ヴィットリアのシクロクロスタイヤ、TERRENOシリーズの中で最もウェット/泥コンディションに向けてラインナップされているのが今回紹介するTERRENO WET。その名の通りグリップ力を最重要視した、アグレッシブなトレッドパターンが特徴だ。

TERRENO WET 使い勝手の良いマッドタイヤ

ラインナップ中最もグリップ力を重視したTERRENO WETラインナップ中最もグリップ力を重視したTERRENO WET photo:Makoto.AYANO
ノブそれぞれの間隔を広く取ることで泥はけ性能を向上ノブそれぞれの間隔を広く取ることで泥はけ性能を向上 photo:Makoto.AYANOチューブレスレディやチューブラー、そしてグラベル用の38cなど5種類が揃うチューブレスレディやチューブラー、そしてグラベル用の38cなど5種類が揃う photo:Makoto.AYANO


センタースリックやミックスパターンのタイヤと違い、マッドタイヤは各ブランド間の設計思想の差が出やすいと言えるだろう。ヴィットリアによれば、TERRENO WETは「ミックスパターンのように転がり、泥の中でも確実にラインを捉え、そして泥詰まりを防ぐ」ことを目標に開発が進められたという。

交互に配置したセンターリッジによって転がり抵抗を抑えつつ、ノブそれぞれの間隔を広く取ることで泥はけ性能を引き上げている。2019年にモデルチェンジが行われたグラフェンコンパウンドもウェットグリップを飛躍的に向上させる要素の一つ。ドライコンディションを除く様々な状況下で使えるタイヤとして世に送り出されている。

チューブラー、チューブレスレディ共に細めの31cと規定上限の33cが用意されるほか、チューブレスレディモデルにはグラベルロードにも対応する40cモデルも用意されている。

インプレッションby前田公平&織田聖

「WET寄りのオールラウンドタイヤ。抵抗が少ないので幅広く使える」「WET寄りのオールラウンドタイヤ。抵抗が少ないので幅広く使える」 photo:Makoto.AYANO
CW:DRY、MIXと聞いてきた最後にWETについてお伺いしましょう。お二人の感想を教えてください。

前田:意外だったんですが、TERRENO WETは「WET寄りのオールラウンド」タイヤですね。深い泥コンディションに特化した他のヨーロッパタイヤと比べてグリップ感こそ少し落ちますが、その代わりに転がり抵抗が軽いので使えるシーンがたくさんあると感じました。オフロードタイヤってグリップ力が強すぎると重くなってしまうし、それが嫌でマッドタイヤを選ばない人って結構いると思うんですよ。そんな方にはこのタイヤがかなりオススメです。

織田:確かに、ヨーロッパですらマッドタイヤを使ったことって2回しかないんです。2年前の世界選手権(オランダ、ホーヘルハイデ)のような鬼アップダウンかつ超重馬場のレースだったら特化したものが欲しいんですが、日本だとそんなレースはいままで片手で足りてしまうくらい。

前:ヨーロッパ遠征に行っている選手がその2回しか使わないということは、国内レースを転戦している限りスーパーマッドってほぼ出番がないじゃないですか。だからTERRENO WETって、とても使い勝手が良いタイヤだと感じました。

状況に応じてWETかMIXを選んだり、あるいは組み合わせて使うことができるならベスト状況に応じてWETかMIXを選んだり、あるいは組み合わせて使うことができるならベスト photo:Makoto.AYANO
「TERRENO WETは縦にも横にもグリップ力が強く、バランスが取れている」「TERRENO WETは縦にも横にもグリップ力が強く、バランスが取れている」 photo:Makoto.AYANOTERRENOシリーズの中でも断面形状が丸く、倒し込んでも嫌な挙動が無いTERRENOシリーズの中でも断面形状が丸く、倒し込んでも嫌な挙動が無い photo:Makoto.AYANO


CW:マッドタイヤはブランドでかなりトレッドパターンが異なりますが、選手目線からどう捉えますか?

前:確かに。センターノブの間隔が近いから転がりが軽いんだと思います。昨シーズンまで使ったチャレンジだと一番近いのはベビーライムスでしょうか。なんだろう、マウンテンバイクのタイヤに近いとフィーリングもありますね。

織:僕はIRCのSERACをもう少しマッド寄りにしたイメージ。キャンバーも問題なく走れそうですね。このタイヤ、(高圧で)泥に刺して走るか、それとも潰して(低圧)で走るかだったらどう?

前:どっちでもいけるから、それこそ路面状況で空気圧を変えるのが良さそうだね。ちょっと濡れているレベルであれば、そんなに下げなくてもノブを刺してグリップさせるだろうし、泥だったら接地面積を増やして(低圧にして)トレッド全体を使って走るイメージ。

「重すぎず、泥を中心に幅広い状況で使えるマッドタイヤ」「重すぎず、泥を中心に幅広い状況で使えるマッドタイヤ」 photo:Makoto.AYANO
タイヤを観察して気づいたんですが、TERRENOシリーズの中でもWETが一番断面形状がラウンドしているんですよね。だからバイクを倒し込んだ時に挙動変化が少ない。だから、ちょっと路面が緩くなった時に扱いやすいんじゃないかな。これなら1シーズンのうちの登場頻度は高いかなと思います。

織:縦にも横にもグリップ力が強いので、例えばマキノや幕張のような泥のキャンバーを登るコースがある時に、後輪だけTERRENO WETに替えるのは良いかもしれません。

「泥レースでもしっかり引っ掛けられる轍があればフロントはMIXで良い」「泥レースでもしっかり引っ掛けられる轍があればフロントはMIXで良い」 photo:Satoshi.Oda
前:チューブレスの人や、スペアのチューブラーホイールを用意できるならWETとMIXを1セットずつ用意しておけば最高ですよね。滑りやすい路面で加速するにはトラクションが重要ですから、リアはWETを入れることもある。フロントはコース次第でしょう。泥レースでもしっかり引っ掛けられる轍があればフロントはMIXで良いし、芝生や滑りやすいハードパック、そして飯山のシングルトラック区間のような、ハンドルが言うことを聞かない場面ならフロントもWETにするでしょう。

総括すると、TERRENO WETは「重すぎず、泥を中心に幅広い状況で使えるマッドタイヤ」と言えます。脚力には自信があるけれど、コーナーが不安な方にとっては良い選択肢でしょうし、先ほどお話したように、普段DRYやMIXを使う方にとってのスペアとして活躍してくれるタイヤだと感じました。
ヴィットリア TERRENO WETスペック/ラインナップ
サイズケーシング構造素材コンパウンド重量税抜価格
700×31cCyclocrossTNTNylon 120TPI1C Graphene 2.0390g6,000円
700×33cCyclocrossTNTNylon 120TPI1C Graphene 2.0410g6,000円
700×38cGravelTNTNylon 120TPI1C Graphene 2.0500g6,000円
31-28CyclocrossTubularCotton 320TPI3C Graphene 2.0440g11,000円
33-28GravelTubularCotton 320TPI3C Graphene 2.0445g11,000円

インプレッションを終えて

「選手間でもレース前に話すのは、コースとタイヤと空気圧のことばかり。そのくらい大切なんです」「選手間でもレース前に話すのは、コースとタイヤと空気圧のことばかり。そのくらい大切なんです」 photo:Makoto.AYANO
前田公平:今回TERRENOのチューブラー3モデルをテストしましたが、全般的に柔らかく扱いやすい乗り味という点で共通していましたね。これからシーズンインまでの期間を使って、ベストな空気圧や走らせ方を身体に染み込ませていきたいです。

織田聖:序盤に佐藤GMも話していましたが、ハズレタイヤがないというのは凄くいい。ヴィットリアだからこその安心感はFMBやデュガスより遥かに大きいですよね。MTBと同じく積極的にレース会場にもサポートブースを出すと聞いていますし、これは一般ユーザーであっても大きなメリットとなるでしょう。

「少なくともチューブレス、そしてある程度成績を狙うならチューブラーを選ぶべき」「少なくともチューブレス、そしてある程度成績を狙うならチューブラーを選ぶべき」 photo:Makoto.AYANO
佐藤GM:本当にシクロクロスってタイヤが大きな要素を締めるんですよね。だからある程度成績を狙いたいのであれば昨年タイヤの使いまわしなんてせずに、1シーズンに1セットを使い切るつもりで揃えるのがベストです。それから空気圧の管理は言わずもがな。レースが始まる前に、ドライなら何気圧、泥なら何気圧と自分基準を理解しておけば、いざレースとなった時に落ち着いて試走ができる。心の余裕が違いますから。

前:選手間でもレース前に話すのは、コースのライン取りとタイヤと空気圧のことばかりですよ。ブリヂストンのトッキー(沢田時)と会えば本当にそれだけしか話さないくらい。でも、挨拶代わりにタイヤを触るくらい、本当にタイヤって大事なんですよ。

「これからシーズンインまでの期間を使って、ベストな空気圧や走らせ方を身体に染み込ませていきたい」「これからシーズンインまでの期間を使って、ベストな空気圧や走らせ方を身体に染み込ませていきたい」 photo:Makoto.AYANO
GM:僕は普段チームのことで手いっぱいだから気づかなかったんですが、下位カテゴリーだと未だにクリンチャータイヤでレースを走る人がいるそうじゃないですか。グラベルツーリングだったら分からなくないですが、レースはパンクリスクなどデメリットしかありません。少なくともチューブレス、そしてある程度成績を狙うならチューブラーを選ぶべきと強く宣言しておきます。今回の記事を読んでいただいた方が、何か気づきを得ることができればそれ以上に嬉しいことはありません。
提供:VTJ 制作:シクロワイアード編集部