1月13日から14日にかけて、今年も沖縄で日本最速のロングライドイベント「美ら島オキナワセンチュリーラン」が開催された。寒風吹きすさぶ本州を飛び出して、一足早いシーズンインを満喫できる大会をレポートしましょう。



多くの人がお祭り気分を楽しんだ前日受付多くの人がお祭り気分を楽しんだ前日受付
日本全国に寒波が襲来した1月中旬、そんな天気をものともせずに開催されたロングライドイベント”美ら島オキナワセンチュリーラン”。日本最速(編集部調べ)の大規模ロングライドイベントであり、一年中自転車に乗り続けたいサイクルフリーク達が全国から集まる人気大会でもある。

今年で9年目を迎える美ら島オキナワセンチュリーランには1860人が集まり、10周年を目前に控えてその勢いは衰えない。温暖な沖縄で最高のシーズンインを満喫すべく日本各地、さらには世界中から集まったサイクリストたちを祝福するかのように、待っていたのは最高の空模様だった。

と言いつつも、実はかなり際どいところだったようで、大会前々日となる金曜日には急激な寒波が到来し、沖縄県内でも雹が降り注いだのだとか。ちなみに筆者もSNSで流れてきた、車のボンネットを激しく叩く雹の動画を見てしまった。確認したばかりの天気予報を再度開き、土日についた晴れマークを見て精神の安定を図る必要に迫られたのだった。

豪華景品が当たるじゃんけん大会も豪華景品が当たるじゃんけん大会も 受付にはANA専用レーンも設けられる受付にはANA専用レーンも設けられる


じゃんけんに勝てば大会オリジナルのTシャツゲット!じゃんけんに勝てば大会オリジナルのTシャツゲット! キャノンデールブースではオーナー向けのメンテナンスサービスも行われたキャノンデールブースではオーナー向けのメンテナンスサービスも行われた


さて、そんなこんなで一路沖縄へ。大会のスポンサーを務めるANAを利用したのだけれど、自転車の預かりには専用レーンが用意され、とてもスムーズに受け渡しが出来る。周りには美ら島オキナワセンチュリーランを目指すサイクリストたちがちらほら居て、なんとなく連帯感を覚えながら機内へチェックイン。

ここ数日の寝不足もあり、搭乗すると同時に眠ってしまい着陸の衝撃で起きる。丁寧に運ばれてくる愛車をありがたく受け取り、空港の外に出るとやはりあったかい!携えていたダウンジャケットはそのまま鞄の中へと放り込まれ、いざ恩納村の会場へ。

今年もメイン会場は例年同様恩納村コミュニティセンター。芝生の広場にはキャノンデールやジャイアントといった自転車ブランドや地元のグルメを提供するケータリングといった出展ブースが立ち並び、ちょっとしたお祭り気分に包まれているのもまた、毎年恒例の光景だ。

いつもはズラリとならぶテルテル坊主も今年は少なめいつもはズラリとならぶテルテル坊主も今年は少なめ
大会を運営する皆さんにご挨拶したところ、どうやら昨日は本当に寒かったようで「本当に暖かくなって良かったですよ!」と口を揃える。前日入りしていた出展ブースのスタッフや沖縄県内の参加者も、「一日ズレてなくて安心しました」と。きっと、この大会で最高のサイクリングシーズンを始めたいという思いが空に届いたんでしょう!

天気予報も降水確率10%ということで、例年たくさん連なるてるてる坊主エリアも今年は疎らで寂しいような、嬉しいような不思議な気分。それでも万が一を考えて、新しい仲間を一人ぶら下げたら、あとは受付を済ませるだけ。ANA利用者の専用レーンも用意され、搭乗券を提示すれば優先的にゼッケンを受け取れるのも嬉しいところ。



夜闇の中、参加者たちが会場へと集まってくる夜闇の中、参加者たちが会場へと集まってくる 出走サインを済ませる出走サインを済ませる

大会を支えてくれるうちなーライダーたち大会を支えてくれるうちなーライダーたち 待機エリアにはすでにたくさんのサイクリストたちが集まった待機エリアにはすでにたくさんのサイクリストたちが集まった


さて、翌朝。3つのコースが用意される美ら島オキナワセンチュリーランの中でも、今回私は最も長い160kmの「美ら島センチュリーコース」を実走取材。これまで2度取材に訪れているが、2度とも100kmの「シーサイドコース」への参加だっただけに、初めての最長コースへの参加となる。

未だ太陽が顔を見せない午前6時頃、スタジアムライトの放つ光に包まれた恩納村コミュニティセンターのグラウンドへ続々と参加者たちが集まってくる。ロングライドイベントながら出走サインが求められ、まるでプロレーサー気分を味わいつつスタート待機列へと整列。

空が白み始める中、センチュリーコーススタート空が白み始める中、センチュリーコーススタート
ゲストライダーや大会中の安全を守ってくれるサポートライダー、通称”うちなぁライダー”たちの紹介など、スタートセレモニーを済ませればスタートゲートへぞろぞろ移動。白み始めた空に夜明けを予感しつつ、ライトを点灯させたサイクリストたちが160kmの旅へと走りだす。

そうそう、このレポートを読んで来年参加したい!と思ってくれた方向けにちょっとしたTIPSを。温暖な沖縄、さらに天気が良くってもやっぱり夜明け前は一番冷え込んでしまう。風が強く吹くこともあるし、寒暖差が大きいので、ウェア選びはこのイベントを楽しむ上で大切なポイントだ。

気温の上下に対応するため、アーム&レッグウォーマーとウィンドブレーカーを用意し、夏用ジャージとビブショーツという組み合わせが基本となる。アンダーは夏用が良いが、メリノウールなど空気の層を作ってくれるようなタイプのものが良いだろう。レイヤリングを減らすのであれば、夏素材の長袖ジャージ、もしくは薄手の長袖アンダーを着用し、アームウォーマーを省略するのもオススメだ。

お菓子御殿の前を登っていくお菓子御殿の前を登っていく 沖縄の海を左手に望みつつ走り抜ける沖縄の海を左手に望みつつ走り抜ける


海岸沿いの緩やかなアップダウンを走っていく海岸沿いの緩やかなアップダウンを走っていく ヤシの木がいかにも南国らしいヤシの木がいかにも南国らしい


さて、そんなわけで第一エイドステーションである21世紀の森公園がある名護市へ向けて、海岸沿いの道を北上していく。島のサイクリングの定石通り、時計回りに進むコースがとられているので、沖縄らしい深いブルーに染まった海を左手に眺めつつ快走できる。

この時期の沖縄は北風が強く、つまりスタートしてしばらくは向かい風ということなのだけれど、スタート直後で集団がばらけていないおかげで、風を正面から受けて走る必要もほとんど無い。もちろん、先頭を引くことになれば話は別だけど、それは脚に自信のあるベテランライダーにお任せすれば大丈夫。

フラットな幹線道路は風が強く吹いていたフラットな幹線道路は風が強く吹いていた 一路名護に向けて隊列を組んでいく一路名護に向けて隊列を組んでいく
ゆるやかなアップダウンごとにリゾートホテルが現れ、陽が昇るごとに海のコントラストが鮮やかになっていく区間がしばらく続いた後、沖縄自動車道の最北端、許田ICを過ぎると一気に視界が開けたフラットコースが姿を見せる。風を遮る物が無くなるので、ここは是非とも集団内で走りたいところ。

遠くに見えていた名護市街もあっという間に近づき、第1エイドはもうすぐそこに。昨年のエイドステーションであった名護市民会館を通り過ぎ、お隣の21世紀の森公園へ。日本ハムファイターズが春のキャンプを行う名護市民球場や美しいビーチを敷地に抱える広大な公園の一角に、エイドステーションが設けられる。

ゼッケンにシールを貼ってもらうゼッケンにシールを貼ってもらう かりんとう饅頭でカロリー補給だかりんとう饅頭でカロリー補給だ


メカニックサービスも行われているメカニックサービスも行われている 21世紀の森公園に到着!21世紀の森公園に到着!


エイドへ着いたらすでに行列が。ほっぺも落ちるサーターアンダギーやかりんとう饅頭を求める列でもある一方、名護市章のシールをゼッケンに貼ってもらうための行列でもある。そう、この美ら島センチュリーコースは160kmの行程の中で、恩納村、名護市、今帰仁村、宜野座村、金武町、うるま市、嘉手納町の7つの市町村を通過するビッグスケールなライドなのだ。それぞれのエイドステーションで各市町村のエンブレムシールを集めるコレクション要素も盛り込まれていて、次のエイドへのモチベーションを高めてくれる。

朝早かったこともあり、ここでもう一度しっかりとカロリーを補給していくのも長丁場の160kmコースでは大切なこと。自分もサーターアンダギーとかりんとう饅頭をしっかりいただき、再びコースへ繰り出していく。

女性ライダーも元気に登っていく女性ライダーも元気に登っていく トリケラトプスが見守ってくれるトリケラトプスが見守ってくれる


日本一早い桜が今年もサイクリストを迎えてくれた日本一早い桜が今年もサイクリストを迎えてくれた
名護市街を抜ければ、本部半島を貫く峠への登りが待っている。過去2度の取材では海岸線沿いをぐるりと回るシーサイドコースを担当してきた自分にとって、このタイミングで本格的な登りが現れるのは新鮮な体験。とはいえ、そんなに斜度が厳しいわけでもないので、それぞれのペースで登ればあっという間にピークへたどり着く。

途中には、この大会のテーマの一つでもある「日本一早い桜」も満開とはいかないもののほころんだ蕾から顔を出した花が、登りに喘ぐ参加者たちを控えめに応援している。本州の桜に比べるとすこし色が濃いようで、海も花もコントラストが強めなのが沖縄らしい。

海に向かって爽快なダウンヒル海に向かって爽快なダウンヒル ちょっと足がすくんでしまいそうなほどの絶景が広がるワルミ大橋ちょっと足がすくんでしまいそうなほどの絶景が広がるワルミ大橋


ワルミ大橋から古宇利大橋を望むワルミ大橋から古宇利大橋を望む
そして、ひと登り済ませたあとの下り区間の爽快さといったら!登った分だけご褒美があるというのはサイクリストの常識であるけれど、海へと飛び込んでいくようなストレートダウンヒルはなかなか味わえるものじゃない。

ダイナミックな下りを楽しんだら、見覚えのあるコースへと合流。少しアップダウンをこなすとこのイベントのハイライトである「三大美橋」が一つ、ワルミ大橋へ到着。強い風が吹く中、下りの途中ながらも多くの参加者が足を止めて記念撮影タイムにいそしんでいる。遠くに見える古宇利島、そこにかかる古宇利大橋が織りなす多島美は最高級の背景で、インスタ映えも間違いなし。

前半のハイライトとなる古宇利大橋前半のハイライトとなる古宇利大橋
青い空と青い海を楽しみながら走っていく青い空と青い海を楽しみながら走っていく 美ら島オキナワセンチュリーラン最高ですね!美ら島オキナワセンチュリーラン最高ですね!


そんな古宇利大橋は2kmほど先で参加者たちを待ち受ける。青い海を貫いて島を繋ぐ姿は何度見ても素晴らしいプロポーションで、今年もじっくり写真を撮ることに。橋を渡ったエイドステーションで折り返してきた参加者と、これから向かう参加者がすれ違い、視線でエールを送り合う。

橋の手前で撮影し、橋の上で撮影し、橋を渡って撮影する。しっかり絵になるカットを押さえたら、古宇利島に設けられた第2エイドステーションにピットイン。このエイドの目玉はサトウキビ。なかなか本州にいると食べつけないけれど、しゃくっとした食感とともに口中に優しく穏やかな甘さが広がると、なんだか懐かしい気分になる。

古宇利島のエイドでは色とりどりのちんすこうにサトウキビが振舞われた古宇利島のエイドでは色とりどりのちんすこうにサトウキビが振舞われた
さとうきび美味しいですね!さとうきび美味しいですね! 降り注ぐ陽射しにえも言われぬ表情のねこがエイドに登場。みんなに構われていました降り注ぐ陽射しにえも言われぬ表情のねこがエイドに登場。みんなに構われていました


このころには陽もだいぶ登りはじめ、気温もすでにウォーマーいらず。さくりと脱いでバックポケットへと収納し、身軽になったら再スタート。この先は160kmコースだけのとっておき、本島の東を走る未体験区間が待っている。3年目の初体験に少し胸を焦がしつつ、後半戦へ走っていこう。

text&photo:Naoki.Yasuoka
photo:Makoto.AYANO、Gakuto.Fujiwara