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ワロンの丘陵地帯で新型Madoneを徹底テスト

ワロンの丘陵地帯でテストライドが行なわれたワロンの丘陵地帯でテストライドが行なわれた photo:Chris Milliman世界各国から集まったジャーナリストたちが、デビューしたばかりのMadoneを駆ってベルギー・ワロンの丘を越えていく。製品プレゼンテーションの翌日、開発陣が念を押す軽量性、エアロダイナミクス性能、高剛性、快適性の真偽を実際に試す機会が与えられた。

我先に走り出したいという衝動を抑えながらスタートの時を待つジャーナリストたち。ベルギー東部のワロン地方、いわゆる「アルデンヌ・クラシック」の舞台となる地域で、延々と丘陵地帯が広がっている。今回の試乗コースは、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュにも登場する「コート・ド・ストック」の登りを含む60km。

登りはいずれも全長3km以下だが、ハイスピードダウンヒルからパワーヒルクライム、ワインディングなど、コース状況のバリエーションが豊かなのが特徴。レーシングバイクの戦闘力を試すためには絶好の地であると言える。サイズ毎に色分けされたバイクに跨がり、約30名のジャーナリストたちが漕ぎ出していった。

テストライドでMadone6シリーズを駆るテストライドでMadone6シリーズを駆る photo:Kenji Nanba

スムーズな加速感 極めて高い快適性 違和感ないブレーキング

ズラリと並んだテストバイクズラリと並んだテストバイク photo:Kei Tsuji試乗用に用意されたのはセカンドグレードとなる6シリーズ。ゼロから設計し直されたフレームだが、Madoneらしい乗り味は健在だ。ジオメトリーは前作とほぼ同じ。決して「ブレーキ位置を変更しただけ」ではなく、正常進化を果たしている。

フォークはKVFの採用により一見細くなったが、横剛性は落ちるどころか向上している印象。E2ヘッドチューブと相まって、ダンシング時にヘッド周りの逞しさを感じることが出来る。

爆発的に踏んだ際の反応性が突出して高いとは言えない。「ガチガチ」のフレームではないが、かと言って「柔らかい」とは決して思わない。クランクとペダルを通して脚に伝わる感覚がソフト。アマチュアレベルには充分な剛性と反応性で、ゼロ発進から40km/hあたりまでの加速、そして巡航までスムーズに進む。そこには「スムーズ」という言葉がピッタリ当てはまる。トップグレードである7シリーズは、さらにピリリとスパイスの効いた反応性を示すのだと推測出来る。

そして驚くべきはその快適性だ。さすがに石畳が敷かれたような悪路での乗り心地はDomaneに軍配が上がるが、軽快さや反応性、剛性に関してはMadoneが数段上。数値では表しにくい要素ではあるものの、他社のトップモデルと比べると、その乗り心地は至極快適だ。これは長めに設計されたシートマストの恩恵だろう。生粋のレースバイクであることを考えると申し分ない。レースにおいてもロングライドにおいても大きなアドバンテージになる。

ワロンの丘陵地帯を行くジャーナリスト達ワロンの丘陵地帯を行くジャーナリスト達 photo:Chris Milliman「ガチガチ」ではないが、スプリントにも小気味良く反応してくれる(試乗車はサイズ50)「ガチガチ」ではないが、スプリントにも小気味良く反応してくれる(試乗車はサイズ50) photo:Kenta Kobayashi

パワーメーターで比較したわけではないので、平坦路を流すだけではそのエアロダイナミクス性能を感じ取るのは困難を極める。トップギアを踏むような下りから、そのままアウターを勢いで踏み抜く登りに差し掛かった時に「バイクの抜けの良さ」を感じた。これは装着されたアイオロスホイールとの相乗効果でもあるのだろう。

下りからスピードを繋ぐシチュエーションで「バイクの抜けの良さ」を感じる下りからスピードを繋ぐシチュエーションで「バイクの抜けの良さ」を感じる photo:Kenji Nanba正直言って新開発のブレーキについて最初は半信半疑だった。テストバイクに装着されていたのはシマノ製ではなく、ボントレガーのアルミ製。しかし驚くほどブレーキングの感触に違和感は無かった。開発1製品目とは思えないほどの完成度で、スピードコントロール性やストッピングパワーは従来のブレーキと変わらない。

ボルト1本固定の従来のブレーキ構造と比較すると、物理的にボルト2本固定方式のたわみが少ないのは間違いない。ハイスピードからのブレーキングでは安定した制動を見せる。今後ブレーキアーチを含めて性能はますます向上していくだろう。

そして、ブレーキアーチを省いたシートステーはやはり美しい。新型Madoneに見慣れてしまうと、他のモデルが実に野暮ったく見えてしまうほどだ。

レディオシャック・ニッサンの選手たちの反応

ツール・ド・フランスでの出番を待つレディオシャック・ニッサンのチームバイクツール・ド・フランスでの出番を待つレディオシャック・ニッサンのチームバイク photo:Kei Tsuji
レディオシャック・ニッサンの選手たちは、ファビアン・カンチェラーラ(スイス)を除いて全員が新型Madoneに乗ってツール・ド・フランスに出場する。カンチェラーラのみ、彼が開発から深く関わったDomaneを使用。その理由について「もちろんMadoneの方がクイックだけど、今はDomaneがとても気にいっているんだ。この先ずっとDomaneに乗り続けたいと思うほど、自分に合っている」と話す。

アイマル・スベルディア(スペイン、レディオシャック・ニッサン)アイマル・スベルディア(スペイン、レディオシャック・ニッサン) photo:Kei Tsuji第16ステージを終えた時点でレディオシャック・ニッサン内でトップの総合5位につけるアイマル・スベルディア(スペイン)は新型Madoneについて「プロだから供給される機材に文句は言えない。とても気にいってるよ」と笑いながら、真面目な顔で続ける。

「シーズンの途中にバイクを変更することに少し躊躇した。というのも、前のMadoneに満足していたし、実際に好きな乗り味だったんだ。ツールの開幕数週間前にこの新しいバイクに乗り始めたけど、Madoneらしさはそのままだった。他社のバイクよりもペダリングがスムーズになる気がするし、何も違和感は無かった」。

あまりにも優等生なコメントなので、本当に気に入らない点が無いのか問い詰めると「強いて言えば、ヘッド周辺が固くなった印象で、初日は腕から肩にかけて上半身が疲れた。でもすぐに慣れて、今はその固さが推進力に繋がっていることを感じる。バイクを左右に振った時の軽快さも好きなポイントの一つだ」と、また笑う。

やはり最も気になるのは、プロから見たエアロダイナミクス性能だろう。「パワーメーターで測らない限り、具体的に空気抵抗が軽減されているかどうか、平地では分からない」とスベルディア。「でもハイスピードなダウンヒルなどで空気が抜けていく感じがする。実際に感じなくても『25W低減』という事実は変わらない。レースの極限の状況では、それが精神的な助けになるんだ」。

TREKは300以上のテストフレームを製造し、風洞実験を行ない、選手たちのフィードバックを得て新型フレームを完成させた。

トレーニングライドの準備をするクリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・ニッサン)トレーニングライドの準備をするクリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・ニッサン) photo:Kei Tsujiバイクをチェックするアイマル・スベルディア(スペイン、レディオシャック・ニッサン)バイクをチェックするアイマル・スベルディア(スペイン、レディオシャック・ニッサン) photo:Kei Tsuji

エアロダイナミクス性能が追求されたアクセサリー群

高いエアロダイナミクス性能を誇るアイオロス9 D3ホイールとR4タイヤの組み合わせ高いエアロダイナミクス性能を誇るアイオロス9 D3ホイールとR4タイヤの組み合わせ photo:Kei Tsuji今回の新型Madoneの発表に合わせ、ボントレガーのパーツ&アクセサリーの新型モデルも披露された。中でも目を引いたのが豊富なラインナップを誇るホイール群。フレーム同様、エアロダイナミクス性能が高められたアイオロスD3シリーズが揃う。

アイオロス9 D3のドラッググラフ R4タイヤ装着時(赤線)、ヨー12度から19度で抵抗が推進力に変わることを示しているアイオロス9 D3のドラッググラフ R4タイヤ装着時(赤線)、ヨー12度から19度で抵抗が推進力に変わることを示している photo:TREKアイオロスD3シリーズのラインナップは、リムハイト90mmの「9」から70mmの「7」、50mmの「5」、30mmの「3」まで4種類。

D3ホイールの開発にあたってTrekがこだわったのが、「低いリムハイトで、高いリムハイトに勝つ」ということ。ホイール前方だけでなく、ホイール後方の空気抵抗も低減するリムシェイプを目指し、徹底的に研究され、風洞テストで最適な形状が選び出された。

その結果、リムハイト50mmで他社の58mmモデルよりも高いエアロ効果を発揮するリムシェイプが誕生した。リムハイトが低いことで重量が減り、加速がよくなり、ハンドリングがよくなる。剛性を保つためにスポーク数を減らすことはしていない。

驚くことに、リムハイト90mmの「アイオロス9」はヨー15度の風(仰角、つまり斜めからの風)で抵抗が一転推進力に変わる。このエアロ効果は新開発のR4タイヤをつけることでより向上するという(ヨー15〜18度で最高の推進力を生む)。ホイールとタイヤを一緒に開発出来るという強みを最大限活かしている。

その他、チューブレスホイールとしてTLRチューブレスレディーホイールが誕生。転がり傾向軽減のため、チューブレスレディータイヤも同時にリリースした。6.6mmまでの傷はシーラントでカバー出来るという。

アイオロス9 D3アイオロス9 D3 photo:TREKアイオロス3 D3アイオロス3 D3 photo:TREK

ハンドルやヘルメットも一貫してエアロ効果が突き詰められたデザインに。SpeedConceptに続いてMadoneにも採用されたKVFチューブシェイプを、エアロロードハンドルバーにも採用。UCI(国際自転車競技連合)のルールに沿う規格で、1時間につき26秒ものタイム短縮が期待出来るという。

同様にエアロ効果ありきで開発されたヘルメット・スペクターが登場。トップモデルのオラクルの血を引くヘルメットであり、軽量ながら低い価格設定が魅力だ。

セカンドグレードとなるスペクターセカンドグレードとなるスペクター photo:Kei TsujiKVFチューブシェイプを採用したエアロロードハンドルバーKVFチューブシェイプを採用したエアロロードハンドルバー photo:Kei Tsuji
提供:トレックジャパン 編集:シクロワイアード / Kei Tsuji