日本のトップシクロクロス選手たちの愛車を紹介しよう。茨城シクロクロス、東北シクロクロス、スターライト幕張で取材した8選手の愛車8台のコダワリを2回に分けて紹介する。



山本和弘(弱虫ペダルシクロクロスチーム)のキャノンデール スーパーX Disc

山本和弘(弱虫ペダルシクロクロスチーム)の駆るキャノンデール スーパーX Disc山本和弘(弱虫ペダルシクロクロスチーム)の駆るキャノンデール スーパーX Disc (c)MakotoAYANO
茨城CX、東北CX#3・4、そしてスターライト幕張CXと4連勝し、「今季は走るレースのすべてに勝つ!」と豪語する絶好調の山本和弘(弱虫ペダルシクロクロスチーム)。「カズ」が駆るのはブルーが鮮やかなキャノンデールのハイエンドCXバイク、スーパーX Discだ。

「フィーリングが最高」と絶賛するシマノのロード用油圧ディスクブレーキST-R785を装備「フィーリングが最高」と絶賛するシマノのロード用油圧ディスクブレーキST-R785を装備 (c)MakotoAYANOシマノ製の油圧ディスクのコントロール性は大きな武器だというシマノ製の油圧ディスクのコントロール性は大きな武器だという (c)MakotoAYANO

ディスクブレーキ取り付け台座の補強工作に注目だディスクブレーキ取り付け台座の補強工作に注目だ (c)MakotoAYANOブレーキケーブルはフレームの上面を通される外装式だブレーキケーブルはフレームの上面を通される外装式だ (c)MakotoAYANO


シクロクロス東京に来日したティム・ジョンソンらも駆ったこのモデル。スーパーシックス同等の軽量カーボンフレームにディスク台座を装備したフレームで、すでにプロレース界で実戦の場数を踏んだ定評ある軽量レーシングバイクだ。

カズが「フィーリングが最高」と絶賛するシマノのロード用油圧ディスクブレーキST-R785を装備。ケーブルはフレームの上面を通される外装式。チューブラーにはチャレンジGRIFO33やCHICANE、FANGO、LIMUSなどを路面状況に応じて使い分ける。ペダルはシューズとセットのマヴィック(タイム製)を使用する。この撮影時(茨城CX)では間に合わなかったが、現在はホイールにZIPPファイアクレスト303Discを使用している。

手組のチューブラーホイールを採用。届き次第ZIPPファイアクレスト303Discに交換する手組のチューブラーホイールを採用。届き次第ZIPPファイアクレスト303Discに交換する (c)MakotoAYANOタイヤはチャレンジのGRIFOほか、シリーズで揃えて路面状況に応じて使い分けるタイヤはチャレンジのGRIFOほか、シリーズで揃えて路面状況に応じて使い分ける (c)MakotoAYANO

ゴールドのチェーンはロードチームのスポンサーでもあるKMC製ゴールドのチェーンはロードチームのスポンサーでもあるKMC製 (c)MakotoAYANOペダルはシューズとセットのマヴィック(タイム製)を使用するペダルはシューズとセットのマヴィック(タイム製)を使用する (c)MakotoAYANO

中央にノンスリップ加工のあるフィジーク製TUNDRAサドルを使用する中央にノンスリップ加工のあるフィジーク製TUNDRAサドルを使用する (c)MakotoAYANO細身のシルエットが特徴のスーパーX ブルーのペイントが鮮やかだ細身のシルエットが特徴のスーパーX ブルーのペイントが鮮やかだ (c)MakotoAYANO


ロードとMTBの経験を両方活かして快進撃を進めるカズの野望は全日本選手権制覇。その武器としてこのバイクは「文句の付け所がないほど素晴らしい」と言う。

カズは言う。「MTB時代からの経験で油圧のディスクブレーキにメリットを感じていたので、まずはそれを使えること前提でフレームを選んでいます。主流になりつつあるDi2も入れて、最先端バイクになりました。スーパーX自体には前から乗り慣れていたので迷いはありませんでしたし、ポジションはすぐに出せました。このバイクは乗りやすさが抜群。とにかく楽です。タイヤはいろいろ試した結果、チャレンジのタイヤがもっとも使いやすかったので使用を決め、全種類を揃えています。今年は世界選手権を狙っているので、世界レベルでパワー負けしないように走れるセッティングを心がけています」。

ただし残念ながらスーパーXは今季は日本への輸入が難しく、一般向けにはCAAD Xが販売されるにとどまる。ただしそちらも高評価のため人気沸騰中だ。



濱由嵩(SPEEDVAGEN CYCLOCROSS TEAM)のスピードヴァーゲン Team Issue

濱由嵩(SPEEDVAGEN CYCLOCROSS TEAM) とスピードヴァーゲン Team Issue濱由嵩(SPEEDVAGEN CYCLOCROSS TEAM) とスピードヴァーゲン Team Issue (c)MakotoAYANO
関西クロス第1戦ビワコマイアミランドを制した濱由嵩(はま・よしたか)。今季よりSPEEDVAGEN CYCLOCROSS TEAMに加入した注目ライダーだ。濱が駆るのはアメリカ西海岸、ポートランドでサシャ・ホワイト氏のハンドビルドによって作り上げられるスピードヴァーゲンのスチール製シクロクロスバイクだ。おなじみのチームカラーの金色にペイントされるが、ことしはホワイトとブルーの差し色が入る。

今季よりチーム全体でスラムCX-1コンポを採用し、フロントシングルで参戦中。ハンドル&ステム&ホイールにエンヴィ、タイヤにFMBチューブラー、ペダルはクランクブラザーズのキャンディ。ブレーキはPAULのカンティを使用する。

濱の愛称である「ハマー」のレターが入る。しかもアメリカで手配されたものだ濱の愛称である「ハマー」のレターが入る。しかもアメリカで手配されたものだ (c)MakotoAYANOスラムCX-1レバーをセットしたエンヴィのカーボンハンドル。非常に高強度で軽量だスラムCX-1レバーをセットしたエンヴィのカーボンハンドル。非常に高強度で軽量だ (c)MakotoAYANO

ゴールドに塗られたフレームとエンヴィのステム、キングのヘッドパーツがクールだゴールドに塗られたフレームとエンヴィのステム、キングのヘッドパーツがクールだ (c)MakotoAYANOPAUL製のカンティブレーキはレトロな見た目ながらコントローラブルだというPAUL製のカンティブレーキはレトロな見た目ながらコントローラブルだという (c)MakotoAYANO


濱は言う。「ハンドル操作がとてもクイックで、ハンドルを切った時に前ホイールにシューズが触れるけれど、それを差し引いてもクイック性が好みです。クロモリなのに想像以上に軽量なバイクで、ペダル無しで7.5kgをマークします。担ぎやすく、ブレーキもよく効きます。スラムCX-1 にしたことでフロントのチェーン落ちがないので安心。前の歯数をレースごとに決める必要はありますが、今は42Tを使用しています。アメリカでのプロレースではどんなコースでも44Tが使われていたので、最低でも42Tで、できれば44Tで走れるようなパワーを身につけたいですね」。

シクロクロス界の一大トレンド、フロントシングルのスラムCX-1を使うシクロクロス界の一大トレンド、フロントシングルのスラムCX-1を使う (c)MakotoAYANOスラムCX-1のフロントシングルチェーンホイールスラムCX-1のフロントシングルチェーンホイール (c)MakotoAYANO

シート部を貫通するブレーキケーブルの取り回しがユニークシート部を貫通するブレーキケーブルの取り回しがユニーク (c)MakotoAYANOペダルはエッグビーターのキャンディシリーズを使用するペダルはエッグビーターのキャンディシリーズを使用する (c)MakotoAYANO




合田正之(サイクルクラブ3UP)のジャイアントTCX ADVANCED PRO

合田正之(サイクルクラブ3UP)とジャイアントTCX ADVANCED PRO合田正之(サイクルクラブ3UP)とジャイアントTCX ADVANCED PRO (c)MakotoAYANO
サラリーマンライダーながら常に上位に絡むアグレッシブな走りを見せる合田正之(サイクルクラブ3UP)。彼が駆るのはジャイアントの最高峰CXバイク、TCX ADVANCED PRO。ラース・ファンデルハールやマリアンヌ・フォスといった世界トップ選手が駆るモデルだ。コンポにはスラムRED22の油圧ディスクブレーキセットを採用し、クランクにROTOR 3Dクランクをセット。ホイールにはジャイアントオリジナルのカーボンクリンチャー/チューブレス両対応ホイール「P-CXR0」を使用する。

スラムRED22のハイドローリックブレーキレバー を使用するスラムRED22のハイドローリックブレーキレバー を使用する (c)MakotoAYANO省略されたシートステーブリッヂが振動吸収性向上に寄与している省略されたシートステーブリッヂが振動吸収性向上に寄与している (c)MakotoAYANO

気に入って使い始めたIRC SERAC CXチューブレス。デュガスなどチューブラーとの差はほとんどないほど高性能だという気に入って使い始めたIRC SERAC CXチューブレス。デュガスなどチューブラーとの差はほとんどないほど高性能だという (c)MakotoAYANOフロントにスルーアクスルを採用しているため、剛性の高さを感じることができるというフロントにスルーアクスルを採用しているため、剛性の高さを感じることができるという (c)MakotoAYANO


合田は言う。「このバイクは戦闘力を持ちながらも安定志向の乗り味で、誰でも不安なく乗れるハンドリング特性をもつのが特徴です。リアのブリッヂが省略されていて振動吸収性が高く、乗り心地がいいんです。おかげで1時間のC1レースでも疲れにくい。とにかく完成度が高く、一般的な目で見てもコストパフォーマンスの高さが光るバイクです」。

完成車にセットされていたジャイアントのオリジナルホイールも気に入っているという。セットしているタイヤはIRCのシラクCXチューブレス。今後の大事なレースではチューブラータイヤを使う予定もあるが、ホイールとチューブレスタイヤとの組み合わせの調子がいいため、今後このチューブレスをメインに使う可能性も高いという。「デュガスやFMBなどのチューブラーとの差はほんのわずかに感じています。だったら普段から気兼ねなく使え、タイヤ交換も容易なチューブレスにメリットが大きいです。一般の方には間違いなくオススメです」。



中間森太郎(チームedcoシクロクロスwithジロ)のグラファイトデザイン WROCCA

中間森太郎(チームedcoシクロクロスwithジロ)とグラファイトデザイン WROCCA中間森太郎(チームedcoシクロクロスwithジロ)とグラファイトデザイン WROCCA (c)MakotoAYANO
踏み込み系パワーコースにめっぽう強く、2014シクロクロス東京エリート男子でも10位のリザルトを残している中間森太郎(チームedcoシクロクロスwithジロ)。彼が駆るのはグラファイトデザインの国産CXバイク、WROCCA(ウロッカ)だ。

「レースだけでなくツーリングにも使えるという触れ込み通り、ハンドリングが良く、乗りやすいバイクです。しかしハードブレーキングしてもフォークがブレず、かなりしっかりした造り。フレーム全体がしっかり振動吸収をしているけど、剛性や安定性など、レースにも十分通用する実力があります。かなりよく走るフレームだと思います」とは中間。

「GDカラーズ」でオーダーした鮮やかなペイントが光る「GDカラーズ」でオーダーした鮮やかなペイントが光る (c)MakotoAYANOエドコのOSEOUSホイールを使用するエドコのOSEOUSホイールを使用する (c)MakotoAYANO

ブレーキ面のセラミックコーティングのおかげでノーマルシューで充分な制動力が得られるというブレーキ面のセラミックコーティングのおかげでノーマルシューで充分な制動力が得られるという (c)MakotoAYANO生産終了したがストックしてあるゴアのライドオンワイヤーを使用する生産終了したがストックしてあるゴアのライドオンワイヤーを使用する (c)MakotoAYANO


カラーは希望色のオーダーができる「GDカラーズ」システムでお気に入りのピンクにした。ホイールはスポンサードを受けるエドコのOSEOUSを使用する。「ブレーキ面のセラミックコーティングのおかげでノーマルシューで充分な制動力が得られる画期的なホイールです。ディスクに負けない制動力が出ていますね。フリーボディは交換せずにカンパ、シマノ両対応しますから、両ユーザーに嬉しいです」。

他にこだわりはゴアのライドオンワイヤー。泥コンディションでもブレーキが軽い引きなので、ケーブル類は数セットストックしているという。



三船雅彦のリドレーX-Knight

クロス界のレジェンド、三船雅彦とリドレーX-Knightクロス界のレジェンド、三船雅彦とリドレーX-Knight (c)MakotoAYANO
今はシクロクロスおよびブルベなどのロングライドのアドバイザー的な立場で活躍するレジェンド、三船雅彦さん。リドレーのアドバイザーでもある三船さんが駆るのは同社のCXフラッグシップモデル、X-Knight(エックスナイト)だ。コンポはカンパ・コーラス、ホイールにカンパ・ニュートロン、カンティブレーキ仕様だ。ステム・ハンドルやピラーに使用するコントロールテックは本国からサポートを受けているという。

駆動系はロード用のカンパ・コーラスを使用している駆動系はロード用のカンパ・コーラスを使用している (c)MakotoAYANO三船雅彦シクロクロススクールのアイコン「虎の穴」三船雅彦シクロクロススクールのアイコン「虎の穴」 (c)MakotoAYANO

ロード用のカンパ・コーラスノーマルクランクに46×39Tをセットロード用のカンパ・コーラスノーマルクランクに46×39Tをセット (c)MakotoAYANOタイヤはチャレンジを採用。しなやかで気に入っているタイヤはチャレンジを採用。しなやかで気に入っている (c)MakotoAYANO


三船さんは言う。「X-Knightは世界チャンピオンが多く使ってきた、すでに完成されているバイクなので、文句のつけようがないバイクです。今期モデルは以前のISP採用モデルとくらべて若干乗りやすくなっているように感じます。振動吸収性は少し上がっていますね。ハンドリング特性はニュートラルで、オフロードでスピードが上がった時にこのハンドリングに行き着く気がしますね」。

目を引くのはコンパクトではないカンパ・コーラスのノーマルロードクランクを使用していること。ギア比はジャパンカップシクロクロスの場合、46×39Tで、インナーは重めだ。「僕の場合、ポジションやセッティングなどの基本はロードと同じ。サドルもロードで使用しているもの。チャレンジのタイヤはしなやかで気に入っています」。 

ブレーキに使用しているグランコンペCRXは自身が開発にも関わった製品だブレーキに使用しているグランコンペCRXは自身が開発にも関わった製品だ (c)MakotoAYANOコーラスのブレーキを少し上向きにセットするコーラスのブレーキを少し上向きにセットする (c)MakotoAYANO


ブレーキに使用しているグランコンペCRXは自身が開発にも関わった製品。「シューのトーインなども設定できるため、とてもコントローラブル。アンチディスクユーザーには超お薦めです。ディスク化はあまり興味がなく、少し先になりそうです」と笑う。

photo&text:Makoto.AYANO

Vol.2に続く