毎年イタリアで開催されている3T主催のグラベルライドイベント「JEROBOAM」。300kmもの超長距離ダートを走破するというチャレンジングなイベントだ。日本でも開催が予定されていたが、今年は無念のキャンセルに。事前のルート確認を兼ねたテストライドのレポートをお届けしよう。



走行距離160km、獲得標高3,200mに及ぶグラベルチャレンジは東北有数の林道エリアで行われる走行距離160km、獲得標高3,200mに及ぶグラベルチャレンジは東北有数の林道エリアで行われる photo:Hayato Higuchi
JEROBOAM GRAVEL CHALLENGE -ジェロボーム・グラベルチャレンジ。

3リットルのワインボトル名称にちなんで、ワインの本場イタリアではワイナリーやブドウ畑を巡りながらの、300kmにも及ぶグラベルチャレンジを開催している。日本では行程の約半分をグラベルで設定し、2020年6月に160kmのルートで初開催を予定していたが、残念ながら今年の開催はキャンセルに。当初、今年5月に予定をしていた複数のライダーによる実走でのルート確認を6月下旬に行った。

宮城県北部に位置する大崎市と加美町。水田と畑、牧草地が広がり酒蔵があちこちに点在する。周囲には林道が蜘蛛の巣のように張り巡らされている。2019年秋の台風による被害で使用不可能となったルートも発生したが、JEROBOAM ITALYではおおよそMAGNUMクラスにあたる走行距離160km、獲得標高3,200mのルートを設定。加美町の薬莱山の麓にあるペンションKamifujiを、早朝6時過ぎ7名の出走でスタートした。

序盤の24kmは舗装路でウォームアップ序盤の24kmは舗装路でウォームアップ photo:Hayato Higuchi
足取りも軽く最初のグラベル区間に突入足取りも軽く最初のグラベル区間に突入 photo:Hayato Higuchi
スタートから24km程度は牧草地が広がる中、舗装路を走っていく。舗装路とはいえ、アップダウンを繰り返しながらの走行はその後に連続するグラベル区間にじわじわと効いてくる。今回協力いただいた参加者は一部ルートを知っている方もいたが、ルートの全てを走るのは皆さん初めて。「期待と不安をよそに」という言葉がぴったりなウォームアップ区間となった。

スタートから24kmの舗装路を終えると、最初はまとまって走っていたのがすっかりバラけて来た。スピードを競うものではないグラベルチャレンジ。それぞれのペースで最初の林道へと入っていく。グラベルの路面はしっかりと踏み固められ、登りながらスピードも乗せやすく、ペダルを踏む姿が軽快で勇ましく感じた。しかし、まだグラベルチャレンジは始まったばかりだ。

お腹の減るグラベルの登り、補給は欠かせないお腹の減るグラベルの登り、補給は欠かせない photo:Hayato Higuchi
本番では、ルート上2か所にエイドステーションを予定したが今回のテストライドではエイドステーションは無く、補給は参加者それぞれで携行。2回目の登りグラベル区間を経て40kmも過ぎると、補給は欠かせなくなってくる。最寄りのコンビニエンスストアまではあと40km程度。その間にいくつものグラベルのアップダウンを繰り返しながら、こけしで有名な鳴子温泉の街へと下りていく。グラベルの登りはお腹の減りが早い。空腹感を感じる前に随時補給を行うのが走りきるためには必須となる。

路面状況はよく、昨年訪れたときよりも走りやすい路面となっていた。参加者7名中グラベルバイクは4名、マウンテンバイク1名、シクロクロスバイク2名という構成。160kmに及ぶコースながら、マウンテンバイクでの参加者はシングルスピード仕様という猛者だ。

シングルスピードMTBで参加の強者もシングルスピードMTBで参加の強者も photo:Hayato Higuchi
ご機嫌な表情でグラベルの下りを楽しむ!ご機嫌な表情でグラベルの下りを楽しむ! photo:Hayato Higuchi
鳴子までの約50kmのグラベルアップダウン。単独一番手で駆け抜けていったのはシクロクロスバイクに前輪27.5インチホイール、後輪に700cホイールをセットしたライダー。MTBタイヤを装着し、下りでの安定性が非常に高い印象だった。ご機嫌な表情で森の中を走っていく。

80kmポイントの鳴子までのグラベル区間。参加者の走行間隔も5分~30分、1時間と行程を進めるに従って開いてきた。グラベルが終わりほっと一息をついた次の瞬間、舗装路でも8~9%程度の坂を登り、硫黄の匂いが漂う潟沼に出てから鳴子の街へと下りる。休むポイントが無いタフな区間だ。

鳴子の街を過ぎ、温泉街、畑の景色を見ながら次のグラベル区間へと移動する。途中現われる白糸の滝の前では気持ちのいい風に疲れも癒される。ここまで90km。まだ残り70kmほどの道のりだ。

連続するグラベルの登りに言葉も出なくなる連続するグラベルの登りに言葉も出なくなる photo:Hayato Higuchi
名瀑、白糸の滝で癒される名瀑、白糸の滝で癒される photo:Hayato Higuchi
鳴子から折り返してのグラベル区間。これまでに無い傾斜の勾配のグラベル区間が始まる。道路標識には16%の文字が…。「登り急勾配」、「下り急勾配」という注意書きの標識が連続し、標識を見る度に心が折れてくる区間だ。しっかりと後輪へのトラクションを維持しながら、登っていく。曇り空でスタートし、時折雨がパラつく天気もこの辺りまで来ると晴れ間が見えてくるようになった。

小さめの砂利が敷き詰められたグラベル区間。走りやすい路面とはいえ、頻繁にグラベルの登り下りを繰り返したおかげで後半に入ると脚の疲れはピークに達し、なかなか前に進まなくなってくる。

後半には16%の激グラベル坂も現れる後半には16%の激グラベル坂も現れる photo:Hayato Higuchi
鬱蒼とした森を抜け、視界が開ける。安心する瞬間だ鬱蒼とした森を抜け、視界が開ける。安心する瞬間だ photo:Hayato Higuchi
16%のグラベル登りを経て田園地帯へと向かう。誰にも会うことなく走ってきたため鬱蒼とした木々から抜けると、安心感が湧いてくる。ゴールまで残り約60km。そのうち20kmほどがグラベル区間だ。

80km地点にあるコンビニエンスストアからゴールまで、補給をとれる箇所は自動販売機のみ。陽も高くなって、冷たい飲み物でリフレッシュ。急勾配のグラベル登りが終わったと思ったら緩く長い舗装路で標高を上げてきた。既に脚は限界だが、まだこの後グラベルが待っているというのがJEROBOAM GRAVEL CHALLENGEだ。

貴重な自動販売機前での冷たいドリンク休憩。渇きを癒す貴重な自動販売機前での冷たいドリンク休憩。渇きを癒す photo:Hayato Higuchi
砂利が敷かれ、使用頻度も高い公道林道砂利が敷かれ、使用頻度も高い公道林道 photo:Hayato Higuchi
あまり人の入らない山岳の林道とは異なり、頻繁に使用されている低山部の公道のグラベル。小さめの砂利が敷き詰められた日本のグラベルロードだ。

朝6時過ぎにスタート。速い人は14時半を回るころにはゴールのペンションKamifujiへと戻ってきた。その後続々と道路の奥の方に姿が見えてくる。帰ってくる皆さんは全員、完走の充足感で笑顔でゴールしてきた。

160kmを走り終え、笑顔でゴール!160kmを走り終え、笑顔でゴール! photo:Hayato Higuchi
16%勾配をはじめ、きついポイントを振り返る16%勾配をはじめ、きついポイントを振り返る photo:Hayato Higuchi
完走者全員の感想は、一言 「きつかった」。しかし、完走は満足という事だ。グラベルチャレンジはタイムではない達成感を得る事ができる。「本番はこのルートですか?」「本番は何キロですか?」と興味深々な質問も出てきた。

試走参加7名。完走6名。8時間~12時間の走行時間となった。参考までに王滝100km5時間30分の方で8時間20分で完走。ルートは昨年、パート毎に分けて実走調査した道をつなぎ合わせている。災害などの影響により細かく修正がその都度必要なため、本番での実走行距離は160km~180kmを予定している。

アフターライドは美味しい食事でお腹を満たすアフターライドは美味しい食事でお腹を満たす photo:Hayato Higuchi
参加賞のJEROBOAM JAPAN x 一ノ蔵ボトルの日本酒参加賞のJEROBOAM JAPAN x 一ノ蔵ボトルの日本酒 photo:Hayato Higuchi
ゴール後はメイン会場のペンションKamifujiで遅めのランチタイム。本番でも同様にアフターライドの食事の提供を予定している。

参加者に配られた参加賞のJEROBOAM JAPAN ICHINOKURA 純米酒ボトル。昨年のJEROBOAM ITALYではビールが配られていたが、やはりここは米どころ、酒どころの宮城。地元大崎市の酒蔵「一ノ蔵」とのコラボボトルで余韻を楽しむ。

今後の状況を踏まえながら、2021年のJEROBOAM JAPAN GRAVEL CHALLENGEを予定。詳細は3TジャパンWEBサイト http://www.3t-bike.jp で随時更新予定だ。


JEROBOAM JAPAN GRAVEL CHALLENGE TEST RIDE
走行距離:160km
獲得標高:3,200m
協力:ベルエキップ、VCA

text&photo:Hayato Higuchi



樋口準人(3Tマーケティング担当)樋口準人(3Tマーケティング担当) 筆者プロフィール:樋口準人(3Tマーケティング担当)

ロングライド、ヒルクライム、シクロクロスと四季を通じて自転車に乗りながら、最近は毎週林道に出かけ空撮を楽しむドローングラファー。3TのグラベルロードEXPLOROを知り尽くし、日本各地で開催している3T XPDTN JAPAN CLUB RIDEをアテンドしている。