やまなみ街道サイクリングロードの一部を走る「やまなみ街道クライムライド2017」が8月20日に島根県飯石郡飯南町で開催。ヒルクライム中心の前編に続き、後編は程よいアップダウンのある里山サイクリング。日本の原風景が残る風景を楽しめるだけでなく、道の駅第1号と第2号、整備したての自転車走行空間も登場するレポートをご覧ください。



うぐいす茶屋からは飯南町の自然を体感する里山サイクリング 懐かしい日本の原風景にうっとり

来島ダムにかけられた橋からは赤い橋が見えた。来島ダムにかけられた橋からは赤い橋が見えた。 photo:Yukako.Okada
ショートコースは参加人数が少なかったため、ここからは自由にスタート。最初は取材も兼ねているし、イベント参加中というせいもあり、速く走らねば!という気持ちに駆られ、焦りながらペダルを踏んでいたが、ふと美しい景色を前に「なかなか来れない山陰の奥地を訪れ、美しい景色の中を走っているのに……。」と速さを意識する自分が馬鹿みたいに思えてきたので、マイペースなサイクリングに気持ちを切り替えることにした。

広い空にきらきらと輝く稲穂、手入れの行き届いた日本家屋が覗く景色が美しい。途中には小川があるがその水の透明度が期待を裏切らず、呼吸が上がっても酸素を吸えば吸うほど、浄化されていくような感覚。体に入るものすべてがデトックス効果がありそうな感覚だ。(決して汚れているわけではないが……)
 
途中には小川があり、その水の透明度が高いのが嬉しい途中には小川があり、その水の透明度が高いのが嬉しい photo:Yukako.Okada
きらきらと輝く稲穂と日本家屋が覗く景色が美しいきらきらと輝く稲穂と日本家屋が覗く景色が美しい photo:Yukako.Okadaこれぞ「やまなみ」! 山が並んでいる風景に山陰らしさを感じるこれぞ「やまなみ」! 山が並んでいる風景に山陰らしさを感じる photo:Yukako.Okada


このとき通ったスノーシェルターは午後の日差しを浴び、内部が明るくなっていたためか、これまで通った中でもどこか近未来的な雰囲気。少しのアップダウンの先には丘と丘を結ぶように橋がかけられる。まるで、空中から山陰の山々を望むような感覚でのライドだ。右側には、大きくは見えなかったが来島ダムと来島湖がある。2つ目の橋からは赤い橋がかけられているのが見え、どうやったらあそこに行けるのだろうと疑問が、胸をよぎる。

程よいアップダウンの中を進み、左折。森林がかぶさり、こぼれ日の美しい小道を進む。日本中、どこの田舎を訪れてもこんな風景がある。当たり前だけれど、通ると嬉しいのが山道だ。そこを抜ければ一面の田んぼ道。地元の人が利用する大衆温泉「加田の湯」を通れば、飯南町らしい景色が続く。再び「やまなみ街道サイクリングロード」の国道54号線を右折すれば「道の駅」赤来高原まではほぼ平坦で到着することができる。ここまでスタートからゴールまで約66km、獲得標高は1147mとなった。

川のように見えるが来島湖という湖らしい。丘と丘をつなぐように橋がかけられていた川のように見えるが来島湖という湖らしい。丘と丘をつなぐように橋がかけられていた photo:Yukako.Okada
両面を森林で覆われているが、空が広く近い両面を森林で覆われているが、空が広く近い photo:Yukako.Okada夏の日差しに照らされたムクゲの花と田んぼの景色が美しい夏の日差しに照らされたムクゲの花と田んぼの景色が美しい photo:Yukako.Okada




道の駅発祥の地、第一号「掛合の里」 元内閣総理大臣、竹下登ゆかりの地

掛合町にある道の駅第1号「掛合の里」掛合町にある道の駅第1号「掛合の里」 photo:Yukako.Okada
電気自動車の充電システムやバイクラックも完備電気自動車の充電システムやバイクラックも完備 photo:Yukako.Okada竹下登像には「島根に生まれ、島根に育ち、やがて島根の土になる」とどこか熱い島根愛が書かれ竹下登像には「島根に生まれ、島根に育ち、やがて島根の土になる」とどこか熱い島根愛が書かれ photo:Yukako.Okada


せっかくのイベントなので頓原と掛合の里も紹介しよう。今や道の駅は全国に1117か所。サイクリストにとっても休憩、トイレ、給水、補食など大変重宝する存在だ。その記念すべき第1号となるのが飯南町の隣町にある掛合の里だ。四方を山に囲まれながら、1993年から佇んでいる。掛合町は元内閣総理大臣、竹下登の出身地。すぐ近くには竹下氏の生家で酒蔵「竹下本店」にならんで「竹下登記念館」もあるのでふらっと立ち寄ってもいいだろう。

掛合の里には竹下登像が佇み、電気自動車用の充電システムや、サイクリスト用のバイクラックも完備されている。観光PRや食事、土産、緊急災害時には避難拠点にもなるのが道の駅。全国にこれだけ作られているのにはやはりその機能が人々の役に立っているからだろう。

近くの掛合町には竹下登の生家で酒蔵の竹下本店、並んで竹下登記念館もある近くの掛合町には竹下登の生家で酒蔵の竹下本店、並んで竹下登記念館もある photo:Yukako.Okadaこの大会に合わせて整備された自転車走行空間をヒルクライムこの大会に合わせて整備された自転車走行空間をヒルクライム photo:Yukako.Okada

他の参加者よりもはるかに速く最終エイド「頓原」に到着した宮園さん他の参加者よりもはるかに速く最終エイド「頓原」に到着した宮園さん photo:Yukako.Okada道の駅第2号となる「頓原」が最終エイド道の駅第2号となる「頓原」が最終エイド photo:Yukako.Okada


ともあれ、ミドルとロングの参加者はどちらもの掛合の里から道の駅第2号の頓原までヒルクライムになる。特にロングは麓の木次あたりから富原まで標高差500mを約30km延々の登りになる。 掛合の里から晴雲トンネルまでの登りがきつく、暑さも重なってリタイアする人も続出。沿道で休憩を取ったり、しんどすぎて放心状態になっている人も多かった。

そんなこともあり、頓原のエイドはさぞかししんどいだろうと予想されたが、いの一番に到着したのが広島市から参加した宮園大志さん(32)。スタッフの予想を大幅に超える速さにその場にいた全員が驚愕していた。「トライアスロンの練習を兼ねて参加した。普段は広島の極楽寺で練習している。初めて集団走行を体験でき楽しかったです」と宮園さん。調べると極楽寺は標高差約600mを約5kmで登るという激坂。まだまだ走れそうなぴんぴんした様子でゴールまで軽快に走って行った。

補食には名所の出雲大社ということで神社にエールを送る「ジンジャーエール」。暑さ対策のための塩飴。ブドウやトマトなども提供され、体をしっかり冷やせるよう工夫されていた。補食には名所の出雲大社ということで神社にエールを送る「ジンジャーエール」。暑さ対策のための塩飴。ブドウやトマトなども提供され、体をしっかり冷やせるよう工夫されていた。 photo:Yukako.Okada富原の名物はラムネミルク堂のアイスクリーム、ドーナツなんかもあるのでぜひ召し上がってみて。ミニサイズのダブルは500円。種類豊富なドーナツは150円富原の名物はラムネミルク堂のアイスクリーム、ドーナツなんかもあるのでぜひ召し上がってみて。ミニサイズのダブルは500円。種類豊富なドーナツは150円 photo:Yukako.Okada

普段海ばかりだから山のライドは新鮮だったと喜ぶ村上雅紀さん、林源太さん、村上登志夫さん普段海ばかりだから山のライドは新鮮だったと喜ぶ村上雅紀さん、林源太さん、村上登志夫さん photo:Yukako.Okada
頓原からゴールまではほぼ平坦。ヒルクライムのクールダウンのような感覚で走ることができる。今回、しまなみ海道の島から参加した村上雅紀さん、林源太さん、村上登志夫さん。「僕ら、海は見飽きているので、山の中を走りたいと思って参加した。山と川が揃った景色の中を走るのは新鮮。しまなみからのアクセスも近いので良いサイクリングロードを発見できてうれしい」とイベントに大満足だったようだ。

しまなみ海道に次ぐ、素晴らしいルートとなる「やまなみ街道サイクリングロード」。街道に並走する高速道路は無料なんだとか。海もいいけど、山もがっつり登りたいサイクリストは挑戦してみては。



筆者プロフィール:岡田由佳子
1986年山梨県生まれ愛知県出身。桜丘高等学校自転車競技部元主将。2003年全国高等学校選抜自転車競技選手権とJOCジュニアオリンピックカップの500TT優勝。2004年ジュニアアジア選手権ポイントレース日本代表。順天堂大学自転車競技部に進学後、マネージャーに転向。2008年、プレスポーツに入社。2007年から2010年までツアー・オブ・ジャパン公式広報。2011年に独立、2016年古民家を再生した古道具店兼事務所「風切」代表。大阪在住、三女の母。

report:Yukako.Okada