ラスト1kmを前にした左コーナーで発生した落車が、登りで何とか集団に残ったスプリンターたちの努力をふいにした。雨に濡れたマテーラでのゴールスプリントでジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ)が勝利。昨年ブエルタでステージ5勝を飾った男が、ジロ・デ・イタリアで初白星を飾った。

コゼンツァの歩行者天国をパレード走行するコゼンツァの歩行者天国をパレード走行する photo:Riccardo Scanferla前日の第4ステージで今大会の最南端に達したジロは、ドロミテやアルプスに向けて北上を開始する。第5ステージはカラブリア州のコゼンツァからバジリカータ州のマテーラまで203km。難易度の低い平坦ステージに指定されているものの、終盤にかけて4級山岳と標高差300mほどの緩い登りが登場する。

ブリアン・ブルギャク(オランダ、ロット・ベリソル)やラファエル・アンドリアート(ブラジル、ヴィーニファンティーニ)が逃げるブリアン・ブルギャク(オランダ、ロット・ベリソル)やラファエル・アンドリアート(ブラジル、ヴィーニファンティーニ)が逃げる photo:Riccardo Scanferlaこの日もUCIプロコンチネンタルチームを中心に逃げを作る動きが活発化。ステファノ・ピラッツィ(イタリア、バルディアーニヴァルヴォーレ・CSFイノックス)やラファエル・アンドリアート(ブラジル、ヴィーニファンティーニ)、トマス・ヒルマルティネス(ベネズエラ、アンドローニジョカトリ)を含む6名が集団から飛び出し、長靴(イタリア半島)の足裏を東に向かう。

逃げを見送ったメイン集団をカチューシャがコントロール逃げを見送ったメイン集団をカチューシャがコントロール photo:Kei Tsuji総合に関係のないメンバーが逃げたため、カチューシャは追撃に興味を示さず、タイム差は10分を越える。レース中盤に入ると、オリカ・グリーンエッジやオメガファーマ・クイックステップが集団コントロールに合流。海に沿った真っ平らな幹線道路でタイム差は縮小の一途をたどった。

ゴールのマテーラの街に向けて登りを進むプロトンゴールのマテーラの街に向けて登りを進むプロトン photo:Riccardo Scanferlaレース終盤に差し掛かると、局地的な豪雨によって路面がウェットな状態に。ラスト20km地点の4級山岳モンテスカリオーゾでメイン集団が逃げグループのすぐ後ろに迫る。ピラッツィが最後まで粘ったが、結局は4級山岳通過後に吸収された。

カノーラを抜いて先頭に立ったジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ)カノーラを抜いて先頭に立ったジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ) photo:Kei Tsujiこの4級山岳モンテスカリオーゾは平均勾配が10%ほどもある急勾配の登り。ここでマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)がメイン集団から脱落してしまう。蛇行しながら登りをこなすカヴェンディッシュ。その後、チームメイトの力を借りたが、集団に復帰することはなかった。

カヴェンディッシュの脱落、そしてピラッツィの吸収後、続いてベン・ガスタウアー(ルクセンブルク、アージェードゥーゼル)やロベルト・ヴレセル(スロベニア、エウスカルテル)、ラルスイティング・バク(デンマーク、ロット・ベリソル)がアタック。しかしこの動きもラスト8kmで終わりを迎える。

BMCレーシングチームやバルディアーニヴァルヴォーレ・CSFイノックスがハイペースを刻むメイン集団は、マテーラに向かう緩斜面で80名ほどに縮小。スプリント勝負に持ち込みたくないチームによるアタックは続き、今度はラスト5kmでユベール・デュポン(フランス、アージェードゥーゼル)がアタックする。勢いのある走りでリードを広げたデュポンだったが、雨に濡れたマテーラ市内でメイン集団に吸収された。

決定的なアタックが生まれないままラスト3km。集団スプリントでの決着が濃厚となってくる。集団内で登りをクリアしたデゲンコルブやゴス、ヴィヴィアーニ、ブアニ、ベントソ、ニッツォーロ、ベンナーティ、ポッツァートらにチャンスが回って来た。

しかしラスト1kmアーチを前にした左90度コーナーで大落車が発生する。集団前方を走っていたルーカ・メスゲツ(スロベニア、アルゴス・シマノ)がコーナーを曲がりきれずに落車。後続の選手が次々に突っ込み、道が塞がれてしまう。落車を免れたマルコ・カノーラ(イタリア、バルディアーニヴァルヴォーレ・CSFイノックス)がそこからスパートを仕掛けた。

1kmアーチを先頭で駆け抜けるカノーラ。追撃したのは「落車でペダルが外れてしまった」というデゲンコルブ。先頭で最終ストレートに入ったカノーラを、デゲンコルブが自分の力で追いかける。

ゴールに向かう3%ほどの登りでカノーラが徐々に失速すると、ラスト200mでデゲンコルブが先頭に。ラスト1kmから踏み続けた脚に今一度ムチを打ち、喘ぎながら先頭でフィニッシュラインを駆け抜けた。

ジロのステージ初優勝を飾ったジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ)ジロのステージ初優勝を飾ったジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ) photo:Kei Tsuji
ゴール後、デゲンコルブは苦しみながら地面に倒れ込む。「落車のあとバルディアーニの選手(カノーラ)が飛び出した時、これは一か八かの勝負になると思った。周りに誰もいなかったので、ラスト1kmからスプリントを開始。本当に本当にハードだった。かなり苦しんだよ」。

シャンパンを豪快に開けるジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ)シャンパンを豪快に開けるジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ) photo:Kei Tsujiデゲンコルブは昨年ブエルタ・ア・エスパーニャでステージ5勝。初出場のジロで、持ち前の登坂力&スプリント力を見せつけた。「スプリンターは勝ってこそ評価される。ブエルタ以降しばらく勝てていなかったから、これは自分にとって大きな意味のある勝利だ」。

デゲンコルブのゴール後、総合上位陣を含む選手たちはばらばらにゴール。しかしラスト3km以内の落車だったため、どの選手にもステージ優勝者と同じタイムが与えられている。ルーカ・パオリーニ(イタリア、カチューシャ)は1秒も失うことなくマリアローザを守った。

第6ステージはピュアスプリンター向きの完全なる平坦ステージ。登りと落車でチャンスを失った選手たちがここぞとばかりに狙ってくるだろう。



ジロ・デ・イタリア2014第5ステージ結果
1位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ)            4h37'48"
2位 アンヘル・ビシオソ(スペイン、カチューシャ)
3位 ポール・マルテンス(ドイツ、ブランコプロサイクリング)
4位 セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、スカイプロサイクリング)
5位 マッテーオ・トレンティン(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)
6位 ヤルリンソン・パンタノ(コロンビア、コロンビア)
7位 ダニエル・オス(イタリア、BMCレーシングチーム)
8位 イェンス・ケウケレール(ベルギー、オリカ・グリーンエッジ)
9位 グレガ・ボーレ(スロベニア、ヴァカンソレイユ・DCM)
10位 タネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ)

個人総合成績
1位 ルーカ・パオリーニ(イタリア、カチューシャ)             19h56'39"
2位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、スカイプロサイクリング)          +17"
3位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)              +26"
4位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)              +31"
5位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・シャープ)              +34"
6位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、スカイプロサイクリング)
7位 ジャンパオロ・カルーゾ(イタリア、カチューシャ)              +36"
8位 セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、スカイプロサイクリング)   +37"
9位 マウロ・サンタンブロジオ(イタリア、ヴィーニファンティーニ)        +39"
10位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)         +42"

ポイント賞
ルーカ・パオリーニ(イタリア、カチューシャ)

山岳賞
ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)

新人賞
ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)

チーム総合成績
カチューシャ

text&photo:Kei Tsuji in Matera, Italy