尾道から出発し、広島側の3つの島(向島、因島、生口島)を通過した取材班。多々羅大橋に登って、愛媛県側へと渡っていく。広島側と同じく、愛媛側も3つの島を通過していくしまなみ海道。同じようでどこか違う、しまなみ海道の島々の奥深い魅力をお届けしていこう。



大三島(37km~58km/92km)

多々羅大橋を渡るとそこは愛媛県多々羅大橋を渡るとそこは愛媛県
大三島の多々羅大橋へのアプローチの途中には海自のSH-3シーキングが展示されている大三島の多々羅大橋へのアプローチの途中には海自のSH-3シーキングが展示されている 大三島ソースオムそば一丁あがり!大三島ソースオムそば一丁あがり!


さて、多々羅大橋を渡ると愛媛県に入ることとなるが、その前に多々羅大橋には龍が住んでいるというのはご存じだろうか。多々羅大橋の生口島側の主塔の下で手を叩くなどして音を出すと、「鳴き龍現象」という残留音響現象が確認できる。「鳴き龍現象」とは、もともと日光東照宮の薬師堂で拍子木を叩くと鈴の音のような音がすることで、天井に描かれた龍が鳴いているように聞こえることから名づけられた現象。鳴き龍現象が体験できる場所には看板と拍子木が設置されているので、一度止まってみてはいかがだろうか。

多々羅大橋のたもとにある多々羅しまなみ公園では、地元でとれるマハタや真鯛、平目などを使った料理を提供するレストランや、鳴らすと幸せになる(といわれる)しあわせの鐘などがある。休日限定ではあるが、最近人気上昇中のB級グルメ、「大三島ソースオムそば」が食べられる屋台が出店している。通常のオムそばがケチャップとマヨネーズで食べるのに対し、今治の「黄金ソース」をかけて食べる「大三島ソースオムそば」は、県内のイベントでも真っ先に完売するほどの人気。

ブルーラインではないものの、大山祇神社へ向かうルートにはサイクリングロードが整備されているブルーラインではないものの、大山祇神社へ向かうルートにはサイクリングロードが整備されている 歴史ある大山祇神社の鳥居歴史ある大山祇神社の鳥居

雨乞いの楠はサイクリストにはご利益薄いかもしれません雨乞いの楠はサイクリストにはご利益薄いかもしれません ヘルメット守はひとつ200円とリーズナブルな値段なので、自転車仲間へのお土産にもぴったりヘルメット守はひとつ200円とリーズナブルな値段なので、自転車仲間へのお土産にもぴったり

おみくじを境内の樹に結び付ける(ちなみに20人中5人凶でした)おみくじを境内の樹に結び付ける(ちなみに20人中5人凶でした) 神社の向側にあるおまんじゅう屋さんも非常においしい神社の向側にあるおまんじゅう屋さんも非常においしい


また、愛媛県最大の島である大三島には、四国随一の大社ともいわれ、多数の国宝が収蔵されていることでも有名な「大山祇神社」がある。海の神であり戦いの神としてもあがめられていた大山積神を祭っており、多くの武士が武運長久を願って多数の鎧・兜を奉納しているほか、現代でも国防に関わる人が参拝に訪れている。

そんな歴史ある大山祇神社にはサイクリストの心をくすぐるお守りがある。それは「ヘルメット守」。小さなお守りの裏側に粘着テープがあり、ヘルメットに貼り付けられるというなんともサイクリストの琴線を刺激するグッズだ。大山祇神社を訪ねるには、尾道~今治間の最短ルートを外れることとなるが、それでも訪れる価値はあるスポットだ。



伯方島(58km~62km/92km)

大迫力の船舶製造現場大迫力の船舶製造現場
上の写真では分かりづらいですが、作業用のクレーンがこれくらいの大きさです上の写真では分かりづらいですが、作業用のクレーンがこれくらいの大きさです 大島・伯方橋を渡って、大島へと向かう大島・伯方橋を渡って、大島へと向かう


さて、大三島の次は伯方の塩で有名な伯方島に到着。道の駅「伯方S・Cパーク」では、名産の塩を生かした塩ソフトを食することもできる。塩が甘さをさらに引き立てる、濃厚な味わいのソフトクリームで夏場には飛ぶように売れるそうだ。レンタサイクルステーションも併設されており、駐車場も広大なためサイクリングの拠点としても利用できる。

大三島橋の伯方島側の出口を下りて、ブルーライン沿いに進まずに海沿いの道を進むとしまなみ造船の工場を間近に見ることができる。運が良ければ、船舶の建造現場を目の当たりにできるだろう。取材当日は船首部分の溶接が行われており、圧倒的な迫力を体感できた。工場マニアにはおすすめのスポットだ。



大島(62km~85km/92km)

来島海峡大橋はアプローチのループ橋も巨大来島海峡大橋はアプローチのループ橋も巨大
ルートによってはかなりの坂もあるのが大島だルートによってはかなりの坂もあるのが大島だ 小さな港が点在する大島小さな港が点在する大島


伯方橋と大島大橋を連続して渡ると、しまなみ海道最後の島である大島に到着。ブルーラインは島の中央部を縦断するルートとなっているが、高速道路のインターチェンジに近いため交通量が多く、地元サイクリストは島の西側の海岸沿いを行くことが多いとのこと。ただ、西側の海岸沿いのルートには田浦峠という、約700メートルと短いながらも斜度が9%程の坂があるため、脚力によってコースを選ぶとよいだろう。

大島のよしうみバラ公園は季節になるとバラの花が咲き乱れ非常に美しいとのこと。残念ながら取材時は季節はずれであり、バラは見れなかったものの秋口にはバラ祭りが開かれ大量の観光客が訪れる。併設される売店ではバラソフトクリームなども販売され、補給にもぴったりのスポットだ。

ブルーライン沿いを進んでいくと、亀老山展望台という看板が現れる。その看板に従って進んでいくと、坂好きにはたまらない本格的な峠が現れる。ただ、クライマーでない人も時間があれば是非登ってみてほしい。坂を登りきると、一気に景色が開けてしまなみ海道のシンボルである来島海峡大橋と今治市街が一望できる大パノラマが広がっているからだ。夜になればライトアップされた橋と、今治の夜景が美しく、昼とは全く違う印象を与えてくれる。ただし、街灯が一つも無く真っ暗なのと、デートスポットにもなっているため、自転車で夜に訪れてムーディーな雰囲気を壊すのは避けたいところ。



今治(85km~92km/92km)

走り終わって、レンタルバイクを返却走り終わって、レンタルバイクを返却
しまなみ海道の観光・サイクリング情報が集まったコーナーが店内に設置されているしまなみ海道の観光・サイクリング情報が集まったコーナーが店内に設置されている 壁の地図にはしまなみ情報がびっしりと書き込まれている壁の地図にはしまなみ情報がびっしりと書き込まれている


大島から来島海峡大橋に登り、4kmの橋を走り終えると四国へ到着。ブルーラインは今治駅前まで続いているので、今治市街地でも迷う心配はない。ただ、かなり交通量が増えるため島内よりも安全に気をつけて走行したい。今治駅の構内で営業するジャイアントストア今治店にレンタルロードバイクを返却すれば、しまなみ海道を満喫したサイクリングも終了。ジャイアントストア今治では、シャワールームも設置されサイクリング後にさっぱりとできる。

ジャイアントストア今治にはしまなみ海道オリジナルジャージの販売も行っているるジャイアントストア今治にはしまなみ海道オリジナルジャージの販売も行っているる ジャイアントの最新モデルが並ぶ店内ジャイアントの最新モデルが並ぶ店内

ジャイアントストアスタッフのみなさんジャイアントストアスタッフのみなさん 「今治はええとこやけん、また来てな」「今治はええとこやけん、また来てな」


その後は、今治駅から岡山行きの特急で本州に戻るもよし、バスに乗って尾道に戻るもよし、松山へ向かいさらに観光を楽しむもよし、今治で一泊して名物の焼き鳥や焼き豚玉子飯を味わうもよし。尾道にも拠点ができることで、乗り捨てが可能となったジャイアントストアのレンタルロードバイクは、自転車の運搬手段を考える必要がなく、身軽に動けることが魅力的だ。




記念撮影はもちろん「しまのわ」ポーズ!記念撮影はもちろん「しまのわ」ポーズ!
ONOMICHI U2開業で、より身近になったしまなみ海道サイクリング。特にジャイアントストア尾道がオープンし、ロードバイクのみであるがレンタサイクルの乗り捨て実現によって旅の自由度が増し、一層サイクリングを楽しめるようになった。コースも基本的には平坦であり、橋梁へのアプローチも斜度が3%以下になるように設計されるため、どんな人にも間口が開かれているしまなみ海道。コアなサイクリストからビギナーまで余すところなく、その魅力を堪能できる。これからのシーズン、瀬戸内の島々はサイクリストを今か今かと待ち構えている。家族や友人と熱い歓迎を受けに訪ねてはいかがだろう。

text:Naoki.YASUOKA
photo:So.ISOBE Naoki.YASUOKA