2010年10月31日、長野県南佐久郡南牧村野辺山の滝沢牧場で野辺山シクロクロスが開催された。日本のトップライダーや海外招待選手が出場したC1は辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)が優勝。総勢225名の選手と多くの観客たちが初開催の野辺山クロスを堪能した。

観戦フレンドリーな滝沢牧場が会場

絶好の観戦スポットとなったホール部分絶好の観戦スポットとなったホール部分 photo:Kei Tsuji/nobeyamacyclocross.cc信州シクロクロスの第2戦に組み込まれた野辺山シクロクロス。舞台となったのは、八ヶ岳の東麓に広がる野辺山高原だ。

前夜にはフォトグラファーのブライアン・ヴァーナーが日本で撮影した日本初公開の映画「CYCLOCROSS MEETING」の上映会が行われ、映画鑑賞&レース観戦だけに訪れる来場者も。首都圏から数時間というアクセスの良さも影響し、初開催ながら225名がエントリーした。

バギーコースのテラスにも多くの観客がバギーコースのテラスにも多くの観客が photo:Kei Tsuji/nobeyamacyclocross.ccコースは標高約1350mに位置する滝沢牧場の敷地を最大限利用した約2.7km。スラロームしながら駆ける広大な牧草地や四輪バギー用のサーキット、畑の中を抜ける泥セクション、吹き抜けを利用したテクニカルな舗装セクション、バイクを担ぎ上げて特製のスロープを駆け下りるデッキと、変化に富んでいる。出場者からは「苦しいけど走っていて楽しいコース」と好評だった。

出場選手だけでなく、観客を楽しませることも観光牧場ならでは。観戦スポットが多く用意され、吹き抜けスペースではワッフルやホットワイン、豚汁、カレー、コーヒーなどの販売も。トイレも完備され、牛や馬、山羊が会場のあちこちで鳴き声をあげる。家族連れで訪れる出場者が多く見られた。

ランニングの力も試される泥セクションランニングの力も試される泥セクション photo:Makoto AYANOレース前には小坂親子による初心者を対象にしたシクロクロススクールも開催。また、レース当日にはUstreamを利用し、カメラ4台を使っての映像ライブ配信も行なわれた。

心配されていた台風14号は日本列島を逸れて東へ。レース当日は概ね曇りで、晴れと小雨が入れ替わる山間部らしい気象条件。会場には特製カウベルの音が鳴り響いた。

C2 圧倒的な走りを見せた山本幸平(チームブリヂストン・アンカー)C2 圧倒的な走りを見せた山本幸平(チームブリヂストン・アンカー) photo:Kei Tsuji/nobeyamacyclocross.ccカテゴリーはトップのC1からCB(カテゴリーベビー)まで様々で、当日エントリーも可。ホワイト・インダストリーズ社がスポンサーについたシングルスピード選手権も開催された。ちょうどハロウィーンの日と重なったため、このシングルスピード選手権はさながら仮装大会に。36インチ巨大前輪の特注ファニーバイクを駆ったライダーが特別仮装大賞を獲得した。

C2にはMTB全日本チャンピオンの山本幸平(チームブリヂストン・アンカー)が出場。MTBを駆った山本は1周目から他のライダーを置き去りにする圧倒的な走りを見せ、最終的に2位以下を3分以上引き離しての独走勝利を飾った。山本は11月13日に中国広州で開幕するアジア大会にMTBクロスカントリー日本代表として出場予定。同じくMTB全日本チャンピオンでアジア大会出場予定の片山梨絵(SPECIALIZED)はCL1で優勝した。

広大な牧草地をスラローム広大な牧草地をスラローム photo:Kei Tsuji/nobeyamacyclocross.cc

日本トップレーサーが集うC1を辻浦が制す

スタート前のモリー・キャメロン(アメリカ、ポートランド・バイシクルスタジオ)スタート前のモリー・キャメロン(アメリカ、ポートランド・バイシクルスタジオ) photo:Kei Tsuji/nobeyamacyclocross.ccC1には全日本チャンピオンの辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)の他、コースデザインに携わった小坂正則(スワコレーシング)や丸山厚(MASSA-FOCUS-OUTDOOR PRODUCTS)ら、日本のトップレーサーが集結。

そして、アメリカのポートランドから招待選手としてモリー・キャメロンを迎えた。キャメロンはアメリカやヨーロッパのトップレースを走るエリートシクロクロスレーサー。レース活動と並行して自転車ショップのポートランド・バイシクルスタジオを運営している。

独走する辻浦圭一(ブリヂストンアンカー)独走する辻浦圭一(ブリヂストンアンカー) photo:Makoto AYANO35名がスタートしたレースは、序盤から辻浦がリードした。泥セクションを突き進む全日本チャンピオンには丸山が食らいついたが、徐々にその差は開いて行く。ベテラン小坂が丸山を抜いて2番手に上がり、単独で辻浦を追う。

後方スタートのキャメロンはバイクトラブルで手間取りながらも徐々に順位を上げ、平野星矢(BIKE・RANCH)や小坂光(宇都宮ブリッツェン)と競り合いながら4〜6番手を走行。オープン扱いでC1に出場した山本幸平は、猛烈な勢いで追い上げ、4番手でレースを終えた(オープン参加のため40分で終了)。

モリー・キャメロン(アメリカ、ポートランド・バイシクルスタジオ)モリー・キャメロン(アメリカ、ポートランド・バイシクルスタジオ) photo:Kei Tsuji/nobeyamacyclocross.cc辻浦はその後も先頭を譲らず、追いすがる小坂を振り切ってゴール。小坂と丸山がそれぞれ単独で2位と3位。キャメロン、平野、小坂が続いた。

優勝した辻浦は「観客が多く、アットホームな良い雰囲気の中、こうして勝つことが出来て嬉しい」とコメント。トレーラーの上に設けられた表彰台に上り、ノルウェー製の特製カウベル・トロフィーを手にした。

小坂正則(スワコレーシング)小坂正則(スワコレーシング) photo:Makoto.AYANO4位のキャメロンは「これほど速いライダーが日本にもいると思っていなかった。優勝争いには加われなかったけど、2人(小坂と平野)と競り合いながら走ったので白熱して楽しめた。コースも素晴らしくクオリティーが高い。来年また戻ってくるよ」と驚いた表情を浮かべながらコメント。日本のシクロクロスファンの声援を受け、レースを満喫した様子だった。

「ぜひ来年も出場したい」という声が多く聞かれた第1回大会。野辺山シクロクロスは日本のシクロクロスシーンに新たな風を吹き込んだと言っていいだろう。

レースオーガナイザー兼選手(C1出場)の矢野大介(八ヶ岳CYCLOCROSS CLUB)氏曰く、来シーズンの野辺山シクロクロスはUCI(国際自転車競技連合)登録を目指す。日本のUCIレースを2週連続で開催することで、海外から出場選手を多く獲得したい考えだ。

独走優勝を飾った辻浦圭一(ブリヂストンアンカー)独走優勝を飾った辻浦圭一(ブリヂストンアンカー) photo:Makoto AYANO表彰台は野辺山らしいトレーラー表彰台は野辺山らしいトレーラー photo:Kei Tsuji/nobeyamacyclocross.cc
選手たちとの再会を待つ泥選手たちとの再会を待つ泥 photo:Kei Tsuji/nobeyamacyclocross.cc

レースの模様はフォトギャラリーで!

野辺山シクロクロス結果
C1(9周回)
1位 辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)        1h08'43"
2位 小坂正則(スワコレーシングチーム)             +50"
3位 丸山厚(MASSA-FOCUS-OUTDOOR PRODUCTS)     +1'20"
4位 モリー・キャメロン(PORTLAND BICYCLE STUDIO)    +2'28"
5位 平野星矢(BIKE・RANCH)                +2'35"
6位 小坂光(宇都宮ブリッツェン)               +3'05"
7位 山本聖吾(スワコレーシングチーム)            +3'21"
8位 池本真也(和光)                     +3'45"
9位 中間森太郎(チーム埼玉県人)               +3'57"
10位 合田正之(サイクルクラブ3UP・ MURACA)           +4'32"

CL1(4周回)
1位 片山梨絵(SPECIALIZED)               36'10"
2位 中込由香里(SY-NAK SPECIALIZED)           +1'41"
3位 齋藤麿美(TEAM-MASA+/BOMA)            +2'11"
4位 宮内佐季子(CLUB viento)               +6'03"
5位 綿貫通穂(臼杵レーシング)                +7'37"

CM1(5周回)
1位 ビンセント・フラナガン(PEDALFORTH.com)     45'54"
2位 岩本 雅秀(チーム泥んこプロレス)            +40"
3位 富田道夫(臼杵レーシング)              +1'00"
4位 羽鳥和重(サイクルクラブ3UP)            -1LAP
5位 伴肇(臼杵レーシング)                -1LAP

C2(5周回)
1位 山本幸平(チームブリヂストン・アンカー)       38'36"
2位 足立晴信(Gruppo Chicorissimo)           +3'08"
3位 伊東知幸(ワダチヤ)                 +3'18"
4位 兼子博昭(スワコレーシングチーム)         +4'59"
5位 笠原智昭(Gruppo chicorissimo)          +5'25"

CL2(2周回)
1位 相野田静香(TEAM GAX OGK KABUTO)       30'57"
2位 川﨑路子                       +1'38"
3位 鹿取裕子                        +2'28"
4位 田中恵美(パワースポーツSICK)            +2'30"

C3(4周回)
1位 二村航平(パワースポーツSICK)            32'30"
2位 前田歩(佐多塾)                   +2'22"
3位 酒井領(パワースポーツSICK)             +2'42"
4位 松尾光浩                        +3'08"
5位 山田将輝(やまさんず)                 +3'32"

CL3(2周回)
1位 沼本康代                       22'53"
2位 石本あおい                       +07"
3位 郡山しのぶ                       +17"
4位 波多野真弓                       +37"
5位 野垣直栗                        +42"

SSCXNC(シングルスピード選手権)
1位 笹井誉之(COGS)                  32'43"
2位 横山真                        +1'01"
3位 中込辰吾(team SY-Nak SPECIALIZED)         +1'52"
4位 嶋崎出(Daisy Messenger)              +2'29"
5位 武井良祐(MONOKUSA RACING)           +2'51"

text:Kei Tsuji
photo:Kei Tsuji, Makoto Ayano
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