4月10日、「アルデンヌ・クラシック」の前哨戦として知られるブラバンツ・ペイル(UCI1.HC)がベルギーのフランドル地方で開催。日本から新城、宮澤、佐野、西薗が出場した200kmのレースで、世界チャンピオンとのスプリント一騎打ちでペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)が勝利した。
マヤ・レイェさんに花束を渡すペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング) photo:Cor Vosブラバンツ・ペイルは、ベルギーのフランドル地方を舞台にしたセミクラシックレース。フランス語でラ・フレーシュ・ブラバンソンヌ(ブラバントの矢)と呼ばれる。
ルーヴェンの市庁舎前をスタート photo:Cor Vosこのブラバンツ・ペイルを境に、ベルギーのレース熱は徐々に東に移行する。同一主催者のフランドルクラシックシリーズ(オンループ、ドワーズドア、ヘント、ロンド、シュヘルデ、ブラバンツ)の最終戦にあたるが、起伏に富んだコースはどちらかと言えばアルデンヌクラシック寄りだ。そのため、週末から始まるアルデンヌクラシック3連戦の前哨戦として毎年軽量なクラシックレーサーが集まる。
ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)やトーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)がメイン集団を牽引 photo:Cor Vosレースの舞台となるのは、ベルギーの首都ブリュッセル南東に広がる丘陵地帯。ロンドに代表されるフランドルクラシックよりも東に位置し、地形的に丘陵は緩やかとなり、激坂と呼ぶような急勾配の登りは登場しない。
ルーヴェンからオーベレルエイセに至る200kmコースには、合計25カ所の短い登りが設定されている。ゴール前には5つの坂「ハーガールト(10%)」「ヘルトストラート(4%)」「ホルストハイデ(5%)」「エイケルダーラーン(7%)」「シャヴェイ(6%)」が詰め込まれた14km周回コースが用意されており、選手たちはここを5周。1日の獲得標高差は約2200m。
レース前から注目を集めたのはペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)。ロンド・ファン・フラーンデレンの表彰台でマヤ・レイェさんのお尻を触ってしまったサガンは、お詫びの印として出走サインの際にマヤさん本人に花束をプレゼント。議論を呼んだ“事件”はこうして幕を下ろした。
日本から新城幸也(ユーロップカー)、宮澤崇史(サクソ・ティンコフ)、佐野淳哉(ヴィーニファンティーニ)、西薗良太(チャンピオンシステム)の4選手が顔を合わせた第53回ブラバンツ・ペイル。ベン・ヘルマンス(ベルギー、レディオシャック・レオパード)やケニー・デハース(ベルギー、ロット・ベリソル)、ニコラス・マース(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)ら6名が4分先行する展開でレースは進行する。
カタルーニャ一周で総合優勝したダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)らの献身的な集団牽引によってタイム差は縮まり、5つの登りを含むオーベレルエイセの周回コースに入る頃にはタイム差は1分30秒に。ヴァカンソレイユ・DCMやキャノンデールプロサイクリングも集団コントロールに加わった。
ゴールまで50kmを切ると、ステイン・デヴォルデル(ベルギー、レディオシャック・レオパード)がメイン集団からアタックし、40秒のタイム差を単独で詰めて先頭グループに合流。続いてビョルン・ルークマンス(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)、ダヴィデ・マラカルネ(フランス、ユーロップカー)、ポール・ヴォス(ドイツ、ネットアップ・エンドゥーラ)も先頭グループへのブリッジに成功する。最終周回に入ると、アルゴス・シマノが集団コントロールを開始した。
ビョルン・ルークマンス(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)を先頭に登りを進む先頭グループ photo:Cor Vos
11名の先頭グループをシルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ)が率いる photo:Cor Vos
レースが大きく動いたのは、ゴールまで18kmを残した「ヘルトストラート(4%)」の登り。石畳が敷かれたこの登りでBMCレーシングチームのフレフ・ファンアフェルマート(ベルギー)とジルベールの2人が足並みを揃えてアタックを仕掛け、サガン、シルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ)、サイモン・ゲスク(ドイツ、アルゴス・シマノ)がこれに合流。連覇が懸かったトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)やチームメイトの新城幸也もそれまで集団前方に位置していたが、この動きには反応出来なかった。
追走グループを形成するフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)ら photo:Cor Vosこうしてメイン集団を飛び出した追走5名(ファンアフェルマート、ジルベール、サガン、シャヴァネル、ゲスク)は、ゴールまで12kmを残して先頭6名(デヴォルデル、ルークマンス、デハース、ヴォス、マラカルネ、マース)に合流。スプリント勝負に持ち込みたくないシャヴァネルやマラカルネがアタックを仕掛けるも決まらない。
最後の「シャヴェイ」を先頭で登るフレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム) photo:Cor Vosゴールまで2kmを切るとマースとファンアフェルマートがアタックを成功させ、5秒ほどのリードをもって「シャヴェイ(6%)」の登りへ。ファンアフェルマートが歯を食いしばって先行したが、登りの中腹でサガンが先頭を奪った。
フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)をスプリントで下したペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング) photo:Cor Vosファンアフェルマートをパスして先頭に立ったサガンには、アルカンシェルを着るジルベールが食らいつく。サガンの執拗なペースアップにもジルベールは千切れない。遅れてルークマンスも合流し、先頭3名で勾配のある区間をクリア。平坦な最終ストレートで3名によるスプリント勝負が始まった。
ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)が表彰台のてっぺんに立つ photo:Cor Vosラスト150mで踏み始めたジルベールに素早く反応したのは「向かい風が吹いているのを知っていたので、ジルベールが先に仕掛けるのを待った」というサガン。一瞬ジルベールのスリップストリームに入ったサガンがギアを踏んで先頭に立つ。登りでもスプリントでも、サガンが最も強かった。
「最後の登りではファンアフェルマートを追撃するのと同時に、ライバルを出来るだけ絞る込もうとアタックした。登りでかなり力を使ったよ。終盤までオメガファーマ・クイックステップやBMCがメンバーが揃えていたので、一人で全てのアタックに反応しなければならなかった。厳しい展開だったけど勝てて良かった」と、今シーズン世界最多の8勝目をマークした23歳のサガン。
「リエージュは僕には厳し過ぎるけど、アムステルは目標とするレースの一つであり、勝つために走る。アムステルにコンディションのピークを合わすために、パリ〜ルーベを欠場したんだ。今日の勝利は良いシグナル。日曜日のチャレンジが楽しみで仕方がないよ」。週末に迫るアムステル・ゴールドレースに向けて順調な仕上がりを見せる。誰よりも登りが軽く、誰よりもスプリントで強い。サガンがアムステルの優勝候補の筆頭だと言っていいだろう。
インタビューで「スプリントには自信があった」と話すのは、2011年大会の優勝者ジルベール。「ラスト5kmはサガンを徹底的にマークしていたし、集中力も途切れなかった。でも僅かに届かなかった。もちろん勝てれば良かったけど、チームとしての動きは申し分なかったと思う。(次戦に向けて)チームにも自分自身にも大きな自信をもてるよ。でもやっぱり勝てれば良かった」。ジルベールは今シーズン未勝利。アルカンシェルを着ての勝利はまだ無い。
新城幸也は1分06秒遅れ、西薗良太は5分26秒遅れでゴール。西薗はゴール後「ヨーロッパツアーのワンデーHCを完走するのは初めてです。前半ヨーロッパ遠征のワンデー参戦を良い形で締めくくることができてほっとしました。この調子でトレンティーノへ!」とツイート。佐野淳哉は落車リタイア、宮澤崇史は途中リタイアに終わっている。
選手コメントは各チーム公式サイトより。
ブラバンツ・ペイル2013
1位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング) 4h45'05"
2位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)
3位 ビョルン・ルークマンス(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM) +04"
4位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ) +09"
5位 サイモン・ゲスク(ドイツ、アルゴス・シマノ)
6位 フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム) +11"
7位 ダヴィデ・マラカルネ(フランス、ユーロップカー) +17"
8位 ステイン・デヴォルデル(ベルギー、レディオシャック・レオパード) +19"
9位 ポール・ヴォス(ドイツ、ネットアップ・エンドゥーラ) +22"
10位 ケニー・デハース(ベルギー、ロット・ベリソル) +25"
38位 新城幸也(日本、ユーロップカー) +1'06"
74位 西薗良太(日本、チャンピオンシステム) +5'26"
DNF 宮澤崇史(日本、サクソ・ティンコフ)
DNF 佐野淳哉(日本、ヴィーニファンティーニ)
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos



ルーヴェンからオーベレルエイセに至る200kmコースには、合計25カ所の短い登りが設定されている。ゴール前には5つの坂「ハーガールト(10%)」「ヘルトストラート(4%)」「ホルストハイデ(5%)」「エイケルダーラーン(7%)」「シャヴェイ(6%)」が詰め込まれた14km周回コースが用意されており、選手たちはここを5周。1日の獲得標高差は約2200m。
レース前から注目を集めたのはペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング)。ロンド・ファン・フラーンデレンの表彰台でマヤ・レイェさんのお尻を触ってしまったサガンは、お詫びの印として出走サインの際にマヤさん本人に花束をプレゼント。議論を呼んだ“事件”はこうして幕を下ろした。
日本から新城幸也(ユーロップカー)、宮澤崇史(サクソ・ティンコフ)、佐野淳哉(ヴィーニファンティーニ)、西薗良太(チャンピオンシステム)の4選手が顔を合わせた第53回ブラバンツ・ペイル。ベン・ヘルマンス(ベルギー、レディオシャック・レオパード)やケニー・デハース(ベルギー、ロット・ベリソル)、ニコラス・マース(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)ら6名が4分先行する展開でレースは進行する。
カタルーニャ一周で総合優勝したダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)らの献身的な集団牽引によってタイム差は縮まり、5つの登りを含むオーベレルエイセの周回コースに入る頃にはタイム差は1分30秒に。ヴァカンソレイユ・DCMやキャノンデールプロサイクリングも集団コントロールに加わった。
ゴールまで50kmを切ると、ステイン・デヴォルデル(ベルギー、レディオシャック・レオパード)がメイン集団からアタックし、40秒のタイム差を単独で詰めて先頭グループに合流。続いてビョルン・ルークマンス(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)、ダヴィデ・マラカルネ(フランス、ユーロップカー)、ポール・ヴォス(ドイツ、ネットアップ・エンドゥーラ)も先頭グループへのブリッジに成功する。最終周回に入ると、アルゴス・シマノが集団コントロールを開始した。


レースが大きく動いたのは、ゴールまで18kmを残した「ヘルトストラート(4%)」の登り。石畳が敷かれたこの登りでBMCレーシングチームのフレフ・ファンアフェルマート(ベルギー)とジルベールの2人が足並みを揃えてアタックを仕掛け、サガン、シルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ)、サイモン・ゲスク(ドイツ、アルゴス・シマノ)がこれに合流。連覇が懸かったトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)やチームメイトの新城幸也もそれまで集団前方に位置していたが、この動きには反応出来なかった。




「最後の登りではファンアフェルマートを追撃するのと同時に、ライバルを出来るだけ絞る込もうとアタックした。登りでかなり力を使ったよ。終盤までオメガファーマ・クイックステップやBMCがメンバーが揃えていたので、一人で全てのアタックに反応しなければならなかった。厳しい展開だったけど勝てて良かった」と、今シーズン世界最多の8勝目をマークした23歳のサガン。
「リエージュは僕には厳し過ぎるけど、アムステルは目標とするレースの一つであり、勝つために走る。アムステルにコンディションのピークを合わすために、パリ〜ルーベを欠場したんだ。今日の勝利は良いシグナル。日曜日のチャレンジが楽しみで仕方がないよ」。週末に迫るアムステル・ゴールドレースに向けて順調な仕上がりを見せる。誰よりも登りが軽く、誰よりもスプリントで強い。サガンがアムステルの優勝候補の筆頭だと言っていいだろう。
インタビューで「スプリントには自信があった」と話すのは、2011年大会の優勝者ジルベール。「ラスト5kmはサガンを徹底的にマークしていたし、集中力も途切れなかった。でも僅かに届かなかった。もちろん勝てれば良かったけど、チームとしての動きは申し分なかったと思う。(次戦に向けて)チームにも自分自身にも大きな自信をもてるよ。でもやっぱり勝てれば良かった」。ジルベールは今シーズン未勝利。アルカンシェルを着ての勝利はまだ無い。
新城幸也は1分06秒遅れ、西薗良太は5分26秒遅れでゴール。西薗はゴール後「ヨーロッパツアーのワンデーHCを完走するのは初めてです。前半ヨーロッパ遠征のワンデー参戦を良い形で締めくくることができてほっとしました。この調子でトレンティーノへ!」とツイート。佐野淳哉は落車リタイア、宮澤崇史は途中リタイアに終わっている。
選手コメントは各チーム公式サイトより。
ブラバンツ・ペイル2013
1位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデールプロサイクリング) 4h45'05"
2位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)
3位 ビョルン・ルークマンス(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM) +04"
4位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファーマ・クイックステップ) +09"
5位 サイモン・ゲスク(ドイツ、アルゴス・シマノ)
6位 フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム) +11"
7位 ダヴィデ・マラカルネ(フランス、ユーロップカー) +17"
8位 ステイン・デヴォルデル(ベルギー、レディオシャック・レオパード) +19"
9位 ポール・ヴォス(ドイツ、ネットアップ・エンドゥーラ) +22"
10位 ケニー・デハース(ベルギー、ロット・ベリソル) +25"
38位 新城幸也(日本、ユーロップカー) +1'06"
74位 西薗良太(日本、チャンピオンシステム) +5'26"
DNF 宮澤崇史(日本、サクソ・ティンコフ)
DNF 佐野淳哉(日本、ヴィーニファンティーニ)
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
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VELO MAGAZINE (ベロマガジン) 日本版 VOL.5 2013年 03月号 [雑誌]
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VELO MAGAZINE (ベロマガジン) 日本版 VOL.6 2013年 05月号 [雑誌]
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