これまでカンパニョーロの11スピードのコンポーネントは、「スーパーレコード」、「レコード」、「コーラス」の3機種のみだった。そこに今回、第4のコンポとして「アテナ」が加わった。果たしてその実力やいかに? 
さっそくシクロワイアード号(エヴァディオ Venus)に組み込んで、徹底的にインプレしてみた。まずは第1回として、最も気になる変速系のインプレをお届けしよう!

カンパニョーロ ATHNA11スピード 今回のテスト車に組み込んだキットカンパニョーロ ATHNA11スピード 今回のテスト車に組み込んだキット
シマノに先立つこと3年、2000年にリアスプロケットの10スピード化を果たしたカンパニョーロであるが、09モデルから 「スーパーレコード」、「レコード」、「コーラス」をついに11スピード化した。すでにこの上位3機種は09年始めから発売済みで、多くのカンパニョーロファンから好評を得ている。

アテナフル装備のシクロワイアード号(エヴァディオ Venus)アテナフル装備のシクロワイアード号(エヴァディオ Venus) photo:MakotoAYANO/cyclowired.jp
今回、これら上位機種に続く「第4の11スピードコンポ」として登場したのが、ここに紹介する「アテナ」だ。アテナのコンセプトは、非常に明快である。上位機種がカーボンやチタンを多様するのに対して、アテナはアルミをメイン材料とすることにより、圧倒的なコストパフォーマンスを実現しているのだ。

「11スピードの高機能を多くのユーザーに」というのが、基本的なコンセプトだと言うことができるだろう。

インプレライダー・仲沢隆が丸一日かけて、アテナをテストしたインプレライダー・仲沢隆が丸一日かけて、アテナをテストした しかし、そこに投入されている技術は、基本的に上位機種と同等だ。カンパニョーロの広報の言葉を借りれば、「設計のテクニカルソリューションは、スーパーレコード/レコード/コーラスとまったく同じものを採用している」のである。

つまり、少々重量が重たくなること以外は、上位機種とまったく同等の機能を堪能することができるのだ。

これを「お買い得」と言わずして、何をお買い得と言ったら良いのであろうか? さすがレースの本場・イタリア生まれのコンポーネントだ。ミドルグレードと言えども、レーシングコンポとしての本質を見失っていないのである。


― インプレッション ―

まずは、エルゴパワーのブラケットの握り心地を誉めなければいけないだろう。スーパーレコード/レコード/コーラスで好評を得た“ヴァリクッション”と呼ばれるブラケットカバーが採用されているのだ。裏側が“ワッフル状”になったヴァリクッションのショック吸収性は最高だ。

エルゴパワー。レバーはアルミにカーボンラップエルゴパワー。レバーはアルミにカーボンラップ エルゴパワーの握り心地はとても素晴らしいエルゴパワーの握り心地はとても素晴らしい


ブラケット自身のエルゴノミックなデザインとも相まって、とても手のひらにしっくりとする握り心地である。長時間のライディングでも、手のひらが痛くなることはまったくなかった。

さて肝心の変速フィールであるが、これは最上位機種のスーパーレコードとまったく同等と言ってよい。まずはリヤの変速系であるが、10スピード時代よりも明らかに軽くなったクリック感、カチッと小気味よく決まる変速の早さ、トルクのかかった状態での変速のスムースさ……、どれをとってもスーパーレコードに劣る部分はない。

フロントディレーラーと造形美を誇るチェーンリングフロントディレーラーと造形美を誇るチェーンリング リアディレイラーと11スピードカセットスプロケットリアディレイラーと11スピードカセットスプロケット


特にトルクのかかった時の変速は、10スピード時代よりも大きく進化した部分。上りで踏み続けながら変速しても、カチッという軽い音とともに、何のストレスもなく変速を完了してくれるのだ。

フロントも素晴らしい。インナー×トップ、アウター×ローなどチェーンをクロスで使ってもケージが干渉することがなく、あの鬱陶しい「カリカリ……」という音から完全に解放される。
トルクのかかった変速にもストレスは全く感じないトルクのかかった変速にもストレスは全く感じない
また、アンチフリクション処理が施されたプレートは、チェーンが当たっても滑りが良く、これが変速の早さにも寄与しているものと思われる。

もともと定評の高かったフロント変速系だが、明らかにリファインされているのは、さすがカンパニョーロだ。
この素晴らしい変速系を楽しむだけでも、アテナを買う理由としては十分だ。

アテナでも十分に高価なコンポーネントではあるものの、スーパーレコードと比べたらはるかに気軽に使うことができる。

カンパニョーロはとことん「道具」として使うことによってその真価を発揮するから、そういった点でもアテナはオススメのコンポであると言うことができるだろう。

次回は「駆動系」と「制動系」のインプレッションをお届けしたい。


― スペック ―

ATHENA11s エルゴパワーATHENA11s エルゴパワー エルゴパワー
アルミ・カーボンレバー ダブルカーブレバー ヴァリクッション、低摩擦ポリマーを使用した内部機構 
重量 360g 価格(税込み)33,390円





ATHENA11s スプロケットATHENA11s スプロケット スプロケット
コーラスのウルトラシフトスプロケット採用 スチール製スプロケット ニッケルクローム表面処理
アルミ製ロックリング ウルトラシフト歯先設計 ウルトラシフトシンクロニゼーション
歯数構成11-23・11-25・12-25・12-27 重量 236g
価格(税込み)26,880円(11-23・11-25) 22,050円(12-25・12-27)


ATHENA11s クランクセットATHENA11s クランクセット クランクセット
アルミバージョンとカーボンバージョンの2種 スーパーサイズ設計 8ピンアウターチェーンリング
ウルトラシフトシンクロニゼーション ウルトラシフト歯先設計
歯数 53×39T(スタンダード) 50×34T(コンパクト) クランク長170 / 172.5 / 175mm
重量 869g(アルミバージョン) 756g(カーボンバージョン)
価格(税込み)30,660円(アルミバージョン) 49,560円(カーボンバージョン)

ATHENA11s FディレイラーATHENA11s Fディレイラー フロントディレイラー
スチール製プレート ウルトラシフト11Sジオメトリーインナーケージ アンチフリクション処理
直付け・32mmバンド・35mmバンド 
重量 92g 価格(税込み)5,880円(直付け) 6,720円(バンド)




ATHENA11s RディレイラーATHENA11s Rディレイラー リヤディレイラー
アルミ製ウルトラシフトフロントプレート ウルトラシフトパラレログラム
アルミ製ウルトラシフトボディ 軽量素材プーリー
重量 218g 価格(税込み)17,850円





ATHENA11s キャリパーATHENA11s キャリパー ブレーキ
スケルトンデザイン ディファレンシャルブレーキ 特殊コンパウンドパッド イーガルアルミ合金ねじ
重量 322g 価格(税込み)18,900円

チェーン
コーラスの11Sチェーン採用 5.5mm幅 20%強度をアップしたスチール製
Ni-PTFT表面処理 ウルトラリンクシステム 重量 256g
価格(税込み)8,400円


グループセット重量 2402g(アルミクランク仕様) 2288g(カーボンクランク仕様)
グループセット価格 135,660円(アルミクランク仕様) 154,560円(カーボンクランク仕様)



インプレライダーのプロフィール

仲沢 隆(自転車ジャーナリスト)仲沢 隆(自転車ジャーナリスト) 仲沢 隆(自転車ジャーナリスト)


ツール・ド・フランスやクラシックレースなどの取材、バイク工房の取材、バイクショーの取材などを通じて、国内外のロードバイク事情に精通する自転車ジャーナリスト。2007年からは大学院にも籍を置き、自転車競技や自転車産業を文化人類学の観点から研究中。




edit:仲沢 隆
photo:綾野 真