTNキュベカも強力だ。

チームスカイチームスカイ photo:Kei Tsuji2014年に総合優勝を飾ったディフェンディングチャンピオンのディラン・ファンバールレ(オランダ、キャノンデール・ガーミン)はゼッケン1を付けての出場。

総合争いはロベルト・キセロフスキー(クロアチア、ティンコフ・サクソ)やワウト・ポエルス(オランダ、チームスカイ)、ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)、セルジュ・パウエルス(ベルギー、MTNキュベカ)といったクライマーたちを中心に争われるはず。

登坂力ではゴルカ・イサギーレ(スペイン)やベナト・インチャウスティ(スペイン)、イゴール・アントン(スペイン)を揃えるモビスターが大会ナンバーワン。元アワーレコード保持者のアレックス・ダウセット(イギリス)がモビスターのエースナンバーを付ける。

6月に54.526kmのアワーレコードを樹立したブラドレー・ウィギンズ(イギリス)は、自身が立ち上げたチームウィギンズを率いての出場。リオ五輪トラックレースに向けてトレーニングを続けるウィギンズは「トラックレースに合わせて1年前よりも体重を増やしており、総合は考えていない」と宣言。若手トラックレーサーとともにステージ優勝を目指す。

イギリスナショナルチームからは2016年チームスカイ入りが決まっているタオ・ゲオゲガンハート(イギリス)とアレックス・ピータース(イギリス)、そして2014年ツアー・オブ・ジャパン山岳賞&ヤングライダー賞ヒュー・カーシー(イギリス)ら、イギリス期待の若手が出場する。

text&photo:Kei Tsuji in Llandudno, United Kingdom