赤道直下、炎天下のインドネシア・スマトラ島で今年で5回目となるツール・ド・シンカラが開催された。レースを支配したのはイランのタブリーズ・ペトロケミカル。ベテラン選手のミズバニがチーム力を武器に2009年、10年に続く3度目の総合優勝を挙げた。

温かい大会運営が魅力の南国レース

6月2日〜9日までインドネシアのスマトラ島で開催されたツール・ド・シンカラ(UCI2.2)。まだ今年で5回目の開催と新しいレースになるが、第1回大会から欠かさず日本籍のチームが参加しており、スポーツ&ツーリズムを謳うホスピタリティ溢れる大会はアジアツアーの王道レースとして定着してきた。

小さな街でも沿道には大勢の住民たちが駆け付けて声援を送る小さな街でも沿道には大勢の住民たちが駆け付けて声援を送る (c) Sonoko TANAKA
沿道で声援を送る小学生たち。好奇心旺盛で目を輝かせる沿道で声援を送る小学生たち。好奇心旺盛で目を輝かせる (c) Sonoko TANAKA「何か買わない?」レーススタート前の風景「何か買わない?」レーススタート前の風景 (c) Sonoko TANAKA


今年は休息日が設けられて、8日間の日程で7ステージが開催された。第3、第5ステージに厳しい山岳が組み込まれ、総走行距離は1,051km。天気が良いと気温は35℃を軽く超し、日に日に出走選手が減っていくサバイバルなステージレースとなった。そして大会運営の面では昨年に引き続き、ツール・ド・フランスの主催者であるA.S.Oがバックアップし、賞金総額約1,200万円、沿道には延べ70万人が集まるビッグイベントへと年々成長を遂げている。

パリアマンでの伝統祭事に使う神輿の前を通過する選手たちパリアマンでの伝統祭事に使う神輿の前を通過する選手たち (c) Sonoko TANAKA

第5ステージでアタックを仕掛けたオスカル・プジョル(スペイン、ポリゴン・スイート・ネイス)第5ステージでアタックを仕掛けたオスカル・プジョル(スペイン、ポリゴン・スイート・ネイス) (c) Sonoko TANAKA2人のディフェンディングチャンピオンの明暗

今年は、2009年と2010年の総合優勝者、ガダール・ミズバニ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)と、昨年の優勝者オスカル・プジョル(スペイン、ポリゴン・スイート・ナイス)が揃って参加し、両者の対決に注目が集まった。名だたるイランの強豪選手をチームメイトとして従えるミズバニと、アイルランド籍のコンチコンチネンタルチームに移籍して参戦するプジョル。両者のチーム力の差が結果に大きく現れることになった。

勝負が大きく動いたのは、翌日に2回目の山岳ステージを控えた第4ステージだった。平坦基調のコースで、14人3度目のイエロージャージを獲得したガダール・ミズバニ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)3度目のイエロージャージを獲得したガダール・ミズバニ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル) (c) Sonoko TANAKAの逃げが決まり、タブリーズ・ペトロケミカルはミズバニを含む3選手を逃げ集団に送り込み、彼らが積極的に逃げ集団を牽引し逃げ切った。第1ステージでステージ優勝をしたアリレザ・アスグハルザデ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)が総合リーダーとなり、プジョルとは5分32秒差、上りが得意なミズバニもプジョルに2分2秒差を付けて、最後の山岳ステージを迎えることになった。

クイーンステージである第5ステージ、中盤に標高差1,100メートルの上りを一気に駆け上がる1級山岳が組み込まれた138kmのコースで、スタート直後にプジョルがアタックをかけると、5人の逃げが決まった。しかし、タブリーズ・ペトロケミカルはしっかりとそこにアミール第5ステージでタイム差を詰められなかったオスカル・プジョル(スペイン、ポリゴン・スイート・ネイス)が頭を抱える第5ステージでタイム差を詰められなかったオスカル・プジョル(スペイン、ポリゴン・スイート・ネイス)が頭を抱える (c) Sonoko TANAKA・カラドザフ(イラン)を送り込み、登坂が始まると、先頭はプジョルとカラドザフ2人に絞られた。そしてプジョルが遅れ始めたところで、メイン集団から単独でミズバニがアタックをかけて、プジョルを抜き去り、ミズバニとカラドザフが2人でゴールまで走り切ってワンツーフィニッシュ。ミズバニがイエロージャージを獲得し、残りの平坦ステージを難なく終えると最終日まで首位を守った。結果的にプジョルは10分10秒遅れの6位でレースを終えた。

厳しい環境に苦戦を強いられたナショナルチーム

ツール・ド・熊野やツール・ド・韓国と日程が重なったレースに参戦した日本ナショナルチームレースに参戦した日本ナショナルチーム (c) Sonoko TANAKAため、第1回大会から欠かさず出場していた愛三工業レーシングチームは参戦できず、国内チームは若手中心で構成された日本ナショナルチームが唯一参加した。メンバーは六峰亘(ブリヂストンアンカー)、秋丸湧哉(EQA U23)、木村圭佑(京都産業大学)、山本隼(山梨・中央大学)、和田力(日本大学)、板橋義浩(日本大学)、大田口凌(東北学院大学)。

若い選手たちは厳しい山岳ステージで健闘し、第5ステージを終えて、木村が総合10位につける活躍を見せたが、あいにく体調不良により木村は第6ステージでリタイア。しかし最終ステージでは、六峰がメイン集団のスプリントで5着となり、ステージ8位でフィニッシュした。チームの総合最高位は和田の19位。チーム総合順位は5位という結果だった。

高橋松吉監督のコメント
「厳しい山岳ステージのあるレースなので、若手選手が総合上位に入ることは難しいので、チームとしてはステージ狙いで、できるだけUCIポイントを獲得することが目標でした。六峰と秋丸は前回も参加していたので、ほかの選手よりも余裕はあり、よく走れていましたが、あとの選手は初めての参加で、経験不足から、暑さ対策や水分補給、食事管理などが難しく、後半になって体調を崩してしまい、やや残念な結果になってしまった。

これまでこのような厳しいレースを走ったことがない選手が多かったのですが、山岳ではよく走れていたので、これから経験を積んで、しっかりと準備をして挑めば、いい結果が出ると思います」

炎天下でのレースを終えて、氷を使ってクールダウンする炎天下でのレースを終えて、氷を使ってクールダウンする (c) Sonoko TANAKA山岳ステージで総合リーダーと同じ前方集団で走る秋丸湧哉(日本ナショナル)山岳ステージで総合リーダーと同じ前方集団で走る秋丸湧哉(日本ナショナル) (c) Sonoko TANAKA
最終日の表彰台。華やかな演出で大会のフィナーレを祝う最終日の表彰台。華やかな演出で大会のフィナーレを祝う (c) Sonoko TANAKA

ツール・ド・シンカラ2013結果
ステージ優勝
第1ステージ ブキティンギ〜ボンジョル(104km)
アリレザ・アスグハルザデ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)
第2ステージ パヤクンブ〜シンカラ(124.5km)
ヤコブ・カウフマン(オーストラリア、バジェットフォークリフト) 
第3ステージ パダンパンジャン〜イスタノ・バサ・パガルユン(208km)
ヨハン・コエネン(ベルギー、ディフェールダンジェ・レシュ)
第4ステージ シジュンジュン〜プラウ・プンジュン(189.5km)
シーケオン・ロー(マレーシア、OCBC・シンガポール)
第5ステージ サワルント〜ムアラ・ラブー(138km)
アミール・カラドザフ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)
第6ステージ パリアマン〜パイナン(144.5km) 
ロンネル・フアルダ(フィリピン、セブンイレブン)
第7ステージ パダン・パリアマン〜パダン周回コース(143.5km)
メディ・ソウラビ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)

個人総合成績
1位 ガダール・ミズバニ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)26h7'55"
2位 ヨハン・コエネン(ベルギー、ディフェールダンジェ・レシュ)+5'40"
3位 アミール・カラドザフ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)+6'32"
4位 クリスティアン・ユエル(デンマーク、バジェットフォークリフト)+9'20"
5位 アリレザ・アスグハルザデ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)+9'42"
6位 オスカル・プジョル(スペイン、ポリゴン・スイート・ネイス)+10'10"
19位 和田力(日本ナショナル)+17'52"
26位 秋丸湧哉(日本ナショナル)+21'04"
33位 山本隼(日本ナショナル)+28'53"
66位 六峰亘(日本ナショナル)+58'45"

ポイント賞
ザンブリ・サレー(マレーシア、トレンガヌ)

山岳賞
アミール・カラドザフ(イラン、タブリーズ・ペトロケミカル)

チーム総合成績
1位 タブリーズ・ペトロケミカル


photo & text : Sonoko TANAKA