オランダ内陸部の丘陵地帯を駆け抜けるエネコ・ツアー第5ステージは、通称「リトル・アムステル・ゴールドレース」。13名の逃げグループの中からラスト5kmで飛び出したラルスイティング・バク(デンマーク、サクソバンク)が優勝を飾り、2位のエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームコロンビア・HTC)が総合トップに立った。

序盤から逃げるアンドレス・デリス(スペイン、エウスカルテル)ら3名序盤から逃げるアンドレス・デリス(スペイン、エウスカルテル)ら3名 photo:Cor Vosオランダ南部のルールモントからシッタート・ヘレーンまでの204kmで行なわれた第5ステージ。オランダといえば平坦なイメージが強いが、同地域は起伏のある丘陵地帯が続くことで知られている。

アムステル・ゴールドレースと同地域で行なわれるため、アムステル名物のカウベルグやアイゼルボスウェグが登場。急坂が合計16カ所設定された厳しいコースは「リトル・アムステル・ゴールドレース」とも呼ばれた。

メイン集団をコントロールするラボバンクメイン集団をコントロールするラボバンク photo:Cor Vosレース開始直後に飛び出したのはアンドレス・デリス(スペイン、エウスカルテル)、イェンス・モーリス(オランダ、ヴァカンソレイユ)、ダヴィ・デロー(フランス、スキル・シマノ)の3名。メイン集団がこのエスケープトリオを見送ったため、レース3分の1を消化した時点でタイム差は何と17分35秒まで広がった。

レース後半に入ると、メイン集団はチームコロンビア・HTCとラボバンクが本腰を入れてスピードアップ開始。レースが動いたのは、タイム差が6分まで縮まった残り80km地点。メイン集団から15名の大きなグループが飛び出し、先頭3名を追走し始めた。

メイン集団から飛び出したエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームコロンビア・HTC)ら15名メイン集団から飛び出したエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームコロンビア・HTC)ら15名 photo:Cor Vos追走グループの中には、総合3位・23秒遅れのボアッソンや、総合4位・35秒遅れのシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)、総合6位・37秒遅れのヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)らが入り、メイン集団は追走グループに選手を送り損ねたガーミンがコントロール。

やがて残り48km地点で追走グループは先頭3名をキャッチ。18名に再編成された逃げを、メイン集団が1分遅れで追走する展開に。

両手を広げてゴールするラルスイティング・バク(デンマーク、サクソバンク)両手を広げてゴールするラルスイティング・バク(デンマーク、サクソバンク) photo:Cor Vosケースデパーニュも集団牽引に加わったが、ゴールまで20kmを残してタイム差は1分10秒のまま。総合リーダーのタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)や総合2位トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)擁するメイン集団が先頭グループに追いつくことはなかった。

逃げ切りが濃厚となった先頭グループの中からはシャヴァネルが積極的にアタックを仕掛けたが成功せず、残り5kmでタイミング良く飛び出したラルスイティング・バク(デンマーク、サクソバンク)が独走状態に。ニーバリは単独で追走したが、落車によってチャンスを失った。

2位でゴールするエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームコロンビア・HTC)2位でゴールするエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームコロンビア・HTC) photo:Cor Vos8秒のリードを保って残り1kmのアーチを通過したバクは、追い上げるグループを振り切ってゴール。両手を大きく広げてゴールに飛び込んだ。

バクに僅か2秒届かなかった追走グループは、次点でポイント賞ジャージを着ていたボアッソンを先頭にゴール。総合1位ファラーや総合2位ボーネンを含むメイン集団が31秒遅れでゴールしたため、タイム差&ボーナスタイムによりボアッソンが総合首位に躍進。ステージ優勝を飾ったバクも総合3位に浮上した。

リーダージャージを獲得したエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームコロンビア・HTC)リーダージャージを獲得したエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームコロンビア・HTC) photo:Cor Vos逃げ切り勝利を飾ったバクは、レース公式サイトの中でこう語る。「僕はスプリンターじゃないから、アタックする必要があったんだ。シャヴァネルの2回目のアタックに反応して飛び出した。逃げグループの中でスプリント力のある選手が牽制していたから、アタックが成功した。ラスト200mで勝利を確信したよ。」

29歳のバクはオールラウンドな力の持ち主で、チームCSC(現サクソバンク)に合流した2005年にはデンマーク選手権制覇、ツール・ド・ラヴニールで総合優勝、パリ〜ブールジュで優勝。これまで3回デンマークのTTチャンピオンに輝いている。今シーズンは総合力を発揮し、ツール・ド・ロマンディで総合6位、ジロ・デ・イタリアで総合20位に入っている。

総合3位に浮上したバクは「TTでもいい走りが出来ると思う」とコメントしながらも「総合優勝の有力候補はノルウェー人の友達エドヴァルドだ」と、同じ北欧出身のボアッソンを推している。

総合首位に立ったボアッソンは「リーダージャージ獲得が最大の目標だった。今日は総合争いにおいて危険なブラドレー・ウィギンズを突き放すことが、何よりも重要だったんだ(ウィギンズは10分21秒遅れでゴール)。ツール・ド・ポローニュで好感触を得ていたから、このエネコでも総合戦線に絡めると思っていた。このリーダージャージを最後まで守り抜きたい」と、初のエネコ・ツアー総合優勝に向けて意気込みを語った。

新城幸也(Bboxブイグテレコム)は他のスプリンターたちとともに22分08秒遅れでゴール。最終日が個人TTのため、最終日前日の翌第6ステージが逃げを狙う最後のチャンスだ。

また、終盤に単独で追走しながらも落車したニーバリは、ゴール後、左鎖骨の骨折が判明。8月末の鎖骨骨折はシーズンの終了を意味する。ニーバリは有力視されていた世界選手権イタリア代表入りも同時に逃した。

エネコ・ツアー2009第5ステージ結果
1位 ラルスイティング・バク(デンマーク、サクソバンク)5h13'16"
2位 エドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームコロンビア・HTC)+02"
3位 フランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、ランプレ)
4位 フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、サイレンス・ロット)
5位 フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、ラボバンク)
6位 セバスティアン・ラングヴェルト(オランダ、ラボバンク)
7位 ヨースト・ポストゥーマ(オランダ、ラボバンク)
8位 ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、サイレンス・ロット)
9位 ヤン・バケランツ(ベルギー、トップスポート・フラーンデレン)
10位 ユルゲン・ファンホーレン(ベルギー、サクソバンク)
98位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)+22'08"

個人総合成績
1位 エドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームコロンビア・HTC)23h04'45"
2位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)+15"
3位 ラルスイティング・バク(デンマーク、サクソバンク)
4位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)+21"
5位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)+23"
6位 ヨースト・ポストゥーマ(オランダ、ラボバンク)
7位 フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、ラボバンク)+25"
8位 フランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、ランプレ)+28"
9位 ヤン・バケランツ(ベルギー、トップスポート・フラーンデレン)
10位 マキシム・モンフォール(ベルギー、チームコロンビア・HTC)+29"
68位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)+28'52"

ポイント賞
タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)

チーム総合成績
ラボバンク

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos

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