2014/11/16(日) - 16:40
日本のトップシクロクロス選手たちの愛車を紹介する第2弾。茨城シクロクロス、東北シクロクロス、スターライト幕張で取材した8選手の愛車8台のCXレース機材のコダワリを紹介する。(前編はこちら)
小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)
ミヤタ Elevation CX プロトタイプ
小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)とミヤタ Elevation CX プロトタイプ (c)MakotoAYANO
ジャパンカップシクロクロスのエキシビジョンレースとAJOCCのC1クラスを制した小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)は、ミヤタの新型バイク、Elevation CXを駆る。その名前から想像できるとおり、同社の誇るクロモリのハンドメイドフレームだ。本来はチーム的にはメリダのバイクに乗りたいところだが、同社のトップモデルが日本への輸入が無いため、ミヤタサイクルが製作に踏み切ったのだと言う。
どこか懐かしい感じのするミヤタのヘッドバッヂが光る (c)MakotoAYANO
三角形状につぶしの入ったコロンバス製FORCELITE Nbチューブを採用 (c)MakotoAYANO
コロンバス製FORCELITE Nbチューブを使用していることがわかるギャランティシール (c)MakotoAYANO
美しいフィレット溶接+最小限のラグワークが光る (c)MakotoAYANO
フレームは、驚異的軽さを誇るスチールロードフレームの名品”Elevation Extreme”と同じ、S.S.T.B.ニオビウム鋼を使用したオリジナルのコロンバス製“FORCELITE Nb”チューブを採用し、軽さと振動吸収性を兼ね備えたバイクに仕上がっているという。東北の工場で熟練の職人が手作りするこのフレーム。小坂の希望でジオメトリーはシート角が寝かされ、後ろ荷重で踏み込むペダリングが可能な味付けとしてあるという。これは欧州遠征の際に身につけた乗り方だという。
小坂「ジオメトリーがオーダーできることもメリットなので、歓迎でした。僕はフレームサイズは小さめを選ぶんですが、そうするとシートアングルが立ってくる。そこを寝かし気味に造っていただいたのがポイントです。クイックなハンドリングを出せるようにしました。詰まったフロントセンターのためコーナーでシューズつま先がFタイヤに触れるけど、好みのハンドリング性を優先しました。カーボンより少し重量はあるが、乗り味の面で気に入っています。安定した乗り心地で、カーボンより突き上げが少ないですね」。
シートピン周りを利用してケーブルストッパーを取り付けている (c)MakotoAYANO
カンティを採用するリアビュー ロードブレーキも取り付けられるブリッヂを使用している (c)MakotoAYANO
写真のモデルはブリッツェンの赤にペイントされたDi2モデルだが、もう一台はミヤタのイメージカラーであるブルーのノーマルシフトモデルを用意し、コースに合わせて使い分ける。ディスクブレーキは使用せず、いずれもカンティ仕様だ。小坂の駆るこのモデルはまだプロトタイプで、細部のリファインを経て間もなく一般発売が開始されるという。
丸山厚(BOMAレーシング)
BOMA L'EPICE
丸山厚(BOMAレーシング)と愛車のBOMA レピス (c)MakotoAYANO
カーボンブレードスポークを持つBOMAオリジナルのカーボンホイールを使用する (c)MakotoAYANO
78系デュラエースのクランクに46×42Tのクロスレシオをセット (c)MakotoAYANO
今季からBOMAで走る丸山厚。シーズン半ばでチームを変わったのは、よりシクロクロスに集中する環境を作るためだった。スムーズなライディングとテクニックの光る丸山が駆るのはジャパンブランドのBOMAのカーボンCXバイク、L'EPICE(エピス)。特徴的なのはフロントが46×42Tのクロスレシオになっていること。これは平坦中心のジャパンカップクロスのセッティングだ。ホイールにもカーボンブレードスポークを持つBOMAオリジナルのカーボンホイールを使用する。丸山は言う。「ホイールは見た目が特異ですが剛性もいいし、回転がいいような気がしますね」。
補助レバーを付けたWブレーキで未知のコースへの対応力を高めている (c)MakotoAYANO
Di2バッテリーは泥の影響を受けないこの位置に固定するのがユニーク (c)MakotoAYANO
今季のこだわりは補助ブレーキを装備したWブレーキ仕様になっていること。「今年は全国のJCXシリーズに出場するため、知らないコースがあるから。ブレーキがマルチポジションで掛けることができることを重視しています。必要に応じて、例えば急な下りなどで使います。これは以前世界選手権に出た時もサブブレーキがあったほうがいいことがあったからです」。
前田公平
リッチーSwissCross
前田公平の駆るリッチーSwissCross (c)MakotoAYANO
TIG溶接でビルドアップされたクロモリフレーム (c)MakotoAYANO
モートップ製のカラーパーツ群が前田のトレードマークだ (c)MakotoAYANO
シーズン前半までスコットに所属した前田公平。CXシーズンインとともにフリーとなり、バイクをリッチーSwissCrossにスイッチした。スイスクロスは息の長いモデルで超定番的存在のクロモリモデル。チュービングにリッチーロジックⅡトリプルバテッドチューブを使用し、リッチーお得意のTIG溶接によってハンドビルドされる。ヘッドは1-1/8インテグラルを採用。フレーム&フォークのカタログ重量は2.35kg(550mm)だ。
「クロモリチューブのしなやかさはカーボンよりも身体への負担が少ない気がしますね。重量的にはこのセットアップで車重8.3kgほどと、重量面ではカーボンバイクより少し重くはなるけど、そのハンデなく進む気はしますね」と前田。スペアバイクはほぼ同じ仕様でもう1台用意し、そちらはフロントシングル仕様で42Tをセット。後日、2台ともシングル化した。
もう一台のシングル化したバイクにはチェーン落ちを防ぐストッパー小物が取り付けられる (c)MakotoAYANO
タイオガ製スパイダーサドルの新型「ストレイタム」を使用する (c)MakotoAYANO
FMB製のチューブラーには「ポートランドバイシクルスタジオ」とレターが入る (c)MakotoAYANO
ケーブルは上回し。カタカナのネームシールがユニークだ (c)MakotoAYANO
ステムやピラーなど各所で光るこだわりのパーツはモートップ製のカラーパーツ群。これは昨シーズンから使用しているものをそのまま使い回している。また、前田のトレードマークというべきタイオガ製スパイダーサドル「ストレイタム」は今季の新製品。クッション材がなくハンモック状のベースによってクッションを生み出している。「乗り心地が良くて、他の普通のサドルと変わらないクッション性があります。お気に入りで手放せません」。
ブレーキはTRPのカンティ。ホイールはシマノC35だが、届き次第インダストリー9製のホイールを使用する予定だという。タイヤはFMB製のチューブラー。「ポートランドバイシクルスタジオ」とレターが入っているのは野辺山CXで来日したモリー・キャメロンから仕入れたタイヤである証とか。
辻浦圭一
ワンバイエス JFF #801
辻浦圭一と自身がプロデュースをつとめたワンバイエス JFF #801 (c)MakotoAYANO
ヘッドチューブは極太でハンドリングに安定感を生み出す (c)MakotoAYANO
シート部のムダのない美しい仕上げに注目だ (c)MakotoAYANO
この企画の締めは、2003年から2010年まで全日本選手権シクロクロスで9連覇を成し遂げた近代日本のレジェンド、辻浦圭一に登場願った。彼が開発をつとめたONE BY ESU(ワンバイエス)のCXバイク JFF #801が、東京サンエスから11月にリリースされた。
「JFF」とはジャパニーズ・フィットを意味する略称。MTBやロード以上にバイクのフィット感やコントロール性が求められるシクロクロスバイク。「「日本人の体格にあったCXバイクをつくろう」という辻浦のアイデアを具現化すべく開発はスタート。フィールドテストで実走を繰り返し、速いだけでなく、走って楽しいバイクを狙って試作とテストライドを繰り返したという。
「日本人の体格に合わせ、かつコントロール性を高めるためにトップチューブを短めにしています。反応性を良くするためにリアセンターを短くするセオリーがあるが、オフ路面での安定性、面でトラクションを掛けるためにチェーンステイは長めに設定。そしてややシート角を立てています」。
ディスク用フォークのこのカーブが絶妙なハンドリングを生み出す (c)MakotoAYANO
オオタケ・トレールヘッドにも共通する形状のリアエンド (c)MakotoAYANO
チェーンステイは長めの設定で反応性よりもトラクション重視だ (c)MakotoAYANO
TIG溶接の美しさに丁寧な仕事が伺える (c)MakotoAYANO
そして、なぜディスク?の問にはこう答える。「ディスクブレーキについては選手時代は否定的だったけど、レースを降りてからはディスクの可能性、あるいはコントロールのしやすさなどからメリットの大きさに気づき、導入を決めました」。カンティ仕様、ディスク仕様ともにフレーム販売となるバイクだが、辻浦が気に入って採用したのはシマノのDi2レバーのST-R785だ。
辻浦によれば、JFF #801はレースに限らないマルチパーパスのCXバイクだと言う。「トレールでの使い勝手や安全マージンなどの面、ハイカーもいる山道での扱いやすさ、を重視して設計しました。テストではMTBで行ったほうが良いルートも含めて日本のいろいろなトレールを走ってみたんです。日本のフィールドでのライドを見据えて、ツーリング、サイクリング、そしてレースにも使えるようなバイクを目指して設計しました。フロントチェーンリングは45x33Tで、日本に最適化したギア比を追求。なるべく乗っていけるようなギア比にしています」。
photo&text:Makoto.AYANO
小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)
ミヤタ Elevation CX プロトタイプ

ジャパンカップシクロクロスのエキシビジョンレースとAJOCCのC1クラスを制した小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)は、ミヤタの新型バイク、Elevation CXを駆る。その名前から想像できるとおり、同社の誇るクロモリのハンドメイドフレームだ。本来はチーム的にはメリダのバイクに乗りたいところだが、同社のトップモデルが日本への輸入が無いため、ミヤタサイクルが製作に踏み切ったのだと言う。




フレームは、驚異的軽さを誇るスチールロードフレームの名品”Elevation Extreme”と同じ、S.S.T.B.ニオビウム鋼を使用したオリジナルのコロンバス製“FORCELITE Nb”チューブを採用し、軽さと振動吸収性を兼ね備えたバイクに仕上がっているという。東北の工場で熟練の職人が手作りするこのフレーム。小坂の希望でジオメトリーはシート角が寝かされ、後ろ荷重で踏み込むペダリングが可能な味付けとしてあるという。これは欧州遠征の際に身につけた乗り方だという。
小坂「ジオメトリーがオーダーできることもメリットなので、歓迎でした。僕はフレームサイズは小さめを選ぶんですが、そうするとシートアングルが立ってくる。そこを寝かし気味に造っていただいたのがポイントです。クイックなハンドリングを出せるようにしました。詰まったフロントセンターのためコーナーでシューズつま先がFタイヤに触れるけど、好みのハンドリング性を優先しました。カーボンより少し重量はあるが、乗り味の面で気に入っています。安定した乗り心地で、カーボンより突き上げが少ないですね」。


写真のモデルはブリッツェンの赤にペイントされたDi2モデルだが、もう一台はミヤタのイメージカラーであるブルーのノーマルシフトモデルを用意し、コースに合わせて使い分ける。ディスクブレーキは使用せず、いずれもカンティ仕様だ。小坂の駆るこのモデルはまだプロトタイプで、細部のリファインを経て間もなく一般発売が開始されるという。
丸山厚(BOMAレーシング)
BOMA L'EPICE



今季からBOMAで走る丸山厚。シーズン半ばでチームを変わったのは、よりシクロクロスに集中する環境を作るためだった。スムーズなライディングとテクニックの光る丸山が駆るのはジャパンブランドのBOMAのカーボンCXバイク、L'EPICE(エピス)。特徴的なのはフロントが46×42Tのクロスレシオになっていること。これは平坦中心のジャパンカップクロスのセッティングだ。ホイールにもカーボンブレードスポークを持つBOMAオリジナルのカーボンホイールを使用する。丸山は言う。「ホイールは見た目が特異ですが剛性もいいし、回転がいいような気がしますね」。


今季のこだわりは補助ブレーキを装備したWブレーキ仕様になっていること。「今年は全国のJCXシリーズに出場するため、知らないコースがあるから。ブレーキがマルチポジションで掛けることができることを重視しています。必要に応じて、例えば急な下りなどで使います。これは以前世界選手権に出た時もサブブレーキがあったほうがいいことがあったからです」。
前田公平
リッチーSwissCross



シーズン前半までスコットに所属した前田公平。CXシーズンインとともにフリーとなり、バイクをリッチーSwissCrossにスイッチした。スイスクロスは息の長いモデルで超定番的存在のクロモリモデル。チュービングにリッチーロジックⅡトリプルバテッドチューブを使用し、リッチーお得意のTIG溶接によってハンドビルドされる。ヘッドは1-1/8インテグラルを採用。フレーム&フォークのカタログ重量は2.35kg(550mm)だ。
「クロモリチューブのしなやかさはカーボンよりも身体への負担が少ない気がしますね。重量的にはこのセットアップで車重8.3kgほどと、重量面ではカーボンバイクより少し重くはなるけど、そのハンデなく進む気はしますね」と前田。スペアバイクはほぼ同じ仕様でもう1台用意し、そちらはフロントシングル仕様で42Tをセット。後日、2台ともシングル化した。




ステムやピラーなど各所で光るこだわりのパーツはモートップ製のカラーパーツ群。これは昨シーズンから使用しているものをそのまま使い回している。また、前田のトレードマークというべきタイオガ製スパイダーサドル「ストレイタム」は今季の新製品。クッション材がなくハンモック状のベースによってクッションを生み出している。「乗り心地が良くて、他の普通のサドルと変わらないクッション性があります。お気に入りで手放せません」。
ブレーキはTRPのカンティ。ホイールはシマノC35だが、届き次第インダストリー9製のホイールを使用する予定だという。タイヤはFMB製のチューブラー。「ポートランドバイシクルスタジオ」とレターが入っているのは野辺山CXで来日したモリー・キャメロンから仕入れたタイヤである証とか。
辻浦圭一
ワンバイエス JFF #801



この企画の締めは、2003年から2010年まで全日本選手権シクロクロスで9連覇を成し遂げた近代日本のレジェンド、辻浦圭一に登場願った。彼が開発をつとめたONE BY ESU(ワンバイエス)のCXバイク JFF #801が、東京サンエスから11月にリリースされた。
「JFF」とはジャパニーズ・フィットを意味する略称。MTBやロード以上にバイクのフィット感やコントロール性が求められるシクロクロスバイク。「「日本人の体格にあったCXバイクをつくろう」という辻浦のアイデアを具現化すべく開発はスタート。フィールドテストで実走を繰り返し、速いだけでなく、走って楽しいバイクを狙って試作とテストライドを繰り返したという。
「日本人の体格に合わせ、かつコントロール性を高めるためにトップチューブを短めにしています。反応性を良くするためにリアセンターを短くするセオリーがあるが、オフ路面での安定性、面でトラクションを掛けるためにチェーンステイは長めに設定。そしてややシート角を立てています」。




そして、なぜディスク?の問にはこう答える。「ディスクブレーキについては選手時代は否定的だったけど、レースを降りてからはディスクの可能性、あるいはコントロールのしやすさなどからメリットの大きさに気づき、導入を決めました」。カンティ仕様、ディスク仕様ともにフレーム販売となるバイクだが、辻浦が気に入って採用したのはシマノのDi2レバーのST-R785だ。
辻浦によれば、JFF #801はレースに限らないマルチパーパスのCXバイクだと言う。「トレールでの使い勝手や安全マージンなどの面、ハイカーもいる山道での扱いやすさ、を重視して設計しました。テストではMTBで行ったほうが良いルートも含めて日本のいろいろなトレールを走ってみたんです。日本のフィールドでのライドを見据えて、ツーリング、サイクリング、そしてレースにも使えるようなバイクを目指して設計しました。フロントチェーンリングは45x33Tで、日本に最適化したギア比を追求。なるべく乗っていけるようなギア比にしています」。
photo&text:Makoto.AYANO
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