最後までもつれた勝負。アルデンヌクラシック3連戦の最後を飾る第99回リエージュ〜バストーニュ〜リエージュはゴールのアンスに至る登りでホアキン・ロドリゲスを突き放したダニエル・マーティンがアイルランド人として24年ぶりの勝利を挙げた。

肌寒い天候の中リエージュをスタートする選手たち肌寒い天候の中リエージュをスタートする選手たち photo.A.S.Oベルギーはワロン地方で開催されるアルデンヌ・クラシック3連戦、そして春のクラシックを締めくくるリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ。第111回を数える大会はメジャーレースの中でももっとも歴史が古く、「La Doyenne(ラ・ドワイエンヌ=最古参)」と呼ばれ、敬われる。

逃げるフレデリック・フェヘレン(ベルギー、ヴァカンソレイユ)ら6人逃げるフレデリック・フェヘレン(ベルギー、ヴァカンソレイユ)ら6人 photo.A.S.Oその格式の高さ、そしてコース難易度の点でもアルデンヌクラシックの中でもっとも難易度が高く、まさにクラシックを締めくくるにふさわしい、モニュメントのなかのモニュメント大会だ。

東部ワロン地域、リエージュの南に広がる丘陵地帯を舞台とするコースは、リエージュを起点に8の字を描き、リエージュ近郊のアンスにゴールする。261.5kmの長いコースにはカテゴリーづけされた登り坂が11カ所も登場し、ずっとアップダウンを繰り返す。丘というより小さな山に近い登りを繰り返すごとに脱落者の出る消耗戦だ。

例年、ラ・ルドゥットに続く勝負どころにラ・ロッシュ・オ・フォーコンの丘が設定されていたが、今年は道路工事の影響でコースから外れ、代替ルートとして東に迂回し、コート・ド・コロンステが新しい登りとして登場する。長さ2.4km・平均勾配6%とフォーコンに比べてやや緩くなる。

観客の詰めかけるサンロシュの登りはリエージュおなじみの景観だ観客の詰めかけるサンロシュの登りはリエージュおなじみの景観だ photo.A.S.O冬に戻ったような肌寒いコンディションの中、199選手によりレースはスタート。
4km地点で早くも決まった6人の逃げ。バルト・ デクレルク(ベルギー、ロット・ベリソル)のアタックを皮切りにヴァンサン・ジェローム(フランス、ユーロップカー)、ピルミン・ラングとジョナタン・フモー(ともにIAMサイクリング)、フレデリック・フェヘレン(ベルギー、ヴァカンソレイユ)、サンデル・アルメー(トップスポーツ)が抜け出る。
朝早くのアタックに関心を示さないメイン集団はこの逃げを容認。タイム差は43km地点で最大14分差にまで広がる。

しかし早い段階でホアキン・ロドリゲスとフレーシュ・ワロンヌ勝者のダニエル・モレーノ擁するカチューシャが集団のペースを上げ、差を縮めだす。
タイム差はみるみる無くなり、3つの丘、ワンヌ、ストック、オートルヴェ(172km地点)に達すると4分50秒にまで迫った。

逃げていたデクレルク(ロット・ベリソル)がパンク。ニュートラルサポートより受け取ったホイールに交換するもギアが噛み合わない。3度のストップを強いられ、6人から脱落。
レースが残り60kmに入るとメイン集団はいよいよ本格的に動き出す。

集団は機関車のような牽引力を持つヴァシル・キリエンカが先頭に立ち、スカイ勢がクリス・フルームのためにコントロールを始める。ランプレ、アージェードゥーゼルも前に集結するなか、ダビ・ロペスガルシア(スペイン、スカイ)が鋭くアタックしレースは本格化する。

ダビ・ロペスガルシア(スペイン、スカイ)のアタックでレースに火が点くダビ・ロペスガルシア(スペイン、スカイ)のアタックでレースに火が点く photo.A.S.O

アルベルト・コンタドール(サクソ・ティンコフ)もアタックで逃げグループに合流アルベルト・コンタドール(サクソ・ティンコフ)もアタックで逃げグループに合流 photo.A.S.Oラ・ルドゥットの丘で有力勢が動き出す。ミケーレ・スカルポーニ(ランプレ・メリダ)、リッチー・ポルト(スカイ)、フィリップ・ジルベール(BMC)らエースと第2エース入り交じっての駆け引きが展開。フルーム、コンタドール(サクソティンコフ)、ガスパロット(アスタナ)が前へ。アンディ・シュレクもこの時点で前につけている。

アタックについていけず苦しむフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)アタックについていけず苦しむフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング) photo.A.S.Oラ・ルドゥットの丘を越えて逃げグループを形成したのは7人。ロペスガルシア、ヤコブ・フグルサング(アスタナ)、ローレンス・テンダム(ブランコ)、アルベルト・ロサダ(スペイン、カチューシャ)、ルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター)、ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・メリダ)、ピエリック・フェドリゴ(フランス、FDJ)、ロメン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼル)ら。

クネゴら「逃がしてはいけない」メンバーを含むこの逃げはBMC勢のペースアップによりラスト25kmで捕まる。
ナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター)が抜け出しを図るナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター)が抜け出しを図る photo.A.S.O新しい上り、コート・ド・コロンステ(長さ2.4km・平均勾配6%)においてコンタドールがアタック! 。これにリゴベルト・ウラン(コロンビア、スカイ)とイゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)、 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・シャープ)、ジャンパオロ・カルーゾ(スペイン、カチューシャ)、ルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター)が合流。クライマー揃いの強力なグループを形成する。

ラスト10kmでジロ・デ・イタリア2012覇者ヘジダルがこのグループから20秒のリードを持って飛び出す状態に。この強力な動きが今日の勝負の鍵を握った。
タイトコーナーの続くレース後半は独走でも不利にならない。力を振り絞るヘジダルは19秒差を持ってサン・ニコラの丘に独走で取り付く。

鋭いアタックをかけるもダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)に捕まるホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)鋭いアタックをかけるもダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)に捕まるホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) (c)CorVos逃げるヘジダルを追ったのはロドリゲス(カチューシャ)、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)、ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)、スカルポーニ(ランプレ・メリダ)。
ジルベールは切れがなくこの動きに乗れず、後方に取り残される。ニーバリとイグリンスキーらアスタナ勢も動きが冴えない。

ロドリゲスとの差を確認し、ゴールへと向かうダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)ロドリゲスとの差を確認し、ゴールへと向かうダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ) (c)CorVosそして少し下って最後のアンスへの登りへ。後方の追走集団では混乱の中フレーシュ・ワロンヌ勝者のダニエル・モレーノがクラッシュ。バイクが絡み、致命的な遅れを喫する。
残り2kmを切って8秒差で粘るヘジダル。しかし迫る追走グループから飛び出した「プリート」ロドリゲスが猛スピードのアタックでトップに踊り出た。
しかし最後のアンスの勾配は緩く、まだゴールまでは距離があった。プリートに唯一追いついたのはダン・マーティン。マーティンはロドリゲスの後輪に少しついて様子を見てから、ラスト300mで力を振り絞ってのカウンターアタックを繰り出す。
これにロドリゲスは付けなかった。

登り切っての最後の左コーナーを大きな差を持ってクリアしたマーティンは、後方を確認しつつ栄誉の瞬間を満喫。両手を大きく挙げてゴールに飛び込んだ。逃げ切った2位ロドリゲスの後方でのスプリント争いはバルベルデが制した。

なおピエール・ロランのアシストをこなし、メイン集団前方で展開するいい走りを見せた新城幸也(ユーロップカー)は1分30秒遅れの46位でフィニッシュしている。

リエージュのゴールに両手を上げて飛び込むダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)リエージュのゴールに両手を上げて飛び込むダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ) photo.A.S.O

7位に沈んだフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)7位に沈んだフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング) (c)CorVosついにビッグタイトルをモノにしたマーティン。1984年・1989年のショーン・ケリーの勝利から24年、「ドワイエンヌ」を制した2人めのアイルランド人になった。
マーティンのこの勝利はちょうど1ヶ月前のボルタ・カタルーニャでのクイーンステージの勝利に続き、ワールドツアーレースでは今季2勝目となった。

マーティンは喜びを語る。
「ショックだ。完全にショックを受けた。信じられないよ。本能のままにレースをした。ただ勝ちたかったんだ。そして最後にリエージュのゴールラインを両手を挙げて越える自分がいた。ただただ、信じられない。
ある人が、ショーン・ケリーがリエージュに勝った最初の年は、カタルーニャに勝ってからリエージュを制したことを教えてくれたんだ。それは1984年のこと。その縁起をこの1週間ずっと思い続けていた。
4位でフレーシュ・ワロンヌを終えて、リエージュに勝てると思っていた。条件も揃っていた。今日は禅の境地で、ずっと安静な気持ちでレースが走れたんだ」。

リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ2013表彰式 優勝ダン・マーティン、2位ロドリゲス、3位バルベルデリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ2013表彰式 優勝ダン・マーティン、2位ロドリゲス、3位バルベルデ photo.A.S.Oガーミン・シャープ監督のジョニー・ウェルツ氏のコメント
「今日はフレーシュ・ワロンヌと同じ作戦、ダン(マーティン)とライダー(ヘジダル)のダブルエースというプランだった。早めの逃げが合ったが、風邪が強くナーバスな日だったので後半までなるべく動かないように指示を出した。
ライダーのアタックはライバルたちに甚大なダメージを与えた。一緒に逃げた選手が協調しなかったから独走に持ち込んだんだ。
最後にライダーはダンを含む強い選手たちのグループに捕まったが、ダンはお陰でそれまでに前に出る必要がなく、ライダーの恩恵に授かったんだ。そして最後は強力なスプリントで決めた。チーム全体が素晴らしい働きをした。ダンもすべてのチームメイトに勝たせてもらったことを感謝している」。

表彰台で喜びの表情を見せるダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ) 表彰台で喜びの表情を見せるダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)  (c)CorVos2位のホアキン・ロドリゲスのコメント
「今日はほぼパーフェクトなレースをしたと思っている。
とてもスマートな戦略で、勝つためにベストな走りをした。自分のベストに向けてアタックをしたが、マーティンはすぐに僕を捕まえた。最初はスカルポーニだと思ったんだ。しかし彼はラスト数百メートルでアタックをかけて行ってしまった。スカルポーニならスプリントでやっつける自信があった。でもマーティンだとわかった時、彼のスプリント力を知っているから、彼にやられると思ったんだ。
チームと僕はいい結果を残したと思っている。アルデンヌではいい週を過ごした。少し休んだら、次の僕のゴールであるツール・ド・フランスに向けての準備をするよ」。

46位の新城幸也(ユーロップカー)のコメント
「トレンティーノから徐々に調子を上げて臨んだが、いきなりの寒さで筋肉に痛みを感じることもあったが、調子はよく体はよく動いた。ピエールのパンクは残念だったけど、自分はこんなに、追い込んで出し切ったのは久しぶりで、今は達成感しかない。明後日からのツール・ド・ロマンディも頑張る! 」

リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ2013結果
1位  ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)6h38”07’
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)+3”
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)+9”
4位 カルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、アージェードゥーゼル)
5位  ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・メリダ)
6位  エンリーコ・ガスパロット(イタリア、アスタナ)+18”
7位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)
8位 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・シャープ)
9位 ルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター)
10位 サイモン・ジェランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
46位 新城幸也(ユーロップカー)+1’30”


text:Makoto.AYANO
photo:CorVos, A.S.O
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