海外にしかないようなトレイルパークを日本につくることを目指して開設された26ism(ニイロクイズム) 。オープンして2年が経つ「くらがりトレイル」を走って、トレイルパークとは何かを考えた。

愛知県岡崎市くらがり渓谷にある「26ismくらがりトレイル」。ジャンプ台や一本橋、シーソーがあったりと日本国内では珍しいセクション満載のコースだ。その「クラガリズム」と銘打った走行会に参加し、くらがりトレイルを訪れた。

愛知県岡崎市にあるくらがり渓谷愛知県岡崎市にあるくらがり渓谷 コースに設置されてあるくらがりトレイルマップコースに設置されてあるくらがりトレイルマップ


関西から東名岡崎ICを降り、山に向かって車を走らせると、バーベキューを楽しむ団体やハイカーで賑わう”くらがり渓谷”に着く。その奥に位置するのが”くらがりトレイル”だ。ぱっと見、山の斜面に沿って上からつづら折れに続くトレイルコースが見える。

見上げてもずっと木が茂り、転落防止ネットが木の隙間から見えて、「なんて急斜面にコースを造ったんだろう」と関心する。ちなみに、車で一時間ほどの三河高原キャンプ村には”あさぎりトレイル”がある。このくらがりトレイルはどういう経緯で作られたのだろうか?。


MTBコースを造るきっかけになった中島さん

26ismを案内する中島蔵人さん26ismを案内する中島蔵人さん お会いした26ismの管理人の中島蔵人さんは、高校からMTBにはまり、大学時代に白馬岩岳や新潟へ、全日本のXCやDHレースに出た経験をもつMTBライダーだ。その当時はフルリジッドのバイクで、愛知の山を友人達と走り回っていたという。

就職後はアメリカのケンタッキー州に駐在し、週末は夫婦でMTB三昧の生活をするほどのめり込む。ケンタッキー州にはアパラチア山脈の麓にあるハードなDHコースから、フラットなXCコースまで、自宅から90分の距離に6つもトレイルがあり、毎週末どこで走ろうかと悩む程に楽しみな最高の環境で過ごしたという。

くらがりトレイルはここがスタート/ゴール地点くらがりトレイルはここがスタート/ゴール地点 2009年5月に帰国命令を受け愛知県に戻ることに。日本では山でMTBを走る事は外国に比べまだまだ認知されていると言えないため、自らの手でトレイルを造成する事を決意する。

まずは山林所有者とコンタクトを行い、MTBトレイルが青少年と地域の活性化を促進する事を説明するものの、当初は取り合ってもらうことができず。その後やっとのことで岡崎森林組合に了承を得る事ができた。
くらがりトレイルとは別に、現在のあさぎりトレイルが設けられる三河高原キャンプ村にも提案したものの、「実績を積んでから来て下さい」となったという。

不法侵入やゴミ投棄の懸念から会員制とし、山林所有者と受付を代理で行うキャンプ場へはライダーから徴収した入場料を山林利用・業務料として払うことで名古屋商工会へ事業継続検証と確認を実施した。これにより26ismのトレイルは営業形態の施設として運用することとなった。


二つのコースを造設

イベント等では軽トラック搬送が行われるイベント等では軽トラック搬送が行われる 2010年4月からくらがり渓谷キャンプ場にて造成を開始。岡崎森林組合の組合長、組合員の支援を受け、MTB界からはフリーライダー/フレームビルダーとして名高い加納慎一郎氏、そして少数の仲間と造成を進行。斜度が急であることから中〜上級者向のコンセプトとした。

そして2010年8月に「26ismくらがりトレイル」が満を期してオープン。開設当初は斜度の急さから難コースと言われたものの、路面も整備されDHライダーからは「キツイけれど楽しい」、XCライダーからも「チャレンジし甲斐がある」言われるレベルの高いコースレイアウトが評判になった。

そしてくらがりトレイルの実績が認められ、2011年3月からあさぎりトレイルをボランティアの手で造り同年8月に完成。こちらは女性や家族でも楽しめる初級〜中級コースとした。2012年5月からはくらがりトレイルは会員制を止め、一般に解放されている。


エクスストリーム(過激)とも言えるコース

それではくらがりトレイルを走ってみよう。スタート地点は道路から入り、上り専用のトレイルコースをひたすらヒルクライムするものの、今回は軽トラックで脇の林道(普段は立ち入り禁止)からコースの中ほどまで搬送してもらえた。そこからさらに押し上げてフリーライドセクションから下り始める。

トレイルに設置された一本橋を慎重に渡るトレイルに設置された一本橋を慎重に渡る 木で組んだジャンプ台を豪快に飛ぶ!木で組んだジャンプ台を豪快に飛ぶ!


このコースの目玉は長い一本橋セクションで、バランスを崩せば谷側に落ちるかと思うほどスリリング。そのセクションを終えてジャンプ台とシーソー台を楽しむ。ここから難易度の高いダウンヒルと低いフリーライドコースとの分岐となり、ダウンヒルコースは斜面を落ちるかのような急斜面を経てジャンプセクションを超え、フリーライドコースと合流してからはつづら折りに下っていく。コースの総延長は2.2kmだ。

楽しめるセクションが満載だ楽しめるセクションが満載だ コースは急斜面をジグザグに降りていくコースは急斜面をジグザグに降りていく


コース中ドロップオフが多く設けられているものの、整地されているのでラインを良く見れば大丈夫。またジャンプ台やシーソーもエスケープコースがあるので、技量に合わせてパスする事ができる。180度ターンと言えるコーナーも、きちんと丸太を組んでバームを作り、回りやすくする工夫がしてある。水はけの良い土質で、取材した前日には降雨があったが、泥やぬかるみが気になることは無かった。一方、岩が点在するため転倒や接触には注意が必要だ。

コースを一度でも走れば、まさに緊張の連続。ゴールしたときには汗だくになるほどだ。しかしこれぞMTBと思わせるコースに感動しきり。コースを案内してくれた中島さんのジャンプや一本橋の走り方を見ると、「本場アメリカではトレイルがこんな風に楽しまれているんだな」、と想像できる。


日本のMTBパークのあり方とは?

日本にMTBが入り20年以上が経過するものの、実際はなかなか浸透していないのが現状だ。その背景にはマウンテンバイカーたちが山の所有者の許可を得ないままに走っている割合が高いという実情がある。ハイカーとのトラブルで自転車進入禁止となった山も多い。

cafeくらがりでみんなでランチcafeくらがりでみんなでランチ cafeくらがり名物のくらがりバーガーcafeくらがり名物のくらがりバーガー


くらがりトレイルのような人工セクションを山の所有者に無断で造る事はもちろん駄目だ。スキー場の夏季営業のMTBパークでも、コストの関係からか、なかなかこれぐらいのレベルのコースにはお目にかかれない。MTBが浸透していない国内において、海外のようなトレイルパークを造ることのハードルは高い。

中島さんは26ismを通し、土地所有者に金銭的なメリットを与えている。これは今後のMTBコースを増やすことに繋がるという。今回のイベントでは、くらがり渓谷の「cafeくらがり」で、特製の「くらがりバーガー」を参加者の皆さんで楽しんだ。近隣施設のお店を利用することで、周辺経済の活性化を計ることも重要だ。

MTBはみんなの語らいが楽しいMTBはみんなの語らいが楽しい クラガリズムに参加した皆さんクラガリズムに参加した皆さん


この活動では山林所有者に軽トラックでの搬送を仕事として受けてもらっている。また、利用者の中には定年退職後にMTBにはまり、毎日のように訪れてコースの造成に力を貸してくれる人もいるという。使う側、管理する側の両方、つまり地域が認めるスポーツエリアとして認知が進めば、施設の拡充も可能だ。

くらがり・あさぎりトレイルを使用したイベントの申請も、盛り上げのために積極的に受け入れているという。26ismは「これからもMTBを使った地域活性化活動を発信していきたい」としている。


26ism くらがりトレイル 概要
利用料金 一般(中学生以上) ¥1,500/日
中級〜上級向け・オールマウンテン
受付場所:くらがり渓谷 観光案内所
住所 愛知県岡崎市石原町字牧原日影3-1
営業時間:AM9:00〜PM4:15(受付はPM3:30迄)
営業期間:1/15 〜 12/15
(営業期間中は無休、12〜4月は電話かFAXで事前連絡要)
26ismの営業はキャンプ場の営業日に準じます
Tel: 0564-83-2057 / Fax : 0564-83-2233

26ism あさぎりトレイル 概要
利用料金 一般(中学生以上¥1,000/日・小学生以下¥500/日)
初級〜中級向け・クロスカントリー
受付場所:三河高原キャンプ村 朝霧荘
愛知県豊田市東大林町半ノ木2
営業時間: AM9:00〜PM4:15(受付はPM3:30迄)
営業期間: 3/1 〜 12/15
(木曜日定休、5・7・8・10・11月は無休)
26ismの営業はキャンプ場の営業日に準じます
Tel: 0565-90-3530 / Fax : 0565-90-3958


text&photo:Akihiro.NAKAO
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