長野県北部を4日間かけて1周するビッグライドも後半戦へ。ついにハイライトとなるビーナスラインを越える3日目、最終日にして最高標高へ駆け上がる4日目と本格山岳コースへ挑んだ様子をレポート。前編はこちら



3日目:松本~ビーナスライン~白樺湖~蓼科 距離:77km
登りが続く一日、念入りにラジオ体操から登りが続く一日、念入りにラジオ体操から (c)JACP/T.Hatamachi
バイクランチを出発!バイクランチを出発! (c)JACP/T.Hatamachi
走り始めた初日こそ、4日間のツーリングなんて久しぶりすぎて一生終わらないんじゃないか、なんて思っていたのもあっという間に折り返し地点。残すところあと2日となり、ポツリと「もう2日で終わっちゃうんですね、寂しいなぁ」なんてゲストの相原さんが漏らすと、全員から同意の声が集まる。

筆者もウンウン頷きつつ、バイクを預かってもらっていたバイクランチから早速スタート。まずは松本きっての観光名所、「松本城」へ。バイクランチを出たと思ったら、あっという間に到着するくらいの近くに美しい天守閣がたたずんでいる。朝もまだ早い時間帯ながら多くの観光客が行きかう人気スポットへ、自転車を曳いて記念撮影。周辺にはお洒落なベーカリーやカフェもたくさんあるので、普通に観光しても楽しそうな一帯だ。残念ながら、山岳コースへと向かう私たちに、立ち寄っている時間は無いのだけれど(笑)。

松本城へ到着松本城へ到着 (c)JACP/T.Hatamachi
川沿いにどんどん標高を上げていく川沿いにどんどん標高を上げていく (c)JACP/T.Hatamachi
さて、旧制松本高等学校の跡地に作られた縣の森公園脇を通り過ぎ、一路薄川沿いを遡っていく。筧さんが松本時代に良く魚釣りに興じていたという流れは、どうやら目の前に聳える山塊から来ている様子。あれを越えていくのか、と気合いを入れなおしギアチェンジ。

川沿いの序盤こそそこまで激しい斜度ではないのだけれど、扉峠との分岐を越えると一気に勾配がキツくなる。「アザレアライン」と名付けられたこの登りは、ビーナスラインへ続く取り付け道。中盤以降、延々と10%を越える登りが続き、たまに斜度が5%くらいにゆるむと平坦に感じてしまうほど。登り始めて15㎞ほど、どうにかこうにか最初の目的地である三城牧場へたどり着くとモォオーと牛が迎えてくれた。

斜度の変化も激しい三城牧場への登り斜度の変化も激しい三城牧場への登り (c)JACP/T.Hatamachi
E-BIKEなら笑顔でこなせるようですE-BIKEなら笑顔でこなせるようです (c)JACP/T.Hatamachi
三城牧場では牛が待っていました三城牧場では牛が待っていました (c)JACP/T.Hatamachi
一気に標高を上げたせいか、秋に入ったばかりだというのに既にかなり肌寒い。しかし、牧場の売店でホットミルクを頂く私をしり目に、相原さんはソフトクリームをゲットしている。タフだ……。

ぞろぞろと登り切ってきた皆さんと共に、駐車場でほっと一息ついていると「ここまでは鬱蒼としてるし、斜度もキツイしつまんなかったでしょ!ここからは楽しいと思いますよ!」と、サポートしてくれている松島さん。だが、今一つピンとこないセリフだ。

アザレアラインという名が付けられていましたアザレアラインという名が付けられていました (c)JACP/T.Hatamachi
登り切った先には絶景が待っていました登り切った先には絶景が待っていました (c)JACP/T.Hatamachi
そもそも必死にペダルを回し心拍が上がっているので、何かをつまらないと感じられるような落ち着いた情緒とは縁遠い興奮状態である。少し休んで落ち着きを取り戻しても、「峠と言えば大体こんなものでは?」というイメージなので、やはりあまり腑に落ちないまま再び走り出した。

ここから先は比較的落ち着いた斜度が続く。談笑しつつ登っていくと、あっという間にビーナスラインとの合流地点「扉峠」へたどり着く。川沿いを登り始めてから、距離約23㎞、標高差1,000mを駆け上がってきたことになる。さて、尾根筋沿いを更に高度を上げていくと、鬱蒼としていた森が消え急に視界が広がり始めた。

三峰の尾根筋は素晴らしい眺望三峰の尾根筋は素晴らしい眺望 (c)JACP/T.Hatamachi
最高の景色が広がります最高の景色が広がります (c)JACP/T.Hatamachi
この日、天気は快晴。2日間ぐずついた空模様から一転、広がる青空と緑の山々が最高に網膜に映える。ここでやっと、三城牧場でのやり取りが腑に落ちた。「確かにこの風景を見てしまうと、三城牧場までの登りは修行ですね」なんて話しながら進んでいくと、更に広がる大パノラマ。全長76㎞のビーナスラインの中でも屈指の展望を誇る「三峰展望台」に到着だ。

まるでそのまま空へと駆け上がることだってできそうなコースは、ここまで登ってきた苦労を全部吹き飛ばして余りあるインパクト。しかも、ビーナスラインが凄いのは、このレベルの絶景が何キロにもわたって続くところ。そして、いったんビーナスラインまで登ってしまえば、激しい登りは登場しないので、体力的にも余裕をもって景色を楽しめる。

休日とあって駐車場は車がいっぱい休日とあって駐車場は車がいっぱい (c)JACP/T.Hatamachi
最高の天気のもと走っていきます最高の天気のもと走っていきます (c)JACP/T.Hatamachi
ダイナミックなコースを登っていくダイナミックなコースを登っていく (c)JACP/T.Hatamachi
カーブを曲がる度に異なった表情のパノラマが立ち上がってくる絶景銀座とも言うべきコースで、どうして今までここに来なかったんだろうかと、自問自答するレベル。もし、まだビーナスラインを走ったことが無いという人は、ぜひGotoキャンペーンでもなんでも使って走りに行ってほしい。

尾根を縫うように走るアップダウンを進んでいくと、いかにも高原、といった風情の「霧ヶ峰・霧の駅交差点」に到着。この日は久しぶりの快晴ということもあってか、自動車やオートバイでツーリングを楽しむ人もたくさんで、霧の駅の駐車場も大賑わい。一旦ばらけた皆さんとここで再集合し、交差点を右折し、一路白樺湖方面へと走り出す。

ずっと最高の眺望が続くビーナスラインずっと最高の眺望が続くビーナスライン (c)JACP/T.Hatamachi
お昼は長野名物お蕎麦ですお昼は長野名物お蕎麦です (c)JACP/T.Hatamachi
白樺湖畔で記念撮影白樺湖畔で記念撮影
この先もいつまでも経っても終わらない絶景が続き、登りながらも全然疲労を感じない。一つ言えるのは、この日に晴れて良かったということ。おかげで取材としても大成功間違いなし、ということで更に心軽やかに走り続ける。そして車山麓のピークを越えれば、あとは爽快ダウンヒルへ。景色に気を取られてこけないよう、安全に下りきると、白樺湖に到着だ。

この日、関東圏でもっとも人出が多かったのがこのエリアだったようで、各施設も大混雑。そんな大人気の白樺湖で用意されていたのが、信州名物の蕎麦。白樺湖を眼下に一望するお食事処で地域の名物を頂き、峠越えで消耗したカロリーを補充したら、この日最後の峠へ向けて再出発。

スズラン峠を登っていくスズラン峠を登っていく (c)JACP/T.Hatamachi
この日最後の峠を登り切りましたこの日最後の峠を登り切りました (c)JACP/T.Hatamachi
女神展望台に到着女神展望台に到着 (c)JACP/T.Hatamachi
蓼科湖畔に到着、無事に走り切ったご褒美の乾杯!蓼科湖畔に到着、無事に走り切ったご褒美の乾杯! (c)JACP/T.Hatamachi
白樺湖を後にし、距離5km、獲得標高279mのスズラン峠へ。色づき始めた林の中を行く直線基調の峠を越えた後は、蓼科湖まで再びダウンヒル。白樺湖と同じく、もともとは農業用水池として誕生した人造湖だが、意外に雰囲気が違うのがこの二つ。少し昭和でバブルの残り香を感じる白樺湖に対し、蓼科湖はカルチャーでお洒落な雰囲気。クラフトビールやホットサンドなどを扱うキッチンカーもあり、ここまで頑張ってきた皆さんもビールの魅力にノックアウト。バイクを車に積み込んで、カンパイ!最高の一杯を楽しみ、お宿へ向かうのだった。

Day3 ライドログ



4日目 蓼科~麦草峠~佐久~長野駅 距離:132km
女神の絵が描かれたビーナスライン看板からスタート女神の絵が描かれたビーナスライン看板からスタート (c)JACP/T.Hatamachi
快晴の下麦草峠を走っていきます快晴の下麦草峠を走っていきます (c)JACP/T.Hatamachi
麦草峠へ向けて標高を上げていきます麦草峠へ向けて標高を上げていきます (c)JACP/T.Hatamachi
そして迎えた最終日。4日間もあっという間に過ぎてしまい、ついに大団円を迎える時がやってきた……のだが、最終日にしてクイーンステージとなっているのが今日のコース。国道としては渋峠に次いで2番目となる標高2,120mを誇る麦草峠が立ちふさがる。

とはいえ、蓼科側から登り始めると標高差は約700mと実はそこまで大きくは無い。昨日のうちにビーナスラインをしっかり走り、標高を上げていたおかげである。別荘やペンションが立ち並ぶ一帯から、だんだんと標高を上げていくと周りの植生も変わってくる。途中に現れる展望台を過ぎればピークまでは残り3km。今回の最高標高地点へ向けてペダルを踏む力も沸いてこようというもの。

最高のパノラマが広がっていました最高のパノラマが広がっていました (c)JACP/T.Hatamachi
国道としては日本で2番目に高い麦草峠国道としては日本で2番目に高い麦草峠 (c)JACP/T.Hatamachi
佐久へ向けて下っていきます佐久へ向けて下っていきます (c)JACP/T.Hatamachi
日本一の白樺群生地日本一の白樺群生地 (c)JACP/T.Hatamachi
麦草峠の看板と記念撮影をそそくさと済ませたら、佐久穂側へとダウンヒル。しかし、麦草峠の駐車場は、連休中日とあって大混雑しており、朝早くからすでに大渋滞。駐車場に用の無い車が反対車線を逆走してくることもあるので、混雑時はくれぐれも注意されたい。

渋滞さえ抜けてしまえばあとは爽快なダウンヒルが待っている。距離にして20㎞を越えるダウンヒルは下り好きにはたまらない。元アルペンスキーヤーの相原さんがキレッキレのダウンヒルを披露し、あっという間に佐久穂駅に到着。

麦草を越えればあとは平坦区間麦草を越えればあとは平坦区間 (c)JACP/T.Hatamachi
千曲川を何度かわたっていきます千曲川を何度かわたっていきます (c)JACP/T.Hatamachi
お米の収穫風景を横目に走るお米の収穫風景を横目に走る (c)JACP/T.Hatamachi
このまま299号線を行けば秩父、飯能に繋がっているのか、なんて感慨に浸りつつも長野方面へ向けて北上を開始。千曲川沿いを下っていく。佐久平、小諸とどんどん進んでいき、道の駅みまきにて昼食タイム。最終日ということもあってか、豪華な御膳が登場しテンションも上がろうというもの。

美味なランチを頂き、気力体力横溢させて再び走り出した先の区間は、歴史好きにはたまらないスポットがちらほら。東御市では北国街道の街並みを今に残す海野宿、上田市には真田丸で有名な上田城と、ヒストリカルなスポットが次々に登場する。

海野宿を走り抜けます海野宿を走り抜けます (c)JACP/T.Hatamachi
お昼は豪華な天ぷら御膳でしたお昼は豪華な天ぷら御膳でした (c)JACP/T.Hatamachi
伏見稲荷を彷彿とさせる鳥居の神社が登場伏見稲荷を彷彿とさせる鳥居の神社が登場 (c)JACP/T.Hatamachi
奥に見えるのが岩鼻 自然が作り出した奇岩です奥に見えるのが岩鼻 自然が作り出した奇岩です (c)JACP/T.Hatamachi
至るところで歴史を感じつつ走っていくと、道の駅上田に到着。千曲川のほとりに設けられた道の駅には、多くの家族が集まり休日の昼下がりを満喫している。のどかな光景の背後には、奇妙な形の大岩が。まるで鼻のように穴が空いた岩は「岩鼻」と呼ばれ、千曲川の浸食作用によって削られたものなのだという。大自然の力強さを感じる大岩の脇を通りすぎ、ここから先は川沿いのサイクリングロードへ。

フラットで遮るもののの無いサイクリングロードは舗装も綺麗で最高のロケーション。ただ、この日はあいにくの向かい風。でも、鈴木さんと筧さんが参加者の方にドラフティングを丁寧にレクチャーし、快速ペースで一気に長野市内へと歩を進めた。

千曲長野自転車道を走っていきます千曲長野自転車道を走っていきます (c)JACP/T.Hatamachi
一路サイクリングロードを走っていきます一路サイクリングロードを走っていきます (c)JACP/T.Hatamachi
川中島古戦場公園内のフルーツ屋でお土産をゲット川中島古戦場公園内のフルーツ屋でお土産をゲット (c)JACP/T.Hatamachi
川中島の戦いを再現した銅像 左が武田信玄、右が上杉謙信川中島の戦いを再現した銅像 左が武田信玄、右が上杉謙信 (c)JACP/T.Hatamachi
最後に立ち寄ったのは古戦場として、関が原と並ぶ有名スポット「川中島」。千曲川すぐそばで、本当に地名通りの場所なのだな、と実感できるのも自転車の良いところ。武田氏の本陣に切り込む上杉謙信像の前で記念撮影し、あとは一路長野駅へと向かうのみ。

長野駅に到着するころには、大分陽も傾いてきた頃合いだったけれど、何とか明るいうちにフィニッシュ。4日間、400㎞越え、獲得標高7000mに及ぶビッグライドを終えた皆さんの表情が明るかったのは、この4日間が最高に楽しかったことの証明だろう。

4日ぶりに長野駅に帰ってきました4日ぶりに長野駅に帰ってきました (c)JACP/T.Hatamachi
最後に皆さん今回の感想を語り合い、解散!また10月末お会いしましょう!最後に皆さん今回の感想を語り合い、解散!また10月末お会いしましょう! (c)JACP/T.Hatamachi
実は次回、長野県の南側を巡るモニターツアーも催行予定とのことなのだが、今回のライドが楽しかったとのことで、一般参加の2人ともこの場で申し込んでくれたのだという。この一事だけでも最高のライド体験ができたことが伝わるのではないだろうか。

県南のコースは今回よりも更に走り応えのあるエピックなライドになるという。ダイナミズム溢れる長野一周ライド、走れば走るほどその魅力に取りつかれること間違いない。これからの紅葉シーズン、ぜひ一度訪れてみては。

Day4 ライドログ


text:Naoki Yasuoka

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