ロード世界選手権史上最長の57.9kmコースで行なわれたエリート男子個人タイムトライアル。過去2年連続で優勝しているトニ・マルティン(ドイツ)が、ライバルたちを大差で破って優勝した。マルティンが記録した平均スピード52.9km/hは、世界選手権の個人タイムトライアル史上最速。



少し笑みを浮かべてスタートを待つトニ・マルティン(ドイツ)少し笑みを浮かべてスタートを待つトニ・マルティン(ドイツ) photo:Kei Tsuji通常、世界選手権の個人タイムトライアルは40〜50kmの距離で行なわれることが多く、1時間以内でゴールする場合がほとんど。しかしフィレンツェ大会の距離は史上最長の57.9kmで、レース時間は1時間を超える。コースは序盤の登りを除いてほぼ真っ平ら&直線的で、微風が選手たちの背中を押した。

トニ・マルティン(ドイツ)のアウターリングは58Tトニ・マルティン(ドイツ)のアウターリングは58T photo:Kei Tsuji保養地モンテカティーニ・テルメをスタートしたのは51カ国・77名の選手たち。経験とパワーが物を言うスーパーロングコースで、終盤スタートの実力者3名がトップ争いを繰り広げた。

1時間05分36秒のトップタイムをマークしたトニ・マルティン(ドイツ)1時間05分36秒のトップタイムをマークしたトニ・マルティン(ドイツ) photo:TDWsport/Kei Tsujiスタート直後に始まる標高差100mほどの丘に置かれた第1計測(7.3km)で、最後から3番手スタートのファビアン・カンチェラーラ(スイス)が手始めにトップタイムを更新。最後から2番手スタートのブラドレー・ウィギンズ(イギリス)はカンチェラーラから15秒遅れ。最終走者マルティンの力を持ってしても、0.36秒カンチェラーラに届かない。

世界選TTで史上最多4回(2006年、2007年、2009年、2010年)優勝を飾っているカンチェラーラが、復活を印象づける好スタートを切る。しかしコースが平坦に変わると、ディフェンディングチャンピオンのマルティンがリードを奪い、じわりじわりとタイム差を広げて行った。

58x11Tというビッグギアを低いケイデンスで踏んだマルティンが、60km/h近いスピードで平地を巡航する。第2計測(24.5km)でマルティンはカンチェラーラに対して14秒のリードを築くことに成功。その後もマルティンのスピードは落ちなかった。

「石畳やコーナーが連続する後半はカンチェラーラ向き。だから前半からリードしなければならないと思っていた」と語るマルティンのスピードは落ちず、第3計測(42.8km)で両者のタイム差は29秒まで広がった。



第1計測(7.3km)
1位 カンチェラーラ 9'38"
2位 マルティン   +00"
4位 クアーデ    +12"
5位 フィニー    +12"
6位 ウィギンズ   +15"
11位 ピノッティ   +21"
12位 キリエンカ   +23"
25位 マローリ    +33"
26位 ラーション   +33"
27位 シウトソウ   +33"

第2計測(24.5km)
1位 マルティン   27'27"
2位 カンチェラーラ +14"
3位 キリエンカ   +34
4位 ウィギンズ   +38"
5位 フィニー    +55"
6位 クアーデ    +56"
9位 ピノッティ   +1'15"
13位 マローリ   +1'22"
14位 ラーション  +1'27"
16位 シウトソウ  +1'32"

第3計測(42.8km)
1位 マルティン   47'24"
2位 カンチェラーラ +29"
3位 ウィギンズ   +41"
4位 キリエンカ   +1'02"
5位 フィニー    +1'20"
6位 クアーデ    +1'49"
7位 ピノッティ   +2'03"
8位 マローリ    +2'05"
9位 ラーション   +2'06"
11位 シウトソウ  +2'14"




ブラドレー・ウィギンズ(イギリス)がスタート台を駆け下りるブラドレー・ウィギンズ(イギリス)がスタート台を駆け下りる photo:Kei Tsuji48秒差の3位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス)48秒差の3位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス) photo:TDWsport/Kei Tsuji



1分26秒差の4位 ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ)1分26秒差の4位 ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ) photo:TDWsport/Kei Tsujiマルティンが快調にリードを広げる中、ウィギンズの追い上げによってカンチェラーラの銀メダルに黄信号が点滅する。「レースの早い時点で無線が聞こえなくなり、タイム差が分からないまま走り続けた」というカンチェラーラ。グランツール向けの身体から5〜6kgほど増量して挑んだウィギンズが後半にかけてペースを上げ、第3計測でカンチェラーラと12秒差に。カンチェラーラは市街地の石畳やテクニカルコーナーでむしろタイムを失ってしまった。

2分08秒差の5位 テイラー・フィニー(アメリカ)2分08秒差の5位 テイラー・フィニー(アメリカ) photo:TDWsport/Kei Tsuji「ラスト5kmはウィニングランのようだった。ゴール手前のコーナーではリスクを負わずに慎重に走ったよ」。安全マージンをとって走りきったマルティンが、3連覇を意味する3本指を立てフィニッシュ。ゴール後、マルティンは疲労と喜びで地面に倒れ込んだ。

マルティンの優勝タイムは1時間5分36秒。平均スピードは世界選TT史上最速の52.9km/h。2位にはカンチェラーラを2秒差で下したウィギンズが入り、カンチェラーラが3位に。マルティンが初めて世界TTチャンピオンに輝いた2011年のコペンハーゲン大会と全く同じ順位でのフィニッシュとなった。

3年連続でアルカンシェルを受け取ったマルティンは「今日の走りはパーフェクトだったと思う。パンクや落車が無い限り勝てると思っていた」とレース後の記者会見でコメントする。敗れたウィギンズとカンチェラーラも「マルティンだけレベルが違った」と語るほど、28歳のジャーマンクロノマンの走りは冴えていた。



3本指を立ててゴールするトニ・マルティン(ドイツ)3本指を立ててゴールするトニ・マルティン(ドイツ) photo:TDWsport/Kei Tsuji
ゴール後、地面に倒れ込むトニ・マルティン(ドイツ)ゴール後、地面に倒れ込むトニ・マルティン(ドイツ) photo:TDWsport/Kei Tsuji2位ブラドレー・ウィギンズ(イギリス)、優勝トニ・マルティン(ドイツ)、3位ファビアン・カンチェラーラ(スイス)2位ブラドレー・ウィギンズ(イギリス)、優勝トニ・マルティン(ドイツ)、3位ファビアン・カンチェラーラ(スイス) photo:Kei Tsuji


選手コメントは別ページにてお伝えします。その他の写真はフォトギャラリーにて!

ロード世界選手権2013エリート男子個人タイムトライアル結果
1位 トニ・マルティン(ドイツ)                      1h05'36"
2位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス)                    +46"
3位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス)                   +48"
4位 ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ)                   +1'26"
5位 テイラー・フィニー(アメリカ)                     +2'08"
6位 ラスムスクリスティアン・クアーデ(デンマーク)             +2'36"
7位 マルコ・ピノッティ(イタリア)                     +2'41"
8位 アドリアーノ・マローリ(イタリア)                   +2'51"
9位 グスタフエリック・ラーション(スウェーデン)              +2'58"
10位 カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ)              +2'59"

11位 ヤン・バルタ(チェコ)                        +3'07"
12位 ローハン・デニス(オーストラリア)                  +3'09"
13位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド)                  +3'13"
14位 ヨナタン・カストロビエホ(スペイン)                 +3'13"
15位 ネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル)                 +3'14"
16位 クリストフ・ファンデワール(ベルギー)                +3'17"
17位 リッチー・ポルト(オーストラリア)                  +3'22"
18位 ウラディミール・グセフ(ロシア)                   +3'28"
19位 デミトリ・グルージェフ(カザフスタン)                +3'35"
20位 ベアト・グラブシュ(ドイツ)                     +3'41"

text&photo:Kei Tsuji in Firenze, Italy
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