「クラシックハンター」の名を欲しいままにしたヨハン・ムセーウ。彼がプロデュースしたバイクがついに日本上陸! カーボンの3倍の強度、10倍の振動吸収性を持つというフラックスファイバーを用いたそのフレームの実力は?

ムセーウMF-3ムセーウMF-3 (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp

素晴らしい振動吸収性



「フランドルのライオン」と呼ばれたムセーウのロゴ。ダウンチューブは50%フラックスファイバー、50%HTカーボンファイバーだ「フランドルのライオン」と呼ばれたムセーウのロゴ。ダウンチューブは50%フラックスファイバー、50%HTカーボンファイバーだ 1990年代から2000年代始めにかけて、ロンド・ファン・フラーンデレンやパリ~ルーベ、世界選を次々と制し、「クラシックハンター」の名を欲しいままにしたベルギー・フランドル地方の英雄ヨハン・ムセーウ。彼が引退後、自らの名を冠して興したブランドが、ここに紹介する「ムセーウ」だ。

チューブの接合はラグ方式だ。もちろん、ラグもカーボンでできているチューブの接合はラグ方式だ。もちろん、ラグもカーボンでできている ムセーウのカーボンフレームの特長は、亜麻の繊維から作られる「フラックスファイバー」を用いているということ。フラックスファイバーは自動車産業では良く使用されるが、自転車にはこれまであまり使われてこなかった。

カーボンの3倍の強度、10倍の振動吸収性を持つというフラックスファイバーに注目したのは、いかにもヨハン・ムセーウらしい。というのも、彼は現役時代、バイクの強度と振動吸収性にはとてもこだわってきた選手だったからだ。

ムセウが現役時代に乗ったバイクメーカーは、彼の厳しい要求を満たすためにスペシャルバイクを数多く作ってきた。どれも彼の強力なペダリングパワーに耐え、しかもパヴェ(石畳)を走っても振動吸収性が良いという線を狙ったものだった。ロンド・ファン・フラーンデレンとパリ~ルーベでの優勝を人生最大の目標に置いてきたムセーウにとって、バイクの強度と振動吸収性は、どちらも犠牲にできるファクターではなかったのだ。

さて、このユニークなフラックスファイバーを用いたバイクを、インプレライダーの三上と佐藤はどう評価したのだろうか? さっそくインプレッションをお届けしよう。
ウィッシュボーン(シートステー)は65%フラックスファイバー、35%HTカーボンファイバーだ。振動吸収性の要となる部分で、フラックスファイバーを多めに使っているウィッシュボーン(シートステー)は65%フラックスファイバー、35%HTカーボンファイバーだ。振動吸収性の要となる部分で、フラックスファイバーを多めに使っている


「剛性が高いのに振動を吸収してくれる不思議なバイク」


三上和志(サイクルハウスMIKAMI)


「剛性が高いのに振動を吸収してくれる不思議なバイク」(三上和志)「剛性が高いのに振動を吸収してくれる不思議なバイク」(三上和志) 剛性感は比較的高めだ。ペダルへの大入力も、しっかりと受け止めてくれる。不思議なのは、振動吸収性も高いということ。通常、高剛性のバイクは振動吸収性を多少犠牲にしているものだが、このムセーウ・MF-3は振動吸収性も並み居るライバルの中でトップレベルにある。伊達にフラックスファイバーを使ってはいない。

ハンドリングもとても良い。タイトなコーナーをハイスピードで曲がるような場面でも、ライダーに何ら緊張感を強いることなく見事にクリアしてくれるのだ。振動吸収性の高さからくる路面追従性の良さにより、少々荒れた路面でもバイクがまったく跳ねないから、このような安定性が得られるのだろう。

加速感も文句なし! まるで背中を押されているかのような伸びの良さを見せる。これも、フラックスファイバーだからこそ出せる乗り味なのだろう。

好みの問題だが、カラーリングはちょっと素っ気ない。まあ、この素っ気なさも、ムセーウらしい部分と言ったところか。(編集部注:日本入荷モデルのカラーリングは変更になった)。

とにかく、この剛性感の高さと相反する振動吸収性の良さには、誰もが度肝を抜かれるはずだ。グランフォンドのような長距離サイクリングなどで使用するには、最高のバイクだと言うことができる。スキルのない初心者が乗るのにも最適。バイクの特性が、技量の未熟さをカバーしてくれるだろう。


「ロングライドで使用するのに最高の剛性バランス」


佐藤正一(なるしまフレンド)

とても乗り心地が良いバイクだ。「乗り心地が良い」というと、「柔らかい」という印象を持たれるかもしれないが、さにあらず。ペダルに掛けられた踏力はしっかりと推進力へと変換してくれるのに、荒れた路面でもバイクが暴れることなく、振動吸収性がとても良いということだ。これがフラックスファイバーの乗り味なのだろう。

「ロングライドで使用するのに最高の剛性バランス」(佐藤正一)「ロングライドで使用するのに最高の剛性バランス」(佐藤正一) ハンドリングは弱アンダーな印象を持った。これは振動吸収性の高さからくるものなのだろう。もちろん弱アンダーであるから、極めてコントローラブル。慣れてしまえば非常に扱いやすいハンドリングだ。

ブレーキングのフィーリングも一種独特だった。まるでABSでも付いているかのごとく、スーッと止まってくれるのである。使用するブレーキとの相性もあるだろうが、このフィーリングはちょっとクセになる楽しさだ。

コーナリングもとても良い。振動が手に伝わってこないので、荒れた路面でも安定して曲がることができるのである。加速感も脚にこない不思議な感覚で、初心者が使うのにもオススメ。

このバイクが生きるのは、何といってもロングライドだろう。驚くべき振動吸収性と、それに相反する剛性感により、長く走っても疲労感は最小限に抑えられるはず。さすが最強のチャンピオンがプロデュースしたバイクだけのことはある。「ムセーウ」は今年、最も注目すべきブランドのひとつになること間違いない!

ムセーウ MF-3  日本入荷カラームセーウ MF-3 日本入荷カラー photo:museeuwbikes

スペック

フレーム Flax fiber+ハイモジュールカーボン (メイン3本チューブ) 50%/50%
(カーボンとflaxを交互に7階層に積み上げ) ラグ=100%カーボン
フォーク  Flax fiber +ハイモジュールカーボン 42%/58% 401g
ヘッドセット  ムセウオリジナル
リアディレイラー カンパ レコード
フロントディレイラー  カンパ レコード
ブレーキ カンパ レコード
クランク カンパ レコード 172.5mm コンパクト
カセットスプロケット カンパ レコード
ホイール ムセウ MF-25ホイールセット F= 20H 432g X R=28H 603g Flax+カーボン( 上代 357,000円)
タイヤ VREDESTEIN FORTEZA PRO TRI-COMP
ハンドルバー SX FORCE 440mm (C-C)
ステム SX FORCE 120mm
バーテープ ムセウ オリジナル 上代1890円
サドル フィジーク アリオネ
シートポスト ITM(モデル不明
サイズ XS/S/M/ML 4サイズ
カラー ホワイト/レッド
重量 1240g(ML)
希望小売価格(税込み) 525000円(フレーム/ヘッドセット/シートポスト)
上記 試乗車の内容。但し販売はフレームセットのみ。
※入荷予定は4月上旬。カラーは写真のものに変更になった。


インプレライダーのプロフィール


三上和志(サイクルハウスMIKAMI)
埼玉県飯能市にある「サイクルハウスMIKAMI」店主。MTBクロスカントリー全日本シリーズ大会で活躍した経験を生かし、MTBに関してはハード・ソフトともに造詣が深い。トレーニングの一環としてロードバイクにも乗っており、使用目的に合った車種の選択や適正サイズに関するアドバイスなど、特に実走派のライダーに定評が高い。

サイクルハウスMIKAMI
佐藤正一(なるしまフレンド)
東京・原宿にあるロードバイク系プロショップ「なるしまフレンド原宿店」店員。身長170cm、体重62kg。日本一のロードバイク販売量を誇るショップの店員だけに、その情報量の豊富さは右に出る者がいない。実業団チーム「なるしまフレンド」のレーサーとしても活躍しており、2008年は実業団石川大会BR-3で3位に食い込む好成績を収めている。

なるしまフレンド


edit:仲沢 隆
photo:綾野 真

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