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女性が女性のために自転車から用品まで開発するブランド、LivがエアロロードのENVILIV(エンヴィリブ)をモデルチェンジ。エアロダイナミクスに優れ、女性レーサーが乗った時にこそパフォーマンスを発揮する設計が施された新型モデルを女性サイクリストの視点で掘り下げる。

世界最大の自転車メーカーであるジャイアントグループが展開するLiv(リブ)。女性のためのスポーツサイクルブランドとして、開発から女性が中心となって製品展開する女性専門ブランドだ。

Livがサポートするリブレーシング・テックファインド photo:Makoto AYANO

Livの創始者・代表・ジャイアントグループ会長のボニー・ツー氏 photo:So.Isobe
2008年に発足、「女性も使える/乗れるもの」ではなく、完全に女性向けのブランドとしてスタートを切ったLiv。ブランド創設者ボニー・ツー氏は「男女では体形が違うから、ジャージのデザインが違ってくるのは誰でも簡単に分かること。でもそれはバイクにだって言えることです。なぜ男性よりも頭が少し小さく、ウェストが細く、お尻が少し大きな女性が男性と同じバイクに乗らなければいけないのでしょう? Livはそんな考えから始まったブランドです」とブランド創始のコンセプトを説明する。

Livは女子ワールドツアーチームのジェイコ・アルウラーを機材サポートする photo:CorVos
スペインチャンピオンのマヴィ・ガルシア(リブレーシング・テックファインド) photo:CorVos


設計・開発陣として女性エンジニアが多く関わり、ブランド発足当時から女性のプロサイクリングチームをスポンサードして、そのフィードバックを製品開発に活かしてきたLiv。今シーズンもロードレースにおいてはジェイコ・アルウラーとリブレーシング・テックファインドの2つのトップ女子チームをサポート。実戦から得られるアスリートの声を積極的に吸い上げる。Livの製品はバイクのみでなく、アパレルやシューズ、ヘルメットなどすべてのエキップメントに及び、Liv販売店も世界に展開する。

バイクに関しては女性の体格にあわせた素材、設計&ジオメトリー、パーツアッセンブル、そしてカラーリングが採用され、世に送り出される。つまり男性用とは設計から異なるのがLivのバイクだ。改めて女性の体格は男性のそれとは異なる。身長や肩幅、手脚の長さの比率、骨格から身体の各部でのボリュームなど、大きく、そして微細に異なっている。そんな女性のために設計段階から最適化されたのがLivのスポーツバイクだ。現在、男性用と女性用とを製造段階から造り分けている数少ない貴重なブランドと言えるだろう。

Liv ENVILIV ADVANCED 2(手前)、Liv ENVILIV ADVANCED PRO(奥) photo:Makoto AYANO

そんなLivのレーシングバイク、ENVILIV(エンヴィリブ)が今春フルモデルチェンジを遂げた。世界最高峰のレースで戦うためにエアロダイナミクスと軽量性を追求したレーシングマシンであり、ロード、クリテリウム、トライアスロンでの勝利のみならず、タイムや順位などの自己ベスト更新を支えてくれる一台だ。

Liv ENVILIV ADVANCED PRO photo:Makoto AYANO

現在のレーシングバイクのトレンドは「エアロと軽量性の両立」が大きなテーマ。空気抵抗を削減しながらも軽量性と反応性を兼ね備えたバイクが世界のレースシーンで必要とされはじめている。空気抵抗削減に焦点を当てたエアロロードバイク、しかし同時に軽さと反応性などオールラウンドな性能も追い求めたモデルがLivの新型ENVILIVだ。

エアロ効果を大きく左右するフォーク前面からのシルエット photo:Makoto AYANO

新型ENVILIVの開発にあたり、Livは数値流体力学(CFD)を用いた設計、風洞施設での実験、そしてプロトライアスリートのリサ・テルッチとともに実地テストを実施。各フェーズで試行錯誤を繰り返すことで、データとしてだけではなく、実世界で女性が乗った時にパフォーマンスを発揮できる走行性能を生み出すことに成功した。

空気抵抗軽減効果の高いトランケイテッド・エリプス形状を採用 photo:Makoto AYANO

エアロ面ではチューブ形状の最適化と、ケーブルフル内装かつエアロ形状のハンドルバー&ステム、専用ボトルケージの開発で性能を強化。コンピューターと風洞実験の両方でシミュレーションを行ったフレームは「トランケイテッド・エリプス」(楕円の後部を切り落とした新しい翼型形状)と呼ぶフレームチューブデザインを採用している。

女性の肩幅に合わせたハンドル。ケーブル類はコラム内に内蔵される photo:Makoto AYANO
ケーブルが露出せずハンドル調整の自由度が高い専用ステム photo:Makoto AYANO


空気抵抗の影響が大きく、操作性にも関わるハンドル部は、空気抵抗を減らすとともに手を置いた際の快適性を高めるフラットトップ形状と、コントロール性を高めるドロップ形状を採用した新しいCONTACT AEROコックピットを採用。これにより前世代と同じ条件下のテストにおいて9.2W(3.9%)の空気抵抗を削減した。この数値は前作が時速40kmで1時間走行した出力と同じ出力で新型が40km走行した時に約40秒の短縮に相当するものだという。

空気抵抗に優れるコンパクトな後ろ三角。ENVILIV ADVANCED PROはホイールにGIANT SLR 1 50 DISC Hookless Carbonを採用 photo:Makoto AYANO

加えてペダリング効率の良いフレーム設計と高い軽量性の両立を実現するべく、Livは自社のカーボン工場で生産されるカスタム素材を使用。テルッチとの実地テストでプロアスリートが認めるフレームを実現しながら、フレーム単体で43g、フォークで63g、その他小物パーツ含めたシステム重量で205gものダイエットに成功した。ハイエンドグレードのADVANCED PROにアセンブルされるハンドルとステムも前作標準スペックより110gも軽量となっている。

チェーンステイから後ろ三角は細身のシルエット photo:Makoto AYANO
エアロ効果に優れる形状のベクターカーボンシートピラー photo:Makoto AYANO


エアロダイナミクスは多くの要因から影響を受けるが、剛性と重量という2つの要素は互いに相容れないものと考えられがち。しかし新しいENVILIVは、そのスイートスポットを見つけ、ハイパフォーマンスグレードのカーボン原糸素材と最先端の製造技術により、前世代よりも高い重量剛性比を実現している。つまり「より速く、軽く、強いバイク」が完成した。

これらの進化はプロ選手がわずかな差でライバルに打ち勝つためにデザインされたものだが、高効率で走行できる性能はホビーレーサーやサイクリング派のユーザーにも恩恵がある。前者の場合は先述したように自己目標達成の手助けとなり、後者の場合は行動範囲を広げたり、余裕のある走りをサポートしてくれるだろう。

Liv ENVILIV ADVANCED 2は油圧&機械式シマノ105コンポが採用される photo:Makoto AYANO
コラムスペーサーは分割式により高さ調整が簡単に行える photo:Makoto AYANO



また、エアロとスムーズなルックスを両立するケーブル内装だが、ENVILIVは同時にハンドルポジションの自由度の高さとメンテナンス性能にも配慮。乗車ポジションの調整にも煩わしさの無い扱いやすい構造を採用し、空気抵抗を減らすとともにスマートな外観を実現している。採用されるLIV CONTACT AEROハンドルバーは、エアロ性能、人間工学に基づいたグリップ、カスタマイズされたドロップとリーチを採用した、女性に最適化されたものだ。

標準で付属する専用設計のエアロボトルケージ photo:Makoto AYANO

そしてカスタム設計されたダウンチューブとシートチューブ専用のウォーターボトルケージは、ボトルを取り付けた状態で空気抵抗がもっとも小さくでき、かつ希望すれば取り外すことも他のケージを取り付けることも可能だ。

ENVILIVはハイエンドのADVANCED PROとミドルグレードのADVANCED 2の異なるグレードのカーボンフレームを採用した2モデルで展開される。ADVANCED PROはトータルパッケージでエアロ、軽量性を考慮しており、ジャイアントのSLR 1 50 DISCホイールがアセンブルされる。メインコンポーネントはシマノ ULTEGRA DI2。サドルも女性向けに設計されたLiv ALACRA SLRが採用されている。価格は891,000円(税込)。

セカンドグレードのLiv ENVILIV ADVANCED 2 photo:Makoto AYANO

セカンドグレードのADVANCED 2はメインフレームは共通としながら、フォークやアセンブルパーツを厳選したモデル。メインコンポーネントはシマノ105(機械式変速、11s)で、サドルはLivオリジナルのAPROACHがアセンブルされている。カラーは蜃気楼をイメージしたミラージュ。価格は418,000円(税込)。

Liv ENVILIV ADVANCED 2はジャイアントPA2 DISCチューブレスレディホイールを採用 photo:Makoto AYANO

カトーサイクルの羽田野千晶さんとLivアンバサダーをつとめる平良エレアさんが実走インプレッションを行った photo:Makoto AYANO

今回はこの2モデルを2人の女性サイクリストに乗ってもらい、乗り心地や細部の評価を徹底的に掘り下げる。テストライダーはカトーサイクルの羽田野千晶さん、そしてLivアンバサダーをつとめ、オールラウンドモデルのLiv LANGMA(ランマ)を愛車とする平良エレアさん。用意された2台を乗り比べ、異なるプロフィールのホイールをセットするなどしてあらゆる状況を想定しての徹底インプレッションを実施した。果たして2人が下した評価はどのようなものか、詳しくは次項をお読みいただきたい。

カトーサイクルの羽田野千晶さんとLivアンバサダーをつとめる平良エレアさんがフィールドで実走インプレッション photo:Makoto AYANO

Liv ENVILIV ADVANCED PRO

フレームAdvanced-Grade Composite OLD142mm,VECTOR Composite Seat Post
F.フォークAdvanced SL-Grade Composite,Full Composite OverDrive AERO Column 12mm Axle
ギアクランクSHIMANO ULTEGRA with GIANT POWER PRO
変速パーツSHIMANO ULTEGRA Di2
ブレーキセットSHIMANO ULTEGRA F:160mm R:140mm Rotors
ホイールGIANT SLR 1 50 DISC Hookless Carbon
タイヤCADEX RACE TUBELESS 700x25C
シフト段数24Speed
サイズ440 (XS)、470 (XS)、500 (S) mm
重量7.3kg (XS)
カラーカーボン
価格891,000円(税込)


Liv ENVILIV ADVANCED 2

フレームAdvanced-Grade Composite OLD142mm,VECTOR Composite Seat Post
F.フォークAdvanced-Grade Composite,Full Composite OverDrive AERO Column 12mm Axle
ギアクランクSHIMANO 105
変速パーツSHIMANO 105
ブレーキセットSHIMANO 105 TR F:160mm R:140mm Rotors
タイヤGIANT GAVIA COURSE 1 700x25C Tubeless Ready
シフト段数22Speed
サイズ440 (XS)、470 (XS)、500 (S) mm
重量9.0kg (S)
カラーミラージュ
価格418,000円(税込)

text&photo:綾野 真、 提供:ジャイアント・ジャパン