開幕を3週間後に控えたツール・ド・フランスの前哨戦として注目を集めるクリテリウム・ドゥ・ドーフィネが6月7日に開幕。別府史之(トレックファクトリーレーシング)も出場するフレンチアルプスを舞台にした8日間のステージレースの見どころをチェックしておきましょう。



後半に登場する4連続山頂フィニッシュが総合優勝者を決める

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2015クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2015 image:A.S.O.一般的に「ドーフィネ」として呼ばれるクリテリウム・ドゥ・ドーフィネは、2010年からツールと同じA.S.O.(アモリー・スポーツ・オルガニザシオン)が主催している8日間のステージレース。「クリテリウム」の名前がついているものの、レース形式はクリテリウムではない。

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2015第7ステージクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2015第7ステージ image:A.S.O.1947年に第1回大会が開催され、長年地元新聞のドーフィネ・リベレ社によって運営されてきた。その名の通りレースの舞台はフランス南東部のドーフィネ地方(現在のイゼール県、ドローム県、オート=アルプ県)で、「ミニ・ツール」と形容されるほど内容の濃いステージレースだ。

何しろ2012年と2013年はこのドーフィネの総合優勝者がツールの総合優勝に輝いており、ツール本戦に向けた最高のリハーサルの場となる。ツールの前哨戦と呼ばれるだけに、オールラウンダーたちの脚試しに最適な山岳ステージが用意されている。

2015年大会はアルプスの山あいの街、オート=アルプ県のユジーヌで開幕。1992年の冬季オリンピック開催地であるアルベールヴィルまでの132kmコースが用意されている。序盤の2ステージはスプリンターもしくは逃げ切りを狙うアタッカー向きのレイアウト。久々にプロローグや個人タイムトライアルは設定されず、1980年以来の登場となるチームタイムトライアルが第3ステージで登場する。

再びスプリンターにチャンスが回ってくる今大会最長228kmの第4ステージを挟んで、ツール・ド・フランス第17ステージと全く同じコースで行われる第5ステージから最終日まで山頂フィニッシュが4つ連続。第5ステージの2級山岳プラルー(6.2km/6.5%)、第6ステージの3級山岳ヴィラール=ド=ラン(2.2km/6.2%)、第7ステージの1級山岳サンジェルヴェ=モンブラン(7km/7.7%)、第8ステージの1級山岳モダンヴァルフレジュス(8.4km/5.7%)が総合争いを決定づける。

155kmコースに5つの1級山岳が詰め込まれた第7ステージが今大会のクイーンステージ(最難関ステージ)であり、最後の1級山岳サンジェルヴェ=モンブランの直前には平均勾配が11.2%に達する長さ2.7kmの1級山岳アメランズ峠が登場。クライマーたちが総合優勝めがけてアタックを繰り返すだろう。



クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2015ステージリスト
6月7日(日)第1ステージ ユジーヌ〜アルベールヴィル 132km
6月8日(月)第2ステージ ル・ブルジェ=デュ=ラック〜ヴィラール=レ=ドンプ 173km
6月9日(火)第3ステージ ロアンヌ〜モンタニー 24.5km(チームTT)
6月10日(水)第4ステージ アネロン〜シストロン 228km
6月11日(木)第5ステージ ディーニュ=レ=バン〜プラルー 161km
6月12日(金)第6ステージ サンボネ=アン=シャンソール〜ヴィラール=ド=ラン 183km
6月13日(土)第7ステージ モンメリアン〜サンジェルヴェ=モンブラン 155km
6月14日(日)第8ステージ サンジェルヴェ=レ=バン〜モダンヴァルフレジュス 156.5km



ツールを前にフルームとニーバリが直接対決 別府は地元を走る

クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:http:www.tourderomandie.chジロ・デ・イタリアを走り終えたばかりのアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)や、コロンビアで調整中のナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)は欠場するものの、ドーフィネには7月のマイヨジョーヌを狙うオールラウンダーが集結する。

ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Tim de Waele中でも注目はクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)とヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)の2人だ。2013年ツール覇者のフルームと2014年ツール覇者ニーバリが、ツール本線を前にこのドーフィネで火花を散らす。ともにツールに向けた長期トレーニングキャンプを終えての出場であり、その仕上がり具合に注目が集まる。

アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:Kei Tsuji個人タイムトライアルが省略されたことはアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)やホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)にとっては朗報だ。アルデンヌ・クラシックで活躍した35歳と36歳が1ヶ月半ぶりにレースに出場する。現UCIワールドツアーリーダーのバルベルデは2008年と2009年に総合優勝しており、ツールでは未だ手にしたことがない総合表彰台を狙う。

別府史之(トレックファクトリーレーシング)別府史之(トレックファクトリーレーシング) photo:Kei Tsuji2014年大会でコンタドールらを退けて総合優勝を飾ったのはアンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール・ガーミン)。同じくアメリカ出身のティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)とともに総合上位に絡んでくるだろう。イギリスのイェーツ兄弟(オリカ・グリーンエッジ)もダークホースとして注目の存在。アダム・イェーツは2014年ツアー・オブ・ターキーで総合優勝し、ドーフィネで総合6位。サイモン・イェーツは今年のツール・ド・ロマンディで総合6位に入っている。

地元フランス勢としてはロメン・バルデ(AG2Rラモンディアール)やピエール・ロラン(ユーロップカー)、そして22歳の新鋭ジュリアン・アラフィリップ(エティックス・クイックステップ)らに期待がかかる。

前半の平坦ステージではナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)やサーシャ・モードロ(イタリア、ランプレ・メリダ)、タイラー・ファラーとエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(MTNキュベカ)らが集団スプリントで先頭を争うはずだ。

ジロ・デ・イタリアを完走したばかりの別府史之(トレックファクトリーレーシング)もドーフィネのスタートラインに並ぶ。「今まで出場したグランツールの中で一番疲れていない」という別府にとってドーフィネは地元レース。住んでいる地域のすぐそばを通過するだけにモチベーションは高いはずだ。

Text:Kei Tsuji