日本のロードレース界の草分け的存在、森 幸春(もり・ゆきはる)さんが4月2日15時16分、膵がんのため死去した。

森 幸春さん(2014年1月)森 幸春さん(2014年1月) 故・森 幸春さんは1951年横浜生まれ。1982年全日本選手権ロードレース優勝、'80年国体ロードレース優勝、全日本実業団ロードレース優勝5回、東日本実業団対抗ロードレース優勝9回など、日本のロードレース黎明期より活躍し、ほとんどのタイトルを総なめにしてきた。

ミヤタレーシングのキャプテンとして三浦恭資氏や高橋松吉氏らとともに黄金時代を作りあげ、その後市川雅敏氏を加えたチームミチホを結成し、世界のロードレースに挑戦する道すじを切り拓いた。
'83・'84・'86年にツール・ド・ラヴニール完走、'85年にクアーズ・クラシック完走、’89年〜'94年には世界選手権プロロードレースに出場。
またシクロクロスの世界でも先鞭をつけ、'83年世界選手権イギリス・バーミンガム大会に日本人として初出場し、47位で完走している。

選手活動から引退後も「生涯現役」の姿勢を貫いて自転車に乗り続け、近年はロードバイク初心者からトライアスロン選手までマンツーマンで指導する「グローブテクニック」を主宰。同名のショップを横浜市に経営していた。60歳を過ぎても自転車を愛し、探究心を持って乗り続けるその姿勢に「森師匠」「森仙人」という愛称で親しまれていた。

昨夏の森さんは、近年にして自身でも満足するほどの体調の仕上がりで、ヤビツ峠を37分で上るほどだった。しかし体調は昨年暮れに急変。膵がんであることが判明する。
がんの診断後も、手術によらない食事療法などを選択して闘病生活を続けていた。

ロンド・ファン・フラーンデレン市民レースを走る森 幸春さん(2008年)ロンド・ファン・フラーンデレン市民レースを走る森 幸春さん(2008年) photo:Makoto.AYANO2月に余命2ヶ月の診断を受けてから、3月15日には自転車仲間の呼びかけにより、「森さんとお話する会」が東戸塚で開かれた。三浦氏をはじめとしたかつてのミヤタレーシング所属選手や、ニチナオ・シディ・カンパニョーロなどのチーム関係者、ライバルだった人たち、グローブテクニックの「教え子」、コーチングしてきた日本を代表する名選手らが、こぞって森さんの元へと集結した。(会の様子の動画へ

それから2週間あまり。周囲の勧めにより自宅療養をやめ、横浜労災病院へ4月1日に入院。その翌日に帰らぬ人となった。

日本ロード界に大きな足跡を残した森幸春さん。最期まで自転車を愛し、飄々と、まさに仙人のように自転車で走り続けた人生だった。

森さんのご逝去を悼み、謹んで哀悼の意を表します。安らかにご永眠されますようお祈りいたします。


文:綾野 真