2018/09/26(水) - 12:03
サロマ湖や網走湖、能取湖といった汽水湖が点在し、本州とは全く異なる自然環境が広がるオホーツクには、女子ライダーの心を掴む「かわいい」と「おいしい」がいっぱい。そんな北の自然を楽しんだ3日間のレポートをお届け。
道東・オホーツク。世界遺産として名高い知床や、監獄で有名な網走、そして冬には流氷が接岸し、まるで極地のような風景が広がる最果ての地。そんなイメージが先行しがちなエリアだけれど、実は春から秋にかけては、サイクリストにとって最高のロケーションであることはあまり知られていない。
そんなオホーツクの魅力を広めるべく、この度、企画されたのが"女子会的オホーツクもぐもぐライド"と銘打った2日間のライドツアー。北見市や網走市、大空町を巡り、オホーツクの絶景とグルメを頂く女子ライダー向けのイベントだ。
ライド前日、オホーツクの玄関口である女満別空港へ。胆振東部地震による全道停電から間もない日程での開催であったけれど、震源地から遠いことや停電から復旧したこともあり、被災地の悲壮感はない。
女満別空港にはサイクルステーションが整備されており、ポンプや工具、チューブといった輪行サイクリングであるとうれしい装備が一式用意されるほか、クロスバイクのレンタルなども行っており、コアなサイクリストから少し自転車を使ってオホーツクを楽しみたいという人までサポートする体制が整っている。
さて、空港にはこのライドの仕掛け人である北見市の泉さんがお出迎え。今日はこのまま打ち合わせて、明日のライドに備えるのかと思いきや、「みなさん揃っているので、今日もライドしましょうか!」とプレライドのご提案が。
2日間のライド予定が急きょ3日間のみっちりスケジュールになってしまう嬉しい誤算。それも「2日だけだと回り切れないところもあるので」と広大な秋のオホーツクの魅力を伝えたい!という思いから。
というわけで、1日目(0日目かも?)は北海道イチの広さを誇る湖のサロマ湖へ。女満別空港から車で50分ほど。湖畔を望む鶴雅リゾートに前泊されていた大会ゲストの絹代さんと合流し、自転車を組み立てて出発!
3日間のライドをアテンドしてくれるのは、知床をベースにサイクリングガイドを営む西原さん。知床だけでなく、オホーツク全域から摩周や屈斜路湖など道東のルートや自然を深く知悉する頼れるガイドさんなのだ。
自転車を組立て、簡単に自己紹介をしたらさあ出発!ホテルの坂を下り、目指すはワッカ原生花園へ。と、その前に水分補給のためホテルの隣の直売所の自販機でストップ。ドリンクをボトルへ入れつつ、直売所から漂う魚介類の香りにつられ、ついつい店内へ吸い込まれる皆さん。
「え?凄く安くないですか?」「おいしそー!」と声が中から聞こえてくる。そんなに?と思って脚を踏み入れると、一人暮らしなら1週間は食いつなげそうな大きさのカラフトマスが一尾600円なんて値札が貼られている。安すぎでは?
オホーツクの自然の豊かさを資本主義的視点から早くも実感しつつ、気を取り直して出発!最初の目的地となるワッカ原生花園は鶴雅リゾートからほど近く、自転車でも5分ほどの近場。
オホーツク海とサロマ湖の間に延びた砂州の東側に整備されたワッカ原生花園は、北海道遺産にも選定された景勝地。300種類以上の海浜植物が群生し、季節に応じた花々が迎えてくれるのだとか。園内には龍宮街道と名付けられた園路が整備されており、自転車でめぐることも出来るサイクリスト向けのスポットでもある。ハマナスなどが咲く園路を進み、径の入口で自転車を降りる。丘を越えると目の前にはオホーツク海が!「海だー!癒される!」と皆さん一気にテンションアップ。
園内にはほかにも魅力的なスポットがたくさんあるとのことでしたが、今日もいろいろ盛りだくさんとのことで、次なる目的地となる浜佐呂間のお菓子屋さん「部田菓子舗」へ。こちらはカボチャ饅頭や帆立饅頭が名物なんだとか。
カボチャはまあわかるとして、帆立饅頭って、帆立の形してるだけの普通のお饅頭なのかな?と思いきや、中に帆立の燻油漬けが!白あんと帆立がコラボした唯一無二のご当地メニューは、一度試してみる価値はある。
ちなみに地元の方々から最も人気があるのは、よもぎ大福。「このあたりに来たら絶対買っちゃうんですよねー」と泉さん。触るととっても柔らかくて、顔を近づければ濃厚なよもぎの香りが!甘さひかえめな餡ともとってもマッチしていて、人気が出るのも納得の一品。
おやつを頂いた後はしっかり走らないと、ということで、キムアネップ岬へ。こちらも湿原が広がっており、サンゴ草の群生地があるという。森の中を抜けると、目指す湿原が見えてきた。すると前を行く西原さんが「タンチョウがいますね」と一旦ストップ。
え?タンチョウって、あの鶴の?指さす方を見ると、たしかに真っ白な鳥の姿が!「おぉー」と感嘆の声を上げる。かなり遠いので、そんなくっきり姿が見えるわけでもなかったのだけれど、北の国に来たんだ!という実感が湧く一幕に。
そしてサンゴ草の群生地では、まさに色づき始めたサンゴ草が赤く地面を覆い始めている。こんな低い位置で紅葉する植物を見たのは人生で初めてだったのだけれど、「明日はもっとすごい群生地に行きますよ!」とのことで、今からさらに期待が膨らむことに。
そろそろ太陽も高くなってきた頃合いということで、お昼ご飯を求めて再び自転車へまたがる。ここまではサロマ湖沿いを走ってきたけれど、いったん少し内陸へ。小高い丘へのヒルクライムをこなすと、サロマ湖とオホーツク海が隔てられている様子がわかるビューポイントが。
登りの疲れもどこかへ忘れ撮影会に。少し内陸に入るだけで、一面畑が広がる北海道らしい景色に。収穫を終えたのがじゃがいも、緑の畑がビート、そして、地面からぽこぽこ顔を出しているのが玉ねぎで、現在収穫作業真っ只中。
「玉ねぎかわいくない?」「「かわいい!」」と連呼する皆さん。「あれ、玉ねぎマンションじゃない?」と絹代さん。玉ねぎマンションなるパワーワードに思わず目をやると、玉ねぎがぎっしり詰められた籠が畑の上にずらっと並んでいる。確かに集合住宅みたいだ。
たどり着いたのは常呂町の市街にあるお寿司屋さん「松寿し」。こちらでおすすめなのは、旬の食材がたくさんの海鮮丼。今の時期はホタテといくらが食べごろなのだとか。鮭の遡上シーズンで、地元の方々は海で釣ってきた鮭からすじこをとって、家で漬け込むのだという。ホタテも肉厚で食べごたえ満点。一つ一つを大きく育つ秘密は一度間引くことなのだとか。
さらに、ローカルのみなさんがおすすめするのは、なんとカレー。地元の方にとってはこちらの方が人気なのだ、という一皿は大きなホタテやイカ、エビなどがごろごろ入ったシーフードカレー。これがまた魚介の出汁が濃厚に感じられ、海の恵みを凝縮した味。素材の力をそのまま生かした海鮮丼と、濃密に閉じ込めたシーフードカレー。甲乙つけがたいランチタイムとなったのだった。
松寿しで満腹になったら今日最後の目的地となる能取岬へ。傾き始めた陽を浴びながら、能取湖畔を北上していく。オホーツク海まで再び出て、トンネルを越えた先に現れるのは広々とした草原にそびえる白亜の灯台が一つ。ちょうど夕暮れ時の幻想的な光景で、もはやフィクションのよう。
陽が落ちる早さも北海道らしい。ここではJALの嵐のCMを真似て一枚。あーでもないこーでもないとはしゃぎながら撮っているとあっという間に日が暮れてしまった。
まだ本番が始まっていないのに、既に大満足。今日のお宿は網走湖荘。名の通り網走湖畔に立つホテルで、静かな湖面に抱かれた素敵な建物。温泉付きで、移動とライドの疲れをいやす。ご飯もとっても豪華で満腹に。
ちなみにオーナー夫妻がブロンプトン乗りでとてもサイクリストフレンドリーなのだとか。ロードやクロスのレンタサイクルもあり、オホーツク旅の1日を自転車で、という人にもおすすめのお宿だ。それでは、明日のライドに期待を膨らませつつ、1日目の夜を迎えるのだった。
text&photo:Naoki.Yasuoka
道東・オホーツク。世界遺産として名高い知床や、監獄で有名な網走、そして冬には流氷が接岸し、まるで極地のような風景が広がる最果ての地。そんなイメージが先行しがちなエリアだけれど、実は春から秋にかけては、サイクリストにとって最高のロケーションであることはあまり知られていない。
そんなオホーツクの魅力を広めるべく、この度、企画されたのが"女子会的オホーツクもぐもぐライド"と銘打った2日間のライドツアー。北見市や網走市、大空町を巡り、オホーツクの絶景とグルメを頂く女子ライダー向けのイベントだ。
ライド前日、オホーツクの玄関口である女満別空港へ。胆振東部地震による全道停電から間もない日程での開催であったけれど、震源地から遠いことや停電から復旧したこともあり、被災地の悲壮感はない。
女満別空港にはサイクルステーションが整備されており、ポンプや工具、チューブといった輪行サイクリングであるとうれしい装備が一式用意されるほか、クロスバイクのレンタルなども行っており、コアなサイクリストから少し自転車を使ってオホーツクを楽しみたいという人までサポートする体制が整っている。
さて、空港にはこのライドの仕掛け人である北見市の泉さんがお出迎え。今日はこのまま打ち合わせて、明日のライドに備えるのかと思いきや、「みなさん揃っているので、今日もライドしましょうか!」とプレライドのご提案が。
2日間のライド予定が急きょ3日間のみっちりスケジュールになってしまう嬉しい誤算。それも「2日だけだと回り切れないところもあるので」と広大な秋のオホーツクの魅力を伝えたい!という思いから。
というわけで、1日目(0日目かも?)は北海道イチの広さを誇る湖のサロマ湖へ。女満別空港から車で50分ほど。湖畔を望む鶴雅リゾートに前泊されていた大会ゲストの絹代さんと合流し、自転車を組み立てて出発!
3日間のライドをアテンドしてくれるのは、知床をベースにサイクリングガイドを営む西原さん。知床だけでなく、オホーツク全域から摩周や屈斜路湖など道東のルートや自然を深く知悉する頼れるガイドさんなのだ。
自転車を組立て、簡単に自己紹介をしたらさあ出発!ホテルの坂を下り、目指すはワッカ原生花園へ。と、その前に水分補給のためホテルの隣の直売所の自販機でストップ。ドリンクをボトルへ入れつつ、直売所から漂う魚介類の香りにつられ、ついつい店内へ吸い込まれる皆さん。
「え?凄く安くないですか?」「おいしそー!」と声が中から聞こえてくる。そんなに?と思って脚を踏み入れると、一人暮らしなら1週間は食いつなげそうな大きさのカラフトマスが一尾600円なんて値札が貼られている。安すぎでは?
オホーツクの自然の豊かさを資本主義的視点から早くも実感しつつ、気を取り直して出発!最初の目的地となるワッカ原生花園は鶴雅リゾートからほど近く、自転車でも5分ほどの近場。
オホーツク海とサロマ湖の間に延びた砂州の東側に整備されたワッカ原生花園は、北海道遺産にも選定された景勝地。300種類以上の海浜植物が群生し、季節に応じた花々が迎えてくれるのだとか。園内には龍宮街道と名付けられた園路が整備されており、自転車でめぐることも出来るサイクリスト向けのスポットでもある。ハマナスなどが咲く園路を進み、径の入口で自転車を降りる。丘を越えると目の前にはオホーツク海が!「海だー!癒される!」と皆さん一気にテンションアップ。
園内にはほかにも魅力的なスポットがたくさんあるとのことでしたが、今日もいろいろ盛りだくさんとのことで、次なる目的地となる浜佐呂間のお菓子屋さん「部田菓子舗」へ。こちらはカボチャ饅頭や帆立饅頭が名物なんだとか。
カボチャはまあわかるとして、帆立饅頭って、帆立の形してるだけの普通のお饅頭なのかな?と思いきや、中に帆立の燻油漬けが!白あんと帆立がコラボした唯一無二のご当地メニューは、一度試してみる価値はある。
ちなみに地元の方々から最も人気があるのは、よもぎ大福。「このあたりに来たら絶対買っちゃうんですよねー」と泉さん。触るととっても柔らかくて、顔を近づければ濃厚なよもぎの香りが!甘さひかえめな餡ともとってもマッチしていて、人気が出るのも納得の一品。
おやつを頂いた後はしっかり走らないと、ということで、キムアネップ岬へ。こちらも湿原が広がっており、サンゴ草の群生地があるという。森の中を抜けると、目指す湿原が見えてきた。すると前を行く西原さんが「タンチョウがいますね」と一旦ストップ。
え?タンチョウって、あの鶴の?指さす方を見ると、たしかに真っ白な鳥の姿が!「おぉー」と感嘆の声を上げる。かなり遠いので、そんなくっきり姿が見えるわけでもなかったのだけれど、北の国に来たんだ!という実感が湧く一幕に。
そしてサンゴ草の群生地では、まさに色づき始めたサンゴ草が赤く地面を覆い始めている。こんな低い位置で紅葉する植物を見たのは人生で初めてだったのだけれど、「明日はもっとすごい群生地に行きますよ!」とのことで、今からさらに期待が膨らむことに。
そろそろ太陽も高くなってきた頃合いということで、お昼ご飯を求めて再び自転車へまたがる。ここまではサロマ湖沿いを走ってきたけれど、いったん少し内陸へ。小高い丘へのヒルクライムをこなすと、サロマ湖とオホーツク海が隔てられている様子がわかるビューポイントが。
登りの疲れもどこかへ忘れ撮影会に。少し内陸に入るだけで、一面畑が広がる北海道らしい景色に。収穫を終えたのがじゃがいも、緑の畑がビート、そして、地面からぽこぽこ顔を出しているのが玉ねぎで、現在収穫作業真っ只中。
「玉ねぎかわいくない?」「「かわいい!」」と連呼する皆さん。「あれ、玉ねぎマンションじゃない?」と絹代さん。玉ねぎマンションなるパワーワードに思わず目をやると、玉ねぎがぎっしり詰められた籠が畑の上にずらっと並んでいる。確かに集合住宅みたいだ。
たどり着いたのは常呂町の市街にあるお寿司屋さん「松寿し」。こちらでおすすめなのは、旬の食材がたくさんの海鮮丼。今の時期はホタテといくらが食べごろなのだとか。鮭の遡上シーズンで、地元の方々は海で釣ってきた鮭からすじこをとって、家で漬け込むのだという。ホタテも肉厚で食べごたえ満点。一つ一つを大きく育つ秘密は一度間引くことなのだとか。
さらに、ローカルのみなさんがおすすめするのは、なんとカレー。地元の方にとってはこちらの方が人気なのだ、という一皿は大きなホタテやイカ、エビなどがごろごろ入ったシーフードカレー。これがまた魚介の出汁が濃厚に感じられ、海の恵みを凝縮した味。素材の力をそのまま生かした海鮮丼と、濃密に閉じ込めたシーフードカレー。甲乙つけがたいランチタイムとなったのだった。
松寿しで満腹になったら今日最後の目的地となる能取岬へ。傾き始めた陽を浴びながら、能取湖畔を北上していく。オホーツク海まで再び出て、トンネルを越えた先に現れるのは広々とした草原にそびえる白亜の灯台が一つ。ちょうど夕暮れ時の幻想的な光景で、もはやフィクションのよう。
陽が落ちる早さも北海道らしい。ここではJALの嵐のCMを真似て一枚。あーでもないこーでもないとはしゃぎながら撮っているとあっという間に日が暮れてしまった。
まだ本番が始まっていないのに、既に大満足。今日のお宿は網走湖荘。名の通り網走湖畔に立つホテルで、静かな湖面に抱かれた素敵な建物。温泉付きで、移動とライドの疲れをいやす。ご飯もとっても豪華で満腹に。
ちなみにオーナー夫妻がブロンプトン乗りでとてもサイクリストフレンドリーなのだとか。ロードやクロスのレンタサイクルもあり、オホーツク旅の1日を自転車で、という人にもおすすめのお宿だ。それでは、明日のライドに期待を膨らませつつ、1日目の夜を迎えるのだった。
text&photo:Naoki.Yasuoka
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