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2025年のツール・ド・おきなわ市民200km。最後の最後まで大前翔と高岡亮寛で勝負に残り、優勝という最高の結果を手にしたRoppongi Express。その2人が乗るレースマシンが、今季新たにモデルチェンジしたスペシャライズドの新型「S-Works Tarmac SL9」だ。

今年のツール・ド・フランス直前にデビューしたTarmac SL9。Compグレードや限定カラーも登場し、ラインナップは拡充を遂げている photo:スペシャライズド・ジャパン

ニセコクラシックで実戦を経験し、いよいよ「ホビーレーサーの甲子園」ことツール・ド・おきなわが目前に迫るタイミング。SL7、SL8と乗り継いできた高岡亮寛は「8から9のほうが良くなった」と言い、大前は「よりレーシーになった」と評する。今回はそんな2人の言葉からSL9の実像に迫り、ディフェンディングチャンピオンとして迎える2026年のおきなわへの思いを聞いた。

2026年のツール・ド・フランス開幕に合わせて登場したS-Works Tarmac SL9。開発テーマに掲げたのは「Time To Finish(ゴールまでのタイム)」だ。軽さや空力をそれぞれ単独で追うのではなく、すべてを統合して、実際のレースで最も早くフィニッシュラインに到達することを目指した。見た目こそSL8に似ているが、ヘッドチューブを約10%細くし、シートチューブ後端を後輪に沿わせた「Win Fin」を採用するなど、全チューブの形状を見直した。その結果、45km/h巡航時にはSL8より4W少ない出力で走れるという。

しかもフレーム重量は687gと、Tarmacらしい軽さも保っている。集団内で脚を温存し、登りでは軽快に、下りや平坦では伸びやかに。200kmの長丁場を戦い抜くための性能を、さらに一段引き上げた一台だ。では、日本最高峰のホビーレーサー2人は、このSL9をどう感じたのか。

高岡亮寛と大前翔に聞く、「8から9」への進化

Roppongi Expressの高岡亮寛(左)と大前翔(右)。ともにS-Works Tarmac SL9を駆り、おきなわに挑む photo:So Isobe

市民200kmで通算7勝。「最強ホビーレーサー」として知られ、自身のショップも運営する六本木エクスプレス代表の高岡亮寛は、機材に対して誰よりも貪欲だ。SL9が発表されや否やマイバイクを組み上げ距離を乗り込んできた。

「良かったですね。SL7、SL8、SL9と乗り換えてきましたけど、7から8の時よりも、8から9の時の方が良くなったなという感触はありました」。

高岡がまず挙げたのは、ジオメトリーの変化だった。「僕が乗る54サイズだけ、トゥクリアランスの調整でフロントセンターが少し長くなったんです。結果として走りのフィーリングも良くなった。もちろんSL8で下りが良くないとか、曲がれないなんてことはありません。でも常々、もう少しこうだったらなとは思っていたんですが、それが解消されました。ハンドリングが劇的に変わったわけじゃないですけど、『あ、この自転車乗りやすくなったな』と思います。レース機材として見たとき、気になる部分が解消されたのはすごく大きいですね」。

高岡亮寛が駆るSL9。妥協ないセットアップで組まれている(スペシャライズド自由が丘にて撮影) photo:So Isobe

コンポーネントはスラム。1x13速のフロントシングル仕様だ photo:So Isobe
サドルはS-WORKS POWER EVO MIRROR photo:So Isobe



もうひとつの変化は、数字には表れにくい部分にあった。

「定量的に言うのは難しいんですが、ロングを走ったときの疲労感はSL9の方が小さいように思います。『昨日あれだけ乗った割に、今日はそんなに疲れが残ってないな』という感じ。乗っていて乗り心地が良くなったと実感するほどではないんですけど、路面からのガタガタの伝わり方が積み重なって、5、6時間乗った後の気づかない疲労の蓄積が減っているのかな、と」。

SL9が手元に来てからも、高岡の機材探求は止まらない。「最近ペダルを変えたんです。年中変えてるんですけど」と笑う。ここ数年はルックをメインに、シマノやタイムも確認がてら試してきた。ニセコの後にふと思い立ってタイムに変えたところ調子がいいのだという。

大前翔が選んだ49サイズ、よりレーシーになった加速

大前翔のSL9。 低いポジションを叶えるためにフレームサイズを52から49に変更した photo:So Isobe

一方の大前翔は、SL9への乗り換えにあたってフレームサイズを52から49へと1サイズ下げた。元プロ選手で、現在は医師として働きながら日本一のホビーレーサーの座を掴んだ男らしく、その理由は明快だ。

「僕はちょっと骨格が特殊で、ハンドルをすごく低くしたいんです。でも52だと、純正ハンドルではどうしても希望の低さが出せなかった。それでヘッドチューブを短くするために49にしました。49と52でリーチはあまり変わらなくて、5mmくらい。それならステム長で十分カバーできる範囲ですから」。

そんな大前がSL9に感じたのは「加速の俊敏性が上がって、よりレーシーになった」という印象だ。

「レースって、鋭い加速を求められる場面が多いんです。SL9は、1踏み、2踏みでスッと前に出る感覚が強いですね。ゴールスプリントでも同じです。アマチュアレースは終盤戦でも全員がスプリントに向けて位置取りしているわけではなくて、必ず逃げ切りたい人もいる。そういう人たちのアタック合戦を全部さばいて、ようやくスプリントにたどり着けるんです。そういう場面では鋭い加速が必要なので、SL9はゴール前をさばきやすくなっていると思います」。

スプリンターである大前はフレームの伸びにも言及する。「SL8より伸びるなぁと思います。僕にとっては硬く感じるので、脚が残っていればですけど(笑)」。

光を当てると変化する複雑なカラーリング photo:So Isobe

コンポーネントはスラムに変更。1x13のフロントシングル仕様にし、空力の良さも体感しているという photo:So Isobe
スプリンターらしく追加スイッチを両側に装備する photo:So Isobe


ハンドル幅はUCI制限ギリギリ。空力を意識したセットアップだ photo:So Isobe

空力の進化も明確に感じ取ったという。「僕は毎日まったく同じコースをまったく同じ時間に走っているので比較ができるんです。エンデュランスのトレーニングで、ほぼ同じパワーのままSL8とSL9を乗り比べると、平均スピードでコンマ数km/h、SL9の方が速いと思います」。

ただし快適性については、高岡とは少し違う見方だ。「まだポジションが出きっていないからかもしれませんが、疲労感が残らないのはSL8の方かな(笑)。サイズを小さくしているので、その影響もあるとは思いますけどね」。同じバイクでも、乗り手が違えば評価のポイントも変わる。その率直さが、2人の言葉の信頼性を裏付けるものだ。

ニセコで感じた「トータルで速い」

SL9での実戦となったニセコクラシック。その手応えを聞くと、高岡は「正直調子が良くなくて、出しきれなかったのでノーコメントですかね……(笑)」と苦笑い。代わりに口を開いたのは大前だった。

グランフォンド世界選手権を走る大前翔(左)。このグループのゴールスプリントを制して4位となった photo:Makoto AYANO

「勝負どころ上りまではアップダウン区間なんです。勝負が掛かる登りの直前にどれだけ脚を休められるかが非常に大事でした。そこで、『トータルで速い』というSL9のコンセプトが活きたと思います。上りが軽いのはもちろん、下りの性能も非常に高いので、ライバルに対して絶対にアドバンテージを得ていたと思います」。

UCIグランフォンド・ワールドシリーズの一戦であるニセコには、海外からも多くの選手が集まった。「日本国内のレースだとほぼS-Worksのワンメイクみたいになっていますけど、グランフォンドの海外選手はS-Worksの割合がそこまで高くない。周りより省エネで走れているな、という感じがありました」。

迷わず選べる、「ど真ん中」のレーシングバイク

何かひとつの性能に尖るのではなく、ゴールまで最も速く走ることを目指したSL9。そのコンセプトに、高岡は深く共感している。ヒルクライマーでもTTスペシャリストでもなく、登坂を含む長距離ロードレースで勝ち星を重ねてきた高岡だからこそ響くものがある。

「Tarmacなら迷わない。どんなコースでもオールマイティーに走れることが魅力」と信頼を置く photo:So Isobe

「コースやレース形態に関係なく、1年中どのコースでもこのフレームで行けばいい。迷う必要がないところが一番いいですね。個性を出そうとすると違う方向に行くんでしょうけど、Tarmacはそれを目指していない。業界のど真ん中にあるベンチマークのレーシングバイクで、何でもオールマイティーに走れる。そのコンセプトが自分は気に入っています」。

組み合わせるホイールは、前回のおきなわで大きな武器となったロヴァールのRapide Sprint CLXだ。「SL9に乗り換えてからも、ホイールはSPRINT CLX一択ですね。リムハイトがあっても6.8kgちょいに仕上がるので空力に勝るSPRINT CLXの方がいいですよね」。

ニセコで開催されたUCIグランフォンド世界選手権のチームリレーを走る高岡亮寛 photo:Satoru Kato

そして高岡は、機材の進化が自身の走りを支えていることを率直に認める。

「年々体力が落ちているのは感じているんですけど、それでも実際に走っている速度が遅くなっているわけではない。多分、機材にカバーされているんだと思います(笑)。去年のおきなわでも、最後の下りでは空力のアドバンテージに助けられました。強い人は何に乗っても勝てる部分はありますが、体力を出し尽くした後の極限状態では機材の差が出てくる。去年は自転車もホイールも一つ一つ妥協しないで、自分が最速だと思うセットアップで走ってよかったと思います」。

ディフェンディングチャンピオンとして迎える、2026年のおきなわ

直前に迫ったおきなわ。今年も激しく、美しいレースが繰り広げられる photo:Makoto AYANO

11月8日、今年も市民200kmの号砲が鳴る。今年のおきなわをどう戦うのか。そう問うと、高岡は迷わず答えた。

「順当に、大前が優勝候補ですよね。コンディションをバッチリ合わせれば勝つんじゃないかなと。まあ、それは去年と一緒ですけど。井上くんも今年は相当強そうですよね。ただ、あのレースは2人だけが抜けていくような展開にはならない。そこに何人ついてくるか。去年は難しい展開でしたけど、自分も去年と同じように最後までいけたらなと思います」。

ディフェンディングチャンピオンとして追われる立場となった大前は、自身の現状を包み隠さず語る。

「ホビーレーサーとして活動している限り、おきなわを勝つことが一番のステータスだと思います。今年もコンディションをしっかり合わせていきたい。ただ、6月を境に一度ピークアウトしてしまって、不調の時期が続いているんです。この1ヶ月をどう過ごすかで、それができるかどうかが変わってくると思います」。とは言うものの、言葉の端々には王者としての野心がのぞく。「自分が理想とする準備の通りに進めば、去年よりも支配的なレースにしたいという野望はありますけどね」。

「ホビーレーサーとして、おきなわを勝つことが一番のステータス。全力で戦いたい」という photo:So Isobe

そして大前が口にしたのは、自分の勝利だけではない、もうひとつの理想だった。

「去年シクロワイアードに書いたレポートでも触れましたけど、高岡さんが強い走りをするところを、僕もファンもみんな見たいと思うんです。僕自身が勝つだけのレースじゃなくて、チームとしてワンツーとか、そういうことができれば理想的。そこはレースなので水物で、やってみないとわからない。僕のこれからの1ヶ月の取り組み次第です。でも、どうなろうと、とにかく全力を尽くすことだけは間違いありません」。

高岡もまた、ライバルの存在を冷静に見据えている。「井上先生も強いし、去年の畝原くんじゃないですけど、『こんな強い選手がいたんだ』という人がどこから出てくるかもわからない。だからシンプルに、自分をピークコンディションに持っていって、レースを楽しめるように。RXとしての勝ち星もそうですし、Tarmacの連勝記録に傷をつけたくないなと思いますよね」。

ディスクブレーキ時代に入ってから、市民200kmはすべてスペシャライズドが制してきた。その系譜を、今年はSL9が引き継ぐことになる。

昨年大会、終盤戦の攻撃で集団を破壊した井上亮(Magellan Systems Japan) photo:Makoto AYANO

おきなわで何度も頂点に立ってきた高岡から、ディフェンディングチャンピオンとして挑む大前へ。伝えたいことはあるかと尋ねると、答えは実にシンプルだった。

「お前が普通に力を出せれば勝てるから、普通に力を出せるように、ということでしょうね。それが難しいんだけど(笑)」。

昨年、大前には娘が生まれた。自転車に打ち込むための環境は、確実に変わっていると言う。「自分を取り巻く環境が、去年に比べて自転車に注力するうえで難しくなっているのは間違いないです。でも、時間がない中で時間を作ってトレーニングするとか、置かれた環境の中で全力を尽くすというのは、学生時代からずっとやってきたこと。やることはそう変わらないので、テンションが大きく変わることもなくて、淡々と自分のやるべきことをやるだけです」。

そう語った後、大前は少し笑ってこう続けた。「家族のことを考えたら、僕が自転車を辞めるのが一番いいんですよね(笑)。でも、自転車を頑張ることだけは自分の中で譲れないし、それを娘に伝えたいと思う部分もあります」。

「似た者同士なんですよね、僕と大前は」と高岡も笑う。「自分が純粋にやりたいという気持ちが強いから、それがモチベーションになっているんですよ」。

グランフォンド世界選手権チームリレーにて。個々がアグレッシブに走るRXチームだからこそ結果がついてくる、と言う photo:Makoto AYANO

そんな2人が集うRoppongi Expressというチームについて、大前はこう話す。

「自然に醸成されてきたレースの走り方や、RXのチームワークの空気感が僕は結構好きなんです。悪く言うと、RXはみんな自分のことしかあまり考えていない(笑)。チームメイトが勝負をかけているときに、その邪魔をしない。それだけがルールなんです。おのおのが自分の結果を求めてアグレッシブに走るから、結果としてワンツーフィニッシュすることもある。レースを捨てて走っている選手がいないから、成績が出ているんだと思います」。

チームメイトでありながら、全員が上を目指して走る。それは自転車競技の本場であるヨーロッパの若手チームにも通じるマインドだ。誰かのために走るのではなく、全員が勝ちにいくからこそ、勝負どころで有利に働く。去年のおきなわで見せた強さの根っこは、きっとそこにあるはず。それぞれの立場で、それぞれの理想を胸に、2人は再びおきなわのスタートラインに立つ。

2人が語るTarmac SL9の走りを、全国の販売店で体感しよう

プロ選手たちが信頼を寄せるTarmac SL9。全国のプロショップでその追体験ができるプログラムをお見逃しなく (c)スペシャライズド・ジャパン
最大24回まで無金利になるお得なキャンペーンを実施中。12月21日まで実施中だ (c)スペシャライズド・ジャパン



2人が口をそろえて評価したS-Works Tarmac SL9の加速感や軽快さは、カタログのスペックだけではなかなか伝わらない。スペシャライズドでは、Tarmac SL9の試乗車を置く全国の正規販売店をまとめた特設ページを公開している。お近くの店舗を探して、ぜひ実際にその走りを確かめてみてほしい。

試乗でSL9の走りに惚れ込んだなら、購入を後押ししてくれるのが12月21日(月)まで実施中の無金利キャンペーンだ。期間中、ショッピングクレジットを利用すると最大24回まで分割払手数料が無料になる。対象はTarmac SL9だけでなく、ホイールやシューズといったパフォーマンスアップにつながるアイテムも含まれる。詳しくは試乗の際に販売店スタッフへ相談してみよう。なお、キャンペーンを実施していない店舗もあるため、利用の可否は各販売店に確認してほしい。

Tarmac SL9 試乗店舗一覧
提供:スペシャライズド・ジャパン | 制作:シクロワイアード編集部