ツール・ド・フランス7連覇チャンピオンのランス・アームストロングが展開する癌撲滅キャンペーン"LIVESTRONG"とナイキがコラボして展開する"STAGES(ステージス)"は、アームストロングに触発された世界の著名アーチスト20名の作品を展示するアートイベント。パリ展の様子を紹介しよう。

STAGESパリ展STAGESパリ展 photo:MakotoAYANO

ツール・ド・フランスが開催されたフランスはパリ。シャンゼリゼでの最終ステージの翌日に、ギャラリー・エマヌエル・ペロタン(Emmanuel Perrotin)において開催されたSTAGESパリ展を観に行ってきた。もちろんツール・ド・フランス取材の翌日に。

シャンゼリゼステージで表彰台に上った後、STAGES パリ展にやってきたランス・アームストロングシャンゼリゼステージで表彰台に上った後、STAGES パリ展にやってきたランス・アームストロング photo:www.stages09.com前日のレース直後にはアームストロング本人もギャラリーを訪問し、参加アーチストたちと交流を深めたそうだ。(会えなくて残念! ギャラリーから借用した写真でご勘弁を)

この展示に出品しているアーティストは、ブライアン・ドネリー、ケニー・シャーフ、シェパード・フェアリー、マーク・ニューソン、そして日本の奈良美智(なら・よしとも)ら20人の世界的に著名なアーチストたち。

いずれもアームストロング本人が好むアーチストたちでもあり、ツール・ド・フランスではアームストロングが彼らのアートワークが施されたバイクを駆って走ったのはご存知のとおり。アームストロングは各ステージで6台のバイクに乗り換え、ファンたちの目を楽しませてくれた。

STAGESパリ展STAGESパリ展 photo:MakotoAYANOもっとも、この展示会に展示されるのはバイクだけでなく、ペインティングやコラージュ、立体作品など多岐におよぶ。
そこにはリブストロングやツール・ド・フランス、アームストロングの発するメッセージや癌などをモチーフに、アーチストたちが自由な発想で製作したアートワークが展開されていた。

ギャラリー・エマヌエル・ペロタンはパリ中心市街北部の小さなギャラリーだが、そこに展開される前衛的な作品群は、アームストロングファン、ツール・ド・フランスファン、リブストロング運動に共感する人なら誰でもが感銘をもって観ることになるだろう。
作品はいずれも展示終了後にオークションにかけられる予定だとか。

本物の蝶を散りばめたバイク

ダミアン・ハースト氏製作の蝶のバイク アームストロングがツール最終ステージで乗った実車ダミアン・ハースト氏製作の蝶のバイク アームストロングがツール最終ステージで乗った実車 photo:MakotoAYANO

アームストロングがツール・ド・フランス最終ステージ、シャンゼリゼにて乗ったのは動物をモチーフにしたデザインを得意とするダミアン・ハースト氏によるデザインバイク。パリ展の目玉はそのバイクの現物で、ステージ終了後にアームストロングが直接持参して、ゼッケンつきのまま展示されていた。チェーンにはまだ油汚れがついたまま。シャンゼリゼの砂塵がうっすらと認められる生々しさだった。

ツール・ド・フランスのゼッケンがついたままだツール・ド・フランスのゼッケンがついたままだ photo:MakotoAYANOリムにも蝶の羽根が散りばめられるリムにも蝶の羽根が散りばめられる photo:MakotoAYANO



それにしても有機的な魅力に満ちた光を放つこのバイク。ツール期間中に乗ったデザインバイクとしては6台目となるこのバイクは、ピンクを基調とし、蝶の羽根を無数にちりばめたデザイン。しかもこの蝶の羽根は絵でなく本物の蝶が使用されている!

宝石のような輝き..。本物の蝶の羽根が散りばめられる宝石のような輝き..。本物の蝶の羽根が散りばめられる photo:MakotoAYANO

アーチストのダミアン・ハースト氏は、このバイクを製作した意図について次のように語っている。
「私が非常に感銘を受けたランスのバイクをデザイン出来ることは光栄だ。バイクにデザインを施すのは容易なことではなかった。それも絵やグラフィックではなく本物の蝶を使用したかったから。光が当たったときの実際の蝶の美しさは絵では表現できない。それに重量を課すことが許されないのも大変だった。ランスが挑戦していることは究極のことであり、自分もバイクを単なる乗物ではなく、クレージーだけど究極の乗物にしたかったんだ。」

このバイクは、ベース車両となるトレック社にとっても画期的なことだった。なぜなら2010年モデルとしてリリースされるニューMadone 6 シリーズとしての一台目のカスタムバイクとなったからだ。

トレックのクリエイティブディレクターのエリック・リーン氏は次のように語っている。

「現代アートの世界で、ダミアン・ハーストほど名を馳せた人はいない。ダミアンをはじめ、たくさんの偉大なアーティストと一緒に仕事が出来たことは、トレックのクリエイティブチームにとって、信じられないほどの経験になっているよ。彼らの芸術センスにはいつもぞくぞくさせられるんだ。これらのステージバイクは、スポーツとアートとのこれまでになかった全く新しいコラボレーションであり、すべてはランスの世界規模でのガン撲滅キャンペーンのためなんだ。このガン撲滅キャンペーンに協力出来ていることは、トレックにとってもこれ以上の喜びはないんだ。」

アームストロングがツールのステージで使用したバイクについてはスペシャルサイトThe Bikes of STAGES (トレック本国のウェブサイト)で見ることができる。

ランスのテキーラバイク

ランスのテキーラバイクランスのテキーラバイク photo:MakotoAYANO

白塗りに手書き文字で"LANCE'S TEQUILA BIKE FOR GIRLS" (女性のための、ランスのテキーラバイク)と書かれたバイクはTom Shachs氏作。なんでもテキーラを造りながら走るバイクだそうで、フロントの木箱にはテキーラを作るのに必要なライム、包丁、塩、灰、工具にパンク修理キットなどが満載され、ボトルケージ部分のガラスボトルに蒸留されたテキーラが溜まる仕組みになっている(!?)。

テキーラを造るために必要なものがぎっしり(笑)テキーラを造るために必要なものがぎっしり(笑) photo:MakotoAYANOランスのテキーラバイク ランスのテキーラバイク  photo:MakotoAYANO



まあそのへん大真面目に解説するのもどうかという感じの作品なのだが、とにかく解説してくれる館員の方も話しながら笑っちゃうぐらいの愉快作品。

不思議なタッチのガリビエ峠のプリント

写真?それとも絵? 不思議なタッチのガリビエ峠のプリント写真?それとも絵? 不思議なタッチのガリビエ峠のプリント photo:MakotoAYANO

不思議なフォトペインティングが展示してあった。Andreas Gursky氏の作品"Tour de France I,2007"は、ガリビエ峠を写した(ような)、実写ともペインティングともつかない不思議なテイスト。脇の説明書きには C-print mounted by plexiglas とあった。技法については良くわからないが、峠を上るプロトンとチームカーなどのクルマの車列、道路わきに止められたキャンピングカーなどが緻密なタッチで再現されていた。


作品はオークションで売却される

ランスが使用したバイクは、10月2日にニューヨークで行なわれるオークションで出品され、落札された金額はすべてランス・アームストロング基金に寄付される。
ちなみにハーストのバイクにはオークションにて1億円の値が付くと予想されている。

チョッパーバイクチョッパーバイク photo:MakotoAYANO



ランスのテキサスのショップ「メロージョニー」がモチーフ?ランスのテキサスのショップ「メロージョニー」がモチーフ? photo:MakotoAYANO




STAGES
参加アーティスト
Ed Ruscha,Raymond PettibonKAWS, Rosson Crow, JR, Taryn Simon, Christopher Wool, Jules De Balincourt, Jose Parla, Aaron Young, Marc Newson, Kenny Scharf, OS Gemeos, 奈良美智, Eric White, Dzine他


写真と文 綾野 真
資料協力 トレック・ジャパン

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