2011年6月18日、埼玉は長瀞の渓流脇駐車場になにやら怪しげな集団が集まりつつあった。皆が皆、男たちであり、それぞれがスポーツサイクルに見える古風なMTBをその脇に携えているのだ。いったい何の集まりなのであろう?

小雨降る中、次々とカーティスオーナーが長瀞の地に集結小雨降る中、次々とカーティスオーナーが長瀞の地に集結 その怪しさを一層引き立てているのが、MTBに書かれた短い文言。ブランドロゴなのであろうが、果たしてそれが皆一様に同じなのである。それぞれのバイクのカラリングはまちまちだが、記された文字は『CURTIS』の6文字。同じ文字が書かれた「物」を持った集団が朝っぱらからウロウロ。これが怪しくないわけがない。

しかし、彼らは別に何かの狂信者でもないしカルト集団でもない。立派なMTBライドオーナーたちなのである。フレームに書かれたロゴにある、「カーティス」というイギリスの小ビルダーによって生み出されたバイクを愛する集団がその正体。今回のこの集いの名は、ずばり「カーティス・ミーティング」と呼ぶ。
(そのままである。何の捻りもない・・・)

今回、このカーティスを日本に輸入するカーティス ジャパンの代表である土井泰太郎氏を中心とし、11人のリアルカーティスライドオーナーたちが一堂に会したのだ。ここで敢えて“リアル”と付けたのは、カーティスというブランドは昔気質な頑固おやじ、ブライアン・カーティス氏により1日1台ぐらいのペースで細々と作られるフレームで、それゆえにオーナーが、床の間に大事に飾る派と、本来のMTBらしくガンガン乗り倒す派に分かれ、長瀞の地に集まった11人のサムライたちはこの後者に充たるからだ。

ものの見事に、皆バイクは『CURTIS』。ちょっと異様な光景だものの見事に、皆バイクは『CURTIS』。ちょっと異様な光景だ この日は参加記念品としてプレミアムTシャツが全員に配られた。サイズ選びの余念なく、笑顔もこぼれるこの日は参加記念品としてプレミアムTシャツが全員に配られた。サイズ選びの余念なく、笑顔もこぼれる


さて、ミーティングといってもなにをやるのか。辞書でこの言葉を引いてみると、「比較的少人数の集会。会合。」とある。集まるだけなのか、会うだけなのか? いえいえそんな事はない。皆、リアルカーティスライダーなのだ。乗らないわけがない。

ということで、今回、このミーティングに際しお力を借りたのが「バイクライフサポートシステム」というサービス。具体的には、元ダウンヒルチャンピオンである根っからのMTB好き、岩瀬信彦氏が提供する自転車のガイド・スクールサービスで、通常、6人程度でやる里山ライドツアーを、今回は無理を言って筆者であるぼくと土井氏を含む13人ツアーを敢行、となったのだ(当たり前だが、人数が増えると比例してコントロールが難しくなる)。

トレイル入口までの移動はクルマ搬送によって行われるトレイル入口までの移動はクルマ搬送によって行われる 朝一はまずそれぞれの自己紹介や、Blss岩瀬さんによる健康チェックや一日の流れのレクチャーから始まった朝一はまずそれぞれの自己紹介や、Blss岩瀬さんによる健康チェックや一日の流れのレクチャーから始まった



小雨の長瀞山中に飛び出す ただ純粋に大地との対話を楽しみに

元々ダートジャンプ用として自転車の歴史が始まったカーティス。やがて日本と本国イギリスの山の雰囲気が似ている、という所から出来上がったモデルも存在するブランドで、その日本の山々をカーティスバイクで駆け巡れば、ビルダー/オーナー双方にとってこれほど冥利に尽きることもないだろう。当サイトで過去にXC100のインプレ記事を展開しているので、参考にしてほしい。こちら

小雨降りしきる中、いざ山中へ。路面は連日の雨の影響もありたいへんにスリッピーで且つ、深い泥が点在するコンディション。決して「最良の」、とは言い難いがそこは雨と霧に包まれる母国イギリスに共通の思いを抱きつつ出発。

この日はカーティスだらけ。同じブランドのバイクがこれほど一同に会すると壮観この日はカーティスだらけ。同じブランドのバイクがこれほど一同に会すると壮観 午前のライドは要所要所に休憩を挟みながら、岩瀬さんのトレイルガイドやレクチャー午前のライドは要所要所に休憩を挟みながら、岩瀬さんのトレイルガイドやレクチャー


聞くところによると、11人のカーティスサムライたちは、ダートやいわゆる里山的な場所を走った経験はそれぞれにあるという事だが、今回の長瀞トレイルを走った経験があるのは、イベントの為にプレ走行を行った3名のみという。そもそも、筆者に至っては里山それ自体が初デビューである。

そこで、岩瀬さんはトレイル走行(と言ってもほぼ下り)の1本目は、コース全体を何セクションかに区切って、要所要所で立ち休憩を挟みながら細かな注意点を説明。何か所かあるたいへん難所のスポットでは、彼がそのポイントにMTBから降りて立ち、安全を確保しながら我々の走行、というスタイルをとっている。実際に、ぼくはその1ポイントで鮮やかな一本背負いを決め(試乗車であるカーティスXC100に嫌われ)、危うく深い谷底の餌食になりかけた時、岩瀬さんの神の如き腕がセーフネットとなりぼくの身を護ってくれた。

トレイルの難所ではこのように岩瀬さんがバイクから降りて、細かく注意点や攻略法を指南トレイルの難所ではこのように岩瀬さんがバイクから降りて、細かく注意点や攻略法を指南 この日は、連日や当日も降り続く雨で路面はたいへんスリッピーこの日は、連日や当日も降り続く雨で路面はたいへんスリッピー


他のカーティスサムライたちは手慣れたもので、どんな場所も岩瀬さんのレクチャーをよく理解し、ヒラヒラとクリアしていく。ムムム、皆やるじゃないか。あとで知る事になるのだが、カーティスMTBを乗りこなすには「絶大な愛情」と「多少のしっぺ返し」を覚悟して挑まなければならぬのだ。

その甲斐あって発トライにしてお見事クリア! 教官がイイと教習者も上手くなるものですその甲斐あって発トライにしてお見事クリア! 教官がイイと教習者も上手くなるものです そのライドで格別印象的だったのが、誰も自分のライドをひけらかしたり他人への誹謗的態度を取らない事だ。

初めて会う人たちもいるのに驚くほど和気藹々だし、大地との対話とセッションをただ朴訥に楽しんでいる。とても「純粋に乗る」のだ。印象的な光景というか、雰囲気・空気だった。やはり、カーティスオーナーはサムライだったのだ。

午前は同じルートをもう1本走り(この頃には、雨足は強まったり弱まったりの繰り返し)、この時はよほど危険な個所以外は流して走り、1本目にうまくクリアできなかった人も身体が動いてきてスムーズにこなせ、より喜びが深まったようだった。


*次回は、午後から更に標高の高い別セクションに移動し、再度MTBと格闘を続ける様子をお届けします。



カーティスではいわゆるイヤーモデル制というものをやっていないカーティスではいわゆるイヤーモデル制というものをやっていない *試乗バイク紹介
カーティス XC-100

日本に入ってきているカーティスは現在4モデルあり、今回のツアーに辺りせっかくなので試乗車をお願いした。お借りしたモデルはXC-100という、その名もクロスカントリー用のバイクで、プロトタイプが作られたのは2004年になる。それから1年以上の開発期間を設け完成となった。

カーティスの特徴のひとつに上げられるT45というイギリス製の特殊マンガン鋼スチール。現在主流のパイプ内側の肉厚が異なるタイプではなく、どこまでも均一なストレート管。このパイプを60年代から一貫して使い続けている。このバイクもカーティス氏によるハンドメイドだ。


text&photo:Harumichi SATO