2018/01/24(水) - 09:10
さて、前半のハイライトとなる古宇利大橋を走り抜け、未体験ゾーンとなるエリアへと足を踏み入れる美ら島オキナワセンチュリーラン。160kmの後半レポートをお届けしましょう。(※前編はこちらから)
ダイナミックな古宇利大橋を折り返し、気分としてはあと半分。となってしまいそうだけれども、まだまだ残り100kmほどあるのが、大会最長のセンチュリーコース。とはいえここからは南へ向かっていくため、ここまで向かい風だったのが追い風基調へと逆転する。昨日の敵は今日の友とはよく言ったものである。
屋我地島から沖縄本島へと舞い戻り、名護市街を再び通り抜けていく。往路よりも交通量が多くなっているので少し気を付けつつ、海岸線を走っていけば第3エイドの「道の駅 許田」へと到着だ。名護市街への入り口でもあり、沖縄自動車道の終点である許田ICから車で3分ほどの位置にあるこの道の駅はやんばるエリアの観光案内を網羅している情報ステーション。施設の中には巨大な地図が鎮座しているのが大きな特徴だ。
名護のゆるきゃら「名護親方」が愛嬌振りまき参加者と記念写真を撮っていく横では、やんばる名物のタンカンが振舞われ、甘い果汁に思わず上がるうなり声。ちなみにタンカンは驚くほど多くのビタミンCが含まれているそうで、なんと一個食べれば一日分が摂取できるのだとか。美味しくて体にいいとは、タンカン完全無欠なり。
さて、ここまでは100kmコースとほとんど同じ道を来たけれど、ここから先は経験したことのないコースへ向かっていく。許田新橋を過ぎた交差点を左折し、良く見知った100kmコースとお別れすると、さっそく登りが始まった。
沖縄本島の背骨に向けて、5%程度の登りが2kmほど続く。それだけであれば大したこともないプロフィールだが、ここまで既に70kmをこなしてきた参加者の目にはどうしてなかなかハードに映る。下を向いてしまう方もいれば、登りでこそ元気になるクライマー気質の方も。十人十色の登り方でこの難所をクリアすれば宜野座村へのダウンヒルだ。
下り切ったあとも、追い風に吹かれて平坦区間を快速で進んでいく。途中には阪神タイガースのキャンプ地としても知られる宜野座球場の横を通るシーンも。海沿いの細やかなアップダウンをこなしつつ向かうのは、4つ目のエイドステーションだ。
宜野座村のエイドステーションが設置される「かりゆしカンナタラソラグーナ」はさまざまなタイプのプールやスパが揃う温浴施設。その一角をお借りして設けられたエイドでは、もずく汁に一口大の紅芋タルト、シークワーサーゼリーが用意され、陽が昇るのと比例して空いてきた小腹を満たすことが出来た。
温浴施設らしく、エイドの奥には足湯を開放。さんさんと降り注ぐ陽の光と、疲れ始めた脚をリフレッシュしてくれるお湯のコンボはかなり危険な組み合わせ。一度入ってしまうと出たくなくなる……。しかし、なんとか残ったわずかな理性を総動員して再び自転車にまたがる。なんてったって次のエイドステーションでは待ちに待った昼食が振舞われるというのだ。食欲とサボり欲の鬩ぎ合いは前者に軍配。三大欲求の強さはホンモノだ。
再び海岸線をひた走っていくと金武町へと入っていく。スポーツ施設が集められた一帯には「熱烈歓迎!浦和レッズ」の幟がひしめき、赤色に染められている。この日もスクールか試合かはわからないけれど、ピッチにはたくさんのサッカープレイヤーが詰めかけ、白熱した雰囲気が道路越しにも伝わってくる。
その先に見えてくるのがお昼ご飯が用意された「ネイチャーみらい館」。パックにパンパンに詰め込まれたタコライスが今回のランチとなっていた。ここまで約90km。エイドで補給を取ってはいてもお腹はかなり空いていたようで、かなりのボリュームをぺろりと完食。ここまで甘いものが多かっただけに、塩気のあるご飯と辛めのソースが胃袋に染み渡るかのよう。
タコライスで元気を補充したら、残るエイドはあと3つ。そのうちの2つがあるうるま市は少し走った先となる。歩道上にいくつもシーサーが置かれ、交通安全を見守っているかのよう。うるま市一つ目となるエイドステーション「うるま市石川庁舎」では、老舗パティスリーのアラモードが手掛けるうるま闘牛ブラウニーを筆頭に、いろんな甘味が用意される。タコライスの後のデザートにはぴったりで、ついつい手が伸びてしまう。
スイーツを堪能したら、後半最大のハイライトである海中道路へ向けて出発だ。ここまで南西へ向けて走ってきたが、金武湾をぐるりと回るうちに風向きも変わってくる。横合いから強い風を浴びながら走っていくことになるため、脚の合う集団にジョインし、負担を分け合いながら進んでいくことに。
遠くに海中道路が見えてくると、風も一段と強くなる。ちなみに風が吹いてくるのは海中道路が見える方向で、この時点で覚悟は完了。沖縄本島と金武湾に浮かぶ平安座島を結ぶ全長4.7kmの橋は、規模が大きすぎていわゆる橋っぽさは少なめ。「海中道路」とはよく言ったもので、遠浅の海がその部分だけ隆起しており、舗装されたかのような印象だ。
というのも遠目に見たお話で、いざ海中道路に差し掛かると予想以上の強風にそれどころではなくなってしまう。海中道路のど真ん中にあるドライブインであり、第7エイドでもある「海の駅 あやはし館」がなかなか近づいてこない。姿勢を低くし、少しでも空気抵抗を減らしてひと漕ぎひと漕ぎ進み、やっと到着した私たちを待っていたのは、濃厚なクリームを詰め込んだニンジンロールケーキ、そしてうるま市が生産量日本一を誇るもずくを使った一口コロッケという地元グルメたち。
普通のコロッケとは異なる食感が新しいこのもずくコロッケ、病みつきになる人もたくさんいるようで、「毎年これを食べたいから160km走ってるんですよ!」なんてエイドのスタッフさんに話しかけている参加者も。そんなに美味しいの?とちょっと意地悪な気持ちで食べてみると、その言葉が嘘偽りない真実だったことを悟ることに。ほくほくのジャガイモともずくのぬっとりプチプチした感触が渾然一体となって、新しい。これはちょっと癖になりそう。
さて、ここまでくれば残るエイドはあと一つ。ゼッケンに残された空欄を埋めてくれる最後のエイドステーション「道の駅かでな」へ向けて出発だ。途中には米軍嘉手納基地の横を走る区間も登場。軍用機が飛び交っているのかとも思ったけれど、特に飛んでいる様子もなく延々と続くフェンスの向こうに広大な土地が広がっていた。
エイドに到着したらまずは嘉手納町シールをもらい、7市町村をコンプリート。これであとはゴール地点へ戻るだけだが、その前に最後の補給をば。嘉手納町のマフィン専門店Charmによるいろんな種類のマフィンやパン工房RARAの菓子パンなどがズラリと並び、食べきれないほど。残り22kmを走り切るため必要そうな分だけ頂き、再びコースイン。
緩やかなアップダウンが続く国道58号線をスタートした恩納村まで北上していく。リゾート地らしい町並みを走り抜け、ふとサイクルコンピュータを見てみると、既に160kmをオーバーしているではないか。そう、この160kmコース、実は168kmあるのだ。道理でなかなかフィニッシュしないわけである。
筋トレ最後の一セットだと思ったら、コーチから「ワンモアセッ!」と告げられたかのような絶望感を抱えつつ、ひたすらペダルを回し続けると、ゴール地点が見えてくる。仲間と共にフィニッシュを迎えるため、会場入り口で待機する方々の姿も。
160kmコースだけでなく、100kmや50kmの参加者も先にフィニッシュしており、仲間の帰りを待つ方々の応援でフィニッシュゲートは大盛り上がり。カメラマンも最高の笑顔を撮影すべく鈴なりになっており、まるでプロレースのフィニッシュエリアのよう。かくいう自分もその一団に加わり、168kmを走り抜いたみなさんの勇姿をフィルムに収めるのだった。
これまで100kmコースを走ってきた筆者だが、初の160kmコースはとても楽しめた。ただ一つだけ理想を言うならば、160kmコースと100kmコースの間にもう一つコースがあってもいいのではないかな、とも感じた。それなりに多くの人が関門時間に引っかかってしまったようで、海中道路などをショートカットするコースへと変更されていた様子。走力的にも、「160kmコースはちょっと厳しいけれど、100kmコースは物足りない」という人も居るはず。今回ショートカットに利用したコースを正式なカテゴリーにすれば、関門に引っかかってしまったという負い目も感じなくて済みそうだ。
なにはともあれ、天候にも恵まれ、最高のライドを楽しんだ美ら島オキナワセンチュリーラン160kmコース。走りがいのあるコースに、食べがいのあるエイド、眺めがいのある絶景と、ロングライドを幸せにするために必要なものはすべてここに揃っている。今年も最高のシーズンになりそうな予感をもたらしてくれる福寄せライドになったのではないだろうか。
text&photo:Naoki.Yasuoka
ダイナミックな古宇利大橋を折り返し、気分としてはあと半分。となってしまいそうだけれども、まだまだ残り100kmほどあるのが、大会最長のセンチュリーコース。とはいえここからは南へ向かっていくため、ここまで向かい風だったのが追い風基調へと逆転する。昨日の敵は今日の友とはよく言ったものである。
屋我地島から沖縄本島へと舞い戻り、名護市街を再び通り抜けていく。往路よりも交通量が多くなっているので少し気を付けつつ、海岸線を走っていけば第3エイドの「道の駅 許田」へと到着だ。名護市街への入り口でもあり、沖縄自動車道の終点である許田ICから車で3分ほどの位置にあるこの道の駅はやんばるエリアの観光案内を網羅している情報ステーション。施設の中には巨大な地図が鎮座しているのが大きな特徴だ。
名護のゆるきゃら「名護親方」が愛嬌振りまき参加者と記念写真を撮っていく横では、やんばる名物のタンカンが振舞われ、甘い果汁に思わず上がるうなり声。ちなみにタンカンは驚くほど多くのビタミンCが含まれているそうで、なんと一個食べれば一日分が摂取できるのだとか。美味しくて体にいいとは、タンカン完全無欠なり。
さて、ここまでは100kmコースとほとんど同じ道を来たけれど、ここから先は経験したことのないコースへ向かっていく。許田新橋を過ぎた交差点を左折し、良く見知った100kmコースとお別れすると、さっそく登りが始まった。
沖縄本島の背骨に向けて、5%程度の登りが2kmほど続く。それだけであれば大したこともないプロフィールだが、ここまで既に70kmをこなしてきた参加者の目にはどうしてなかなかハードに映る。下を向いてしまう方もいれば、登りでこそ元気になるクライマー気質の方も。十人十色の登り方でこの難所をクリアすれば宜野座村へのダウンヒルだ。
下り切ったあとも、追い風に吹かれて平坦区間を快速で進んでいく。途中には阪神タイガースのキャンプ地としても知られる宜野座球場の横を通るシーンも。海沿いの細やかなアップダウンをこなしつつ向かうのは、4つ目のエイドステーションだ。
宜野座村のエイドステーションが設置される「かりゆしカンナタラソラグーナ」はさまざまなタイプのプールやスパが揃う温浴施設。その一角をお借りして設けられたエイドでは、もずく汁に一口大の紅芋タルト、シークワーサーゼリーが用意され、陽が昇るのと比例して空いてきた小腹を満たすことが出来た。
温浴施設らしく、エイドの奥には足湯を開放。さんさんと降り注ぐ陽の光と、疲れ始めた脚をリフレッシュしてくれるお湯のコンボはかなり危険な組み合わせ。一度入ってしまうと出たくなくなる……。しかし、なんとか残ったわずかな理性を総動員して再び自転車にまたがる。なんてったって次のエイドステーションでは待ちに待った昼食が振舞われるというのだ。食欲とサボり欲の鬩ぎ合いは前者に軍配。三大欲求の強さはホンモノだ。
再び海岸線をひた走っていくと金武町へと入っていく。スポーツ施設が集められた一帯には「熱烈歓迎!浦和レッズ」の幟がひしめき、赤色に染められている。この日もスクールか試合かはわからないけれど、ピッチにはたくさんのサッカープレイヤーが詰めかけ、白熱した雰囲気が道路越しにも伝わってくる。
その先に見えてくるのがお昼ご飯が用意された「ネイチャーみらい館」。パックにパンパンに詰め込まれたタコライスが今回のランチとなっていた。ここまで約90km。エイドで補給を取ってはいてもお腹はかなり空いていたようで、かなりのボリュームをぺろりと完食。ここまで甘いものが多かっただけに、塩気のあるご飯と辛めのソースが胃袋に染み渡るかのよう。
タコライスで元気を補充したら、残るエイドはあと3つ。そのうちの2つがあるうるま市は少し走った先となる。歩道上にいくつもシーサーが置かれ、交通安全を見守っているかのよう。うるま市一つ目となるエイドステーション「うるま市石川庁舎」では、老舗パティスリーのアラモードが手掛けるうるま闘牛ブラウニーを筆頭に、いろんな甘味が用意される。タコライスの後のデザートにはぴったりで、ついつい手が伸びてしまう。
スイーツを堪能したら、後半最大のハイライトである海中道路へ向けて出発だ。ここまで南西へ向けて走ってきたが、金武湾をぐるりと回るうちに風向きも変わってくる。横合いから強い風を浴びながら走っていくことになるため、脚の合う集団にジョインし、負担を分け合いながら進んでいくことに。
遠くに海中道路が見えてくると、風も一段と強くなる。ちなみに風が吹いてくるのは海中道路が見える方向で、この時点で覚悟は完了。沖縄本島と金武湾に浮かぶ平安座島を結ぶ全長4.7kmの橋は、規模が大きすぎていわゆる橋っぽさは少なめ。「海中道路」とはよく言ったもので、遠浅の海がその部分だけ隆起しており、舗装されたかのような印象だ。
というのも遠目に見たお話で、いざ海中道路に差し掛かると予想以上の強風にそれどころではなくなってしまう。海中道路のど真ん中にあるドライブインであり、第7エイドでもある「海の駅 あやはし館」がなかなか近づいてこない。姿勢を低くし、少しでも空気抵抗を減らしてひと漕ぎひと漕ぎ進み、やっと到着した私たちを待っていたのは、濃厚なクリームを詰め込んだニンジンロールケーキ、そしてうるま市が生産量日本一を誇るもずくを使った一口コロッケという地元グルメたち。
普通のコロッケとは異なる食感が新しいこのもずくコロッケ、病みつきになる人もたくさんいるようで、「毎年これを食べたいから160km走ってるんですよ!」なんてエイドのスタッフさんに話しかけている参加者も。そんなに美味しいの?とちょっと意地悪な気持ちで食べてみると、その言葉が嘘偽りない真実だったことを悟ることに。ほくほくのジャガイモともずくのぬっとりプチプチした感触が渾然一体となって、新しい。これはちょっと癖になりそう。
さて、ここまでくれば残るエイドはあと一つ。ゼッケンに残された空欄を埋めてくれる最後のエイドステーション「道の駅かでな」へ向けて出発だ。途中には米軍嘉手納基地の横を走る区間も登場。軍用機が飛び交っているのかとも思ったけれど、特に飛んでいる様子もなく延々と続くフェンスの向こうに広大な土地が広がっていた。
エイドに到着したらまずは嘉手納町シールをもらい、7市町村をコンプリート。これであとはゴール地点へ戻るだけだが、その前に最後の補給をば。嘉手納町のマフィン専門店Charmによるいろんな種類のマフィンやパン工房RARAの菓子パンなどがズラリと並び、食べきれないほど。残り22kmを走り切るため必要そうな分だけ頂き、再びコースイン。
緩やかなアップダウンが続く国道58号線をスタートした恩納村まで北上していく。リゾート地らしい町並みを走り抜け、ふとサイクルコンピュータを見てみると、既に160kmをオーバーしているではないか。そう、この160kmコース、実は168kmあるのだ。道理でなかなかフィニッシュしないわけである。
筋トレ最後の一セットだと思ったら、コーチから「ワンモアセッ!」と告げられたかのような絶望感を抱えつつ、ひたすらペダルを回し続けると、ゴール地点が見えてくる。仲間と共にフィニッシュを迎えるため、会場入り口で待機する方々の姿も。
160kmコースだけでなく、100kmや50kmの参加者も先にフィニッシュしており、仲間の帰りを待つ方々の応援でフィニッシュゲートは大盛り上がり。カメラマンも最高の笑顔を撮影すべく鈴なりになっており、まるでプロレースのフィニッシュエリアのよう。かくいう自分もその一団に加わり、168kmを走り抜いたみなさんの勇姿をフィルムに収めるのだった。
これまで100kmコースを走ってきた筆者だが、初の160kmコースはとても楽しめた。ただ一つだけ理想を言うならば、160kmコースと100kmコースの間にもう一つコースがあってもいいのではないかな、とも感じた。それなりに多くの人が関門時間に引っかかってしまったようで、海中道路などをショートカットするコースへと変更されていた様子。走力的にも、「160kmコースはちょっと厳しいけれど、100kmコースは物足りない」という人も居るはず。今回ショートカットに利用したコースを正式なカテゴリーにすれば、関門に引っかかってしまったという負い目も感じなくて済みそうだ。
なにはともあれ、天候にも恵まれ、最高のライドを楽しんだ美ら島オキナワセンチュリーラン160kmコース。走りがいのあるコースに、食べがいのあるエイド、眺めがいのある絶景と、ロングライドを幸せにするために必要なものはすべてここに揃っている。今年も最高のシーズンになりそうな予感をもたらしてくれる福寄せライドになったのではないだろうか。
text&photo:Naoki.Yasuoka
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