ツール・ド・フランス直前に、2011年と2012年のバイオロジカルパスポートの異常な変動に関して適切な説明がなされていないとして、UCI(国際自転車競技連合)が調査が始まったロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ・サクソ)の暫定的資格停止処分が決定した。



ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ・サクソ)ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waele2013年ツールでアルベルト・コンタドール(スペイン)と走るロマン・クロイツィゲル(チェコ))2013年ツールでアルベルト・コンタドール(スペイン)と走るロマン・クロイツィゲル(チェコ)) photo:A.S.O.ツール・ド・スイスが最後の出場レースとなっているロマン・クロイツィゲルツール・ド・スイスが最後の出場レースとなっているロマン・クロイツィゲル photo:Tim de Waeleツール直前に、過去のバイオロジカルパスポートの異常値に対する指摘を受け、ツールメンバーから外れたクロイツィゲル。8月2日には、暫定出場停止処分を科され8月3日から出場予定であったツール・ド・ポローニュの欠場を余儀なくされていた。そのような中、ブエルタへ出場するために、クロイツィゲルがCAS(スポーツ仲介裁判所)に対して訴えていた暫定的資格停止処分の無効化は棄却され、ブエルタ出走は絶望的となった。

この発表を受けて、クロイツィゲルは自身のtwitterでこうつぶやいている。「これは予想しなかったし、本当に言葉も出ないよ。弁護士のストヴィセクと前向きに対処していきたい。人生は驚きの連続だよ。#nevergiveup」

ツール欠場時には、クロイツィゲルは出場停止処分を受けていたわけではなく、CAFD(UCIアンチドーピング財団)による過去の異常値の調査中という発表を受けての判断だった。異常値の原因について、クロイツィゲル側は2度にわたって、3つの専門機関に分析を依頼し、プロフィールの変動がドーピングによるものではない正当なものであり、アンチドーピング規約に反していないことを確認。UCIに対して、CAFDの主張は科学的根拠が足りないと主張していた。

状況が変わったのは8月初旬にはいって。UCIはWADA(世界アンチドーピング機構)のバックアップのもと、これまでに前例がなかったバイオロジカルパスポートの異常値を、ドーピングテストの陽性Aサンプルと同等に扱うという決定を下し、クロイツィゲルに暫定資格停止処分を科していた。

クロイツィゲルの弁護士である、ジョン・ストヴィセクは、今回の判断について以下のようにコメントした。「私たちは、資格停止処分について、法的に異議を唱えていました。ルールでは、資格停止処分を選手に科すためには、ドーピング検査による陽性Aサンプルが必要と定められています。しかし、クロイツィゲルのケースではサンプルは一つも出てきていないのです。」

UCI会長のブライアン・クックソンは「この問題は非常に深刻で、彼のバイオロジカルパスポートに疑念が生じているということだ。法律の専門家を使って争うことは、自転車競技の利益になることはないだろう。クロイツィゲルには残念だが、彼らのチームがツールの前にしたような正しい判断をしていれば、こんなことにはなっていなかっただろう。」と語った。

関係者の多くは、今回のCASの決定はバイオロジカルパスポートの重要性、信頼性を高める決定であり、スポーツサイクリングをよりクリーンにすることにつながると考えているようだ。

text:Naoki.YASUOKA

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