シングルスピードはただアスファルトを走るためにあらず!10月に開催されたシングルスピードでのシクロクロスレースというちょっとマニアックなイベント。レースの模様と参加者のバイクをレポートします!シングルスピードな自転車生活番外編、お楽しみください。

泥のオフロードを走るシクロクロスレース泥のオフロードを走るシクロクロスレース photo:Makoto Ayanoレースは2010年10月31日に八ヶ岳・野辺山で開催された野辺山シクロクロスの中のイベントとして開催されたもの。「ホワイト・インダストリーズプレゼンツ SSCXNC」と冠スポンサーに上質なシングルスピードパーツのブランド、ホワイト・インダストリーズがついたシングル×シクロのホットなレースだ。

シングルスピードバイクについてはこの連載で少しずつ紹介しているけれど、シクロクロスってなんぞや?という方のために少しだけ解説。もともとはヨーロッパでロードレーサーの冬のトレーニングとして始まったオフロードのレース。バイクはロードバイクを基本に、ブロックタイヤとカンチブレーキを搭載して泥や雪に対応したものを用いる。

シングルスピード選手権の賞品にはホワイト・インダストリー製の高級シングル用パーツ!シングルスピード選手権の賞品にはホワイト・インダストリー製の高級シングル用パーツ! photo:Makoto Ayanoあまりに運動強度が高いので、トップ選手でも競技時間は1時間。日本でも近年盛り上がりを見せていて、初心者も30分ほどのレースを楽しんで(苦しんで)いる。常にペダルを踏みっぱなしの休む間の無いレースなので、選手は鼻水だらけ泥だらけは当たり前。苦しさを喜びに変えられる自転車乗りに愛されて止まないのが、シクロクロスなのだ。

そんなちょっとコアなシクロクロスとシングルスピードが出会ったのだから、これが面白くならないはずがない!会場にはヒトクセもフタクセもありそうなバイクがずらり。そして、ライダーはミクセくらいありそうな人達がずらり…。

野辺山シクロクロス・シングルスピード選手権を走ったバイク野辺山シクロクロス・シングルスピード選手権を走ったバイク photo:Makoto Ayano野辺山シクロクロス・シングルスピード選手権を走ったバイク野辺山シクロクロス・シングルスピード選手権を走ったバイク photo:Makoto Ayano


こだわりのシングルスピードバイクとパチリこだわりのシングルスピードバイクとパチリ photo:Makoto Ayano泥のレースに文字通りの正装で臨みます泥のレースに文字通りの正装で臨みます photo:Makoto Ayano前輪大きすぎ!な驚異のファニーバイクはもちろんシングルスピード前輪大きすぎ!な驚異のファニーバイクはもちろんシングルスピード photo:Makoto Ayano


それもそのはず、レース当日は10月31日。そうハロウィーン。茶目っ気たっぷりの主催者さんはベストドレッサー賞をこのシングルスピードレースに持ってきたってわけ。そんな遊び心も、シングルスピードの楽しみの自由さにぴったり。なんだかとっても楽しそうなレースが始まりそう!

レースがスタート!勝負モードのライダーあり、オシャレな装いのライダーあり、ネタ(失礼!)としか思えないバイクで参加の人もありの、「ぴりぴり」と「なごなご」が混在した雰囲気のレース。こんな雰囲気のサラダボウル状態がシングルスピードの楽しみ方の多さに対応しているよう。

オフロードをシングルスピード・シクロクロスバイクが駆けるオフロードをシングルスピード・シクロクロスバイクが駆ける photo:Makoto Ayanoオフロードをシングルスピード・シクロクロスバイクが駆けるオフロードをシングルスピード・シクロクロスバイクが駆ける photo:Makoto Ayanoオフロードをシングルスピード・シクロクロスバイクが駆けるオフロードをシングルスピード・シクロクロスバイクが駆ける photo:Makoto Ayano


先頭は激しいバトル!それもそのはず、優勝商品はホワイト・インダストリーズの高級シングルスピードパーツ。ううむ、これは垂涎モノ。他のカテゴリーレースにも劣らないスピードでレースが進んでいく。ゆるいながら登りのある野辺山シクロクロスのコースでは、ギア比の選択も重要になりそう。

それにしても、ライダーたちが楽しそうにかつ苦しそうに走っているのを見ると、シングルスピードはどこでも走れるんだなぁ!と感じる。オフロードで泥にまみれる状況だからこそ、故障の少ないシングルスピードのメリットも再確認。ギアが無いことで「これで行くしか無い!」ってレース中の辛い時にも心が折れずに走れる…かもしれない。自分で走らずに語るのも野暮だけど。

走り終わった後の泥まみれのシングルスピードバイクがやけにカッコいい走り終わった後の泥まみれのシングルスピードバイクがやけにカッコいい photo:Kei Tsuji

泥んこレースをわしわし走るシングルスピード・シクロクロスを見てみて、なんだかぼく自身、シングルスピードバイク=アスファルトっていう狭い見方をしていたことを痛感。いやはや、シングルスピードはほんとうに奥が深いナ。その奥深い楽しみを知っている参加者の方にお話を聞いてみました。

野辺山クロスを楽しんだ、シングルスピードバイクをこよなく愛する渡辺誠一さん野辺山クロスを楽しんだ、シングルスピードバイクをこよなく愛する渡辺誠一さん photo:Makoto Ayanoその方は、渡辺誠一さん。ヘルメットからはみ出すアフロで会場の声援を集めていた彼は、マウンテンバイクの24時間耐久レースをソロで走ったり、SDA王滝(100kmを走るMTBイベント)をシングルスピードで走り切ってしまう鉄人。シングルスピードバイクへの愛着とコダワリには並々ならぬものを感じさせます。

渡辺さん「走った感想は、単純に、面白い!コースの性格からして激坂があるわけでもなく、シングルスピードでも自分に合ったギアを選択すれば登れるしね。平坦区間は踏まなくちゃいけないけれど、ロードレースじゃなければ下りでガンガン踏まなきゃいけない状況って無いので、ちゃんとギア比を合わせていけば走れる。シングルスピードで走れる楽しいコースでしたね。」

ーこのコースでどんなギア比で走ったのでしょう?

渡辺さん「僕は38×18でした。でも芝の区間が多くて雨に濡れて重たかったので、38×19でも良かったかな、という感じですね。これだとギア比は2対1です。このコースだとギア比が2〜2.2くらいの間がベターかな。埼玉のGPミストラル(シクロクロスレース)では平坦が多いので2.2から人によっては2.35、歯数で38×16、17くらいを選びますね。」

ーシングルスピードを乗り始めたきっかけは?

渡辺さん「きっかけは特に無いんです。僕もMTB、シクロクロス、ロードを少しと一通りレースを楽しんで少しマンネリ感があったので、何が面白いかな?と思ってMTBのサスペンションを外したらシンプルで楽しかった。それでギアも外しちゃえって流れですね。それでシクロクロスバイクをシングルスピードにして王滝の100kmのイベントに参加したのが始まりです。」

楽しみながらシングルスピードで駆ける渡辺誠一さん楽しみながらシングルスピードで駆ける渡辺誠一さん photo:Kei Tsuji

ースポーツバイクとしてのシングルスピードの魅力とは?

渡辺さん「シングルスピードの『ギアが無い』っていうのは制約のように感じるけれど、逆に考えるとギアシフトとかサスペンションだとかの括りを外して自分に合ったギア一枚を選ぶという『潔さ』がありますよね。シングルスピードでも乗り方次第ではギア付きバイクと遜色なく走れるし、工夫次第でバイクのコントロールが上手くなっていく。

最初こそうまく走れなかったけれど、段々とギア付きバイクに乗っていたところと同じ所を登れて下れるようになってきた。スラロームなんかは逆に加速して走れるようになったりしてね。ギア付きのバイクに乗っていたら気づくのが遅れていただろうバイクの操り方を、シングルスピードのおかげで自分のモノにできたと思いますね。」

ううむ、シングルスピードってただシンプルなだけでなく、そのシンプルさゆえにバイクの本質を気づかせてくれるものなのか。やっぱりシングルスピードは奥が深い!

機材のチョイスも楽しいシングルスピード・シクロクロス機材のチョイスも楽しいシングルスピード・シクロクロス photo:Makoto Ayano仮装をして走った参加者でパチリ仮装をして走った参加者でパチリ photo:Makoto Ayano


オフロードでのシングルスピードは年々盛り上がりを増しているそうで、シングルスピードのマウンテンバイク世界選手権への切符をかけたレース来年5月に日本で開催されるがことが決定。こちらも熱いイベントになりそうだ。

様々な可能性を秘めたシングルスピード、次はどうやって楽しもう!?


野辺山シクロクロスを走ったシングルスピードバイク、仮装ライダーの様子は80枚超のフォトギャラリーで!


photo:Makoto Ayano,Kei Tsuji