社会福祉法人青葉仁会が母体の実業団チーム、「まんま-AO・HANI Cycling Team」が奈良市に誕生。そのテーマは「融合」だ。

まんま-AO・HANI Cycling Teamが始動。特別の許可を得て東大寺境内で撮影まんま-AO・HANI Cycling Teamが始動。特別の許可を得て東大寺境内で撮影 photo:Hideaki TAKAGI
青葉仁会(あおはにかい)は榊原典俊氏が理事長を務める障害者支援施設を運営する1980年創設の社会福祉法人だ。知的障害者の入所授産施設、入所更生施設、通所授産施設、就労移行支援事業等の施設を運営する。社会福祉法人が母体となる実業団チームは全国初のこと。

社会福祉法人青葉仁会が取り組んできたこと

奈良市水間町のハーブクラブとあおはにモンベルルーム。外の蛇口はサイクリストの水補給用奈良市水間町のハーブクラブとあおはにモンベルルーム。外の蛇口はサイクリストの水補給用 photo:Hideaki TAKAGI奈良で定着しているサイクリングイベントのグリーンフェスタは、青葉仁会が8年前から主催してきたもの。理事長の榊原氏は元々登山家で、山仲間の一人であるモンベル代表の辰野勇氏とともに障害者の自立支援活動に取り組んできた。それはパラマウント・チャレンジカヌーであり障害者カヌー協会の設立だった。

いまでは榊原氏の青葉仁会が運営するカフェレストランハーブクラブ(奈良市水間町)の隣に、辰野氏が代表を務めるモンベルの、「あおはにモンベルルーム」がある。これはフリースのリサイクルなどでモンベルとの事業提携を行う青葉仁会のショップだ。

きっかけは自転車道の駅開設

奈良市水間町のハーブクラブは、青葉仁会が運営するレストラン奈良市水間町のハーブクラブは、青葉仁会が運営するレストラン photo:Hideaki TAKAGI2010年10月、ハーブクラブとあおはにモンベルルームの隣に、「自転車道の駅」が開設された。周辺にはツアー・オブ・ジャパン奈良ステージが行われていた布目ダムが近くで、目の前の道路はサイクリストや地元の榛生昇陽高校自転車競技部にとってはおなじみのコース。この記念式典で榊原理事長に、新薬師寺のカレー店「高畑まんま亭」を営み「チームまんま」の代表者である石津佳也・恵美子夫妻が出会う。

その後に青葉仁会の利用者(障害者)と自転車を使ったプログラムに石津氏が参加する。初めのうちは敷地内を自転車で走り、その後は敷地の外にも足を伸ばす。
あるとき、レストランのハーブクラブに競輪選手が食事に来訪。そこでの会話がきっかけで、大阪の岸和田競輪場の走路を利用者が走ることに。まずは自分の脚で、その後は自転車で走る。石津氏がそれらに接するうちに、自転車で障害者と健常者の共生を考える榊原理事長に石津氏も同調するようになる。

サイクリストでもある榊原典俊青葉仁会理事長

「自転車という共通のキーワード、同じ自転車乗りとして交流できれば」と語るのは青葉仁会理事長の榊原氏。青葉仁会の榊原典俊理事長。自身もサイクリストだ青葉仁会の榊原典俊理事長。自身もサイクリストだ photo:Hideaki TAKAGI
「障害者が生活すること、仕事に就くにはまだまだ課題が多いです。私たちは障害者が働く場としてハーブクラブを作りました。さらにハイキング、カヌー、自転車そして自然観察などの共通項でお互いのプライドを認め合う場も作りました」と続ける。

榊原氏が自身と自転車とのかかわりを語る。「モンベルの辰野さんとは登山の仲間で以前からの付き合いです。モンベルが自社ブランドでMTBを出していたときもありましたね。片山右京さんとももう8年くらいのお付き合いで。そして青葉仁会にも自転車に明るいスタッフが入ってチームをつくろうとは以前から話していました」と青葉仁会で自転車チームを作る機運があったという。

「今まで右京さんに自転車の指導をお願いしていましたが、これからはまんまさんにもお願いしたいと、それで一緒にやる今回の新チームの話になりました。青葉仁会が経営母体となり、モンベルがメインスポンサーです」と続ける。

榊原氏もサイクリストだ。
「自転車は誰でもできるからいいですよ。私もこの前に乗鞍岳を上りましたよ。奈良市水間町の、あおはにモンベルルーム奈良市水間町の、あおはにモンベルルーム photo:Hideaki TAKAGI自転車を背中に背負って登山道を使って。山頂まで行きましたが良かったですね」とまさに山岳サイクリングを実践。
「いつかは海外へ、たとえばカナダのウィスラーで開かれているグランフォンドとか、そういうのにみんなで行きたいですね」と希望を膨らませる。

「いま、私は特別難しいことをしているわけでもない、あたりまえにごく自然にやっていることです。いつの日か障害者が普通の場所に普通に生活して、そして仕事もできる世界をつくる、それが私の挑戦かなと思います」と語る。


レーシング顧問の石津佳也氏。監督の恵美子さんとともに夫婦でチームを率いるレーシング顧問の石津佳也氏。監督の恵美子さんとともに夫婦でチームを率いる photo:Hideaki TAKAGI2007年設立のチームまんま

チームまんまは2007年に、奈良市を中心に自転車で走ること楽しむこと、それが共通項で集まったメンバーで石津夫妻を中心に結成された。アマチュアからプロまで、奈良だけでなく全国までメンバーの輪が広がる。そしてピットにはほかのチームの選手たちも自由に出入りする「垣根の無いチーム」だ。

サイクリストが集まる新薬師寺前の人気カレー店、高畑まんま亭のオーナーである石津夫妻。本業はもちろん、いっぽうで自転車普及活動にも力を注ぎ、奈良県が認定する初代の「奈良の自転車名人」だ。

社会福祉法人青葉仁会と石津氏

石津氏の自転車歴は中学時代から。奈良県南部の十津川村までキャンプ道具を持ってサイクリングしたり、MTBに乗ったりしていた。その後2005年に再開、ロードを買ったのは2006年。自転車競技から入ったのではなかった。
「だからこそ区別無くできるのかなと思います。ロード、トラック、MTB、シクロクロスそして競輪。仲間にはアマチュアからプロ、競輪選手がいます」という。そしていま榊原理事長に同調し、障害者とともに走る。
2000年夏から奈良市高畑町に開業したカレー専門店の高畑まんま亭。土・日・月曜日が基本的な営業日2000年夏から奈良市高畑町に開業したカレー専門店の高畑まんま亭。土・日・月曜日が基本的な営業日 photo:Hideaki TAKAGI
きっかけは障害者からの手紙

「あるとき障害者から手紙をもらいました。そこには『あきらめずに坂を上る練習をしたら上れるようになりました。あきらめずにやればできることがわかって嬉しかった』とありました」
これを読んで石津氏は障害者とともにやっていこうと決心した。
いつも笑顔があふれて元気なチームピットいつも笑顔があふれて元気なチームピット photo:Hideaki TAKAGIチームのミーティングはおいしいカレーをいただきながら。いつも元気いっぱいの仲間たちチームのミーティングはおいしいカレーをいただきながら。いつも元気いっぱいの仲間たち photo:Hideaki TAKAGI
いっぽうで石津氏はもともとチームを持っていた。
「自分の方針に対して皆がどう思うか、いっそチームを2つにしようかとも考えました。チームのみんなに自分の考えを話したら、みんなが賛同してくれたのです。抜けるどころか逆にメンバーが増えていった」それがとても嬉しかったという。

そこで石津氏が感じたのは「障害者に手を差し伸べたいけれど方法がわからないという人が多い。でも自転車を介在すればそれができるのです。今のメンバーだって、もし自転車が無かったらたぶん会うこともなかった人たちです。だから同じ自転車愛好家として接すればいいのです」と続ける。そのまま、その「まんま」接すればいいと。それが「まんまイズム」だという。

石津夫妻はいま、平日はハーブクラブなどに顔を出し、週末中心にカレー店を開く毎日。それこそ休みなしで動く2人だが元気そのもの。「自分たちらしく、そして自分たちでしかできないことをやっていきたい」と今後を語る石津夫妻は、バイタリティのかたまりだ。

きっかけとなった自転車道の駅実行委員会は、ICS協会(インクルージョン サイクル スポーツ協会)と名を改めて設立された。ここでまんま-AO・HANI Cycling Teamは、スポーツ自転車を楽しむことを通じてメンバーと障害者の健康維持と親睦を図り、相互に垣根を越えて活動。実業団チームから障害者までがレース活動、ツーリングや各種サイクリングイベントを行い、自転車を通じて純粋にボーダレスに活動しインクルージョンを実現していく。

3月31日にはこの活動の一環として奈良県営競輪場で「ならトラックパーティー2013」も奈良県自転車競技連盟主管で予定されている。グリーンフェスタをはじめスポーツを通じて健康福祉と地域貢献をはたす社会福祉法人青葉仁会。そして始動した、まんま-AO・HANI Cycling Teamの活動に注目だ。

チーム情報
チーム名:まんま-AO・HANI Cycling Team (まんま あおはに サイクリングチーム)
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 株式会社 モンベル:メインスポンサー  
 株式会社 ウエイブワン:チームジャージ  以下五十音順
 三和澱粉工業 株式会社
 東京サンエス 株式会社
 株式会社 三輪そうめん山本

photo&text:高木秀彰

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