8月20日、島根県飯石郡飯南町で開催されたやまなみ街道クライムライド。アップダウン豊富なルートを灼熱の中120人が走り抜けたロングライドイベントのレポートが届きました。



やまなみ街道クライムライド2017やまなみ街道クライムライド2017
「やまなみ街道」とは2016年9月に島根県と広島県が協力して選定された「やまなみ街道サイクリングロード」を松江しんじ湖温泉駅をスタートし一般道で広島の尾道駅までをつなぐサイクリングルートだ。尾道駅からは海を存分に楽しめられる「しまなみ海道」がスタートしている。しまなみが「海」ならやまなみは「山」が舞台。瀬戸内海から日本海を結ぶ全長187kmだ。

やまなみ街道クライムライドは島根県と広島を結ぶ県境にある飯南町が主催となる。コアなサイクリストが好む厳しいヒルクライムがコースに設定され、今回のコースはヒルクライムと平坦が盛り込まれた140km、ヒルクライム中心の110km、ヒルクライムと里山サイクリングができる66kmの3パターンだ。

道の駅「赤来高原」ではクロスバイク1日1000円でレンタルできる。給水、空気入れ、補食などサイクルステーションとしてサイクリストも歓迎道の駅「赤来高原」ではクロスバイク1日1000円でレンタルできる。給水、空気入れ、補食などサイクルステーションとしてサイクリストも歓迎
おススメのサイクリングロードの案内標識も設置おススメのサイクリングロードの案内標識も設置 「道の駅」赤来高原のレンタサイクル。クロスバイクを1日1000円で利用できる「道の駅」赤来高原のレンタサイクル。クロスバイクを1日1000円で利用できる


飯南町はサイクリングイベントを主催するだけあって自転車を活用した観光や街づくりに力を入れている。道の駅「赤来高原」では1000円でクロスバイクがレンタルできるだけでなく、給水や空気入れなどサイクルステーションとしての機能もある。また、頓原駅にはコンシェルジュを配置し、おススメのサイクリングルートや見所スポットなどの案内をしてくれるサービスもある。

筆者は2015年の「ご縁結びしめ縄ライド」で初めて訪れ、今回で5回目のイベント取材。飯南町は女性に人気の観光スポット出雲大社神楽殿の大しめ縄を作っていて、全国の神社や社にしめ縄を奉納している自然豊かな町だ。翌2018年には7~8年に一度の出雲大社神楽殿の大しめ縄の取り換えが控えている。田植えから収穫、しめ縄づくりから全て人の手で行われるため大忙し。「やまなみ街道サイクリングロード」は広島と島根をご縁結びのしめ縄を作る町が結ぶ街道というわけだ。

「道の駅」頓原では森のコンシェルジュがおススメのサイクリングルートを教えてくれる「道の駅」頓原では森のコンシェルジュがおススメのサイクリングルートを教えてくれる 道の駅頓原の横にある大しめなわ創作館道の駅頓原の横にある大しめなわ創作館

ミニしめ縄などを作成することができる880円~ミニしめ縄などを作成することができる880円~ ミノウラのバイクラックが大しめ縄の保管に最適だそうミノウラのバイクラックが大しめ縄の保管に最適だそう


今回は飯南町の魅力が存分に楽しめるのではないかと70kmのコースに参加してみた。同町から出雲大社まで約90kmのライドや2018年3月に廃線が決定した三次駅と江津駅をつなぐ三江線の試走会など島根県を走る機会には恵まれていたが同町を走る機会は少なかった。幹線道路から一つ入れば同町の魅力をより理解できるのではないかと考えたからだ。

当日は前日まで雨予報だったが快晴となり、青空が広がるサイクリング日和。「道の駅」赤来高原には120人のサイクリストが集結した。開会式では飯南町の山崎英樹町長が「飯南町はしめ縄を作る町です。最後のエイドになる頓原には飯南町大しめなわ創作館があり、ちょうど5mの大しめ縄を作っている。ぜひ、ご覧になっていただきたい。有意義な体験をしていただければ」と挨拶。

道の駅「赤来高原」の会場には120人のサイクリストが集結した道の駅「赤来高原」の会場には120人のサイクリストが集結した
飯南町の山崎英樹町長飯南町の山崎英樹町長 大人気のゆるきゃら「しまねっこ」も声援に駆け付けた大人気のゆるきゃら「しまねっこ」も声援に駆け付けた


続いて国土交通省松江国道工事事務所の鈴木祥裕所長が挨拶。「国道54号線にはサイクリングの案内が表記された看板や青い走行ラインを整備した。サイクリストが多くなってきたためその走行空間を走っていただきたい。飯南町は自転車を活用した地域活性に力を入れている。我々も、しっかり協力させていただく」と自転車活用に向けた所信を述べられた。

赤来高原の次の道の駅「頓原」は道の駅の第2号、なんとその先の「掛谷の里」は道の駅第1号なのだ。掛谷の里も110kmと140kmのコースのエイドに組み込まれている。なぜ島根に第1号と第2号があるのか、その理由は後ほど触れていこう。

やまなみ街道クライムライド2017がスタートやまなみ街道クライムライド2017がスタート
さすが出雲大社の大しめ縄を作るほどの米どころ。美しい稲穂の景色が広がるさすが出雲大社の大しめ縄を作るほどの米どころ。美しい稲穂の景色が広がる
スタートすると収穫前、黄金色に輝く稲穂が一面に広がる田んぼ道。同町塩谷の渓谷は段々畑と山陰地方独特の赤い瓦屋根「石州瓦」の家が姿を見せる。今では珍しい木造小学校や水道橋なんかも姿を現すのが面白い。ほぼ下りだったためあっという間に最初のエイド道の駅グリーンロード大和まで到着。「下った分だけ貯金して登らなくちゃいけないからなあ」とつぶやく参加者の声に納得だ。暑い日だったため道の駅では夏野菜をスープでゼリーにしたものが提供された。

ここからは江(ごう)の川と2018年3月に廃線になる三江線沿いを走る。とにかく広大な江の川は初めて見たサイクリストからも「中国みたいだ!」と感動の声。明治維新から1930年代まで人々の行き来は江の川を利用した船運だった。船運から三江線の気動車となるが自動車となり、2018年には三江線が廃線される。岡山県の川上鉄道のように廃線を活用したサイクリングロードができたら楽しいだろう。

今では貴重な木造校舎の小学校。ゆっくり訪れてみたいところだ今では貴重な木造校舎の小学校。ゆっくり訪れてみたいところだ 同町塩谷の渓谷は段々畑と山陰地方独特の赤い瓦屋根「石州瓦」の家が姿を見せる同町塩谷の渓谷は段々畑と山陰地方独特の赤い瓦屋根「石州瓦」の家が姿を見せる

水道橋のようだが三江線。見つけ思わず撮影した水道橋のようだが三江線。見つけ思わず撮影した 道の駅グリーンロード大和では夏野菜のゼリーがふるまわれた道の駅グリーンロード大和では夏野菜のゼリーがふるまわれた

広大な江の川沿い。かつては舟運が行われていた広大な江の川沿い。かつては舟運が行われていた 敵坂トンネル手前からは絶景が広がる敵坂トンネル手前からは絶景が広がる


江の川沿いは軽いアップダウンもあるがほぼ平坦。敵坂トンネル手前からは少しの坂。手前には路肩スペースがありそこからは江の川が湾曲する絶景が見られる。それまでも江の川は広大だったがさらに開放感のある景色に思わず立ち止まって写真撮影するサイクリストも多い。

その後、下ってしばらく進むと少しずつヒルクライムの気配。浜原を過ぎて美郷町を右折すれば、3コース共通となる三瓶山(さんべさん)の厳しいヒルクライムに突入する。右折した瞬間からまっすぐに伸びるヒルクライム。延々と獲得標高約400mを9kmで登るという過酷さ。道幅が広いため振り返れば絶景が広がっている。が、前方の坂道が延々続く様子が見えるため、ヒルクライムが不得意な人にとっては心が折れる。

ふらふらと蛇行する人の姿も。後方に見えるランナーを抜かせないほどふらふらと蛇行する人の姿も。後方に見えるランナーを抜かせないほど 三瓶スキー場の看板を右折。ここで終わりかと思いきや少しだけ坂道がある三瓶スキー場の看板を右折。ここで終わりかと思いきや少しだけ坂道がある


バックにはゲレンデが広がり、やっと坂道が終わったバックにはゲレンデが広がり、やっと坂道が終わった
大きな橋の先にうぐいす茶屋がある大きな橋の先にうぐいす茶屋がある 志津見大橋からの眺望志津見大橋からの眺望


特に三瓶温泉からはカーブも多く、終わったと思ったらまた登り。途中ランナーの姿もあったが、まったく抜ける気配もなく、一緒に走る。参加者たちはほぼ登山のような感覚だ。三瓶スキー場の看板を右折し最後の坂道を登れば気持ちの良い下り坂。バックにはゲレンデが広がり、広い空の下開放感のある道。気持ちの良い下り坂を一気に下りきる。

すると再びヒルクライム。スノーシェルターを登れば再び下る。2007年に土木学会デザイン賞の優秀賞を受賞した志津見大橋から神戸川を望む大パノラマを横切りそのまま、第二のエイドステーション志津の里うぐいす茶屋に到着した。ショートコースは右にミドルコースとロングコースは左に逸れる分岐点となっている。筆者はここでショートコースを選択し、道の駅の秘密に迫る後編へと続きます。



筆者プロフィール:岡田由佳子
1986年山梨県生まれ愛知県出身。桜丘高等学校自転車競技部元主将。2003年全国高等学校選抜自転車競技選手権とJOCジュニアオリンピックカップの500TT優勝。2004年ジュニアアジア選手権ポイントレース日本代表。順天堂大学自転車競技部に進学後、マネージャーに転向。2008年、プレスポーツに入社。2007年から2010年までツアー・オブ・ジャパン公式広報。2011年に独立、2016年古民家を再生した古道具店兼事務所「風切」代表。大阪在住、三女の母。

report:Yukako.Okada


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