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ツール・ド・フランスで活躍するシマノ・プロダクツに迫る本特集も最終回。フランス人選手の活躍で湧いたツールは、チームイネオスの新星エガン・ベルナルが総合首位と新人賞を獲得、ペテル・サガンがマイヨヴェールの袖に腕を通し幕を下ろした。本大会をシマノ・プロダクツと共に振り返ろう。

世界最高峰の舞台で活躍したDURA-ACE 油圧ディスクブレーキ

ミッチェルトン・スコットは油圧ディスクブレーキ搭載バイクで2勝を挙げているミッチェルトン・スコットは油圧ディスクブレーキ搭載バイクで2勝を挙げている photo:Makoto.AYANO
今回のツール・ド・フランスは油圧ディスクブレーキ搭載の自転車を使用する選手たちの活躍が目立つ。使用が正式に認められた2018年大会では、スプリンターたちが駆るエアロロードに搭載されている印象が強かった油圧ディスクブレーキ。2019年ではありとあらゆる脚質の選手が使用し始め、いよいよ本格的にレースの現場で浸透したと言っても良い大会となった。

油圧ディスクブレーキは様々な場面でアドバンテージを発揮し、選手たちのパフォーマンスを支えた。第3ステージの終盤3級山岳でひとり抜け出し、そのまま逃げ切ったジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)。彼が下りでアドバンテージを稼ぎ出せたのは、油圧ディスクブレーキによる安定した制動力も一因だ。もちろんこの時、彼がピレネー決戦を経てもマイヨジョーヌを着用していることを知るものは居ない。

休息日に自転車を整備するミッチェルトン・スコット休息日に自転車を整備するミッチェルトン・スコット photo:Makoto.AYANO
そして、ミッチェルトン・スコットのサイモン・イェーツが油圧ディスクブレーキ搭載車で2回ステージ優勝を果たしている。今年のS.イェーツは双子の兄弟アダムのサポート役としての参加だったが、彼のようなグランツールレーサーが、油圧ディスクブレーキ搭載車で勝利を挙げたことは1つの大きなニュースだ。

マイヨヴェールを獲得したペテル・サガンと、第4ステージで優勝したエリア・ヴィヴィアーニは、昨年の解禁より使用を開始。今年ももちろん油圧ディスクブレーキ搭載車をチョイスしている。今年のツールを振り返るだけでも油圧ディスクブレーキがプロ選手の間で一般的な存在となったことがわかるだろう。

エアロダイナミクスと軽量性から走りを支えるDURA-ACEとPROホイール

優れたエアロダイナミクスを備えるC60を採用する優れたエアロダイナミクスを備えるC60を採用する photo:Makoto.AYANO
ここからはシマノのホイールに焦点を当てていく。現在プロレースで使用されているモデルは、主にDURA-ACEのC60とC40(共にチューブラー)、タイムトライアルではPROの3SpokeホイールとTeXtremeディスクホイールの出番となる。

DURA-ACEホイールは4年目のシーズンを迎え、その円熟した性能はプロの現場では誰もが知るところ。チューブラーモデルのラインアップがC40とC60という2種類のラインアップとなったR9100系。リム幅がワイド化を果たし、エアロダイナミクスを大幅に向上したという。同時にカーボンレイアップを9000系より見直すことで軽量化も実現し、ワイドリムに重量増も最小限に抑えられたことで、DURA-ACEホイールの総合的なパフォーマンスが強化されている。

エアロダイナミクス、剛性、重量を高いレベルで達成できたことで、シマノはDURA-ACEグレードのチューブラーホイールをC40とC60と洗練した2種類のラインアップに。もちろんリムブレーキとディスクブレーキ用の2つが揃えられている。

1つで山岳とアップダウンの激しいコースに対応するC401つで山岳とアップダウンの激しいコースに対応するC40 photo:Makoto.AYANOミッチェルトン・スコットはリム版と油圧ディスク版を使い分けているミッチェルトン・スコットはリム版と油圧ディスク版を使い分けている photo:Makoto.AYANO

サンウェブはC60のディスクブレーキモデルを使用しているサンウェブはC60のディスクブレーキモデルを使用している photo:Makoto.AYANO
C40は前後ペア重量1,384gと軽量でありながら、37mmのリムハイトでエアロダイナミクスを追求。選手たちはアルプスやピレネーなど山岳ステージから、アップダウンの激しい丘陵ステージまでこのホイールで挑む。ミッチェルトン・スコットのサイモン・イェーツは、C40ディスクブレーキモデルで今大会第2週までに2勝を挙げている。

対してC60はエアロダイナミクスの効果を得たい平坦、タイムトライアルで使用されるモデル。60mmというディープリムながら前後ペア重量が1,496gと軽量に仕上げられているため、登りも含むコースで愛用している選手は多数。3級山岳が登場し、登りフィニッシュが設定されていた第3ステージで、ユンボ・ヴィズマの選手たちはC60をチョイスしていた。

C60をタイムトライアルで選択するのは主にサンウェブとミッチェルトン・スコットだ。多くのシマノグローバルサポートチームが後述するPROのホイールを使用している一方で、この2チームはDURA-ACEのC60ディスクブレーキモデルを前輪として採用。今大会の個人タイムトライアルでは、通常PROの3Spokeホイールを使用するチームイネオスのピットにC60を前輪に搭載したバイクも確認できた。

前輪が3Spokeホイールの仕様と、C60仕様どちらも用意しているチームイネオス前輪が3Spokeホイールの仕様と、C60仕様どちらも用意しているチームイネオス photo:Makoto.AYANO
3Spokeホイールを装着するチームイネオスのTTバイク3Spokeホイールを装着するチームイネオスのTTバイク photo:Makoto.AYANOサンウェブはTTでもC60ホイールを採用しているサンウェブはTTでもC60ホイールを採用している photo:Makoto.AYANO

第2ステージで優勝を飾ったユンボ・ヴィズマは後輪にTeXtreme ディスクホイールを採用する第2ステージで優勝を飾ったユンボ・ヴィズマは後輪にTeXtreme ディスクホイールを採用する photo:Makoto.AYANO
タイムトライアル用のホイールが用意されている中でロードレース用を選ぶのは、サンウェブ、ミッチェルトン・スコット、チームイネオスがシマノのエアロダイナミクスを信頼している表れだろう。そしてTT専用モデルとオールラウンドモデルを選択できるのはシマノの強みだろう。

PROのタイムトライアル用ホイールを使用するのはチームイネオスとユンボ・ヴィズマ、グルパマFDJの3チーム。前輪に装備される3Spokeホイールは空気を切り裂くような形状をしたプロペラのようなスポークが特徴のモデル。28mmワイドリムとしながらも765gという重量を達成しており、多少の登りがあるタイムトライアルであれば、3Spokeホイールが力を発揮してくれる。

後輪に使用されるTeXtremeディスクホイールは、非駆動側を「WIDE AERODYNAMIC AEROFOIL」と呼ぶ凸レンズ状のデザインとしたモデル。これによりシートステーとのクリアランスを最小限とし、よりスムーズなエアフローを実現している。3Spokeホイールとこのホイールの組み合わせは、TTTで常に好成績を収めるユンボ・ヴィズマとチームイネオスの定番。第2ステージでこの2チームが1-2を獲得したことも記憶に新しい。

ツールで戦うシマノ&PRO ホイールラインアップ

WH-R9100-C40 チューブラー

シマノ WH-R9100-C40-TUシマノ WH-R9100-C40-TU
リムブレーキモデル
仕様チューブラー、2:1スポークシステム
重量前後ペア1,384g
価格¥318,423(税抜)

ディスクブレーキモデル
仕様チューブラー、2:1スポークシステム、ロードE-THRU 12mm
重量フロント:609g、リア:763g
価格¥149,428(税抜、フロント)、¥174,908(税抜、リア)

WH-R9100-C60 チューブラー

シマノ WH-R9100-C60 チューブラーシマノ WH-R9100-C60 チューブラー
リムブレーキモデル
仕様チューブラー、2:1スポークシステム
重量666g(フロント)、830g(リア)
価格¥148,484(税抜、フロント)、¥174,300(税抜、リア)

ディスクブレーキモデル
仕様チューブラー、2:1スポークシステム、ロードE-THRU 12mm
重量フロント:678g、リア:829g
価格¥151,035(税抜、フロント)、¥177,017(税抜、リア)

PRO 3Spokeホイール

ロード3Sホイールチューブラーロード3Sホイールチューブラー (c)シマノ

仕様チューブラー、スプレッドトウカーボン、DURA-ACE9000ハブ
重量765g
価格330,000円(税抜)

PRO ディスクホイールTextream

ロードディスクホイールTextream チューブラーロードディスクホイールTextream チューブラー (c)シマノ

仕様チューブラー、スプレッドトウカーボン、DURA-ACE9000ハブ
重量975g
価格330,000円(税抜)


PROコンポーネンツ 選手のニーズに応える細かいラインアップ

ジュリアン・アラフィリップとともに戦うPRO製品ジュリアン・アラフィリップとともに戦うPRO製品 photo:Makoto.AYANO
ホイールの項でも取り上げたPROブランドもシマノを構成する要素だ。PROのコンポーネンツを採用しているのはボーラ・ハンスグローエ、ドゥクーニンク・クイックステップ、グルパマFDJ、サンウェブの4チーム。ハンドルやステム、シートポストやタイムトライアルで使用するエクステンションバー、バーテープなど製品展開は多岐にわたり、豊富なラインアップとシマノクオリティから選手から厚い信頼を得ている。

選手の要望に応えるためPROは選手供給用として1mm刻みで長さが異なるステムを用意。サイクルスポーツの主役である選手が適切なポジションを出せるようにプロダクトを揃えるのが、世界を代表するコンポーネンツメーカーの対応力の懐の深さだ。

グルパマFDJはコックピット周りをPRO製品で統一しているグルパマFDJはコックピット周りをPRO製品で統一している photo:Makoto.AYANO
選手には1mm刻みで長さが異なるステムが供給される選手には1mm刻みで長さが異なるステムが供給される photo:Makoto.AYANOティボー・ピノ(グルパマ・FDJ)のバイクにはPROのシートポストが装備されているティボー・ピノ(グルパマ・FDJ)のバイクにはPROのシートポストが装備されている photo:Makoto.AYANO

そして、多くの選手が使用するモデルはVIBEステム。前面のV字が特徴的なクランプ部は、ボルトを後ろから入れるデザインを採用。コラム部分もインテグレーションデザインとなっており、エアロを意識した設計となっている。ハンドルに関してもコンパクトやアナトミック、シャローなど、豊富なラインアップを用意。選手のニーズに応える充実の製品展開となっている。

またシマノやPROとの結びつきが強いグルパマFDJはタイムトライアルバイクにミサイルEVO TTバーを使用。PRO製品を使用することで、高い強度と安全性を確保し、ポジション調整幅も広いのが特徴だ。

PRO VIBEカーボンハンドルシリーズ

PRO VIBE エアロカーボンコンパクトPRO VIBE エアロカーボンコンパクト (c)シマノ
PRO VIBE カーボン アナトミック、コンパクトPRO VIBE カーボン アナトミック、コンパクト (c)シマノ
素材カーボンT800
クランプ径31.8mm
ラインアップエアロコンパクト380mm、400mm、420mm
アナトミック400mm、420mm
コンパクト400mm、420mm
重量245g~(エアロコンパクト)230g~(アナトミック、コンパクト)
税抜価格42,000円(エアロコンパクト)、40,000円(アナトミック、コンパクト)

PRO VIBE ステム

PRO VIBE ステムPRO VIBE ステム (c)シマノ
素材Al-7075
アングル-10°、-17°
コラムサイズ1-1/8、1-1/4
長さ80~130mm(1-1/4サイズは120mmまで)
クランプ径31.8mm
重量135g(100mm)
価格13,000円(税抜)

PRO VIBE スプリントステム

PRO VIBE スプリントステムPRO VIBE スプリントステム (c)シマノ
素材UDカーボン
アングル-10°
長さ105mm
クランプ径31.8mm
重量215g
価格32,000円(税抜)


100周年マイヨジョーヌを賭けた闘いはクライマックスへ 激闘の第3週をプレイバック

ボーラ・ハンスグローエのバスの窓にはサガンが獲得したマスコットが並ぶボーラ・ハンスグローエのバスの窓にはサガンが獲得したマスコットが並ぶ photo:Makoto.AYANOニームの円形劇場のスタート地点へ向かう総合2位ゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス)ニームの円形劇場のスタート地点へ向かう総合2位ゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス) photo:Makoto.AYANO

逃げる5人を追うメイン集団が美しい渓谷沿いの道を行く逃げる5人を追うメイン集団が美しい渓谷沿いの道を行く photo:Makoto.AYANO
今年のツール・ド・フランスはジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)がすべての話題を掻っ攫ったと言っても過言ではない。フランス人が10日間以上マイヨジョーヌを着用し続け、第2休息日まで無事に到達した。ニームの街で一息ついたプロトンは、アルプスへ向けて再び走り出す。

第16ステージはニームを発着するスプリンターステージで、もちろんスプリント勝負でレースは決す。一方、総合勢は横風などによる集団分裂を避けることに神経を尖らせたが、この日は何も起こらず、結果として嵐の前の静けさを表すような一日となった。

翌17ステージはニーム郊外のポン・デュ・ガールから、アルプスの玄関口ギャップに向けて駒を進めるコース。比較的イージーなレイアウトだが、残り8.5km地点に待ち構えている3級山岳が、ピュアスプリンター達による猛追を阻むと予測された。そのため、逃げきれる確率が高いと見た選手達の形成したエスケープグループは、33名と大きな集団となった。

3級山岳サンティネル峠で飛び出したマッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)3級山岳サンティネル峠で飛び出したマッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット) photo:Kei Tsuji
ツールでの3勝目を挙げたマッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)ツールでの3勝目を挙げたマッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット) photo:Makoto.AYANOマイヨブランを守ったエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)マイヨブランを守ったエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) photo:Makoto.AYANO

逃げ切るという意思の下、先頭集団が高速で序盤を駆け抜けた結果、残り100kmの時点で10分差が開き、実質的な逃げ切りが決定する。この33名の中で決定的な動きを見せたのは、ミッチェルトン・スコットのマッテオ・トレンティンだった。最後に現れる3級山岳の麓からアタックを繰り出したヨーロッパチャンピオンは、追走にキャッチされること無くギャップのフィニッシュラインにたどり着いた。

トレンティンが選択していた機材は、クライミングバイクにDURA-ACE C60ホイール、油圧ディスクブレーキシステムをアセンブルした仕様。3級山岳のヒルクライムとその後の下りを意識したこの機材選択が見事にハマり、山頂までに稼いだ30秒のタイムギャップを維持し続けると言う、アグレッシブなダウンヒルを可能にしたのだろう。

第18ステージに入ると、いよいよアルプスの決戦が幕を開ける。アラフィリップの活躍を願うフランス国民が集まっているであろう超級山岳イゾアール峠、ガリビエ峠が登場。この日のポイントはガリビエ峠から約19kmのダウンヒルを経てフィニッシュとなること。卓越した登坂能力とダウンヒル能力が求められる過酷な1日だ。

 超級山岳イゾアール峠の「カスデゼルト」を通過する逃げ集団 超級山岳イゾアール峠の「カスデゼルト」を通過する逃げ集団 photo:Makoto.AYANO
マイヨジョーヌ集団からアタックして抜け出したエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)マイヨジョーヌ集団からアタックして抜け出したエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) photo:Makoto.AYANOガリビエ峠でのアタックでアラフィリップを脱落させたゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス)ガリビエ峠でのアタックでアラフィリップを脱落させたゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス) photo:Makoto.AYANO

天候が急変するなか超級山岳ガリビエ峠を行くグルペット集団天候が急変するなか超級山岳ガリビエ峠を行くグルペット集団 photo:Makoto.AYANO
この日のステージ優勝は33名のエスケープグループから誕生。チームイネオス、ユンボ・ヴィズマ、ドゥクーニンク・クイックステップ、グルパマFDJの思惑が交差するメイン集団では、チームの総力を挙げてライバルたちを振い落す攻防が繰り広げられる。ガリビエ峠ではチームイネオスが先頭に立ち、ハイペースで集団を牽引。一人、また一人と集団からこぼれ落ちていく選手がいる中、総合5位につけていたエガン・ベルナル(チームイネオス)が遂にアタック。あっという間に40秒のタイム差を生み出し、単独でガリビエ峠を通過した。

一方、取り残された集団からはゲラント・トーマス(チームイネオス)もアタック。ティボー・ピノ(グルパマFDJ)やステフェン・クライスヴァイク(ユンボ・ヴィズマ)らにキャッチされ不発に終わるも、アラフィリップが脱落。アラフィリップは、マイヨジョーヌを失う危機となるものの、油圧ディスクブレーキのアドバンテージを最大限に活かした果敢なダウンヒルでライバル達に追いつくことに成功し、無事フィニッシュ。マイヨジョーヌを巡る争いは翌日に持ち越された。

超級山岳イズラン峠を独走するエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)超級山岳イズラン峠を独走するエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) photo:CorVos
マイヨジョーヌに初めて袖を通したエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)マイヨジョーヌに初めて袖を通したエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) photo:Makoto.AYANO
第19ステージ、今大会で最高標高地点のイズラン峠を越えていくこの日。突如降り出した雹が路面を多い、豪雨が土砂崩れを起こし、レースは途中で中止に。イズラン峠で単独アタックを成功させたベルナルがマイヨジョーヌを獲得。登りでライバルたちに遅れを取っていたアラフィリップは、前日に見せたアグレッシブなダウンヒルでタイム差を詰めていたが、イズラン峠でのタイム差が総合成績に反映されることとなり、マイヨジョーヌを失う。アラフィリップが総合首位を守ったのは14日間だった。

悪天候の影響を受け第20ステージは距離59km、超級山岳のバル・トランスを登ってフィニッシュという短縮コースで行われることに。この日の逃げに乗ったのは、総合首位を脅かさない逃げ切り狙いの選手ばかり。総合リーダー擁するチームイネオスはマイヨジョーヌを維持することに注力したため、区間優勝は序盤の逃げから生まれることとなった。ベルナルは区間4位に入り、マイヨジョーヌをほぼ手中に収めた。

シャンパンで乾杯しながらパリを目指すチームイネオスシャンパンで乾杯しながらパリを目指すチームイネオス photo:CorVos
そしてツール最終日、黄色のワンポイントを入れたチームイネオスのメンバーらと共にパリ・シャンゼリゼに凱旋したベルナル。レースを危なげなく走りきり、偉大な先輩コロンビアンライダーが数多いる中で、母国に初めてマイヨジョーヌをもたらすことに成功した。さらには戦後のツール史上最年少での総合優勝という記録も打ち立て、サイクルロードレースの新たな風として存在感を示した。

マイヨヴェールはスプリントフィニッシュのステージで常に上位に付けていたペテル・サガンの手に。サガンはこれで7回目のポイント賞を獲得。3週間という長丁場、かつ過酷なコンディションのなかで安定した成績を何年も同じ様に残すことができるのは、世界最高峰の選手であることの証明だ。

コロンビア人のツール・ド・フランス初制覇。マイヨジョーヌのエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) コロンビア人のツール・ド・フランス初制覇。マイヨジョーヌのエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) photo:Makoto.AYANO
ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)がゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス)と握手ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)がゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス)と握手 photo:Makoto.AYANO観客の声援に応えるマイヨヴェール7回目のペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)観客の声援に応えるマイヨヴェール7回目のペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:Makoto.AYANO

総合敢闘賞を獲得したジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)総合敢闘賞を獲得したジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Makoto.AYANO
ジュリアン・アラフィリップの総合敢闘賞は誰も文句のつけようが無いだろう。フランスのみならず全世界が彼の活躍に注目し、新たなヒーローの誕生を見守った。今年のツール・ド・フランスは、ベルナルやアラフィリップのような注目の新星が輝く大会となった。

シマノグローバルサポートチームは、マイヨジョーヌとマイヨブラン、マイヨヴェールを獲得。13ステージでDURA-ACE使用選手が勝利するという実績を挙げ、そのうち7勝が油圧ディスクブレーキ使用選手によるものだった。油圧ディスクブレーキのパフォーマンスは、世界最高峰の舞台における選手達の活躍により証明されたことは間違いない。この後もブエルタ・ア・エスパーニャ、世界選手権と続くロードシーズン。そして来年のツール・ド・フランス、東京五輪と、シマノの戦いはこれからも続く。

マイヨジョーヌを獲得したエガン・ベルナル(チームイネオス)のために用意されたスペシャルペイントのバイクマイヨジョーヌを獲得したエガン・ベルナル(チームイネオス)のために用意されたスペシャルペイントのバイク photo:Makoto.AYANO
提供:シマノ 企画/制作:シクロワイアード