軽量素材や独自の機構を採用しながらも実用的かつリーズナブルなパーツを多くリリースするTNI。今回は豊富なラインナップの中から、駆動ロスを低減するアルミ製大口径プーリーと対応ケージがセットになった「Speed Pully」をテストした。駆動効率を追求したい方にオススメなオプションパーツ「フルセラミックチタンプーリー」と併せて紹介しよう。



TNI Speed Pully(左)とオプションパーツのフルセラミックチタンプーリーTNI Speed Pully(左)とオプションパーツのフルセラミックチタンプーリー photo:Makoto.Ayano
リアディレーラーの下部に位置し、チェーンのテンション保持と変速時のガイドという2つの役割を持つのがプーリーだ。それをコンポーネントメーカーの純正品より大径化し、回転数を低下させると同時にチェーンの屈折角を軽減することで摩擦抵抗を削減し、駆動効率を高めることに成功したBERNER(バーナー)のビッグプーリー・ケージである。

工業立国ドイツの小さな工房で作られる「リーサル・ウェポン」は、ある実験結果によれば5.85W相当の駆動ロス低減を実現するという。確かに様々なブランドが、「○W低減」と謳っている現況にあって、数字自体は決して目を引くものではない。しかしながら、ファビアン・カンチェラーラ、ブラドレー・ウィギンズ、アルベルト・コンタドールら機材にこだわりの強いトップレーサーたちが使用してきた事実が物語る様に、その効果はお墨付きといって過言ではないだろう。

TNI Speed Pullyの背面。アルミ製ながら肉抜きによって純正品に対する重量増を抑えているTNI Speed Pullyの背面。アルミ製ながら肉抜きによって純正品に対する重量増を抑えている 上側のガイドプーリーは11T上側のガイドプーリーは11T

リアディレーラー本体との接続部分は高精度の切削加工によって仕上げられているリアディレーラー本体との接続部分は高精度の切削加工によって仕上げられている 下側のテンションプーリーは15T下側のテンションプーリーは15T


TNI フルセラミックチタンプーリーTNI フルセラミックチタンプーリー 一方で欠点もある。それは生産体制故の入手性の悪さと、あまりに高価なこと。これを解消したのが、これまでもリーズナブルかつ高性能なレーシングパーツを多くリリースしてきたTNIの「Speed Pully」である。構造自体はBERNERとほぼ共通ながら、ケージ素材をカーボンからアルミに、プーリーのベアリングをセラミックからスチールへ置き換えることで、約1/3までに低価格化することに成功している。

肝心のプーリーの歯数はというと、上側のガイドプーリーが11T、下側のテンションプーリーが15T。対応するリアディレーラーはDi2を含む11速のシマノDURA-ACE及びULTEGRAで、RD-9000、RD-9070、RD-6800、RD-6870の4種類に取り付けることができる。

ベアリングはベースまでセラミック製だベアリングはベースまでセラミック製だ また、TNIがリリースする大径プーリー各種とも互換性があり、さらなる回転性能の向上や軽量化を可能としている。その1例が「フルセラミックチタンプーリー」。その名の通り、軽量かつ高強度なチタン製の歯車にセラミックベアリングを組み合わせた逸品である。

Speed Pullyにフルセラミックチタンプーリーを組み合わせることで更なる駆動ロスの低減が期待できるSpeed Pullyにフルセラミックチタンプーリーを組み合わせることで更なる駆動ロスの低減が期待できる 加えてベアリングはボールだけをセラミックとした一般的なものではなく、受け側のレースをもセラミックとし、潤滑油脂を要さないドライ構造とすることで驚きのローフリクションを実現してる。加えて、従来品のチタン製プーリーと比較して、肉抜き部分を拡大することで更なる軽量化を図っており、11Tで10g、15Tで11gに仕上がっている。

さてSpeed Pullyの取り付けだが、当然プーリーケージの交換が必要になる。メカに自信が無い方はプロショップに任せるべきだが、普段から愛車のメンテナンスを自身で行っていると言う方であれば、決して難しい作業ではないはず。分解時に内部構造をしっかりと理解さえしていれば、説明書がなくともスンナリ作業を終えることができる。

次にバイクへの取り付けだが、ここで注意したいのがチェーンだ。今回インプレッションで使用したバイクには元々ロングケージのリアディレーラーが取り付けられていたため継ぎ足す必要はなかったが、一般的なショートケージであった場合には継ぎ足しか交換が必要となるはず。予めチェーンは用意しておいた方が良いだろう。



―インプレッション

まず、重量はDURA-ACEグレードのRD-9000+Speed pullyの状態で192g。純正品との比較で34g重いが、ULTEGRAグレードのRD-6800とほぼ同等だ。そして換装時の調整は必須となる。パンタグラフ部分はコンポーネントメーカーの純正品を使用するが、トップ側とロー側の両方でガイドプーリーとスプロケットの中心がずれる可能性があるため調整不足はフレームやホイールの破損にもなりかねない。今回、赤いプーリーが装着された標準状態でテストしたが、調整自体はややシビアに感じたものの変速フィールは純正品と全く遜色ないレベルを実現できた。

今回は機械式DURA-ACEのリアディレーラーに取り付けてテスト。スペシャル感あるルックスがやる気にさせてくれる今回は機械式DURA-ACEのリアディレーラーに取り付けてテスト。スペシャル感あるルックスがやる気にさせてくれる 編集部内の3名で純正ロングゲージとビッグプーリーを乗り比べた結果、駆動ロスの低減は全員が体感している。プラシボ効果を差し引いて考えても”効果あり”というのが共通の見解だ。その効果が顕著に現れるのが低負荷時か高負荷時かで意見が分かれはしたものの、比較的高ケイデンス走行時に体感しやすいという点は一致している。

平地巡航をパワータップで出力をモニタリングしながら行ったテストでは、250W-90回転/分(巡航速度40km/h)で比較した際に、個人差はあるが数値上でもはっきりと差異が読み取れる結果となった。これを砕いて表現すると、ギア1枚までは変わらないが、ギア1/2枚から1/3枚ほどは軽く感じるといったところだろうか。

次に10%勾配500mの登坂路では、パワータップの表示自体がバラついてしまい数値上の裏付けは得られなかったが、やはり総じて効果は体感できている。特に登りが得意な編集部員が”登坂時の効果が絶大”と明言している。ちなみに彼の登坂時の平均ケイデンスは3人の中では最も高い。

今回のテストで、トップレーサーには到底及ばない私たちレベルでも効果を体感できたという事は大きな事実だ。巧くお伝えできないのが悔しいが、ホイールを1ランクほどグレードアップした程度の効果を、少なくとも私たち3人は感じたという事を記しておこう。廻し方や踏み方が様々なため、人により感じ方も異なるだろうが、この製品の価格を考えればコストパフォーマンスは抜群に高いといっても過言ではないだろう。

「体感的には個人差があるものの、確実に駆動抵抗は低減されている」「体感的には個人差があるものの、確実に駆動抵抗は低減されている」
つまり、極端な重量増や変速性能の低下などデメリットがほぼ無いことを考えれば理論的には駆動ロスを低減してくれるはずのSpeed Pullyを取り付けない手はないと言えよう。「ライバルより速くなりたい」「少しでも楽に速く遠くに行きたい」「変わったパーツで仲間に差を付けたい」などいかなる理由にもSpeed Pullyはオススメだ。なお、長距離を走り込んでいないため耐久性については不明な部分が多いが、300km走行した現段階では特殊パーツにありがちな顕著な消耗は見られない。



TNI Speed Pully
ケージ素材:アルミ
歯車素材:アルミ(歯車)、スチール(ベアリング)
プーリー歯数:11t(上側)、15T(下側)
対応リアディレーラー:シマノ RD-9000、RD-9070、RD-6800、RD-6870
重 量:
価 格:15,800円(税抜)

TNI フルセラミックチタンプーリー
素材:チタン(歯車)、セラミック(ベアリング)
歯数:11T、13T、15T
重量:10g(11T)、11g(15T)
価格:14,000円(税抜、11T)、16,000円(税抜、13T)、17,000円(税抜、15T)