2019/07/19(金) - 17:15
マイヨジョーヌ100周年を迎えたツール・ド・フランス。パリ・シャンゼリゼで黄色のウェアを獲得するべく176名の選手たちが、7月6日にベルギー・ブリュッセルを出発した。SHIMANOのDURA-ACE、S-PHYRE、PRO、LAZERを使用する選手たちの活躍にフォーカスしよう。
世界中のサイクルロードレースファンが注目するツール・ド・フランス。2019年は総合首位のみが袖を通すことのできるマイヨジョーヌが導入されて100年目を迎える記念として、与えられるマイヨジョーヌが各ステージでデザインが異なるという趣向が凝らされている。パリ・シャンゼリゼでその特別なジャージをチームに持ち帰るため、176名の選手たちがこの7月に照準を合わせ体を絞り込んできた。
今年のツールは総合優勝を5度挙げているレジェンド、エディ・メルクスの1勝目獲得より50年という節目でもあり、スタートはベルギー・ブリュッセル。フィニッシュのパリ・シャンゼリゼまでの21ステージで3480kmもの距離を選手たちは走る。
その間30のカテゴリー山岳を越え、頂上ゴールは5つ。最高標高は第19ステージのイズラン峠(2770m)だが、その前日18ステージがヴァルス峠、イゾアール峠、ガリビエ峠を超える最難関。大会前のコース発表時から有力選手たちが口をそろえていたように、今年のレースは山岳で勝負が決することになりそうだ。
ツール公式は平坦ステージは7つ、アップダウンステージが5つ、山岳コースは7つ、チームTTと個人TTは1つづつと各ステージを位置づける。総合優勝の争いは過激な山岳コースで決するという予想だが、スピードが求められる平坦ステージも同じ数だけ用意されており、ここで屈強なスプリンター達によるマイヨヴェールの争奪戦が繰り広げられる。
176名の選手たちに与えられた役割はそれぞれ異なるが、全員に共通することはチームでの勝利を目指すこと。エースはもちろんアシストたちもこの7月に合わせ、年初よりトレーニングを積み重ねることで、21日間の過酷なレースを戦い抜く強靭な肉体を身に着け精神力を磨いてきたはずだ。一方で、彼らの全てを発揮するためには、ライダー、車体、パーツ類、ウェア全てが一つとなったかのように淀み無く機能しなければならない。ツール・ド・フランスでは関わる全ての性能が求められるのだ。
過酷なプロのレース現場において、選手やチームから高い信頼性を勝ち得ているのがシマノが誇るフラッグシップコンポーネンツ・DURA-ACEだ。全22チームのうち15チーム、参加選手で表すと176名中120名、約70%にも上る選手たちがDURA-ACEを使用していることが、信頼を寄せている証だ。この15チームのうちシマノからサポートを受けているのは、以下の7チーム。これ以外の8チームは自費購入であり、そうしてまでシマノを使用したいということが、数字にも表れている。
以上の7チーム全てがDURA-ACEのグループセットを使用し、うち5チームがDURA-ACEホイールを採用、4チームがPROのコンポーネンツを、3チーム(イネオス、グルパマFDJ、ユンボ・ヴィズマ)がPROのホイールを使用する。S-PHYREのシューズとLAZERのヘルメットを着用するのは2チームだ。
シマノDURA-ACE R9100シリーズは、2016年の登場よりフルーム('16)、フルーム('17)、トーマス('18)とチームイネオス(当時はスカイ)メンバーにより表彰台の頂点を固めており、性能と信頼性を世界中に知らしめた。昨年に至っては総合表彰台をDURA-ACE使用選手が独占するとともに、マイヨヴェールとマイヨアポアも獲得。
現在のDURA-ACEは、機械式変速/リムブレーキ(R9100)、機械式変速/油圧ディスクブレーキ(R9120)、電動変速/リムブレーキ(R9150)、電動変速/油圧ディスクブレーキ(R9170)という4タイプがラインアップされている。現在プロトンでは電動変速DI2が主流であり、機械式変速を選手の好みにあわせて用意しているチームも極稀に存在する。
7970シリーズよりデビューしたDI2は世代を重ねると共に信頼も積み重ね、電動変速は2019年ではほぼ全ての選手が使用するまでに至っている。変速性能、システムとしての信頼性、ストレスフリーな操作感、雨や泥に対する耐久性、メンテナンス性は揺るぎないものとして、チームや選手、フレームメーカーが認めるところだ。スプリンタースイッチやサテライトスイッチ、TTスイッチなど、機械式変速システムでは考えられなかった自由自在なシフトスイッチの配置により、レース戦術そのものを変えてきた。
電動変速が影響を与えたのはレースの内容だけではなく、車体にも大きなインパクトを残している。現在のフラッグシップグレードのフレームは、エアロダイナミクスを追求するには電動コンポーネンツを前提とした開発が進められた物が多い。そして、普及が進む油圧ディスクブレーキも電動変速という存在があったからこそユーザーを増やすことに成功している面があると行っても過言ではない。
機械式変速の場合、油圧システムをSTIレバーに組み込もうとするとリザーバータンクとマスターシリンダーがブラケット頭頂部のサイズを大きくしてしまう。しかし、変速機構がミニマムの大きさで収納されているDI2の場合は、マスターシリンダーとリザーバータンクをブラケット内部にすべて収めることができ、リムブレーキ仕様のSTIレバーと変わらないサイズに設計することを可能とした。手に収まるサイズから生まれるストレスフリーな操作性、レースの現場で求められる軽量性はDI2であるからこそ実現したのだ。
完成度の高い油圧ディスクブレーキの登場は、近年のレースで使用される機材を大きく変化させた。強力なストッピングパワーを備えた油圧ディスクブレーキは、雨天など走行環境に左右されず安定して制動力を発揮してくれることが特徴。確実にスピードコントロールできる安心感は、レースにおいてアグレッシブに攻めることを可能とした。使用する選手、チームも急速に増えており、もはやレースの世界で油圧ディスクブレーキは一般的な存在となった。
とはいえブレーキに関する選択は、ステージプロフィールや選手の役割によって様々。傾向としては総合表彰台を狙うチーム/選手はリムブレーキを継続しており、チームイネオスを筆頭にユンボ・ヴィズマがそれに該当する。対して、ステージ優勝やマイヨヴェールを狙うボーラ・ハンスグローエやドゥクーニンク・クイックステップ、サンウェブのエース級は油圧ディスクブレーキを使用する選手が多い。グルパマFDJ、ミッチェルトン・スコットは選手によってまちまちだ。
リムブレーキと油圧ディスクブレーキどちらも選ぶことができるのは、シマノが完成度の高い4種類ラインアップしていることと盤石なサポート体制が構築されているからに他ならない。各チームによって優先するスペックが異なるため選択が分かれているものの、どちらも狙ったレースで勝利を挙げていることが、シマノDURA-ACE全ての性能を証明していると言えるだろう。
今年はエディ・メルクス氏がツール・ド・フランスを初めて制覇してから50周年。ツールはグランデパールにベルギー・ブリュッセルを選びメルクスの偉業を讃えた。第1ステージはブリュッセルを発着するスプリンターステージ。序盤に石畳の激坂カペルミュールが用意されたが、レース展開に大きな影響を与えることはなかった。
鼻息を荒くしたスプリンターチームが集団の先頭を陣取り、ブリュッセルの街になだれ込んできたものの残り2km地点で落車が発生。優勝候補ディラン・フルーネウェーヘン(ユンボ・ヴィズマ)が巻き込まれたものの、集団のスピードは緩むこと無くフィニッシュラインをめがけて開始されたスプリント。大本命サガンとの写真判定に持ち込み、今大会最初のマイヨジョーヌとマイヨヴェールを手にしたのは、エースを失ったユンボ・ヴィズマのマイク・テウニッセンだった。
ユンボ・ヴィズマはシマノDURA-ACEのコンポーネンツとホイールを使用し、S-PHYREシューズとレイザーのヘルメットで身を包む生粋のシマノサポートチーム。テウニッセンのバイクにはもちろんDI2が組み込まれており、フルーネウェーヘンのアシストとしてスプリントに参加するためスプリンタースイッチも装着済み。サガンも同様にスプリンタースイッチ愛用者の一人であり、この二人の活躍がハンドルのドロップ部を握った状態でも変速を可能にする拡張スイッチの有用性を十分に示した。
世界最高峰のスプリンターであるサガンを下したテウニッセンの脚力には目を見張るものがあると同時に、コンマ1秒の勝負をサポートしたプロダクトにも注目したい。シマノのWH-R9100-C60-TUホイール、S-PHYREのアイウェア、シューズ、レイザーのBULLET 2.0といった低空気抵抗のプロダクトが積み重ねた差も小さくはないはずだ。
勢いに乗ったユンボ・ヴィズマは翌第2ステージ・チームタイムトライアルでも優勝。2位にはチームイネオス、3位にはドゥクーニンク・クイックステップが入り存在感を示す。タイムトライアルにおいてはDHバー、ベースバーどちらでも変速可能なDURA-ACEのDI2コンポーネンツは、ライダーの意識をバイクを前に進ませることのみに集中させることができ、結果として高速巡航を生み出す。
特に上位2チームが使用する総合アクセサリーブランド・PROの「3-Spokeホイール」と「Textream Carbon ディスクホイール」は、チームの間でも使用率の高い機材の一つ。3スポークバトン形状による優れたエアロ形状はもちろんのこと、DURA-ACEのハブに軽量かつ高剛性なTextreamカーボンを組み合わせることで、選手達の高速走行を最大限までサポートする。
第3ステージに入るとベルギーに別れを告げ、フランス国内でのレースに移り変わる。この日はシャンパンで有名なシャンパーニュ地方の丘陵地帯を駆け抜けるアルデンヌクラシックのようなプロフィール。フィニッシュまで16kmを残した3級山岳で一人抜け出したジュリアン・アラフィリップが独走勝利。26秒遅れてフィニッシュに到達したプロトンの上りスプリントを制したのはサンウェブのマイケル・マシューズだった。
彼ら2名に共通するのは油圧ディスクブレーキが搭載されたバイクを選択していることだ。特筆すべきは、アラフィリップがアタックを成功させた山岳後のダウンヒルで、油圧ディスクブレーキの利を活かしリードを築いていることだ。集団の猛追を寄せ付けないスピードでダウンヒルをこなせたのも油圧ディスクブレーキによる安定した制動力が影響しているだろう。これからのレースでは下りが勝負どころに絡むコースではディスクブレーキ勢がダイナミックに攻めてくるだろう。
第4ステージは完璧なリードアウトから発射されたエリア・ヴィヴィアーニがピュアスプリンター同士の戦いを制す。第5ステージは登れるスプリンターたちを下したペテル・サガンが優勝。
カテゴリー山岳が7つも登場する第6ステージでは、総合狙いとステージ優勝狙いの思惑が一致し、この日の勝利は逃げグループに譲ることに。一方で、最大24%の激坂が待つ1級山岳フィニッシュでは総合争いが勃発。ステージ優勝を逃してもマイヨジョーヌを守りたいアラフィリップの先行をキッカケに、ゲラント・トーマス(チームイネオス)、ティボー・ピノ(グルパマFDJ)が反応すると、他の総合有力選手たちを置き去ることに成功した。アラフィリップは僅かな差でマイヨジョーヌを奪われてしまったが、この後に再び彼が躍動することはこの時は誰も知らない。
第7ステージでは初日の悔しさを晴らさんばかりにフルーネウェーヘン(ユンボ・ヴィズマ)が集団スプリントを制す。翌第8ステージの優勝は逃げ切りで決した。しかし、その後方でアラフィリップが第3ステージを彷彿させるように3級山岳でピノと共に集団から飛び出す。集団に捕まることなくフィニッシュまでたどり着いた彼らは、それぞれの思惑通りアラフィリップはマイヨジョーヌ奪還、ピノは他の総合有力選手たちからタイムアドバンテージを稼ぐことに成功した。
第9ステージはダリル・インピーがミッチェルトン・スコットに3年ぶりのツールのステージ優勝をもたらした。比較的難易度の低いコース設定となった第10ステージだったが、終盤の横風区間でドゥクーニンク・クイックステップがペースアップを主導すると集団が分裂。後方集団には総合有力選手も含まれたことで、マイヨジョーヌ争いに動きがでることに。一方、小集団スプリントとなったステージ争いは、ワウト・ファンアールトがエリア・ヴィヴィアーニやペテル・サガンら知名度の高いスプリンターを抑え優勝。これでユンボ・ヴィズマは今ツールで既に4勝する大活躍を見せている。
長い第1週が終了したツール・ド・フランス。ここまでDURA-ACEを使用するシマノグローバルサポートチームがマイヨジョーヌを着用しなかった日は1日のみ。ステージ優勝は8回。ポイント賞に至っては全てのステージでマイヨヴェールを獲得している。目覚ましい躍動を見せるシマノグローバルサポートチーム。これから激しくなることが予想される総合争いでも活躍を期待したい。
世界最高峰のレース「ツール・ド・フランス」で闘うシマノ・プロダクト
世界中のサイクルロードレースファンが注目するツール・ド・フランス。2019年は総合首位のみが袖を通すことのできるマイヨジョーヌが導入されて100年目を迎える記念として、与えられるマイヨジョーヌが各ステージでデザインが異なるという趣向が凝らされている。パリ・シャンゼリゼでその特別なジャージをチームに持ち帰るため、176名の選手たちがこの7月に照準を合わせ体を絞り込んできた。
今年のツールは総合優勝を5度挙げているレジェンド、エディ・メルクスの1勝目獲得より50年という節目でもあり、スタートはベルギー・ブリュッセル。フィニッシュのパリ・シャンゼリゼまでの21ステージで3480kmもの距離を選手たちは走る。
その間30のカテゴリー山岳を越え、頂上ゴールは5つ。最高標高は第19ステージのイズラン峠(2770m)だが、その前日18ステージがヴァルス峠、イゾアール峠、ガリビエ峠を超える最難関。大会前のコース発表時から有力選手たちが口をそろえていたように、今年のレースは山岳で勝負が決することになりそうだ。
ツール公式は平坦ステージは7つ、アップダウンステージが5つ、山岳コースは7つ、チームTTと個人TTは1つづつと各ステージを位置づける。総合優勝の争いは過激な山岳コースで決するという予想だが、スピードが求められる平坦ステージも同じ数だけ用意されており、ここで屈強なスプリンター達によるマイヨヴェールの争奪戦が繰り広げられる。
176名の選手たちに与えられた役割はそれぞれ異なるが、全員に共通することはチームでの勝利を目指すこと。エースはもちろんアシストたちもこの7月に合わせ、年初よりトレーニングを積み重ねることで、21日間の過酷なレースを戦い抜く強靭な肉体を身に着け精神力を磨いてきたはずだ。一方で、彼らの全てを発揮するためには、ライダー、車体、パーツ類、ウェア全てが一つとなったかのように淀み無く機能しなければならない。ツール・ド・フランスでは関わる全ての性能が求められるのだ。
過酷なプロのレース現場において、選手やチームから高い信頼性を勝ち得ているのがシマノが誇るフラッグシップコンポーネンツ・DURA-ACEだ。全22チームのうち15チーム、参加選手で表すと176名中120名、約70%にも上る選手たちがDURA-ACEを使用していることが、信頼を寄せている証だ。この15チームのうちシマノからサポートを受けているのは、以下の7チーム。これ以外の8チームは自費購入であり、そうしてまでシマノを使用したいということが、数字にも表れている。
シマノ・グローバルサポートチーム |
---|
チームイネオス |
ボーラ・ハンスグローエ |
ドゥクーニンク・クイックステップ |
グルパマFDJ |
ユンボ・ヴィズマ |
ミッチェルトン・スコット |
サンウェブ |
以上の7チーム全てがDURA-ACEのグループセットを使用し、うち5チームがDURA-ACEホイールを採用、4チームがPROのコンポーネンツを、3チーム(イネオス、グルパマFDJ、ユンボ・ヴィズマ)がPROのホイールを使用する。S-PHYREのシューズとLAZERのヘルメットを着用するのは2チームだ。
ディスク&リム 両方で勝利を目指すDURA-ACE R9100
シマノDURA-ACE R9100シリーズは、2016年の登場よりフルーム('16)、フルーム('17)、トーマス('18)とチームイネオス(当時はスカイ)メンバーにより表彰台の頂点を固めており、性能と信頼性を世界中に知らしめた。昨年に至っては総合表彰台をDURA-ACE使用選手が独占するとともに、マイヨヴェールとマイヨアポアも獲得。
現在のDURA-ACEは、機械式変速/リムブレーキ(R9100)、機械式変速/油圧ディスクブレーキ(R9120)、電動変速/リムブレーキ(R9150)、電動変速/油圧ディスクブレーキ(R9170)という4タイプがラインアップされている。現在プロトンでは電動変速DI2が主流であり、機械式変速を選手の好みにあわせて用意しているチームも極稀に存在する。
7970シリーズよりデビューしたDI2は世代を重ねると共に信頼も積み重ね、電動変速は2019年ではほぼ全ての選手が使用するまでに至っている。変速性能、システムとしての信頼性、ストレスフリーな操作感、雨や泥に対する耐久性、メンテナンス性は揺るぎないものとして、チームや選手、フレームメーカーが認めるところだ。スプリンタースイッチやサテライトスイッチ、TTスイッチなど、機械式変速システムでは考えられなかった自由自在なシフトスイッチの配置により、レース戦術そのものを変えてきた。
電動変速が影響を与えたのはレースの内容だけではなく、車体にも大きなインパクトを残している。現在のフラッグシップグレードのフレームは、エアロダイナミクスを追求するには電動コンポーネンツを前提とした開発が進められた物が多い。そして、普及が進む油圧ディスクブレーキも電動変速という存在があったからこそユーザーを増やすことに成功している面があると行っても過言ではない。
機械式変速の場合、油圧システムをSTIレバーに組み込もうとするとリザーバータンクとマスターシリンダーがブラケット頭頂部のサイズを大きくしてしまう。しかし、変速機構がミニマムの大きさで収納されているDI2の場合は、マスターシリンダーとリザーバータンクをブラケット内部にすべて収めることができ、リムブレーキ仕様のSTIレバーと変わらないサイズに設計することを可能とした。手に収まるサイズから生まれるストレスフリーな操作性、レースの現場で求められる軽量性はDI2であるからこそ実現したのだ。
完成度の高い油圧ディスクブレーキの登場は、近年のレースで使用される機材を大きく変化させた。強力なストッピングパワーを備えた油圧ディスクブレーキは、雨天など走行環境に左右されず安定して制動力を発揮してくれることが特徴。確実にスピードコントロールできる安心感は、レースにおいてアグレッシブに攻めることを可能とした。使用する選手、チームも急速に増えており、もはやレースの世界で油圧ディスクブレーキは一般的な存在となった。
とはいえブレーキに関する選択は、ステージプロフィールや選手の役割によって様々。傾向としては総合表彰台を狙うチーム/選手はリムブレーキを継続しており、チームイネオスを筆頭にユンボ・ヴィズマがそれに該当する。対して、ステージ優勝やマイヨヴェールを狙うボーラ・ハンスグローエやドゥクーニンク・クイックステップ、サンウェブのエース級は油圧ディスクブレーキを使用する選手が多い。グルパマFDJ、ミッチェルトン・スコットは選手によってまちまちだ。
リムブレーキと油圧ディスクブレーキどちらも選ぶことができるのは、シマノが完成度の高い4種類ラインアップしていることと盤石なサポート体制が構築されているからに他ならない。各チームによって優先するスペックが異なるため選択が分かれているものの、どちらも狙ったレースで勝利を挙げていることが、シマノDURA-ACE全ての性能を証明していると言えるだろう。
好調なスタートを切ったシマノグローバルサポートチーム
さて、ここからはレースを振り返りながらどの様な機材が活躍してきたかを見ていこう。まずはベルギー・ブリュッセルでの開幕ステージから一回目の休息日までの10ステージをプレイバック。開幕から5日連続でシマノDURA-ACE使用チームが制し、ペテル・サガンがマイヨヴェールを堅守している。今年はエディ・メルクス氏がツール・ド・フランスを初めて制覇してから50周年。ツールはグランデパールにベルギー・ブリュッセルを選びメルクスの偉業を讃えた。第1ステージはブリュッセルを発着するスプリンターステージ。序盤に石畳の激坂カペルミュールが用意されたが、レース展開に大きな影響を与えることはなかった。
鼻息を荒くしたスプリンターチームが集団の先頭を陣取り、ブリュッセルの街になだれ込んできたものの残り2km地点で落車が発生。優勝候補ディラン・フルーネウェーヘン(ユンボ・ヴィズマ)が巻き込まれたものの、集団のスピードは緩むこと無くフィニッシュラインをめがけて開始されたスプリント。大本命サガンとの写真判定に持ち込み、今大会最初のマイヨジョーヌとマイヨヴェールを手にしたのは、エースを失ったユンボ・ヴィズマのマイク・テウニッセンだった。
ユンボ・ヴィズマはシマノDURA-ACEのコンポーネンツとホイールを使用し、S-PHYREシューズとレイザーのヘルメットで身を包む生粋のシマノサポートチーム。テウニッセンのバイクにはもちろんDI2が組み込まれており、フルーネウェーヘンのアシストとしてスプリントに参加するためスプリンタースイッチも装着済み。サガンも同様にスプリンタースイッチ愛用者の一人であり、この二人の活躍がハンドルのドロップ部を握った状態でも変速を可能にする拡張スイッチの有用性を十分に示した。
世界最高峰のスプリンターであるサガンを下したテウニッセンの脚力には目を見張るものがあると同時に、コンマ1秒の勝負をサポートしたプロダクトにも注目したい。シマノのWH-R9100-C60-TUホイール、S-PHYREのアイウェア、シューズ、レイザーのBULLET 2.0といった低空気抵抗のプロダクトが積み重ねた差も小さくはないはずだ。
勢いに乗ったユンボ・ヴィズマは翌第2ステージ・チームタイムトライアルでも優勝。2位にはチームイネオス、3位にはドゥクーニンク・クイックステップが入り存在感を示す。タイムトライアルにおいてはDHバー、ベースバーどちらでも変速可能なDURA-ACEのDI2コンポーネンツは、ライダーの意識をバイクを前に進ませることのみに集中させることができ、結果として高速巡航を生み出す。
特に上位2チームが使用する総合アクセサリーブランド・PROの「3-Spokeホイール」と「Textream Carbon ディスクホイール」は、チームの間でも使用率の高い機材の一つ。3スポークバトン形状による優れたエアロ形状はもちろんのこと、DURA-ACEのハブに軽量かつ高剛性なTextreamカーボンを組み合わせることで、選手達の高速走行を最大限までサポートする。
第3ステージに入るとベルギーに別れを告げ、フランス国内でのレースに移り変わる。この日はシャンパンで有名なシャンパーニュ地方の丘陵地帯を駆け抜けるアルデンヌクラシックのようなプロフィール。フィニッシュまで16kmを残した3級山岳で一人抜け出したジュリアン・アラフィリップが独走勝利。26秒遅れてフィニッシュに到達したプロトンの上りスプリントを制したのはサンウェブのマイケル・マシューズだった。
彼ら2名に共通するのは油圧ディスクブレーキが搭載されたバイクを選択していることだ。特筆すべきは、アラフィリップがアタックを成功させた山岳後のダウンヒルで、油圧ディスクブレーキの利を活かしリードを築いていることだ。集団の猛追を寄せ付けないスピードでダウンヒルをこなせたのも油圧ディスクブレーキによる安定した制動力が影響しているだろう。これからのレースでは下りが勝負どころに絡むコースではディスクブレーキ勢がダイナミックに攻めてくるだろう。
第4ステージは完璧なリードアウトから発射されたエリア・ヴィヴィアーニがピュアスプリンター同士の戦いを制す。第5ステージは登れるスプリンターたちを下したペテル・サガンが優勝。
カテゴリー山岳が7つも登場する第6ステージでは、総合狙いとステージ優勝狙いの思惑が一致し、この日の勝利は逃げグループに譲ることに。一方で、最大24%の激坂が待つ1級山岳フィニッシュでは総合争いが勃発。ステージ優勝を逃してもマイヨジョーヌを守りたいアラフィリップの先行をキッカケに、ゲラント・トーマス(チームイネオス)、ティボー・ピノ(グルパマFDJ)が反応すると、他の総合有力選手たちを置き去ることに成功した。アラフィリップは僅かな差でマイヨジョーヌを奪われてしまったが、この後に再び彼が躍動することはこの時は誰も知らない。
第7ステージでは初日の悔しさを晴らさんばかりにフルーネウェーヘン(ユンボ・ヴィズマ)が集団スプリントを制す。翌第8ステージの優勝は逃げ切りで決した。しかし、その後方でアラフィリップが第3ステージを彷彿させるように3級山岳でピノと共に集団から飛び出す。集団に捕まることなくフィニッシュまでたどり着いた彼らは、それぞれの思惑通りアラフィリップはマイヨジョーヌ奪還、ピノは他の総合有力選手たちからタイムアドバンテージを稼ぐことに成功した。
第9ステージはダリル・インピーがミッチェルトン・スコットに3年ぶりのツールのステージ優勝をもたらした。比較的難易度の低いコース設定となった第10ステージだったが、終盤の横風区間でドゥクーニンク・クイックステップがペースアップを主導すると集団が分裂。後方集団には総合有力選手も含まれたことで、マイヨジョーヌ争いに動きがでることに。一方、小集団スプリントとなったステージ争いは、ワウト・ファンアールトがエリア・ヴィヴィアーニやペテル・サガンら知名度の高いスプリンターを抑え優勝。これでユンボ・ヴィズマは今ツールで既に4勝する大活躍を見せている。
長い第1週が終了したツール・ド・フランス。ここまでDURA-ACEを使用するシマノグローバルサポートチームがマイヨジョーヌを着用しなかった日は1日のみ。ステージ優勝は8回。ポイント賞に至っては全てのステージでマイヨヴェールを獲得している。目覚ましい躍動を見せるシマノグローバルサポートチーム。これから激しくなることが予想される総合争いでも活躍を期待したい。
提供:シマノ 企画/制作:シクロワイアード