将来的にツール・ド・フランスで勝つ器と言われるティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)がマイヨブランの最有力候補。ティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)やナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター)らがヴァンガーデレンの2年連続新人賞阻止に挑む。

ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム) photo:Makoto Ayano1975年のツール・ド・フランスで初めて導入されたマイヨブランは、将来のマイヨジョーヌ候補がしのぎを削るもう一つの総合争い。日本では「新人賞」の名前で通っているが、忠実に訳すならば「若手賞」。対象となるのは、プロ1年目の新人だけではなく、誕生日が1988年1月1日以降の選手、つまり25歳未満の選手だ。

ティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)ティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr) photo:Cor Vos新人賞対象選手が総合優勝に輝いたのは過去に数例ある。1983年にローラン・フィニョン(フランス)、1997年にヤン・ウルリッヒ(ドイツ)、2007年にアルベルト・コンタドール(スペイン)が、マイヨジョーヌとマイヨブランを同時に獲得している。

ナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター)ナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター) photo:vueltapaisvasco.diariovasco.com2010年、アンディ・シュレク(ルクセンブルク)は総合2位でフィニッシュし、3度目の新人賞を獲得。その後、コンタドールが失格になったことで、史上4例目の新人賞対象選手による総合優勝が決まった。

モレーノ・モゼール(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)モレーノ・モゼール(イタリア、キャノンデールプロサイクリング) photo:RCS Sport昨年はティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)との接戦を制したティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)が初獲得。新人賞3位以下を1時間引き離し、マイヨブラン争いを繰り広げた。

今年もヴァンガーデレンがマイヨブランの本命。一つ気がかりなのは、BMCレーシングチームにはカデル・エヴァンス(オーストラリア)という総合エースがいること。チーム戦略としてエヴァンスのアシストを命ぜられれば、ヴァンガーデレンは自分のために走ることが出来ない。

一方、ピノはエースとして100%自分のために走ることが可能。昨年出場選手の中で最年少ながら総合10位でフィニッシュしたピノは、更なるステップアップを目指す。個人TTの距離が短いことはピノにとって朗報だ。

ピュアクライマーながら、TTも走れてしまうナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター)にも注目。今年バスク一周で総合優勝したクインターナがツールデビューを飾る。昨年のブエルタ・ア・エスパーニャでは総合36位だった。

他にもアンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)やミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)、モレーノ・モゼール(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)と言った若者たちが新人賞争いに加わる。まだ23歳のペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)は前半ステージでマイヨブランに袖を通すだろう。

ちなみに今大会の最年少はダニー・ファンポッペル(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)。なんと1993年7月26日生まれの19歳で、これは大戦後ツールの中で最年少出場記録だ。


ツール・ド・フランス2012新人賞ランキング
1位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)    87h45'51"
2位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ・ビッグマット)               +6'13"
3位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ラボバンク)           +1h05'48"
4位 レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)             +1h16'48"
5位 ゴルカ・イサギーレ(スペイン、エウスカルテル)             +1h21'15"
6位 ラファエル・バルス(スペイン、ヴァカンソレイユ・DCM)         +1h26'53"
7位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)     +1h27'33"
8位 ドミニク・ネルツ(ドイツ、リクイガス・キャノンデール)         +1h31'08"
9位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、スカイプロサイクリング) +1h41'30"
10位 ダヴィデ・マラカルネ(イタリア、ユーロップカー)           +1h46'41"

歴代のマイヨブラン獲得者(同年の総合成績)
2012年 ティージェイ・ヴァンガーデレン)       総合5位
2011年 ピエール・ロラン(フランス)         総合10位
2010年 アンディ・シュレク(ルクセンブルク)     総合1位
2009年 アンディ・シュレク(ルクセンブルク)     総合2位
2008年 アンディ・シュレク(ルクセンブルク)     総合12位
2007年 アルベルト・コンタドール(スペイン)     総合1位
2006年 ダミアーノ・クネゴ(イタリア)        総合12位
2005年 ヤロスラフ・ポポヴィッチ(ウクライナ)    総合12位
2004年 ウラディミール・カルペツ(ロシア)      総合13位
2003年 デニス・メンショフ(ロシア)         総合11位
2002年 イヴァン・バッソ(イタリア)         総合11位
2001年 オスカル・セビリャ(スペイン)        総合7位
2000年 フランシスコ・マンセーボ(スペイン)     総合9位
1999年 ブノワ・サルモン(フランス)         総合16位
1998年 ヤン・ウルリッヒ(ドイツ)          総合2位
1997年 ヤン・ウルリッヒ(ドイツ)          総合1位
1996年 ヤン・ウルリッヒ(ドイツ)          総合2位
1995年 マルコ・パンターニ(イタリア)        総合13位
1994年 マルコ・パンターニ(イタリア)        総合3位
1993年 アントニオ・マルティン・ベラスコ(スペイン) 総合12位
1992年 エディ・ボウマンス(オランダ)        総合14位
1991年 アルバロ・メヒア(コロンビア)        総合19位
1990年 ジル・ドリオン(フランス)          総合15位

text:Kei Tsuji