2016/08/01(月) - 11:25
タイムとライトウェイトの輸入代理店を務めるポディウム社が、東京・千駄ヶ谷にて一般ユーザー向けブランドプレゼンテーションを開催。自転車界におけるカーボンの権威ともいうべき両ブランドから最新プロダクトがお披露目された本イベントの模様を2ページに渡ってレポートしていく。
「それぞれのブランドについてより深く知ってもらいたい」という考えから、2017モデルより、取り扱いブランドそれぞれにフォーカスした小規模展示会「PODIUM CAMP」を開催しているポディウム。イタリアンブランドの「カレラ」と「サンマルコ」をフィーチャーした第一弾は、往年の名選手クラウディオ・キアプッチ氏が来日したこともあって大きな話題となった。
7月下旬に開催された第二弾でフィーチャしたのは、自転車界におけるカーボンの権威ともいうべきタイムとライトウェイトの両ブランド。多くのサイクリストが憧れをもつプレミアムブランドをより深く知ることのできる貴重な機会とあって、限定50名の枠に多くの参加申し込みが殺到。抽選で選ばれた幸運な50名が、全国から都内のイベントスペースに集まった。
ポディウムの菅田尚希代表はイベント冒頭の挨拶で「共に自転車以外の業界から最先端のテクノロジーを取り入れ、自社製品の高性能化を図っています」と両ブランドの共通点と魅力を紹介。続いて、ブランドのフィロソフィーや新製品についての本国スタッフによるプレゼンテーションと、メディア向けのインタビューが行われた。その模様をブランドごとに分けて2ページでダイジェストでお伝えしていこう。まずはライトウェイト編から。
その製品は「究極の回転体」とも称される、ドイツのカーボンホイールメーカーが「ライトウェイト」だ。本国セールスマネージャーのデイビッド・バーグマン氏がブランドの成り立ちと、製品ラインアップを中心に説明してくれた。
ライトウェイトの始まりは1980年代のこと。カーボンフレームが希少だったころに、創業者のハインツ・オーバーマイヤー氏が仲間と共に自宅ガレージでフルカーボンホイールづくりを始めたことに端を発する。1990年代中ごろにプロレース界に導入されると、トップレーサーのスペシャル機材として定着し、ヨハン・ムセーウやヤン・ウルリッヒを始めとした多くのトップライダーが自費購入して使用。今年のツール・ド・フランスでも、トレックセガフレードやティンコフのバイクに、スポンサーではないライトウェイトのホイールが取り付けられていた。
経営面では、ドイツのテクノロジーカンパニー「WISSLER GROUP」のスポーツ部門であるカーボンスポーツ社がライトウェイトを買収し、2003年から現体制に。他にもWISSLER GROUPには農業機械や建築、航空機、医療機器、通信衛星などの部門があり、各部門の間で盛んにテクノロジーの交流が行われているのだとか。例えば、モンブランのボールペンのカーボン製筐体に取り入れている、表面を滑らかにする技術は、ライトウェイトホイールのブレーキ面の平滑化に活かされているという。
2017モデルの中で最注目なのは、ブランド初のロードディスクブレーキ用モデル「MEILENSTEIN C DISC」だ。その特徴は、リムのある点と180°逆の点を一本の「へ」の字型スポークで繋ぎ、スポークとスポークの交点を結線することで組み立てる独自開発の構造にある。これによって、ハブとスポークの双方に対しての負荷を抑えることができ、ローターからの熱で強度が低下する分を補うことに成功した。
また、この独自構造はホイール剛性の向上にも貢献しており、ハブとリムのズレが少なくなることから、ブレーキのフィーリングがよりダイレクトになるという。バブボディは5角形で、内部にはDTスイスのバブシステムを接着。スルーアクスルに対応しており、各規格に対応するアダプターを用意している。
ライトウェイト社インタビュー
「トレンドに即した短いスパンでの開発が重要。製造工程や構造はほとんどが企業秘密」
ー ライトウェイトのホイールはどのように製造されるのでしょうか?
これは、何万回と聞かれてきた質問ですね(笑)。「秘密」というのが答えです。もし、製造工程をばらそうものなら私は暗殺されることでしょう。すべての製造工程を知っている人は、私を含め、極わずか。実際に現場で製造に携わっている従業員も全ての工程を把握しているわけではありません。
多くの方が誤解されているかもしれませんが、ライトウェイトホイールのスポークには張力がかかっています。これは、一般的なホイールと同じですね。というのもUDカーボンファイバーを素材としている以上、圧縮力をかけたり、曲げたりはできないからです。
では、どうやってテンションをかけているのか?それは秘密であり、その方法は多くのホイールメーカーが知りたがっていることなのです。1本あたり2トンの引張力に耐えるスポークに的確にテンションをかけることで、ライトウェイトの卓越した剛性は生み出されます。
ー ライトウェイトが製品造りで重要視していることとは?
ライトウェイトでは、例えば5年後を見据えてというような長いスパンでの製品開発を行っていません。なぜなら、長いスパンでの製品開発で行うと、トレンドの移り変わりに機敏に対応することができないからです。我が社では短期的な目標を定めて改良しての繰り返しが重要だと考えています。
ー 初代から現行モデルに至るまで外見上の変化は少ないですが、中身はどうに進化しているのでしょう?
実際に初代~第3世代は大きく変わっておらず、ウエットカーボンをプリプレグに変更するなど、素材によって高強度化と軽量化を行ってきました。しかし、第3世代から現行の第4世代にかけては大きく変わりました。具体的なことは言えませんが、製造工程は減っています。
外見でいえば、スプロケットが11速になったことに対応して、リアのリム部をオフセット化しました。また、リム部の内部に充填されているフォームは、かつて成型時に圧力を掛けるだけのものでしたが、現在ではその役割も変わってきています。
ー プロチームに公式サポートを行っていない現在、どういった人物が実走テストをしているのでしょう?
我々のホイールを自費購入にて使用しているイタリアやオーストラリアなどのナショナルチームからフィードバックをもらっています。具体的なライダーの名前を挙げるとヴィンチェンツォ・ニーバリやエリア・ヴィヴィアーニも含まれますね。また、地元のローカルチームや、我が社の元従業員に協力しもらうこともあります。
ー 1ペア作るのに掛かる時間は?
ハイエンドモデルのMEILENSTEIN OBERMAYERでだいたい16時間ほどです。81mmハイトのエアロホイールFRENWEGは、MEILENSTEINにエアロカバーをかぶせますから、更に4~8時間ほど増えます。
ー マヴィックやコリマなども似た構造のホイールをラインアップしてますね。
確かに両ブランドとも良い製品を製造しています。しかし、同じ価格帯の商品であれば、知識のあるカスタマーの多くは我々ライトウェイトを選んでくれるという自信があります。
我々の強みは、スポーツ業界だけでは決して得ることのできないテクノロジー的なノウハウにあります。人工衛星や医療機器といった極めて高い寸法公差が求められる工業製品を手がけたことが、ライトウェイトの製品開発に活きています。また、人工衛星に使用する高機能素材を転用できることも強みで、一般的なカーボンが50~100ユーロ/kgなのに対し、我々が使用するカーボンは2,000ユーロ/kgにもなります。
そして、我が社のホイールの強みは剛性にあると考えています。他社から我々より軽いホイールがリリースされていますが、重量剛性比で考えれば我々は他社の3~4世代先を行っているといっても差し支えないでしょう。また、ブレーキ熱に対する強度が高く、次点のカンパニョーロも私達には到底及びません。
ー ディスクブレーキ用ホイールの展開について教えて下さい。
市場のニーズにいち早く応えるために、今回リリースしたMEILENSTEIN C DISCはリムブレーキ仕様と同じリムを使用しました。ディスクブレーキ仕様になろうとも、リム剛性が求められる点は変わりませんから、そのまま流用することで剛性を出しています。そして、ディスクブレーキの性能を引き出し、ブレーキタッチによりダイレクト感が出るように、新構造のハブを採用しています。
MEILENSTEIN C DISCは完全にロードレース用ですが、ユーロバイクではオフロードユースにも対応した、非コンペティション志向の新製品を発表する予定です。コンフォートロードバイクとグラベルグラインダーの中間的なジャンルの製品になる予定で、こちらにも新開発のテクノロジーを取り入れています。期待していて下さい!
第2回ポディウムCAMPレポート後編は、ライトウェイトと同じくカーボンを得意とするタイムにフィーチャーしていきます。
text&photo:Yuya.Yamamoto
「それぞれのブランドについてより深く知ってもらいたい」という考えから、2017モデルより、取り扱いブランドそれぞれにフォーカスした小規模展示会「PODIUM CAMP」を開催しているポディウム。イタリアンブランドの「カレラ」と「サンマルコ」をフィーチャーした第一弾は、往年の名選手クラウディオ・キアプッチ氏が来日したこともあって大きな話題となった。
7月下旬に開催された第二弾でフィーチャしたのは、自転車界におけるカーボンの権威ともいうべきタイムとライトウェイトの両ブランド。多くのサイクリストが憧れをもつプレミアムブランドをより深く知ることのできる貴重な機会とあって、限定50名の枠に多くの参加申し込みが殺到。抽選で選ばれた幸運な50名が、全国から都内のイベントスペースに集まった。
ポディウムの菅田尚希代表はイベント冒頭の挨拶で「共に自転車以外の業界から最先端のテクノロジーを取り入れ、自社製品の高性能化を図っています」と両ブランドの共通点と魅力を紹介。続いて、ブランドのフィロソフィーや新製品についての本国スタッフによるプレゼンテーションと、メディア向けのインタビューが行われた。その模様をブランドごとに分けて2ページでダイジェストでお伝えしていこう。まずはライトウェイト編から。
その製品は「究極の回転体」とも称される、ドイツのカーボンホイールメーカーが「ライトウェイト」だ。本国セールスマネージャーのデイビッド・バーグマン氏がブランドの成り立ちと、製品ラインアップを中心に説明してくれた。
ライトウェイトの始まりは1980年代のこと。カーボンフレームが希少だったころに、創業者のハインツ・オーバーマイヤー氏が仲間と共に自宅ガレージでフルカーボンホイールづくりを始めたことに端を発する。1990年代中ごろにプロレース界に導入されると、トップレーサーのスペシャル機材として定着し、ヨハン・ムセーウやヤン・ウルリッヒを始めとした多くのトップライダーが自費購入して使用。今年のツール・ド・フランスでも、トレックセガフレードやティンコフのバイクに、スポンサーではないライトウェイトのホイールが取り付けられていた。
経営面では、ドイツのテクノロジーカンパニー「WISSLER GROUP」のスポーツ部門であるカーボンスポーツ社がライトウェイトを買収し、2003年から現体制に。他にもWISSLER GROUPには農業機械や建築、航空機、医療機器、通信衛星などの部門があり、各部門の間で盛んにテクノロジーの交流が行われているのだとか。例えば、モンブランのボールペンのカーボン製筐体に取り入れている、表面を滑らかにする技術は、ライトウェイトホイールのブレーキ面の平滑化に活かされているという。
2017モデルの中で最注目なのは、ブランド初のロードディスクブレーキ用モデル「MEILENSTEIN C DISC」だ。その特徴は、リムのある点と180°逆の点を一本の「へ」の字型スポークで繋ぎ、スポークとスポークの交点を結線することで組み立てる独自開発の構造にある。これによって、ハブとスポークの双方に対しての負荷を抑えることができ、ローターからの熱で強度が低下する分を補うことに成功した。
また、この独自構造はホイール剛性の向上にも貢献しており、ハブとリムのズレが少なくなることから、ブレーキのフィーリングがよりダイレクトになるという。バブボディは5角形で、内部にはDTスイスのバブシステムを接着。スルーアクスルに対応しており、各規格に対応するアダプターを用意している。
ライトウェイト社インタビュー
「トレンドに即した短いスパンでの開発が重要。製造工程や構造はほとんどが企業秘密」
ー ライトウェイトのホイールはどのように製造されるのでしょうか?
これは、何万回と聞かれてきた質問ですね(笑)。「秘密」というのが答えです。もし、製造工程をばらそうものなら私は暗殺されることでしょう。すべての製造工程を知っている人は、私を含め、極わずか。実際に現場で製造に携わっている従業員も全ての工程を把握しているわけではありません。
多くの方が誤解されているかもしれませんが、ライトウェイトホイールのスポークには張力がかかっています。これは、一般的なホイールと同じですね。というのもUDカーボンファイバーを素材としている以上、圧縮力をかけたり、曲げたりはできないからです。
では、どうやってテンションをかけているのか?それは秘密であり、その方法は多くのホイールメーカーが知りたがっていることなのです。1本あたり2トンの引張力に耐えるスポークに的確にテンションをかけることで、ライトウェイトの卓越した剛性は生み出されます。
ー ライトウェイトが製品造りで重要視していることとは?
ライトウェイトでは、例えば5年後を見据えてというような長いスパンでの製品開発を行っていません。なぜなら、長いスパンでの製品開発で行うと、トレンドの移り変わりに機敏に対応することができないからです。我が社では短期的な目標を定めて改良しての繰り返しが重要だと考えています。
ー 初代から現行モデルに至るまで外見上の変化は少ないですが、中身はどうに進化しているのでしょう?
実際に初代~第3世代は大きく変わっておらず、ウエットカーボンをプリプレグに変更するなど、素材によって高強度化と軽量化を行ってきました。しかし、第3世代から現行の第4世代にかけては大きく変わりました。具体的なことは言えませんが、製造工程は減っています。
外見でいえば、スプロケットが11速になったことに対応して、リアのリム部をオフセット化しました。また、リム部の内部に充填されているフォームは、かつて成型時に圧力を掛けるだけのものでしたが、現在ではその役割も変わってきています。
ー プロチームに公式サポートを行っていない現在、どういった人物が実走テストをしているのでしょう?
我々のホイールを自費購入にて使用しているイタリアやオーストラリアなどのナショナルチームからフィードバックをもらっています。具体的なライダーの名前を挙げるとヴィンチェンツォ・ニーバリやエリア・ヴィヴィアーニも含まれますね。また、地元のローカルチームや、我が社の元従業員に協力しもらうこともあります。
ー 1ペア作るのに掛かる時間は?
ハイエンドモデルのMEILENSTEIN OBERMAYERでだいたい16時間ほどです。81mmハイトのエアロホイールFRENWEGは、MEILENSTEINにエアロカバーをかぶせますから、更に4~8時間ほど増えます。
ー マヴィックやコリマなども似た構造のホイールをラインアップしてますね。
確かに両ブランドとも良い製品を製造しています。しかし、同じ価格帯の商品であれば、知識のあるカスタマーの多くは我々ライトウェイトを選んでくれるという自信があります。
我々の強みは、スポーツ業界だけでは決して得ることのできないテクノロジー的なノウハウにあります。人工衛星や医療機器といった極めて高い寸法公差が求められる工業製品を手がけたことが、ライトウェイトの製品開発に活きています。また、人工衛星に使用する高機能素材を転用できることも強みで、一般的なカーボンが50~100ユーロ/kgなのに対し、我々が使用するカーボンは2,000ユーロ/kgにもなります。
そして、我が社のホイールの強みは剛性にあると考えています。他社から我々より軽いホイールがリリースされていますが、重量剛性比で考えれば我々は他社の3~4世代先を行っているといっても差し支えないでしょう。また、ブレーキ熱に対する強度が高く、次点のカンパニョーロも私達には到底及びません。
ー ディスクブレーキ用ホイールの展開について教えて下さい。
市場のニーズにいち早く応えるために、今回リリースしたMEILENSTEIN C DISCはリムブレーキ仕様と同じリムを使用しました。ディスクブレーキ仕様になろうとも、リム剛性が求められる点は変わりませんから、そのまま流用することで剛性を出しています。そして、ディスクブレーキの性能を引き出し、ブレーキタッチによりダイレクト感が出るように、新構造のハブを採用しています。
MEILENSTEIN C DISCは完全にロードレース用ですが、ユーロバイクではオフロードユースにも対応した、非コンペティション志向の新製品を発表する予定です。コンフォートロードバイクとグラベルグラインダーの中間的なジャンルの製品になる予定で、こちらにも新開発のテクノロジーを取り入れています。期待していて下さい!
第2回ポディウムCAMPレポート後編は、ライトウェイトと同じくカーボンを得意とするタイムにフィーチャーしていきます。
text&photo:Yuya.Yamamoto
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