満を持してデビューした「CADEX(カデックス)」を総力特集。ジャイアントが数年に渡る実戦テストで磨き上げ、昨年はサンウェブの、そして今季はチームCCCの走りを支えてきたプレミアムレーシングブランドだ。カーボンスポークを用いた超軽量ホイールや、専用設計のチューブレスタイヤ、そしてサドルなど、世界ナンバーワンブランドのテクノロジーが凝縮されたパーツを、開発者の話やインプレッションを交えながら紹介していきたい。

性能第一主義のプレミアムブランド、CADEXのデビュー

ベルギー・ブリュッセルで開催されたCADEXグローバルローンチ。プレゼンテーションを行うのはジャイアントのプロダクト部門ヘッドを務めるジェフ・シュナイダー氏ベルギー・ブリュッセルで開催されたCADEXグローバルローンチ。プレゼンテーションを行うのはジャイアントのプロダクト部門ヘッドを務めるジェフ・シュナイダー氏 photo:Makoto.AYANO
2019年7月4日、ツール・ド・フランス開幕を目前に控えたベルギー・ブリュッセルにてお披露目されたCADEX(カデックス)。世界最大規模の総合自転車メーカー・ジャイアントが手がけるプレミアムパーツブランドであり、デビューまでの2シーズン、#OVERACHIEVEのハッシュタグつきメッセージロゴが記されたプロトタイプホイールが、サンウェブ、そしてCCCチームによって使用され注目を浴びてきた。

当時のTT世界王者トム・ドゥムラン(オランダ)や、ベルギーが誇るクラシックハンターのグレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー)、そして絶対的な強さを誇る女王マリアンヌ・フォス(オランダ)。これらの事実は、カデックスがトッププロを満足させるハイエンドレーシングパーツブランドであるということを示しており、ジャイアントがいよいよもってその領域に切り込むことを意味する。

カデックスのデビュー戦となった19年ツール・ド・フランス第1ステージでアタックするグレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム)カデックスのデビュー戦となった19年ツール・ド・フランス第1ステージでアタックするグレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム) photo:Makoto.AYANO
CCCチームの走りを支えるカデックスホイール。チームはリム/ディスクブレーキ両方を使い分けるCCCチームの走りを支えるカデックスホイール。チームはリム/ディスクブレーキ両方を使い分ける photo:Makoto.AYANO2018年まではサンウェブとタッグを組んだ。アルカンシエルカラーのバイクは当時のTT世界王者トム・デュムラン(オランダ)のもの2018年まではサンウェブとタッグを組んだ。アルカンシエルカラーのバイクは当時のTT世界王者トム・デュムラン(オランダ)のもの photo:Makoto.AYANO

今季圧倒的な強さで勝利を重ねたマリアンヌ・フォス(オランダ、CCC・リブ)もカデックスを使う一人今季圧倒的な強さで勝利を重ねたマリアンヌ・フォス(オランダ、CCC・リブ)もカデックスを使う一人 photo:Kei Tsuji
カデックスというブランド名は、ジャイアントが1985年に着手した「大量生産可能なカーボンバイクの開発」という先駆的なプロジェクトに由来する。今回、最先端のコンポーネントブランドとして生まれ変わったカデックスは、「不可能への挑戦」という当時のフィロソフィーを色濃く受け継いでいる。


「間違えて欲しくないのは、単に製品価格が高いブランドなのではなく、我々の技術の粋を結集することで従来の限界を突破する性能をライダーに与える"ハイパフォーマンス"ブランドだということ。例えば普通のスチールスポークと同じように扱えるカーボンスポークや、フックレス式チューブレスシステムなどはその一例です」と、ブリュッセルで行われたプレゼンテーションの中で開発者の一人はアピールする。なおカデックスは、女性専用のLiv同様にジャイアントから独立した別ブランドとして扱われるという。

調整可能なカーボンスポーク、フックレスチューブレス 革新的ロードホイール

数々の革新的なテクノロジーを凝縮して生まれた超軽量ロードホイール。画像は65mmハイトのCADEX 65だ数々の革新的なテクノロジーを凝縮して生まれた超軽量ロードホイール。画像は65mmハイトのCADEX 65だ photo:Makoto.AYANO
2年間もの実戦テストを経てデビューしたカデックス。ラインナップの中心はセミディープ、ディープ、バトン、ディスクホイールと4タイプのフルカーボンホイール群であり、サドルとチューブレスタイヤがその脇を固める。全てが「THE PURSUIT OF PINNACLE PRODUCT(最高峰プロダクトの追求)」というキャッチフレーズを掲げるプロスペックモデルで、ことホイールに関してはリムブレーキ版やチューブラー版など、プロ選手が要求するスペックも忘れられてはいない。

オールラウンドに使える42mmハイトの「CADEX 42」と、空力性能を重視した65mmハイトの「CADEX 65」という2種類のロード用ホイールが中心に据わり、いずれもリム/ディスクブレーキ、チューブレス/チューブラーと合計8種類が展開される。優れたパワー伝達性とエアロダイナミクス、軽量性、ハンドリングを兼ね備えることが開発テーマで、全モデルにエアロ形状のリムとスポークを採用している。フックレスリムを採用するチューブレスモデルは、軽量化のみならず取り付け部分の段差を無くすことでエアロダイナミクス向上をも叶えた。

42mmハイトの「CADEX 42」と、空力性能を重視した65mmハイトの「CADEX 65」が用意される。プロ選手が使うのは中継で認識されやすいホワイトロゴ版だ42mmハイトの「CADEX 42」と、空力性能を重視した65mmハイトの「CADEX 65」が用意される。プロ選手が使うのは中継で認識されやすいホワイトロゴ版だ photo:Makoto.AYANO
リムはフックレス構造でありながら、カーボンレイアップを緻密に計算することで重量と強度とのバランスを整える。ただし構造上、タイヤビードとリムウォールが密着する必要があり、どちらにも高い工作精度が求められるため、現在の認定タイヤはカデックスRACEとジャイアントGAVIA(0および1グレード)のみとなる。

また、一般的な金属製に見えるスポークは実は超軽量のカーボン製で、軽量化に大きく貢献。エアロ形状を採用しているDTスイス社のエアロライトが4.34gであるのに対して、カデックスのスポークは僅か2.85gだ。前後セット37本換算でスポークだけで38.5gの削減に成功している。これら各部の軽量化の積み重ねにより、42mmハイトのリムブレーキモデルでは1,265g、ディスクブレーキモデルでは1,327gを実現している。

リムはカーボン繊維が途切れないようレイアップを行い、強度と軽さに貢献。フックレス式チューブレスによるタイヤとリムの一体感が高い空力性能を生むリムはカーボン繊維が途切れないようレイアップを行い、強度と軽さに貢献。フックレス式チューブレスによるタイヤとリムの一体感が高い空力性能を生む photo:Makoto.AYANO
一見金属製に見えるフルカーボンスポーク。僅か2.85gで非常に軽い一見金属製に見えるフルカーボンスポーク。僅か2.85gで非常に軽い photo:Makoto.AYANO内部構造を徹底的に見直したというハブ。高い駆動効率と抵抗低減を担う内部構造を徹底的に見直したというハブ。高い駆動効率と抵抗低減を担う photo:Makoto.AYANO

しかしカデックスはただ軽さを追求したホイールではない。「軽さだけを追い求めた製品は、しばしば剛性や耐久性に欠ける。でも我々が目指しているのはそれらとは違い、軽さを突き詰めながらも信頼性、ハンドリング、空力などを高次元でバランスさせた製品。長い時間をかけた分その点には自信を持っている」と、プロダクト部門ヘッドのジェフ・シュナイダー氏は胸を張る。通常と同じニップル調整式であることも、カーボンスポークホイールとしては注目すべだろう。

パワー伝達効率においては、DBL(ダイナミック・バランスド・レーシング)という技術がポイントだ。DBLとはホイールが回転した時にスポークテンションが最適になるように、組み上げ時のスポークテンションを調整するテクノロジーのこと。ハブの内部構造も丁寧に仕上げられ抵抗低減に役立っているという。

CADEX ロードホイール基本スペック

リム素材カーボン
リムハイト42mm65mm
リム外幅23mm26mm
リム内幅チューブレス:19.4mm
チューブラー:N/A
チューブレス:22.4mm
チューブラー:N/A
フロントハブCADEX Low Friction Hub(ディスクはセンターロック仕様)
リアハブCADEX Low Friction Hub, Ratchet Driver(ディスクはセンターロック仕様)
対応カセットShimano 11 / SRAM XDR 12(別売)
スポーク (フロント、リア)Aero Carbon Spoke
品質保証2年間
破損交換プログラム5年間
税抜価格フロント:140,000円、リア180,000円フロント:140,000円、リア200,000円

CADEX 42 各タイプ比較

車輪タイプディスク/チューブレスディスク/チューブラーリム/チューブレスリム/チューブラー
フロントアクスル100x12 TA100x12 TATitanium 100x5 QRTitanium 100x5 QR
リアアクスル142x12 TA142x12 TATitanium 130x5 QRTitanium 130x5 QR
スポーク組 (フロント)Straight pull, 21HStraight pull, 21HStraight pull, 16HStraight pull, 16H
スポーク組 (リア)DBL, 24HDBL, 24HDBL, 21HDBL, 21H
重量 (ペア)1327g1242g1265g1163g
※ディスクのスルーアクスルは付属しない

CADEX 65 各タイプ比較

車輪タイプディスク/チューブレスディスク/チューブラーリム/チューブレスリム/チューブラー
フロントアクスル100x12 TA100x12 TATitanium 100x5 QRTitanium 100x5 QR
リアアクスル142x12 TA142x12 TATitanium 130x5 QRTitanium 130x5 QR
スポーク組 (フロント)Straight pull, 21HStraight pull, 21HStraight pull, 16HStraight pull, 16H
スポーク組 (リア)DBL, 24HDBL, 24HDBL, 21HDBL, 21H
重量 (ペア)1501g1444g1425g1367g
※ディスクのスルーアクスルは付属しない

アドバンテージは空力だけに非らず  TT/トライアスロン用バトン&ディスクホイール

4バトンホイール「CADEX 4-SPOKE AERO」とディスクホイール「CADEX AERO DISC」。こちらもトッププロと共に鍛え上げられた製品だ4バトンホイール「CADEX 4-SPOKE AERO」とディスクホイール「CADEX AERO DISC」。こちらもトッププロと共に鍛え上げられた製品だ photo:Makoto.AYANO
TTスペシャリストであるトム・デュムランらの意見を基に作られたのが、TT向けの4バトンホイール「CADEX 4-SPOKE AERO」とディスクホイール「CADEX AERO DISC」だ。テクストリームカーボンの織り目が目を引くこの前後セットは、ジャイアントがエアロロード、PROPEL(現行モデル)の開発で協力体制を築いたフランスの風洞実験研究施設「ACE(Aero Concept Engineering)」で、空力の専門家たちと共に性能を磨き上げてきた意欲作。度重なるシミュレーションを元に6つのプロトタイプが製作され、その中から実際の走行フィーリングをもとに製品版が選ばれた。

テクストリームカーボンの折り目が目立つ。4バトンは横剛性と空力のバランスを踏まえた結果だというテクストリームカーボンの折り目が目立つ。4バトンは横剛性と空力のバランスを踏まえた結果だという photo:Makoto.AYANOフランスの風洞実験研究施設「ACE」で導き出されたエアロフォルムフランスの風洞実験研究施設「ACE」で導き出されたエアロフォルム photo:Makoto.AYANO

CADEX AERO DISCの反ドライブ側は球面。整流効果を極限まで突き詰めた結果だというCADEX AERO DISCの反ドライブ側は球面。整流効果を極限まで突き詰めた結果だという photo:Makoto.AYANO
こちらもチューブレスとチューブラーの2種類がそれぞれに用意され(ディスクブレーキ用は設定なし)、重量もフロントが760g、リアが1,000gと軽さを維持しつつ、どちらもクラス最高のねじれ剛性を備える。ハブやワイドリムなどの構造はロードホイールと共通で、ことワイドリムとタイヤのマッチングがもたらす空力面のアドバンテージは絶大だ。

CADEX 4-SPOKE AERO

リムタイプクリンチャー(チューブレス・コンバーチブル)チューブラー
リム素材Ultralight 18K Full Composite
リム外幅27.6mm27.3mm
リム内幅21mmN/A
フロントハブCADEX Low Friction Hub
ベアリングPrecision Sealed Cartridge
フロントアクスルTitanium 100x5 QR
重量840g760g
品質保証2年間
破損交換プログラム5年間
税抜価格190,000円

CADEX AERO DISC

リムタイプクリンチャー(チューブレス・コンバーチブル)チューブラー
リム素材Ultralight 18K Full Composite
リム外幅27.6mm27.3mm
リム内幅21mmN/A
リアハブCADEX Low Friction Hub, Rachet Driver
対応カセットShimano 11 / SRAM XDR 12(別売)
ベアリングPrecision Sealed Cartridge
フロントアクスルTitanium 130x5 QR
重量1180g1000g
品質保証2年間
破損交換プログラム5年間
税抜価格260,000円


レーシングチューブレスタイヤと一体式カーボンベースのサドルもラインナップ

23、25、28cが用意されるCADEX RACE TUBELESSタイヤ。しなやかな乗り味、グリップ性能、そして耐パンク性能の両立が念頭に置かれた23、25、28cが用意されるCADEX RACE TUBELESSタイヤ。しなやかな乗り味、グリップ性能、そして耐パンク性能の両立が念頭に置かれた (c)www.cadex-cycling.com
カデックスの各チューブレスホイールに合わせて開発されたのが「CADEX RACE TUBELESS」タイヤだ。既にジャイアントブランドで用意されていたロードタイヤ「GAVIA」をベースに、全く新しいRR-Sシリカベースコンパウンドの投入による軽い走行感とコントロール性を両立。乗り味に関してもチューブラータイヤに匹敵するしなやかさが念頭に置かれ、ケーシングを超柔軟な単層構造とした。CCCチームのミヒャエル・シェアー(スイス)などがチューブラーから乗り換えたという事実も、タイヤとホイールの乗り味を表す良い事例と言えるだろう。

1種類展開のCADEX BOOSTサドル。レール一体式カーボンベースを備え、ハンモックのようにしならせフィット感と快適性を高める1種類展開のCADEX BOOSTサドル。レール一体式カーボンベースを備え、ハンモックのようにしならせフィット感と快適性を高める photo:Makoto.AYANO
ショートタイプのサドル形状。高出力で走るレースを前提とした作りだショートタイプのサドル形状。高出力で走るレースを前提とした作りだ photo:Makoto.AYANOゲル状のポリウレタンエラストマー粒子を内部に配置し、骨盤を包み込むように体重を支えるゲル状のポリウレタンエラストマー粒子を内部に配置し、骨盤を包み込むように体重を支える photo:Makoto.AYANO

幾つものプロトタイプがサンウェブやCCCチームによってテストされてきたサドルは、ショートノーズタイプのレール一体式カーボンベースの「CADEX BOOST」1種類がラインナップされる。流動性の高いCADEX専用のポリウレタンエラストマー粒子が2箇所に配置されることで骨盤を包み込むように支える。手で押し込んでも全体的に硬い印象だが、点ではなく面で体重を分散させることでパワー伝達と快適性を両立したという。

レール一体式のベースは軽量化だけではなく、ベースとレールの接続部分を後方にすることで、座面全体をハンモックのようにしならせて快適性を得たという。構造を見直すことで接着剤の使用量を抑えていることも138gと軽く仕上がっている一つの要因だ。

CADEX RACE TUBELESS

サイズ700x23C、25C、28C
重量255g(23C)、270g(25C)、325g(28C)
ETRTO23x622、25x622、28x622
最大空気圧 PSI(23Cと25C)85-125psi、(28C)85-115psi
最大空気圧 BAR(23Cと25C)5.9-8.6bar、(28C)5.9-7.9bar
TPI170
ビードCarbon/Kevlar Composite
ビードタイプFolding
コンパウンドRR-S
耐パンク性能Race Shield
税抜価格10,000円


CADEX BOOST

重量138g
レール素材Carbon with Advanced Forged Composite Technology
レールサイズ9mm, Integrated Rail Design
ベースAdvanced Forged Composite Technology
カバーMicrofiber
パッドEVA+ETPU Particle Flow
サイズ幅149mm、長さ246mm、スタックハイト44mm
仕様Uniclip対応
品質保証2年間
破損交換プログラム5年間
税抜価格33,000円


レーシーな走りを突き詰めたカデックスホイールレーシーな走りを突き詰めたカデックスホイール (c)ジャイアント
合計3年間の研究開発期間を経て、いよいよデビューしたカデックス。テスト段階では高剛性ステムやCADEX BOOSTと異なるサドルも目撃されているため、更なるバリエーション拡充にも期待がかかる。2019年11月に入り日本国内でもデリバリーがスタートしており、ジャイアントを扱うショップであれば広くメンテナンスを受けられるのも嬉しい。

次頁では各製品のインプレッションを紹介する。
提供:ジャイアント・ジャパン 制作:シクロワイアード編集部