ついにアドリア海に達したティレーノ〜アドリアティコ。登りに苦しむキッテルらを振り切り、残り2kmの落車を避け、オメガファーマ・クイックステップの最速トレインに発射されたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)が勝利した。



マルケ州の丘陵地帯を走るプロトンマルケ州の丘陵地帯を走るプロトン photo:Riccardo Scanferla
第6ステージ コース高低図第6ステージ コース高低図 image:RCS Sport第6ステージ コースマップ第6ステージ コースマップ image:RCS Sport


アドリア海に面したポルト・サンテルピディオに向かって、マルケ州の丘陵地帯と海岸路を行く189kmで行なわれたティレーノ〜アドリアティコ第6ステージ。スプリンターにとっては今大会2回目ならびに最後のチャンスだ。

逃げグループを形成するチェザーレ・ベネデッティ(イタリア、ネットアップ・エンデューラ)ら逃げグループを形成するチェザーレ・ベネデッティ(イタリア、ネットアップ・エンデューラ)ら photo:Riccardo Scanferlaピーター・ケノー(イギリス、チームスカイ)、スティーブ・モラビート(スイス、BMCレーシング)、ジャック・バウアー(ニュージーランド、ガーミン・シャープ)、チェザーレ・ベネデッティ(イタリア、ネットアップ・エンデューラ)の4名が序盤から長時間のエスケープを試みたものの、スプリンターチームを振り切ることは出来なかった。

集団ペースアップを試みるキャノンデール集団ペースアップを試みるキャノンデール photo:Cor Vosレースの鍵を握ったのは、フィニッシュ41km手前に位置するGPMサンテルピディオ・ア・マーレだった。登坂距離2.7km/平均勾配5.6%の登りでキャノンデールがペースアップを試みると、優勝候補の一角マルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)が脱落。まだ登りを克服出来ていないジャーマンスプリンターは登りで1分のロスを被った。

登りで遅れたキッテルのために第2集団を率いるジャイアント・シマノ登りで遅れたキッテルのために第2集団を率いるジャイアント・シマノ photo:Cor Vosキッテルのためにジャイアント・シマノが一丸となって第2集団を率いたものの、キャノンデールやロット・ベリソルがキッテル復帰阻止のためにメイン集団のペースを上げ続ける。2つの集団のタイム差は1分を推移しながらフィニッシュ地点に向かった。

オメガファーマ・クイックステップとキャノンデールが牽引するメイン集団オメガファーマ・クイックステップとキャノンデールが牽引するメイン集団 photo:Riccardo Scanferla序盤からの逃げは残り10kmで吸収。続いてフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)らがカウンターアタックを仕掛けたものの残り3kmでハイスピードな集団に飲み込まれる。キッテルを含む第2集団は30秒後方にまで迫ったものの、最後まで集団復帰は叶わず、先頭ではオメガファーマ・クイックステップによるリードアウトが始まった。

集団復帰を目指すマルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)集団復帰を目指すマルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ) photo:Riccardo Scanferla前日にマリアアッズーラを失ったミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド)まで牽引に加わるチーム一丸となった走りで、カヴェンディッシュのためにトレインを組むオメガファーマ・クイックステップ。すると残り1.5kmで大落車が発生し、アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)がこれに巻き込まれてしまう。

ペタッキに発射されたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)がスプリントペタッキに発射されたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)がスプリント photo:Riccardo Scanferla落車によって集団が割れ、オメガファーマ・クイックステップの独壇場と化したゴールスプリント。マーク・レンショー(オーストラリア)とアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)に発射されたカヴェンディッシュに対抗出来る者は誰もいなかった。

「素晴らしいチームワークだった。常にメンバー全員が近くにいて、登りで遅れた時もすぐに集団まで引き上げてくれた。残り4kmの時点でまだハイパワーエンジンが揃っていて、レンショーは最後の500mを1000ワット以上で踏み続けた。僕は彼らの後ろに控えていただけだ」と、チームメイトとともに勝利を喜びあうカヴェンディッシュは語る。

「クヴィアトコウスキーの総合陥落で沈んでいたチームを、こうして鼓舞することが出来て嬉しい。脚が揃っているだけじゃなく、本当の友人のような固い絆がチームの中にある。こんな結束力を待ちこがれていた。23歳のキアト(クヴィアトコウスキー)やトレンティンから40歳のアレッサンドロ(ペタッキ)までいるけど、まるで自転車で遊んでいる少年のグループみたいだ」。

カヴェンディッシュは今シーズン2勝目。キッテルやグライペルと比べると勝利数は少ないが、ミラノ〜サンレモに向けて調子は整っている。「昨年のツールの疲労がなかなか取れなかったので、今シーズンはスタートを遅らせた。だから昨年よりもフレッシュだ。今年ミラノ〜サンレモに出場しないと後悔すると思う。新たな登りが加わる前に、もう一度見せ場を作りたい。ミラノ〜サンレモのコース変更(登りを加えて難易度アップ)には反対。それはまるでバンクシー(社会風刺的アートを行なう覆面アーティスト)にローマのパンテオンを描かせるようなものだと思う」。

トニ・ウレル(フランス、ユーロップカー)のために位置取りした全日本チャンピオンの新城幸也は、残り1.5kmの落車をかわしてスプリントへ。ウレルをステージ5位に送り込むとともに、自身も11位でフィニッシュしている。「トニー(ウレル)が上位でゴールして良かった。カベンデッシュの後ろで良い位置をキープできていたんだけど残念。でも、目の前の落車に巻き込まれず好位置でゴールできたことは良かった」と、危険なスプリントを振り返っている。

ティレーノ〜アドリアティコは翌日の9.1km個人タイムトライアルで閉幕を迎える。最終ステージを残してアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)が2分以上の総合リードをキープしている。

選手コメントはレース公式リリースならびにTeamユキヤ通信より。



後続を大きく引き離すスプリントで勝利したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)後続を大きく引き離すスプリントで勝利したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Riccardo Scanferlaアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)と勝利を喜ぶマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)と勝利を喜ぶマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Cor Vos


ティレーノ〜アドリアティコ2014第6ステージ結果
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)
2位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)
3位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)
4位 アルノー・デマール(フランス、FDJ.fr)
5位 トニ・ウレル(フランス、ユーロップカー)
6位 ロバート・ワグナー(ドイツ、ベルキン)
7位 クリスティアン・ズバラーリ(イタリア、MTNキュベカ)
8位 バルトス・フザルスキー(ポーランド、ネットアップ・エンデューラ)
9位 マーク・レンショー(オーストラリア、オメガファーマ・クイックステップ)
10位 ダヴィデ・アッポローニオ(イタリア、AG2Rラモンディアール)
11位 新城幸也(日本、ユーロップカー)
4h16'15"












個人総合成績
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
2位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
3位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ・サクソ)
4位 ジュリアン・アレドンド(コロンビア、トレックファクトリーレーシング)
5位 ジャンクリストフ・ペロー(フランス、AG2Rラモンディアール)
6位 ミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ)
7位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)
8位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)
9位 ジャンパオロ・カルーゾ(イタリア、カチューシャ)
10位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、トレックファクトリーレーシング)
25h17'51"
+2'08"
+2'15"
+2'39"
+2'40"
+2'50"
+2'51"
+2'56"
+2'58"
+3'06"



ポイント賞
ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)

山岳賞
マルコ・カノーラ(イタリア、バルディアーニCSF)

ヤングライダー賞
ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)

チーム総合成績
AG2Rラモンディアール

text:Kei Tsuji
photo:Riccardo Scanferla, Cor Vos

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