「今日のレース運びはパーフェクトだった。上りでは必死に食らいついたよ」と語るのは、混沌とした集団スプリントを制したタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ)。昨年の8月以来となる久しぶりの勝利を上げ、復活ののろしを上げた。

スタート地点に現れたペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール・プロサイクリング)スタート地点に現れたペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール・プロサイクリング) photo:Tour Of California/GettyImagesサンフランシスコに向けて北上を続けるツアー・オブ・カリフォルニア(UCI2.HC)。迎えた第4ステージの舞台となったのは、ロサンゼルスから程近いサンタ・クラリタをスタートして西海岸の街サンタバーバラへを目指す134.6km。

サインに応えるタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ)サインに応えるタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ) photo:Tour Of California/GettyImages個人タイムトライアルを除いて大会中最も平坦なステージとなり、2つの山岳ポイントが用意されるもののいずれも難易度は低い。終盤のおよそ20kmは細かいアップダウンが続く区間ではアタックが予想されるものの、最終的には大集団スプリントに持ち込まれると見られていた。

逃げるチャド・ベイヤー(アメリカ、チャンピオンシステムプロサイクリング)ら逃げるチャド・ベイヤー(アメリカ、チャンピオンシステムプロサイクリング)ら photo:Tour Of California/2013jimsaffordこの日はスタート直後からスピーディーな展開へと持ち込まれ、およそ20km地点でフランク・ピップ(アメリカ、ビッセルプロサイクリング)、チャド・ベイヤー(アメリカ、チャンピオンシステムプロサイクリング)、ネイサン・ブラウン(アメリカ、ボントレガー)が先行する。

カリフォルニアの丘陵地帯を走るカリフォルニアの丘陵地帯を走る photo:Tour Of California/Brian Hodesこの動きをクリストファー・ボールドウィン(アメリカ、ビッセルプロサイクリング)、ジェームズ・スタンパー(アメリカ、5アワーエナジー)、マーシュ・クーパー(カナダ、オプタムp/b)が追走の後に合流し、6名の先頭集団が形成される。

コンチネンタルチームの選手で構成された逃げグループは、24.5km地点で2分、その10km後には3分20秒と次第にタイムギャップを広げていく。スタートから40km地点では、この日の最大リード4分10秒を奪うことに成功する。第1山岳ポイントは、山岳賞を着るカーター・ジョーンズ(アメリカ、ビッセルプロサイクリング)のチームメイトであるボールドウィンが獲り、危険の芽を摘んでいく。

巨大化するテキサスロングホーンの角巨大化するテキサスロングホーンの角 photo:Tour Of California/Brian Hodesゴールでの集団スプリントが見込まれていたため、この日も前日に続いてガーミン・シャープやキャノンデール・プロサイクリングが集団を牽引。一方でリーダージャージのアレクシス・アセヴェド(コロンビア)擁するジェーミス・ハーゲンは、コントロールを担う責務から逃れた。

第2山岳ではヴァカンソレイユ・DCMが組織だってペースアップを敢行したものの、思うような効果は上げることが出来ず。この動きの中、ゴールまで30kmを残して先行6名とのタイム差は1分ほどまで短縮。集団は徐々にゴールに向けて緊張感を高めていく。

残り20kmで、タイム差は15秒。吸収を嫌って先頭からはピップとクーパーが飛び出すも、逃げ切れるだけのリードを奪うには至らない。直ぐ後ろに迫る集団からは、残り12.7km地点で41歳のイェンス・フォイクト(ドイツ、レディオシャック・レオパード)がアタックを繰り出した。

これを追ってジェイコブ・レイズ(アメリカ、ガーミン・シャープ)やペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール・プロサイクリング)が飛び出したが、集団はこの強力な動きを見逃すことなく吸収。更にホセ・メンデス(ポルトガル、ネットアップ・エンデューラ)やシルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ)らが次々と攻撃するが、数の揃った集団を振り切ることは出来なかった。

アシストとして走るアメリカチャンピオンのティモシー・ダッガン(サクソ・ティンコフ)アシストとして走るアメリカチャンピオンのティモシー・ダッガン(サクソ・ティンコフ) photo:Tour Of California/2013jimsafford集団スプリントに持ち込むべく残り7kmから不安定な集団の統率を図ったのはキャノンデール・プロサイクリング。次いでガーミン・シャープが先頭に立ち、ゴールまでの距離を急速に減らしていく。残り2km地点ではロータリーの最短距離を使ってマシュー・ブラマイヤー(アイルランド、チャンピオンシステム)が勢い良く1kmほどを先行するも、残り800mで吸収される。

復活のスプリント勝利を飾ったタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ)復活のスプリント勝利を飾ったタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ) photo:Tour Of California/2013jimsaffordしかしブラマイヤーの勢いは、スプリンターチームの計算を狂わせる。焦って追走を掛けたことで各チームのトレインは崩壊し、混沌とした状態でラスト500mを通過。サガンが後方に沈む中、先行するケン・ハンソン(アメリカ、オプタムp/b)の番手から、絶妙なタイミングでファラーが仕掛けた。

ファラーは後方から追い上げるサガンを尻目に先頭を譲らず、そのまま力強いガッツポーズを披露。今シーズン勝利に恵まれていなかったファラーが、自国最大のステージレースで嬉しい2013年初勝利を上げた。

「今日はスーパーパーフェクトなレース運びができた。今朝バスの中で戦略についてミーティングをしたんだ。そして皆は僕のスプリントをサポートしてくれた。その働きに報いる結果となったよ。上りでは何とか食らいついて、それでスプリントすることができた。チームは今日凄い走りを見せてくれて、最後の数kmでは僕の脚はフレッシュだった。」とはファラー。

この日ガーミン・シャープは、ツアー・オブ・カリフォルニアとジロ・デ・イタリアでダブルステージ優勝を飾る活躍ぶり。ファラーは「今朝起きたら、ラムナスがジロで勝ったというニュースを聞いて凄く嬉しかった。素晴らしいよ」とナヴァルダスカスの活躍を喜んだ。


ツアー・オブ・カリフォルニア2013第4ステージ結果
1位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ)3h14′09″
2位 ケン・ハンソン(アメリカ、オプタムp/b)
3位 ジャンニ・メールスマン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)
4位 クリス・ボックマンス(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)
5位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール・プロサイクリング)
6位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
7位 トル・フースホフト(ノルウェー、BMCレーシングチーム)
8位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ)
9位 ジェレミー・ヴァンネル(オーストラリア、ビッセルプロサイクリング)
10位 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、ボントレガー)

個人総合成績
1位 アレクシス・アセヴェド(コロンビア、ジェーミス・ハーゲン)   17h13′59″
2位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム) +12″
3位 フィリップ・ダイグナン(アイルランド、ユナイテッドヘルスケア) +27″
4位 マティアス・フランク(スイス、BMCレーシングチーム)   +45″
5位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、サクソ・ティンコフ) +55″
6位 フランシスコ・マンセボ(スペイン、5アワーエナジー) +1′03″
7位 チャド・ハーガ(アメリカ、オプタムp/b)             +1′13″
8位 マシュー・ブッシュ(アメリカ、レディオシャック・レオパード) +1′15″
9位 ローソン・クラドック(アメリカ、ボントレガー)   +1′32″
10位 キャメロン・メイヤー(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)+1′40″

ポイント賞
ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール・プロサイクリング)

山岳賞
カーター・ジョーンズ(アメリカ、ビッセルプロサイクリング)

新人賞
ローソン・クラドック(アメリカ、ボントレガー)

チーム総合成績
ユナイテッドヘルスケア


text:So.Isobe
photo:Tour Of California/Brian Hodes,Tour Of California/GettyImages,Tour Of California/2013jimsafford