2014/04/30(水) - 14:27
1級山岳ゴグベリ峠にフィニッシュする正真正銘のクイーンステージで、レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)が復活を宣言した。呼吸器のトラブルを手術によってクリアしたエストニアチャンピオンが優勝。リーダージャージを着て後半ステージを闘って行く。
ツアー・オブ・ターキーの名物となりつつある1級山岳ゴグベリ峠(標高1850m)の山頂フィニッシュ。185kmのコースには2級山岳が1つと1級山岳が2つ設定されており、一日の獲得標高差は3700m。他のどのステージと比べて段違いに厳しい。
フィニケをスタートしてしばらくは、大会ディレクターが「美しい海岸線を用意したから、どうぞ綺麗な写真を撮ってもらいたい」と胸を張っていたオーシャンロードが続く。しかしスタート直後からアタックが繰り返され、常時トップスピードを維持したため、選手もフォトグラファーもその美しい景色を堪能している暇などなかった。
内陸に入ってからもハイスピードな状態は延々と続き、集団が崩壊しながら2級山岳をクリア。その後、50km地点でようやくダヴィデ・フラッティーニ(イタリア、ユナイテッドヘルスケア)、ニコ・シーメンス(ベルギー、ワンティ・グループグベルト)、ピーター・ファンスペイブルック(ベルギー、トップスポートフラーンデレン)、クリストフ・ルメヴェル(フランス、コフィディス)の逃げが決まった。
遅れていたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)らが集団に復帰すると、メイン集団は体制を整えて逃げグループの追走を開始する。
レース中盤に位置する1級山岳クルオヴァベリ峠(標高1560m)でタイム差は3分に。驚くことに、鎖骨骨折から復帰したばかりのアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)は常に集団前方で登りをこなし、集団ローテーションにも加わった。
トルコの特徴として、観光地エリアを離れると途端に道路の舗装が荒くなる。アスファルトとは呼べないような小石が敷き詰められた凸凹路で、選手たちはハンドルに伝わる細かい振動を抑え込みながら走り、そのバイクからは常に異音が鳴っている状態。
ヨーロッパレースと比べて快適性を優先したセットアップを行なっているチームも多いが、それでもこの日はパンクやメカトラ、落車が多発した。
加えて、レースに興味を示さず沿道を歩いているだけの観光客がいなくなり、トルコ国旗を持った地元の観客が増えるのが特徴。基本的に観光地を繋いでいくツアー・オブ・ターキーの中で、この第3ステージだけがトルコらしい田園風景の中を走ると言ってもいい。
やがてアスタナやMTNキュベカ率いるメイン集団によって、最後の1級山岳ゴグベリ峠の手前で逃げは吸収。ツール・ド・ランカウイ総合2位のメルハウィ・クドゥス(エリトリア、MTNキュベカ)のために、リーナス・ゲルデマン(ドイツ、MTNキュベカ)が懸命なペースアップを試みた。
人数を減らした集団から、残り2.5kmでエストニアチャンピオンがアタックする。勾配のあるスイッチバックでターラマエが先行。ここにアダム・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ)が食らいつき、2人で後続を引き離す。残り1kmを切ってからの掛け合いで、ターラマエがイェーツを振り切った。
両手で顔を覆い、力強いガッツポーズでフィニッシュしたターラマエ。「本来エースとして走る予定だったヨアン・バゴが落車の影響で苦しんでいたので、今日は僕がチームのサポートを受けた。向かい風が強かったので残り2kmを切ってから仕掛けるべきと思っていたんだ。すると残り2.8kmで(CCCポルサットの)マルチンスキーがアタック。全開で集団が追いかけて、追いついたところでアタックした。オリカの選手(イェーツ)が追いついてきたけど、経験で僕が勝っていた」と勝利を振り返る。
ターラマエは2011年ツール・ド・フランス総合11位の実力者。同年ブエルタ・ア・エスパーニャではステージ優勝を飾っている。しかしここ数年は思うような走りが出来ずにスランプに陥っていた。
「ここ2年間、ずっとエンジンが焼き付いたかのような不振に喘いでいた。山岳ではいつもスプリンターと一緒に登って、彼らに置いて行かれる時もあった。今年に入ってようやく喉頭閉塞と気管支喘息が不調の原因であると分かり、3月12日にエストニアで手術を受けたんだ。それまで上手く呼吸が出来ていなかったけど、手術後は全てが変わった。こんなに早く結果が出るとは思わなかった。再び良いコンディションでレースに挑めることが出来て本当に嬉しい」と、ターラマエは喜ぶ。呼吸器のトラブルを脱し、強いターラマエが帰ってきた。
ステージ2位に入ったイェーツはイギリス出身の21歳。昨年ツール・ド・ラヴニールを総合2位で終え、今年オリカ・グリーンエッジでプロデビューしたネオプロだ。2月のツール・ド・サンルイスではヤングライダー賞に輝いている。
レース後、イェーツは「チームの作戦Aはサイモン(イェーツ)で、僕は作戦Bだった」と打ち明ける。イェーツはこのツアー・オブ・ターキーに双子の兄弟サイモンとともに出場。サイモンは昨年のトラック世界選手権ポイントレース覇者で、ツアー・オブ・ブリテンで総合3位の好成績を残したオールラウンダー。しかしこの日、65km地点でサイモンが落車リタイア(鎖骨骨折)したため、急遽アダムがエースとしてクイーンステージに挑むこととなった。
「最初の登りでターラマエの好調さを見ていたので、彼をマークすることにした。だから彼がアタックした時にすぐさま反応したんだ。このレベルのレースで結果を残せるか半信半疑だったけど、厳しいトレーニングが実を結んだよ」と、イギリスの新鋭オールラウンダーは語る。
オリカ・グリーンエッジは6秒差をひっくり返すべく第6ステージの山頂フィニッシュで攻撃を仕掛けてくるだろう。ターラマエのチームメイトであるロメン・アルディ(フランス)がステージ3位に入り、コフィディス勢が総合1位と3位に。ジャーナリストの中で下馬評の高かったクドゥスはステージ4位。42歳ダヴィデ・レベッリン(イタリア、CCCポルサット)はステージ5位でフィニッシュしている。
その他のレース写真はフォトギャラリーをご覧下さい。
ツアー・オブ・ターキー2014第3ステージ結果
個人総合成績
ポイント賞
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)
山岳賞
レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)
ビューティーズオブターキースプリント賞
マッティア・ポッツォ(イタリア、ネーリソットリ)
チーム総合成績
コフィディス
text&photo:Kei Tsuji in Fethiye, Turkey
ツアー・オブ・ターキーの名物となりつつある1級山岳ゴグベリ峠(標高1850m)の山頂フィニッシュ。185kmのコースには2級山岳が1つと1級山岳が2つ設定されており、一日の獲得標高差は3700m。他のどのステージと比べて段違いに厳しい。
フィニケをスタートしてしばらくは、大会ディレクターが「美しい海岸線を用意したから、どうぞ綺麗な写真を撮ってもらいたい」と胸を張っていたオーシャンロードが続く。しかしスタート直後からアタックが繰り返され、常時トップスピードを維持したため、選手もフォトグラファーもその美しい景色を堪能している暇などなかった。
内陸に入ってからもハイスピードな状態は延々と続き、集団が崩壊しながら2級山岳をクリア。その後、50km地点でようやくダヴィデ・フラッティーニ(イタリア、ユナイテッドヘルスケア)、ニコ・シーメンス(ベルギー、ワンティ・グループグベルト)、ピーター・ファンスペイブルック(ベルギー、トップスポートフラーンデレン)、クリストフ・ルメヴェル(フランス、コフィディス)の逃げが決まった。
遅れていたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)らが集団に復帰すると、メイン集団は体制を整えて逃げグループの追走を開始する。
レース中盤に位置する1級山岳クルオヴァベリ峠(標高1560m)でタイム差は3分に。驚くことに、鎖骨骨折から復帰したばかりのアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)は常に集団前方で登りをこなし、集団ローテーションにも加わった。
トルコの特徴として、観光地エリアを離れると途端に道路の舗装が荒くなる。アスファルトとは呼べないような小石が敷き詰められた凸凹路で、選手たちはハンドルに伝わる細かい振動を抑え込みながら走り、そのバイクからは常に異音が鳴っている状態。
ヨーロッパレースと比べて快適性を優先したセットアップを行なっているチームも多いが、それでもこの日はパンクやメカトラ、落車が多発した。
加えて、レースに興味を示さず沿道を歩いているだけの観光客がいなくなり、トルコ国旗を持った地元の観客が増えるのが特徴。基本的に観光地を繋いでいくツアー・オブ・ターキーの中で、この第3ステージだけがトルコらしい田園風景の中を走ると言ってもいい。
やがてアスタナやMTNキュベカ率いるメイン集団によって、最後の1級山岳ゴグベリ峠の手前で逃げは吸収。ツール・ド・ランカウイ総合2位のメルハウィ・クドゥス(エリトリア、MTNキュベカ)のために、リーナス・ゲルデマン(ドイツ、MTNキュベカ)が懸命なペースアップを試みた。
人数を減らした集団から、残り2.5kmでエストニアチャンピオンがアタックする。勾配のあるスイッチバックでターラマエが先行。ここにアダム・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ)が食らいつき、2人で後続を引き離す。残り1kmを切ってからの掛け合いで、ターラマエがイェーツを振り切った。
両手で顔を覆い、力強いガッツポーズでフィニッシュしたターラマエ。「本来エースとして走る予定だったヨアン・バゴが落車の影響で苦しんでいたので、今日は僕がチームのサポートを受けた。向かい風が強かったので残り2kmを切ってから仕掛けるべきと思っていたんだ。すると残り2.8kmで(CCCポルサットの)マルチンスキーがアタック。全開で集団が追いかけて、追いついたところでアタックした。オリカの選手(イェーツ)が追いついてきたけど、経験で僕が勝っていた」と勝利を振り返る。
ターラマエは2011年ツール・ド・フランス総合11位の実力者。同年ブエルタ・ア・エスパーニャではステージ優勝を飾っている。しかしここ数年は思うような走りが出来ずにスランプに陥っていた。
「ここ2年間、ずっとエンジンが焼き付いたかのような不振に喘いでいた。山岳ではいつもスプリンターと一緒に登って、彼らに置いて行かれる時もあった。今年に入ってようやく喉頭閉塞と気管支喘息が不調の原因であると分かり、3月12日にエストニアで手術を受けたんだ。それまで上手く呼吸が出来ていなかったけど、手術後は全てが変わった。こんなに早く結果が出るとは思わなかった。再び良いコンディションでレースに挑めることが出来て本当に嬉しい」と、ターラマエは喜ぶ。呼吸器のトラブルを脱し、強いターラマエが帰ってきた。
ステージ2位に入ったイェーツはイギリス出身の21歳。昨年ツール・ド・ラヴニールを総合2位で終え、今年オリカ・グリーンエッジでプロデビューしたネオプロだ。2月のツール・ド・サンルイスではヤングライダー賞に輝いている。
レース後、イェーツは「チームの作戦Aはサイモン(イェーツ)で、僕は作戦Bだった」と打ち明ける。イェーツはこのツアー・オブ・ターキーに双子の兄弟サイモンとともに出場。サイモンは昨年のトラック世界選手権ポイントレース覇者で、ツアー・オブ・ブリテンで総合3位の好成績を残したオールラウンダー。しかしこの日、65km地点でサイモンが落車リタイア(鎖骨骨折)したため、急遽アダムがエースとしてクイーンステージに挑むこととなった。
「最初の登りでターラマエの好調さを見ていたので、彼をマークすることにした。だから彼がアタックした時にすぐさま反応したんだ。このレベルのレースで結果を残せるか半信半疑だったけど、厳しいトレーニングが実を結んだよ」と、イギリスの新鋭オールラウンダーは語る。
オリカ・グリーンエッジは6秒差をひっくり返すべく第6ステージの山頂フィニッシュで攻撃を仕掛けてくるだろう。ターラマエのチームメイトであるロメン・アルディ(フランス)がステージ3位に入り、コフィディス勢が総合1位と3位に。ジャーナリストの中で下馬評の高かったクドゥスはステージ4位。42歳ダヴィデ・レベッリン(イタリア、CCCポルサット)はステージ5位でフィニッシュしている。
その他のレース写真はフォトギャラリーをご覧下さい。
ツアー・オブ・ターキー2014第3ステージ結果
1位 レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)
2位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ)
3位 ロメン・アルディ(フランス、コフィディス)
4位 メルハウィ・クドゥス(エリトリア、MTNキュベカ)
5位 ダヴィデ・レベッリン(イタリア、CCCポルサット)
6位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、カハルーラル)
7位 アダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ベリソル)
8位 クリスチャン・デュラセック(クロアチア、ランプレ・メリダ)
9位 ファンホセ・コーボ(スペイン、トルク・セケルスポール)
10位 エンリコ・バルディン(イタリア、バルディアーニCSF)
2位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ)
3位 ロメン・アルディ(フランス、コフィディス)
4位 メルハウィ・クドゥス(エリトリア、MTNキュベカ)
5位 ダヴィデ・レベッリン(イタリア、CCCポルサット)
6位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、カハルーラル)
7位 アダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ベリソル)
8位 クリスチャン・デュラセック(クロアチア、ランプレ・メリダ)
9位 ファンホセ・コーボ(スペイン、トルク・セケルスポール)
10位 エンリコ・バルディン(イタリア、バルディアーニCSF)
5h40'31"
+06"
+38"
+43"
+44"
+06"
+38"
+43"
+44"
個人総合成績
1位 レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)
2位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ)
3位 ロメン・アルディ(フランス、コフィディス)
4位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、カハルーラル)
5位 メルハウィ・クドゥス(エリトリア、MTNキュベカ)
6位 ダヴィデ・レベッリン(イタリア、CCCポルサット)
7位 アダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ベリソル)
8位 ファンホセ・コーボ(スペイン、トルク・セケルスポール)
8位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール)
10位 エンリコ・バルディン(イタリア、バルディアーニCSF)
2位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ)
3位 ロメン・アルディ(フランス、コフィディス)
4位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、カハルーラル)
5位 メルハウィ・クドゥス(エリトリア、MTNキュベカ)
6位 ダヴィデ・レベッリン(イタリア、CCCポルサット)
7位 アダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ベリソル)
8位 ファンホセ・コーボ(スペイン、トルク・セケルスポール)
8位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール)
10位 エンリコ・バルディン(イタリア、バルディアーニCSF)
12h46'31"
+06"
+38"
+43"
+44"
+06"
+38"
+43"
+44"
ポイント賞
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)
山岳賞
レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)
ビューティーズオブターキースプリント賞
マッティア・ポッツォ(イタリア、ネーリソットリ)
チーム総合成績
コフィディス
text&photo:Kei Tsuji in Fethiye, Turkey
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